マンションの第三者管理移行を契機に“攻める管理”が可能に?

管理組合が空きがある駐車場を近隣に貸し出し、修繕積立金に充当するケースもある管理組合が空きがある駐車場を近隣に貸し出し、修繕積立金に充当するケースもある

コロナ禍の期間に第三者管理に移行するマンション管理組合が増え始めていることは最近公開した時事解説のとおりだが(“マンション第三者管理”方式はマンション管理の切り札となるか参照)、現状ではリゾートマンションや投資用ワンルームマンションなどを除き、第三者管理方式を採用しているマンション管理組合は少数派にとどまるものと推察される。

もちろん、第三者管理について、居住者・所有者の管理に関する関心の薄さや“管理のプロ”に任せておけば安心といった風潮が高まることは、居住者本人が所有する高額な資産であるにもかかわらず、その管理を半ば放棄することにつながりかねず、本来“自分の物は自分で管理する”という大原則が変容する可能性が指摘される。
一方で、実態を考慮すれば、居住者の高齢化や管理組合活動の労力負担度合いに鑑みて第三者に管理を委託することは(それが可能な管理組合であれば)、むしろ活用するべきとの意見も多い。

さらに管理の手法だけでなく、マンション管理に必要なコスト負担が厳しい現状とか、工事費や建設資材価格の高騰で将来の大規模修繕にかかるコストが賄えないのではないか、修繕積立金の増額や一時金を徴収せざるを得なくなるのではないかなど、マンションでの居住年数が延びるに連れ、自身が所有・居住するマンション管理の今後を不安視するケースも決して少なくない。

第三者に管理を委託するにせよ、所有者の合議によって運営管理するにせよ、マンション管理をこれまでどおり円滑に進めるためには、管理コストを軽減する目的で、あるいは管理費や修繕積立金以外の“収入”を増やす目的で、さまざまな収入源を模索する当然のことといえる(修繕積立金をプロに任せて運用して増やそうと考えるケースもあるようだが、修繕積立金は個人の資金ではなく管理組合の所有であり、また“絶対に目減りさせてはならない資金”でもあるため現実的な選択ではない)。

一例を挙げると、空きがある駐車場を近隣に貸し出すケース、携帯電話のアンテナ基地局としてスペースを提供するケース、古くは企業の看板広告を設置するケースなどだ。近年では太陽光発電分の一部を売電し修繕積立金に充当するケースもあり、第三者管理を実施するうえでも、また第三者管理を契機として管理組合が独自の“収入”を得ようとする動きは活発化しているといえるだろう。

管理の担い手、および管理に関する費用負担が明らかに不足する事態になる前に、管理組合はどのような方策を取るべきなのか、また具体的な手法を模索するえで管理組合が考えておくべきことは何か、マンション管理に詳しい専門家の意見を聞く。

「攻めの管理」は誰がやるのか? ~ 應田治彦氏

<b>應田治彦氏</b>:足立区の500戸超えのマンションの理事会役員を1期からずっと務め、15年目で現在、管理組合法人の代表理事(副理事長)。理事長は孤独で辛いよねでSNS上でのつながりから始めた理事長同士の情報交換を目的としたフォーラム「RJC48(マンション管理組合理事長勉強会)」代表。マンション管理士應田治彦氏:足立区の500戸超えのマンションの理事会役員を1期からずっと務め、15年目で現在、管理組合法人の代表理事(副理事長)。理事長は孤独で辛いよねでSNS上でのつながりから始めた理事長同士の情報交換を目的としたフォーラム「RJC48(マンション管理組合理事長勉強会)」代表。マンション管理士

低金利や円安に加え建築コストの急上昇などで新築マンションの値段は急騰していて、XなどのSNSには、夫婦ともにフルタイムワーカーの共稼ぎ世帯が、たとえ専有面積を絞って目いっぱい背伸びをしてさえ、希望地区での購入がぎりぎりだとの叫びのような呟きを昨今多く見かける。工事や人件費や電気代の上昇による管理コストの上昇はマンション管理の世界でも特に顕著である。300~400円/m2といった高額の管理費を設定していたタワーマンション(モノと人の上下移動で電気を使う)が近年の電気代の高騰でさらに管理費を50~100円/m2と大きく値上げしたという事例も多数耳にしている。

