離婚後の新生活に向けて、仕事・子どもの預け先・住まいはどうする?
3組に1組の夫婦が離婚を選ぶ時代といわれる今の日本。しかし、その決断の裏には、数えきれないほどの葛藤と生活の再設計がある。とくに、子どもを抱えた離婚の場合、その準備には慎重さが求められる。
不安と戦いながら、離婚手続きだけでなく、その先の新しい生活に向けた準備を並行して行わなければならないことから、何から手をつけていいのかわからなくなることもあるだろう。
離婚後の住まいにおいても、「実家を頼れない」「やっと慣れた保育園から転園させたくない」といったシングルマザー特有の事情を抱えながら、部屋探しを検討する人も少なくはない。
さらに、離婚の理由や置かれている状況が家庭それぞれに異なることから、大人ひとりでの部屋探しとは異なり一筋縄ではいかないことが多い。
安心して暮らしを整えるためには、自分の状況を改めて振り返ることが重要だ。
この記事では、シングルマザーとして新しい環境で一歩を踏み出す際に考えたいことを、優先順位別にお伝えする。
段取り1)相談できる先があるか
第一かつ最も必要なのは、シングルマザーが抱える問題を相談できる人の確保だ。
離婚は夫婦二者間の問題ではあるが、子どもがいる場合、親権の決定や養育費、面会交流などの取り決めも必要になる。離婚後にトラブルが起きないよう、また調停離婚や審判・裁判離婚にまで発展した際にも対応できるよう、制度や法律の知識がある人とのつながりを持つようにしよう。
自身の状況を共有し、今後について気軽に助言を得られる窓口として挙げられるのが、自治体の子育て支援課だ。子どもとの暮らしに関して、現在必要なことや、今後必要な手続きについて相談できる。
相談先は複数確保しておくと、さらに心強い。
シングルマザー向けの支援団体が行う相談、法テラスの無料法律相談、離婚に強い弁護士事務所への相談など、専門の相談窓口を積極的に活用するのも有効だ。
また、自治体によっては「ひとり親家庭支援センター」「母子家庭等就業・自立支援センター」といったひとり親のための支援窓口もある。
状況を理解してくれ、自身に合った適切な制度や法律とつなげてくれる相談先を得ることは肝要だ。
段取り2)ただちに住まいを離れる必要があるか
今いる場所から離れるための時間的猶予に関しても把握しておこう。
2022年版「LIFULL HOME'S 住宅弱者の『住まい探し』に関する実態調査」では、外国籍や高齢者などの住宅弱者層のなかでも、部屋探しに1年以上の時間を要する比率が、シングルマザー・ファザー層が8.8%と最も多かった。
とりわけ、シングルファザーよりシングルマザーのほうが、「収入が少なく、なかなか希望に合う家賃の物件が見つからない」といった背景から、時間を要する傾向が強い。そのため、時間がかかることを踏まえたうえで準備を進めることが大切だ。
転居を急いで慌てて新居を決めようとせず、部屋探しの条件を詰めつつ、離婚に関わるほかの準備を進めておくとよいだろう。
ただし、DVなどで親子の身に危険が及んでいるような緊急性が高い事態の場合には、DV相談プラスや配偶者暴力相談支援センターといった相談窓口をはじめ、自治体の母子生活支援施設やDVシェルターなどを頼るのも手だ。
安定した暮らしを続けていくには心身が健康であってこそ。心身を穏やかに保ち、自立する活力を整えてから次のステップに踏み出そう。
段取り3)経済的な安定が見込めるか
ひとり親、とくにシングルマザーにとって“経済力”は大きな壁といえる。わかりやすいのは、定収入となる仕事があることだ。
賃貸物件の入居においても同様で、いかに預貯金が潤沢にあっても、安定した収入があるほうが借りやすさにつながる。
これは、大家や管理会社から見て、家賃滞納のリスクが減る、長く入居してもらえることから管理物件の空室が減る、といったメリットがあるためだ。
定職に就いている人は、維持に努めよう。併せて、扶養家族の変更などの手続きに関して確認しておこう。
無職の人は、まず職探しを優先しよう。全国のハローワークには、子育て中の女性の就職支援に特化した「マザーズハローワーク」や「マザーズコーナー」という専用窓口がある。ここでは、子育てと両立しやすい仕事の紹介をしている。子連れで相談可能なので、ぜひ活用してほしい。
段取り4)子どもの環境を変えるか
離婚が子どもに与える影響は、ポジティブなもの・ネガティブなもの両面で多大にあるものだ。
子どもの性格や事態の動向によって、子どもの生活環境をどう整えるかも住まい探しの判断材料になる。
子どもの学区や保育園・幼稚園を変えるか、変えないか。
特に待機児童が問題となる都市部では、年度の途中でも欠員があり転園が可能かどうか、自治体のサイトを見たり、直接問い合わせたりして確認をしよう。
さらに気をつけておきたいのは、保育園に受かるかわからない段階で引越しも進める必要がある場合だ。
