増える住宅確保要配慮者の“住まいの支え手”居住支援法人
さまざまなバックグラウンドから住まいが借りにくいとされる住宅確保要配慮者。超高齢化の加速、障害者手帳の交付数や在留外国人の増加といった要因から、住宅確保要配慮者の数は増加傾向にある。
厚生労働省が2023年に公表した「2021年国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯・単身世帯の数が過去最高を記録。単身高齢者の部屋探しだけでなく、安定して住み続け、孤独死のリスクをいかに回避するかという議論が、賃貸業界では目下活発になっている。
住宅確保要配慮者をめぐる取り組みにおいて、当事者が安定した住まいを得るために支援する団体がある。それが、都道府県から指定された“居住支援法人”だ。企業・NPO・社団法人など、不動産、福祉、士業関係などさまざまな分野の法人が特性を活かし、地域の居住支援の担い手として活動している。
鹿児島県認定の居住支援法人「特定非営利活動法人やどかりプラス」(以下、やどかり)は、“当事者同士のつながり”を重視したスタイルで居住支援を行う。
本記事では代表理事・芝田淳氏に、活動を通して感じる現状の課題や、それに対するやどかりの支援内容、また10月に改正された住宅セーフティネット法における居住支援法人のあり方と居住サポート住宅について、話を伺った。
要配慮者の住まい探しに必須なものは“支援” 当事者とつなげるやどかりの形
やどかりの前身「やどかりサポート鹿児島」は、2007年の設立、2017年に居住支援法人に指定された。2017年に設立され、身寄りのない人たちをめぐる問題の解決に取り組んできた「つながる鹿児島」と昨年合併し「やどかりプラス」が誕生。およそ18年の⻑きにわたって多⾓的に、⿅児島県において、居住⽀援と身寄り問題に取り組み続けていることになる。
やどかりの支援は多岐にわたる。「鹿児島あんしん居住サポート事業」における相談窓口として活動するほか、連帯保証提供を行う「地域ふくし連帯保証」、当事者の居場所活動「やどかりライフ」、当事者が「つながるあんしん事業」など、さまざまな事業を展開している。
中でも特徴的な地域ふくし連帯保証は、やどかりが法人連帯保証を提供する事業だ。
2007年に始めたこの事業は、“ホームレス状態の人は、頼れる人がいないことで連帯保証人を立てられず、家を借りられない” “精神障害者は、連帯保証人を立てられないことで社会的入院(※1)をせざるを得ない”、この2つの課題を解決するべく始まった。
事業の内容は、連帯保証人を立てられない人の連帯保証人を有償で2年請け負い、当事者へは継続的な支援を行う支援者をつなぐ。2025年3月末時点で412名が利用するこの事業の肝となるのは、“支援者”の存在だ。
「日ごろの見守りや困ったときの相談ができる支援者、つまり“人とのつながり”があれば保証人をやどかりが引き受ける、という仕組みになっています。障害福祉の分野では支援者にあたる人が、相談支援専門員やB型事業所の職員、ヘルパー等が担ってくれるので順調に運用できています。一方、ホームレスの場合は、孤立した状態となりやすく、失踪・家賃滞納等、自分の生活を大切にしない、生活がうまくいかない状態に陥りがちになることがわかりました。つながりがあれば、そういった状態に陥るリスクが減ると考えています」
事実、事業開始から10年間の連帯保証の負債をまとめた数値では、支援者あり164件の支援件数で保証事故として支払った金額は約90万円。一方の支援者なし138件では約320万円になったそうだ。支援者の有無で、1件あたりの負債額に4.4倍もの違いが発生したことになる。支援者の存在の重要性を「400万円以上の身銭を切って証明した」と、芝田氏は語る。
支援者がいないからといって地域生活ができないのはおかしい、どうすれば、支援者がいない人に保証を提供できるか、と試行錯誤するなかで、やどかりが出した結論は「当事者同士のつながり」だった。
※1)社会的入院……医学的には退院してもよい状態にあるにもかかわらず、生活環境や社会資源の不足などによって入院し続ける状況。
見守られるだけでなく、見守る。当事者主体で行う互助支援
やどかりは、2019年に「やどかりライフ」をスタート。当事者同士がお互いに⽣活を⽀え合うことを⽬指す取り組みで、支援者がいない人は「やどかりライフ」に参加することを前提に、やどかりの保証提供を受けて住居を確保する。「やどかりライフ」参加者のための居場所活動や交流イベントを通して互いに親睦を深め、交流の中で生活に関する困りごとが出てきたなら、当事者同士で助け合うのが日常だ。やどかりライフの参加者は、現在153人にのぼる。参加者層は40~70代の男性がコア層となっている。
