精神障害がある人の部屋探しは“備えとサポート”で臨もう
障害者の住まいの選択肢が増えている。その背景には、施設中心から地域生活への政策転換や、個人の尊厳を重視したインクルーシブな社会へと価値観が変化していること、人権意識の高まりなどが挙げられる。
また障害者差別解消法の施行が追い風となり、障害者の自立生活に対する自治体の福祉窓口の取り組みや、不動産会社での前向きな対応も増えているようだ。「『障害者自立支援法』が施行された2006年以前と比べて、かなり状況は改善されている」と、柔軟な時代の変化を歓迎する支援団体の声もある。
しかし、障害者の中でも精神障害者に関しては話が別だ。長らくある「精神障害者はほかの障害者に比べて、賃貸物件を借りにくい」という精神障害当事者やその支援者の声は、いまだ途絶えない。そのうえ、劇的な変化があるほどのインパクトも残念ながらない状態といえる。
とはいえ、一定のニーズがあり、精神疾患を抱えて自立生活を送る人も少なくない。
今回は精神障害がある人が、自宅やグループホームから自立し、自身で賃貸物件を契約して暮らすことを目指すにあたり、円滑に進めるための“事前の準備とサポート”にポイントを絞って紹介する。
(監修協力:東京都指定居住支援法人 特定非営利活動法人東京こうでねいと)
対策1)自立生活を始められるか“医療面”と“生活面”で再度確認を
「家を出ていかなくてはならない」「一人暮らしをしてみたい」―自立生活を希望する動機はさまざまだろう。しかし、本人の状況が自立生活に適していない状態で新生活を強行してしまうと、病状の悪化や生活の破綻を招きかねない。
自他共に安心して暮らしていくためには、“医療面”と“生活面”の2つの側面で、自立生活が可能か再度確認しよう。
医療面は、本人の現状をよく知る担当医に自立生活の希望を伝え、相談を。現状すぐ始めることが難しいと判断された場合でも、将来的にその希望を叶えるために今必要なこと、そのステップ、アドバイスをもらえるはずだ。
生活面のポイントは、自身で暮らしに関わる全般を管理できることだ。
具体的には、炊事洗濯といった“自活力”、薬の服用を欠かさない・定期的な通院といった“心身の健康を維持するための対応”、衝動買いや滞納をしないといった“金銭の管理”が一人でできているかが挙げられる。
生活リズムを整えることで、精神状態が安定しやすくなり、薬物療法や心理療法の効果も高まって、よい循環が生まれる 。体調管理のためにも、規則正しい生活を送ることを意識しよう。
部屋探しを始める前に、既存記事「精神障害のある人の部屋探し 3つのポイントと利用できる支援制度」を参照して、自身を振り返ってみてほしい。
対策2)他者と関われるマインドを持つ
自立生活は自由に時間を使える半面、一人で過ごす時間が増えることで、孤独感を覚えることもある。精神疾患をもつ人にとって特に気を付けたいのは、孤独感から症状が悪化する可能性や、社会的な孤立につながるおそれもある点だ。
実家やグループホームで過ごすのと比べ、孤独を感じる時間が増えることに覚悟が必要といえる。
そんなときこそ一人で抱え込まず、相談できる人との連携が大切だ。
精神障害者の自立生活には、暮らしを支えてくれる訪問ヘルパーや訪問看護、見守りなど人の出入りが多くなる。
そうした支えてくれる人との関わりを拒絶せず、孤独感や困りごと、身の上を共有し、改善を図るように心持ちを切り替えられるとよいだろう。
孤独感が怖い、人の出入りにストレスを感じる、来訪者の入室に嫌悪感があるなど、他者との関わりにまだ難しさがある人もいるだろう。その場合には、一人暮らしを始める前に通過型グループホームに入居し、他者のいる環境で自立生活を送れるよう訓練するのもひとつの方法だ。
通過型グループホームの中には、サテライト型の施設もある。実際に近い環境で、人の出入りをうまく利用し、一人の時間と人との関わり方のバランスを整えてみてはいかがだろうか。
対策3)親やきょうだいによる“同行者”を確保しよう
医療面・生活面・適切なコミュニケーションの取り方をクリアした先で、いざ部屋探しとなる。その際にぜひ欲しいのが、“同行者”だ。
同行者がいることで、部屋探し中に気持ちの切り替えが必要なシーンで頼りになるほか、不動産会社や賃貸オーナーの安心材料になる。「近隣トラブルに対応する存在」「人となりを詳しく知る人による補足や説明」ができるからだ。
支援者でもよいが、親きょうだいといった生活を共にしてきた近親者であるとなおよいだろう。
ただし、同行者の姿勢にも注意が必要だ。
物件の選定や契約等の決定権は、あくまで本人にあることを忘れてはいけない。同行して経緯を身近で見ていると、本人だけでなく同行者も慌てることがあるだろう。