新居選びの際、保育園の情報集めも重要となる。定員の多い保育園に申し込むことを視野に入れる、通える範囲に複数の保育園があるといったエリア条件も考慮して、物件を選ぶのがおすすめだ。
保活の情報集めには、独立行政法人 福祉医療機構が運営する子ども・子育て支援情報公表システム「WAM NET」内の「ここdeサーチ」も大いに活用できる。
各所への問合せの結果、年度の途中での入園が厳しい場合は、4月入園に向けた申し込み手続きを確認しておく必要がある。保育園の多くは年内が申込期限になるため、スケジュールの調整も忘れないように。
心配になるのが万一、すべての保育園に落ちてしまった場合。自治体によっては、待機児童対策として居宅訪問型保育事業(いわゆるベビーシッター派遣)を行っている。
例えば東京都では、児童相談所設置区の港区、品川区、世田谷区、中野区、豊島区、荒川区、板橋区、葛飾区、江戸川区、および中核市として八王子市で事業化されている。
こうした行政サービスがあるかどうかも、どのエリアに移住するかを迷っているときの判断材料になるはずだ。
段取り5)子どもの預け先はあるか
ひとり親家庭にとって、欠かせない子どもの預け先。その選び方は、働き方や子どもの年齢、地域の状況によっても変わってくる。事前にリサーチをし、自分たち親子に合った方法を見つけることも重要だ。
ここでは代表的な預け先4つの特徴と配慮が必要となる懸念点を挙げていく。
・保育園・認定こども園
特徴:未就学児が対象。子どもの年齢に応じた保育や教育が受けられる。地域によっては延長保育が利用可能。
懸念点:都市部では定員に空きがない場合が多く、申し込み競争が激しい。預けられる時間が限られるため、長時間勤務の仕事との両立が難しい場合もある。所得に応じた負担額が決まるが、それでも経済的負担になる場合がある。
・学童保育(放課後児童クラブ)
特徴:小学生が対象。公立と民間があり、学校の終業後や夏休みなどの長期休暇中にも利用可能。公立は安価で利用できる場合が多く、保護者が日中家庭にいない世帯の児童の預かりに関しては生活の場として運営されている。民間では、英会話やSTEM教育などを取り入れたサービスもある。
懸念点:公立学童保育の保護者が日中家庭にいない世帯の児童向けのサービスは、対象となる年齢や学年が限られており、高学年になると利用できない場合もある。夕方や土日の対応が限られているため、フルタイム勤務の場合は利用が難しいことも。
・ファミリーサポート(地域の相互支援サービス)
特徴:地域によるが、3ヶ月~12歳が対象。地域の社会福祉協議会を介して、登録された支援者と依頼をしたい親子をマッチングし、子どもの送迎や一時預かりを手伝うサービス。利用料が1時間当たり600円~1,000円程度と比較的安い。
懸念点:在住の地域でないと利用できない。突然の依頼に支援者が対応できない場合があるため、計画的な利用が必要。地域によってサービスの充実度が異なる。
・ベビーシッターや個人の保育者
特徴:運営元の対応年齢にもよるが、一般的には乳幼児から小学生(12歳程度)までの子どもが対象。自宅や希望する場所で預かってもらえるため、柔軟性が高い。時間や内容を個別に相談できる。勤務先が「企業主導型内閣府ベビーシッター利用支援事業」の承認事業主の場合、「こども家庭庁ベビーシッター券」を利用することができる(1日(回)対象児童1人につき4,400円分の補助が受けられる)。
懸念点:保育園や学童に比べると高額になることが多い。子どもを安心して預けられるシッターを見つけるまでに手間がかかる。利用時の契約や保険など、事前の手続きが必要な場合がある。
先で触れた相談先同様、預け先も複数あると、親だけでなく子にとっても頼りになる。上記をうまく組み合わせて、安心材料を増やすのも妙案だ。
5つの段取りの入念な情報収集をもとに自分たちにベストな環境を考えよう
離婚を決めるまで、そしてその後の生活――これほどまでに大きな選択を前にしたとき、何を優先すべきか迷ってしまうのは当然のこと。
離婚によって独り身になるのとは異なり、シングルマザーとして踏み出すには、計画的な準備が不可欠だ。5つの段取りを整えておけば、タイミングや住まい選びもおのずと進めやすくなるに違いない。
離婚を視野に入れ、具体的に動き出すその前に、子どもの心理的負担も考えながら、ご自身に合った新生活を検討していただければと思う。
■シングルマザー・ファザーの住まいの選択肢を増やす取り組み 特集
https://www.homes.co.jp/cont/press/feature/feature_00107/
【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」や「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。
公開日:
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