ローン返済+管理費・積立金のランニングコストの総額でその部屋が購入可能かどうかが判断される。本体価格が高騰したうえに、近年初期設定される管理費の値上がりも顕著で、そのしわ寄せは、必ずしも工事を受注できて売主・売主系の管理会社の仕事になるわけではない積立金の徴収にくる。近年の国交省の評価制度等の改革にもかかわらず、積立金徴収の新築・築浅での適性化は遅々として進んでいない。

記事で話題にしている第三者管理は、元来は築古・住民の高齢化で「理事のなり手」の不在になった「2つの老いの問題」を抱えた組合の救済を主目的として検討されてきたが、実際に普及が急速に進んでいるのは、都心部などの高額の新築物件で、新築物件の購入者が理事会のために週末がつぶされる苦労から解放することが目的である。対象は、①新築物件で②共稼ぎで収入は多いが③時間的余裕はない区分所有者となる。

第三者管理で管理者を任されるのは現在ほぼすべて売主系列の管理会社である。もともと規約・制度変更など「今日と違う明日をつくる攻めの管理」は、ごく一部の意識の高い管理組合の理事会側の役割であり、管理会社は、「昨日と同じに今日をキープする守りの管理」のサポートに特化してきたために、本来的に「攻め」の管理が得意とはいえない。

駐車場の外部貸しや、携帯基地局等、管理水準と徴収額はキープしながら収支を改善する案件は取り組みが比較的容易なテーマだが、そこで得られる収支改善額は極めて限定的で、インフレ時代に日々上がり続ける管理費や積立金の徴収不足の問題の解決には程遠い。「攻め」の範囲には入らないのでは?が筆者の考えである。

例えば都区内など、高額なマンションの中古の購入検討者は、「購入額に見合ったサービス水準」を求めている。ほとんどのマンションが中古でも大きく値上がりする中、仲介の現場で、2倍に値上がりしたマンションの購入検討者が共用部分を見る目は厳しい。管理費をキープした「守りの管理」で改善費用が乏しければ、共用部の壁に穴が開いたまんま、植栽がボロボロ、エレベーターには10年近く前の入居時のままの古びたパンチカーペットがよれよれで貼り付いていたなどということになり、新築に見劣りするその部屋は成約しないであろう。管理に関わる徴収額は上げてでも、新築の水準に追いついていく取り組みこそ「攻めの管理」といえるのではないか?

既存マンション組合が宣伝用ホームページを立ち上げて記事を書く場合、テーマになるのは、「コミュニティの形成」と「防災への対応」である。この2つは実際にやっている姿を見せないと意味がないから、新築では防災設備があります程度しか宣伝できない。専有部にして売れば何億円分にもなるような多数の共用施設を、ほとんど使われないまま遊ばせているようなメガマンションも多く、この有効利用は「攻め」の範疇になるが、人数を多数充てないと実施できないため、理事会制度の組合でも苦手にしてきた分野である。

第三者管理で「すべてお任せ」で管理を受けているマンションのなかには、これらの点を意識した大手の管理会社も現れてきているように思われる。普通の何倍もの収入のあるオーナーだけの名簿を持っている(第三者管理は名簿管理も実施する)のは管理会社のみなのだから、それを使って、至れり尽くせりの専有部の設備更新までのサービスを手がけていくなどの点では、まだまだ第三者管理物件の「攻める管理」には改善の余地があるように思える。

マンション管理組合の“経営的管理”と限界 ~ 佐藤元氏

<b>佐藤元氏</b>:弁護士(神奈川県弁護士会所属)、マンション管理士。横浜市立大学都市社会文化研究科客員准教授。マンション、団地、借地借家、建築紛争など不動産の問題を多く取り扱う。非常勤裁判官としても執務。マンション管理士試験委員、国土交通省「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ」委員。横浜マリン法律事務所https://yokohamamarin.com/佐藤元氏:弁護士(神奈川県弁護士会所属)、マンション管理士。横浜市立大学都市社会文化研究科客員准教授。マンション、団地、借地借家、建築紛争など不動産の問題を多く取り扱う。非常勤裁判官としても執務。マンション管理士試験委員、国土交通省「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ」委員。横浜マリン法律事務所https://yokohamamarin.com/