「具体的には、銀行や役所、病院の同行や入退院の支援、スマホの使い方、部屋の掃除など、できる人が行っています。とはいえ、やはり全員が全員互助にすぐ賛同して動けるかというと、なかなか簡単にはいきません。ですが、やどかりライフ参加者の中には熱心に動いてくれる人も出てきて、そうした積極的な層が50人くらいはいて、ほかの参加者としっかりつながっています」
当事者間のつながりに一役買っているのが、LINEを活用した安否確認グループだ。
グループにはやどかり職員やスタッフは入らず、5~6人の当事者のみで構成されている。メンバーの選定は、前述の積極的な当事者を中心に本人たちの話し合いによって決める。メンバーはそれぞれ1日1回は発言をするルールとなっており、それによって安否を確認する仕組みだ。もし発言がなく既読もつかない場合には、積極的な当事者がやどかりに報告し、訪問や個別連絡を取るなど別アプローチで安否確認を行うという。
「見守りにデジタル機器を使うことが一般化していますが、LINEはデジタルではあるけれど、人と人とのやりとりなので温かさがあります。またこのグループには、見守られるだけでなく、参加者が参加者を見守る役割もあるのです。グループすべてのやり取りをやどかり職員は把握できません。自分たち職員の知らないところで当事者同士の支え合いが生まれていることがあり、それが私たちの活動の醍醐味だと思っています」
ただし、現状のように仕組みが回るようになるまでには、試行錯誤が繰り返されていた。グループの参加人数が多くなり、見守りの機能が崩壊してしまったこともあったそうだ。
安否確認LINEグループの今後の課題を尋ねた。
「やどかりライフ参加者153名のうち一部の方しか安否確認LINEグループに参加できておらず、全員を引き込むのは難しいと感じています。携帯電話ができる人でも入っていない人がいるのが現状です。安否確認LINEグループを、鹿児島県以外でも運用できるようなかたちにしたいと考えています。コンセプト全体に興味を持って、見守りはLINEでという団体を増やしていきたいですね」
地域や仲間と知り合い、支え合ってどう生きるか。つながりと互助
自治会の消滅やひきこもりといった、人間関係の希薄化による社会的孤立の深化。単身高齢者の増加。少子高齢化、核家族化、未婚化の進行による「身寄り」のない人の拡大。この先進むとされる“一人で老いる社会”を見据えて芝田氏は、身寄りがない人の入院支援や死後事務支援を行う「つながるあんしん事業」を構想中だという。
この事業は、当事者間の互助を基盤に、当事者間では補いきれない部分をやどかりが当事者との契約という形で補完するというものだ。
具体的には、地域の支援者や福祉機関・保険会社などと連携して、当事者の入院・入所時の緊急連絡先や死後事務を想定しており、それらを滞りなく進めるための仕組みを事業化したいと考えている。
事業の基盤となる当事者間の互助とは、助け合い、弔い合える関係があること。構想の実現に先駆け、現段階では「つながるファイル」の作成を進めている。
つながるファイルとは、身寄りのない人に向けた、緊急時の対応の希望を書き記すフォーマットだ。
「エンディングノートに似ていますが、死の準備ではなく“生きていくための準備”と位置付けています。家族のいない人が、家族に代わって自分の意思を代弁する人をつくろうという発想です。書式の中には『自分で意思疎通が難しくなった時、主治医が相談してほしい人』の項目に友人を書く欄があり、記入ができない方には『これからやどかりで見つけていこう』と声がけしています」
「つながるあんしん事業」参加者は、こうした当事者同士の支え合い、助け合いを基盤としつつ、互助ではどうしても不足する部分を補うために、やどかりとの間で「緊急連絡先となる契約」や「死後事務委任契約」を行うこととしている。
契約にあたっても、「サービスではなく事業」「利用ではなく参加」としつこく説明し、あくまで当事者同士の支えあいがメインで、NPOの役割は後方支援であることを強調しているという。
前述の当事者の見守りも然り、やどかりにおける互助は強制ではなく“参加型”だ。できる人・助けてあげたいと思う人が基本、自発的に集う。多様な人が集まるがゆえに、人間関係でもめることはないのだろうか。
「もちろんトラブルはあります。昨今は単身化が増え、地域のコミュニティも縮小化していることで、人間関係のトラブルへの耐性が減っていると、私は考えます。他人と付き合うのだから、トラブルなんて当たり前。トラブルによって問題解決のリテラシーを高められるのではないでしょうか」
やどかりでは、当事者からの相談がなければトラブルの解決にやどかり職員が介入することはないという。人間関係のトラブルに限らず、仲間の誰かが困難に遭遇した際も、当事者が協力して改善方法を探って答えを導き出す。その経験値が、さらなる結束と信頼感を生み、コミュニティ機能のレベルアップとなるのかもしれない。
