全国約180店のフランチャイズネットワークを築く、株式会社イシン住宅研究所
住まいの”本当”と”今”を発信するLIFULL HOME’S PRESS編集部が、不動産・住宅会社のトップにインタビューし、その考え方や取組みを聞く本企画。今回編集部が訪れたのは、岡山県津山市に本社を置く株式会社イシン住宅研究所だ。
イシン住宅研究所は、全国約180の工務店が参加する家づくり研究ネットワーク(フランチャイズ)であるイシンホーム住宅研究会を構築し、良い家づくりを全国に広げようと事業を展開する。全国でも最大規模となる工務店のフランチャイズネットワークは、どのようにして築かれたのだろうか。また、「一生、電気・ガス・ガソリン代を払わない家」や「住宅ローン0円の家」など、ユニークな住宅を展開するその考え方や背景について、株式会社イシン住宅研究所 代表取締役社長 石原宏明氏に伺った。
分からない人の気持ちが分かる自称“教え魔”は、家ではなく人生の幸せを売る
石原 宏明氏:(株)イシン住宅研究所代表取締役社長。全国イシンホーム住宅研究会代表。1990年イシングループの前身である(株)ハウジングワーク石原を創業。その後、住宅FC事業を開始。現在は、住宅直営会社、住宅FC産業、エネルギー電力事業、教育ソフト事業、アニメ・出版事業などイシングループ4社の代表取締役。無借金経営には定評があり、多くの企業指導を行う。著書に「家を建てるならドラえもんに聞け」「ガン患者に学ぶ健康住宅」(PHP研究所)他、テレビ、新聞、講演活動など多数編集部:イシン住宅研究所さんは、全国でも最大規模となる工務店のフランチャイズネットワークを展開されています。また、御社のホームページなどを拝見すると「お客さまを幸せにする家」「本当にお客さまのためになる家づくり」などの言葉をたくさん拝見することができます。大変ユニークなアプローチをされているとお聞きしておりますが、それはどういった取組みと思いなのでしょうか?
石原社長:当社は、一戸建て住宅を建設・販売する会社ですが、実は、この本社の建物には撮影スタジオがあって番組を作ったり、オフィスでも漫画やアニメを描いたり、音楽を作ったりしています。本も自社で出版しているんですよ。皆さん(編集部)のお手元にお配りした「ローン破綻防止の開運設計」という本も、家の購入を検討するお客さまに向けて当社で制作しています。家を買う前に「ローン破綻」なんて縁起が悪いでしょう。でも、耳の痛い話も全部書いてあります。そしてお客さまには、住宅ローンに関するテストもしてもらっています。それは、家づくりやそれにかかるお金、仕組みなどを明らかにして、それを易しく伝えることで皆さまに勉強してもらい、納得を持って住宅購入をしていただきたいからなんです。
私は、“教え魔”なんですよ(笑)。私自身、裕福な育ちではなかったこともあり、大学へは行きませんでした。工業高校を卒業した後、ゼネコンに就職しますが長くは続かず、中華料理店で働き、その後は数々のアルバイトをしました。つまり、“落ちこぼれ”だったんです。なので、分からない人やできない人の気持ちがよくわかります。そういった人にもしっかり知ってもらえるように、動画、漫画、音楽、本などを通して、誰にでも分かる形で「お客さまを幸せにする家づくり」を教えたくなるのです。
編集部:本当に、パワフルにいろいろなことをされている印象です。今は住宅ローン破綻も増えていますから、消費者の「教育」も必要なのかもしれませんね。
石原社長:はい。お客さまには、家を買って損はしてほしくありません。むしろ、家を買って“儲かる”といいと思いませんか? 当社では「一生、電気・ガス・ガソリン代を払わない家」と謳った住宅を販売しており、大型太陽光パネルと蓄電システムを備えることで、光熱費を実質的に支払わない生活を目指していただけます。発電と売電によって光熱費を節約し、車も電気自動車(EV)を使うことでガソリン代を節約。さらに高性能住宅を建てることによる補助金や住宅ローン減税を考慮すると、家族構成や地域によりますが、50年で家を1軒建てられるくらいの金額を節約できることになります(光熱費の値上げや設備の更新費用も想定に含む)。