工事コストの増加はマンションの大規模修繕などの管理のコストを増大させている。また、建て替えにおいても、解体コスト・建築コストが増加しているため、建て替えにおける自己負担額が増え、合意形成自体が困難となるなどの問題に直面している。近頃注目を浴びる、管理業者が管理者に就任するいわゆる「第三者管理者方式」を、管理組合が導入する場合にも委託の内容によっては管理コストが増加する可能性もある。

以前より、マンションでは、駐車場の外部貸しの賃料や屋上への携帯基地局設置の賃料を管理費や修繕積立金に充当するということが行われてきたが、これらの他にもさまざまな取り組み(“経営的管理”といわれることがある)も見られる。
 
例えば、集会室のないマンションにおいて競売にかけられた専有部分を管理組合法人が取得し当該部分を集会室として利用するケース、同じように競売にかけられた専有部分を管理組合法人が取得し売却するケース、などがある。分譲事業者が区分所有権を有していた地下駐車場を管理組合法人が取得し、駐車場として区分所有者に貸し、賃料を得るケースもある。

また、マンション管理組合法人が建て替えのための敷地を拡張するために隣接敷地およびその上の建物を購入するというケースもある。敷地を増やすことで、より大きな区分所有建物に建て替えたり、建築後に建築規制が変わったことにより既存敷地では同規模の建物が建てられなくても、敷地が増えれば同規模の建物が建てられたりする。その結果、建て替え自己負担額を抑えられることになる。

管理組合法人が取得した隣接地にグループホームを誘致し、当該グループホームの入居一時金を、管理組合から組合員に対するリバースモーゲージによる貸し付けを行うことを計画しているマンションもある。管理組合以外の主体が関与して、マンション・団地の活性化を図るケースもある。例えば、事業者が専有部分を買い受けてリノベーションを行い、それを賃貸し、入居者は事由にDIY等で内装を作り変えられるようにする事例だ。

事業者が買い受け賃貸することで空室化を防げるうえ、場合によっては賃貸から分譲部分に転居するケースもあり、空き家化を防ぐことにつながる。また、分譲時にエリアマネジメント団体を立ち上げ、エリアマネジメント団体が、マンションの規約共用部分(専有部分を規約により共用部分としたもの)を借り受け、住居用や事業用でサブリースをするということも行われていたりする。これらの取り組みは、管理費や修繕積立金の収入に直接結びつくわけではないが、マンション・団地の全体の価値を引き上げ、ひいては、各自が所有する区分所有権の価値をも引き上げる可能性のあるものである。

さまざまな取り組みが実務では行われているが、学術界からは限界があることも指摘されている。管理組合は、区分所有建物の管理やそれに付随するものについては行うことができるが、それを超える業務を行うことはできないのではないか、という指摘である。

マンションの物理的な劣化への対応(修繕)のコストが増大しているのみでなく、社会的劣化への対応(改良)も求められる中、“攻める管理”を実践する実務的ニーズもある。他方で限界の指摘もあり、そういった指摘も意識しながら、実務的ニーズに対応していく、法解釈や立法が求められるだろう。

そのようななか、先般、区分所有法改正に関する要綱が、法制審議会(法務省の諮問機関)より法務大臣に提出された。その中に、区分所有者の頭数と議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で、管理組合法人が専有部分や隣接土地を取得できるとの制度が盛り込まれている。今後、国会で審議され、区分所有法の改正で制度化される予定だ。このことは、“経営的管理”あるいは“攻める管理”の第一歩であり、突破口になるかもしれない。

マンション管理の持続可能性を高める「資産価値創出」の重要性 ~ 池崎健一郎氏

<b>池崎 健一郎氏</b>:株式会社新都市生活研究所代表取締役。都心部の大規模マンションにおいてコミュニティ形成が思うように進まない事例を目にして、マンション管理組合の棟内イベントにかかるヒト・モノ・カネを外部化し、棟内コミュニティ形成を活発化させるサービス「クラスバ」を2021年から運営。セミナー講師や寄稿など多数。池崎 健一郎氏:株式会社新都市生活研究所代表取締役。都心部の大規模マンションにおいてコミュニティ形成が思うように進まない事例を目にして、マンション管理組合の棟内イベントにかかるヒト・モノ・カネを外部化し、棟内コミュニティ形成を活発化させるサービス「クラスバ」を2021年から運営。セミナー講師や寄稿など多数。

