1月8日から再び緊急事態宣言が発令
新型コロナウイルスが依然、世界中で猛威をふるっている。
日本においては、一部都府県において1月8日から再び緊急事態宣言が発令され、(2021年1月現在において)いまだ感染者数がおさまる兆候が見えない状況だ。飲食関連業や旅行・宿泊関連業、運輸関連業等においては、大きな打撃を受け続けており、経済ショックが続いている。海外においてはワクチンの接種が始まっているが、日本ではあと少し時間がかかりそうだ。早くおさまることを切に願うばかりである。
いうまでもないが、世界的に実体経済はかなり傷んでいる状況で、業績が落ち込んでいる企業が多いわけだが、一方で先進国の株式市場では、株高が続いている。どうも不透明感がぬぐえない状況で、「この先、どうなるんだろう?」という思いを多くの方が抱いているものと思う。
こうした状況下で、私の専門分野である不動産領域について、「ポストコロナの不動産市場の未来を語る」というテーマで、私の考えを伝えようと思う。
まず、第一回目は、「コロナウイルスの影響は、世界の不動産市場でどのくらいあるのか」についてお伝えする。
不動産市場を動かす3つのエネルギーと見え方について
不動産市場の未来を語るということで、3つの論点から話をしたいと思う。
1つめは、「日々の変化」でわかることだ。
不動産市場においては、「日々の変化が見えにくい」といわれているが、これはひとえに不動産取引に関するデータが少ないこと、整備されていないことが原因である。
我々は、「できるだけタイムリーに」「できるだけ大きな範囲で」をイメージしながら、「いまが見える」ための指数を開発して、「不動産市場におけるナウキャスティング(現状と予測)」を行っている。こうして日々の変化を可視化できるようにしているわけだ。しかし、データで見えることは、「たまたま」かもしれないし、データは取引された事例のみを取り扱っていることから、それ以外の変化はみえてこない。そのために、もう少し長い視点で見る必要がある。
そこで、2つめとして、中期的なサイクルで「不動産市場の構造変化」をみる。
また、3つめとして、長期のダイナミクスを捉えて、「不動産市場のマクロ変動」をみる。これらは、数式モデルを使い構造推定を行うことでみえてくる。このような視点から、モデルを使い、「いま何が起こっているのか」「これから何が起こりそうか」を考えていくことになる。
以下、今回は不動産市場におけるナウキャスティング(現状と予測)を深掘りしていく。
コロナウイルスの影響は、世界の不動産市場でどのくらいあるのか
私は、アメリカMIT大学の研究者の方々とともに、Price Dynamics Platform (by: MIT Center for Real Estate:)という世界350都市の不動産マーケットのINDEXを開発した。
このPrice Dynamics PlatformというINDEXで現在見えていることを伝えると、2020年第3Q(9月末)時点での、過去10年をさかのぼって不動産市場をみてみると、ボストン、NY(マンハッタン)、サンフランシスコ、などのアメリカの大都市などが大きく上昇していることが分かる。東京も一定程度上昇しているが、その上昇幅は他の都市に比べて、小さくなっている。先に述べたアメリカの都市、あるいは例えばパリやソウルに比べるとそれほど大きな上昇をみることはなかったことが分かる。それが、近年の東京の位置づけという事になる。
では、前年と比べてどうなのか。
2020年第3Qにおける各都市の前年対比をみると、「コロナショックがあって、不動産市場は崩れているのではないか」と多くの方が思われていたと思うが、そんな中でも、ボストンやワシントンDC、ベルリン、パリといった地域ではそれほどマーケットが崩れておらず、逆に10%弱くらいの上昇になっていることが分かる。東京においても、コロナショックが落ち着きを見せ始めた第3Qになると、今述べたエリアほどではないが、上昇に転じていることがわかる。
逆に大きくマイナスに転じているのは香港が目立つが、これはコロナショックに加えて政治的な騒乱が影響しているものと思われる。他にはロンドンやメルボルン、サンフランシスコなどの下落が目立っている。こちらは純粋なコロナウイルスの影響だと思われる。
2020年の第3Q(~9月)と第2Q(~6月)は、世界各地と比較して東京はどうなっているのか
次に、2020年の第3Q(~9月)と第2Q(~6月)との比較をみてみたい。
この3ケ月の間に、ロサンゼルスのオレンジカウンティーやシドニーではマイナスにふれている。東京都心5区においては、2Qから3Qで、わずかにプラスになっているが、ロサンゼルスの中心地やニューヨークの中心部やその周辺部、サンフランシスコやシドニーなどは、大きくプラスにふれている。こうしたエリアに比べて、東京の上昇幅は小さくなっている。
このように、新型コロナウイルスの影響で不動産市場は大きく悪化する、という予想された方が多いと思うが、世界の都市別に見れば、確かに下落している都市もあるが、逆に上昇しているエリアもあると、バラバラな状況にある。
そんな中で東京の不動産市場は大きな影響を受けておらず、横ばいからやや上昇という状況といえそうだ。
不動産市場に影響が出てくるには、実は時間がかかる。
このような傾向だからといって、不動産市場が堅調で続いていくというわけではないことに注意をしていただければと思う。
■参考URL
PRICE DYNAMICS PLATFORM:http://pricedynamicsplatform.mit.edu/team.html
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