こういったことも、お客さまが誰でも理解できる、簡単なシミュレーションや本などを通して、知っていただくのです。
特に人生100年時代といわれるこれからの時代、在宅時間が長くなる老後において、光熱費の支払いが減らせるとしたら生活が楽になると思いませんか? 性能が高い家は一見、建物価格が高くなるので、営業担当者としては売りにくくなりますが、50年という長い目で見ると光熱費が節約できて逆に総支払額は安くなり、お客さまは得します。「家を売ろう」とだけ思っていたら、お客さまにそういった話はなかなかできないものです。でも、「人生(の幸せ)を売る」と考えると、違ってくるはずです。家は手段にすぎず、主人公は人間なのです。
例えば、田舎の十分広い敷地に家を建てるとして、「家を売る」のであれば、坪単価の安い総2階を提案するかもしれません。しかし「人生(の幸せ)を売る」のであれば、老後も楽に生活ができ、なおかつより大きな太陽光パネルを載せられる平屋を提案するでしょう。家を売って人に恨まれるような仕事はしたくありませんから、家ではなく人生(の幸せ)を売るのです。
他にも自然災害に強い「防災住宅」や、効率的な家事動線を提案する「働くお母さんに贈る家」など、お客さまの人生を考え、幸せになるための家づくりをしています。
売りに行かずに買いに来てもらう。間接経費を削減し、いい家づくりに投資
編集部:私たちも、「一生、電気・ガス・ガソリン代を払わない家」のシミュレーションを体験させてもらいましたが、本当に学校で教えていただくような感じですね。お客さまのリテラシーを上げ、納得したうえで購入していただくということですね。
石原社長:そのとおりです。まず、当社のお客さまの多くは口コミや紹介によるものです。イシンホームの家に住んでよかったと思っていただいたお客さまは、当社が制作するビデオなどに出演していただき、自らイシンホームの良さを語ってくれます。売りに行かずに待っていれば、それを見たお客さまが納得して来てくれるので、売るだけの営業活動はほとんど必要ありません。しっかり勉強して知識を持ったうえで納得して購入していただけますし、これは営業経費の削減にもつながります。
また、無理に売りに行っている限り、営業担当者はどんな会社でも半年で55%の人が辞めるといわれています。どんなにいい大学に行って、親に大きく育ててもらっても、結局それでは非常にかわいそうだと思います。なので当社は売りに行かずにお客さまに買いに来てもらうという、通常の「逆」の方法をとるのです。
私はドラッカーが好きで、よく本を読んでいますが、彼が唱えるイノベーションとは、成長・拡大のための機能です。イシンホームでは、売れる機能づくりをしています。
そうして削減した費用は、いい設備やいい材料に回すことができます。
当社が使用する太陽光パネルは発電効率の良いバックコンタクト方式で10kW以上の大型のもので、業界最長の40年という長期出力・製品保証も付きます。蓄電池も高温に強い水冷式で13.5kWhの大容量のもの。木材も、国産の品質のいいヒノキを使っています。
駆け引きのできない正直者。人は本来「良心」を持っている
編集部:よい設備、よい材料を使う分、オプションが増え、建物価格も高くなるのではないでしょうか。
石原社長:いいえ、当社では生活のクオリティに関わる設備は標準装備です。高性能の設備を付けようと思った際、グレードアップをオプションとして販売するケースも多くありますが、当社は違います。オプションとして販売すると、お客さまが想定していた価格から、どんどん上がってしまいかねません。しかし、それではお客さまは当初の金額と違うなと感じますし、営業担当者に対する印象ももったいないものとなってしまいます。私は非常に不器用な人間で、駆け引きができない正直者なんです。なので、最初からベストな状態を住宅の標準装備として販売しています。