事実、高齢者を地域包括支援センターへとつなぐ方法など、当事者間の助け合いによって参加者各自の知見が広がっているそうだ。
居住サポート住宅で描くやどかりプラスの見守りの構想
居住支援の業界で目下注目を集めているのが、2025年10月に改正された住宅セーフティネット法だ。今回の改正では“見守り役”をはじめ、居住支援法人が担う事柄も多い。居住支援全国ネットワークの代表も務める芝田氏は、今回の改正に向けて政府側と意見交換を重ねるなどの働きかけをした内容が反映されていることもあり、改正をポジティブに受け止めている。
今回の改正での大きな変革は、居住支援法人の見守りと国認定の家賃保証会社利用が付帯した専用住宅「居住サポート住宅」の新設だ。これに関して、芝田氏は「NPOとして居住支援サポート住宅でどう収益を出せるようにしていくか」と課題感を抱きつつ、やどかりでも登録を目指して構想を練っているところだと言う。
「“参加型居住サポート住宅”に取り組みたいと考えています。居住サポート住宅に必須である見守りのためのICT機器は、人感センサーだけでなくLINEを含むSNSでも可能です。安否確認、見守りを、やどかりの支援としてやるのではなく参加型での運用を考えています。参加するみんなでつくっていくことで生きがいを感じられるのではと期待しています。ただ、現状の認定基準では、居住支援法人の職員が見守りに入っていることが必須なので、職員が入ったうえで、現行の安否確認LINEグループのように、自主性を生かしたもので進めていきたいですね」
安否が確認できない人の家に「踏み込む」ことについても、やどかりらしい悩みがあり、検討しているという。
「例えば近くに住むきょうだいと48時間連絡が取れないからといって警察を呼びますか?心配でまずは部屋に入ると思うんですよね。でも、やどかりライフの仲間たちに『第一発見者』になるようなことをさせていいのか…悩ましいです」
孤独死を単に不動産のリスクとして捉えるのではなく、「仲間に孤独な死に方をしてほしくない」という当たり前の気持ちを同事業にどう落とし込んでいくか、具体的な対応を模索中の様子だ。
“孤立しない社会”へ 参加型コミュニティが拓く未来
つながるあんしん事業、居住サポート住宅と次々とプロジェクトを計画しているやどかり。今後の展望について尋ねた。
「居住支援にしても、身寄り問題にしても、マイナスをゼロにする事業が多くて“楽しい”が欠けていますよね。また今の社会は、人と関わることが“楽しい”ではなくて責任だったりトラブルだったりで面倒なことになってしまっている。けれど、⼈と関わることが『楽しい︕』と感じられる⼈、楽しいと気づいた⼈が、今、やどかりで活躍しています。そんなコミュニティの力で個々人の課題だけでなく社会課題も解決していく。つまり、“楽しい”で社会を変えていきたいですね」
自由選択の中で機能する互助は、当事者の意思による能動的な活動となり、生き生きとした印象を受ける。期せずして、今回の住宅セーフティネット法改正で新設された居住サポート住宅の遵守事項のひとつに、“入居者が安心して生き生きと明るく、生きがいをもって生活できるようにするための機会を適切に提供して居住の安定を図るよう努めること”と定められている。
まさにこれまでやどかりが培ってきた“当事者同士の互助”が当てはまるといえる。
無縁社会ともいわれる昨今だが、人は一人では生きられないもの。コミュニティでの支え合いは、人間だからこそできる生きるための術であり、孤独を知る者同士だからこそ強くつながれるのかもしれない。
今回お話を伺った方
芝田 淳(しばた・じゅん)
1968年生まれ。司法書士。2007年、やどかりプラスの前⾝であるやどかりサポート⿅児島を設⽴。2017年身寄り問題に取り組むNPO法人つながる鹿児島を設立。2024年に両団体を合併しNPO法⼈やどかりプラスとして理事⻑を務める。また、一般社団法人居住支援全国ネットワークの代表理事・一般社団法人全国居住支援法人協議会の理事も兼務。生活困窮者、障害者、身寄りがない人たちの居住支援や当事者の権利擁護支援に尽力する。
■特定非営利活動法人やどかりプラス
https://npo-yadokari.jp/
■「障害者」の表記について
FRIENDLY DOORでは、障害者の方からのヒアリングを行う中で、「自身が持つ障害により社会参加の制限等を受けているので、『障がい者』とにごすのでなく、『障害者』と表記してほしい」という要望をいただきました。当事者の方々の思いに寄り添うとともに、当事者の方の社会参加を阻むさまざまな障害に真摯に向き合い、解決していくことを目指して、「障害者」という表記を使用しています。

