約700万戸となる日本の分譲マンション管理組合の共通課題は、いよいよ始まったインフレにすぐさま対応することが困難なことである。遠くない将来、建物そのものの適切な維持管理が困難になり、ひいては値段がつかない廃墟マンションが出てくることになる。ストックを良好に保つ点でも、街の美観の点でも望ましくなく、打てる手は早めに打つべきだ。

分譲マンション管理組合の目的は、「マンションの良好な維持管理」と、その結果となる「資産価値の保護」である。活動源となる収入は、メンバーからそれぞれ徴収する「管理費」「修繕積立金」「駐車場料金」以外にはほぼない。

自分のマンションを良好に維持管理していくといっても、つまるところは「カネ」の問題に帰結する。潤沢な資金さえあれば、適切な建物の修繕・管理員や清掃員の配置・植栽の剪定や植え替え、はたまた共用部のグレードアップ工事などが可能であるが、多くの管理組合はそれ以前の問題レベルで資金が不足している。

なぜだろうか。冒頭に述べたように人件費をはじめとしたコストアップが原因である。収入を増やすには、区分所有者から徴収する毎月の維持費を増額することがいちばんであるが、30年間のデフレに慣れきった日本人に、区分所有者のなかから選ばれた管理組合の理事会が、自分で自分の足を食べるような、管理費の値上げを言い出すのは難しい。
しかし、人件費や建築費、光熱費のアップは管理組合側の事情とは関係なく起こっており、「大規模修繕費用の高騰」や「管理会社への委託経費の増加」などは頭の痛い問題である。

そこで「攻めのマンション管理」という言葉が出てくる。維持管理に必要な資金を外部から稼いでこようというわけだ。
冒頭の事例に挙げられている、駐車場の外部貸し・携帯アンテナの設置・太陽光発電はそれなりに大きな額の収入が期待できるが、どんなに頑張っても、管理費全体からすれば数%レベルであろう。とても、管理費全体をまかなうことは難しい。

他の収入アイデアとしては「撮影細則を制定して、共用部や外構を撮影ロケーションとして貸し出す」「投函を許可制にして業者から広告料を取る」なども考えられるが、これも管理費をまかなうには物足りない。また、こうしたアイデアは大マンションに限られ、小〜中規模マンションでは実施が難しいこともある。
つまり、外部収入の増加はマンション管理のカネ不足の根本的な解決にならず、敷地建物を適切に後世へ残していくには、実態とインフレを見込んだアップの決議が必要ということだ。外部からの収入は魔法のつえではなく、「理事会の自助努力が足りない」という区分所有者の問いに最大限応えたうえで、なおかつ上げざるを得ないと説得する材料と考えるのがいいだろう。

筆者が経営する株式会社新都市生活研究所は、維持管理に必要なコストを外に求めることよりも、適切な維持管理の結果享受する「共有財産であるマンションそのものの資産価値の底上げ」に注目するように、管理組合に提案している。資産価値の底上げとはそれぞれの部屋の流通価格を引き上げることだ。

具体的には、弊社はマンションの共用部に企業からのスポンサードを募ったうえでさまざまなイベントを誘致し、マンションを単なる住まいから楽しく住民同士が出会い、学べる住処(すみか)へと変貌させることにより、あのマンションに住みたいという指名買い、すなわち需要を増やし、ここを出ていくには惜しい、もっと住み続けたいと思ってもらい、供給を減らすことを狙っている。こうして、資産価値を創出するマンション管理を提唱している。資産価値が良好に保たれるマンションは、高くなっていく維持費を払える良好な居住者層を誘致できる、というロジックだ。

この考え方は弊社だけのものではない。外から見て、あのマンションに住みたいと思われる活動をするのは、理事会活動のなかでもできるはずなので、一度理事会でどのようなことができるか、じっくりと話し合ってみるのはどうだろうか。

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