人間は皆、本質的には「良心」を持っているのです。人に喜ばれたいと思っていますし、人助けもしたいと思っています。料理人であれば、美味しい料理を作ってお客さまに喜んでほしいと思っています。家づくりでも、いい家をつくって喜んでもらいたいはずなんです。同時に、駆け引きしたりだましたりせず、正直に生きたいとも思っているでしょう。しかし、たまたまそれまでの仕事や、環境の影響で、その方法を知らないだけなのです。
これは、現場の職人さんにも同様のことがいえます。もともと職人さんは、会社から厳しく管理されるものでしたが、職人さんを信頼してそれをやめました。これも、通常の「逆」のことをやったんですね。すると、職人さんは自ら勉強し、エネルギーのことなどをお客さまにお話しするようになりました。職人さんを大切にすることで、よい連鎖が生まれ、職人さんは誇りをもって仕事に取組んでくれています。当社の社員はそういった「良心」に基づいて働いています。
工務店のフランチャイズ展開。そのメリットとは?
編集部:今や全国約180店が参加する家づくり研究ネットワーク(フランチャイズ)を展開している御社ですが、設立当初の名称は「株式会社ハウジングワーク石原」だったと伺っています。「イシンホーム」という社名に変わった経緯や、フランチャイズ展開のきっかけ、また、工務店をフランチャイズ展開することの利点などを教えてください。
石原社長:私はもともとボランティアが好きで、会社員時代から妻とよく、海外にボランティア活動に出かけていました。阪神・淡路大震災の惨状を目の当たりにしたときには、地震に強い家の必要性を強く感じましたし、実際に現地では、ボランティア仲間とともに大勢が入れる風呂の提供をしました。その頃、よく一緒に食事をしていたボランティアの仲間が、たまたま高知県、山口県、そして九州地方の出身だったのです。私はもともと坂本龍馬が好きだったので、「これは明治維新だ」と考え、「イシンホーム」と決めました。その後も大工の棟梁の方や設備メーカーの方など、いろいろな方と紹介でつながり、気がついたら仲間が増えていきました。
フランチャイズ展開は、大量一括仕入れができ、良い建材や設備を安く提供できる点がメリットです。前述した私の“教え魔”は、工務店への知識の共有に対しても同じです。本部から、毎日さまざまなノウハウや最新情報を詰め込んだ動画配信などを行っていますが、加盟店であればそれらを見ていただくことができますし、同様に最新の住宅技術を共有することもできます。ほかには、加盟店を集めて年に2回全国大会を開いているのですが、そこには良い家づくりをした人を称える表彰の場があり、例えば職人が認められる舞台があったりします。全国にフランチャイズとしてネットワークをもつことは、そういう点もまたメリットといえると思います。
各地に超優良企業を育て、人生を幸せにする家を増やしたい
編集部:御社の理念に基づいた家づくりに対する思いをお聞かせいただき、ありがとうございました。最後になりますが、石原社長が今後に向けて取組んでいきたいことを教えてください。
石原社長:当社は無借金経営で自己資本比率も高いため、金融機関をはじめ多方面から高い評価をいただいています。イシン住宅研究所というフランチャイズの仕組みを活用し、全国に400社、500社と、各地にこのような超優良企業をいっぱいつくりたいと思っています。
当社の「本当にお客さまのためになる家」が各地にできれば、各地をより豊かにできると思っています。そのための仲間が必要です。私たちの会社と多くの理念を同じくする仲間たちを増やし、日本に人生を幸せにする家を増やしていければと思っています。
編集部:石原社長の人と御社のお考えが、これからはフランチャイズという形によって、ますます広がっていくのが楽しみです。本日は、本当にありがとうございました。
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