しかし、部屋探しや契約に本人以外の意思が入ることで、自立を妨げたり契約が複雑になったりすることにもなりかねないのだ。
なかでも、軽度の知的障害を併発している場合は、重要事項説明や契約内容等の理解が難しいことがある。
知識や理解が追いついていないことで、後々トラブルに発展することもあるため、本人が理解できるようフォローを心がけるようにしよう。
主導権は本人にあり、同行者はサポートに徹する。部屋探しのパートナーとして、適度な距離を保ちながらサポートするのが得策だ。
対策4)物件を探す際は“根気”をもって。転居先福祉課への連絡も忘れずに
物件探しの際に実は最も必要なのは、“根気”といっても過言ではない。
条件が合わなかったり、審査が下りなかったりと、希望通りの物件にすぐ契約できることは稀で、スムーズにいかないことも多い。1~2件の電話で挫折することなく、根気よく探し続けることが肝要だ。
もし希望の物件とマッチしなくても、気持ちを切り替えて次を探すようにしよう。
不動産会社へ赴く際には、精神疾患があること、障害者手帳、通院先、支援する人・団体の連絡先も伝えられるようにしておくと、提供する情報として万全だ。
また、不動産会社へは「内容を理解するため、返答に時間がかかる」旨も伝えておくとなおよい。不動産契約には、重要事項説明など把握しておかなければいけない手続きがいくつか存在する。認識の違いから「こんなはずではなかった」とならないためにも、聞き流さずにきちんと説明を理解し、自身でも聞き逃しのないよう気をつけよう。
住むエリアが決まった時点で、部屋探しと並行して、転居先自治体の福祉課への連絡も進めておくとスムーズだ。
事前に転居先に相談と手続きをしておくことで、訪問介護事業所のケアマネジャーとの連携やヘルパーの手配などの調整をお願いすることができ、転居初日から利用が可能となる。
物件が決まり、入居日が決まったら、転居日に向けて引越しの段取りへと移ることになる。
転居に際しては、引越し会社の手配、ライフラインの開通、役所への転入出届、銀行や通信会社への住所変更…と、手続きが目白押しだ。混乱しがちだが、自力で進めよう。1人の転居には多くの人が関わってくる。突然取りやめたりすることのないよう、余裕をもった調整を心がけるとよいだろう。
障害と折り合いをつけて、家と外の両輪で安定した暮らしを楽しもう
精神疾患を持つ方にとって、住み替えは決して容易ではない。しかし、自身の備え次第で、道筋をつけることはできる。
医師・支援者・家族からの後押し、他者と関われるマインドセット、同行者の協力、物件を探し出すだけの根気と段取りがあれば、おのずと自立生活にも自信がつくはずだ。
ただし、新生活は引越しが完了したら終わりではない。安定して暮らし続けること、これが何よりも重要だ。
安定した暮らしには、職場や就労支援施設、ピアサポートなど、自宅以外の場所の存在も欠かせない。外での活動も安定すると、自宅での生活も安定しやすくなるという。
人との関わり、社会との接点を保ちながら、ぜひ心穏やかな自立生活を楽しんでもらいたい。
■特定非営利活動法人東京こうでねいと
https://t-coudeneito.com/
■精神障害者の部屋探しに必要なことは? NPO法人東京こうでねいと代表に聞く支援の裏側
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_01155/
■「障害者」の表記について
FRIENDLY DOORでは、障害者の方からのヒアリングを行う中で、「自身が持つ障害により社会参加の制限等を受けているので、『障がい者』とにごすのでなく、『障害者』と表記してほしい」という要望をいただきました。当事者の方々の思いに寄り添うとともに、当事者の方の社会参加を阻むさまざまな障害に真摯に向き合い、解決していくことを目指して、「障害者」という表記を使用しています。
【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」や「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。
公開日:
LIFULL HOME'Sで
住まいの情報を探す
住宅弱者フレンドリーな不動産会社を探す
生活保護利用者フレンドリーな不動産会社を探す
障害者フレンドリーな不動産会社を探す
賃貸物件を探す
マンションを探す
一戸建てを探す
注文住宅を建てる
売却査定を依頼する
【無料】住まいの窓口に相談









