CtoC市場の育成と手数料体系の見直し
空き家の増殖が止まらない。
しかし、空き家の中には本来は利用可能にあるにもかかわらず有効に活用されていないものと、すでに利用価値をも失っているものがいり混ざっている。
空き家が増殖していく原因の一つとしては、流通可能な住宅であったとしても、仲介機能が作用しないことで、有効に活用ができていないことも多い。また、人口減少が進む中では、住宅需要が低下していくために、人口または世帯ベースで見たときの住宅需要が絶対的に不足してしまうということも考えられよう。
そうした中では、現在の空き家またはその候補となっているような家に対しての仲介機能を強化すること、加えて住宅需要を拡大させるような制度変更が求められている。
空き家の仲介機能の改善
第一の空き家およびその候補となるような住宅に対する仲介機能について考えよう。
空き家が増殖していく原因として多くのことが考えられる。例えば、売却の意思があっても流通ができない原因としては、十分な価格がつかないためにその仲介がビジネスとして成立しないといったことも考えられる。
つまり、現在の不動産仲介の手数料は価格と連動していることから、住宅の低価格化が進むことでその仲介における事業採算が合わなくなり、誰も仲介をしてくれないといった問題である。
または、当該地域に宅地建物取引士が存在しないといったケースもあろう。また、そのような地域も多くなっていくことも考えられる。事業採算性の低下や事業リスクが高まる中で事業継承も進まないことも多く、専門家が不足してしまう地域が多くなっていくことも予想されている。
このような市場では、住宅仲介におけるコスト構造、生産性を大きく改善していくことが要求される。加えて価格と連動した手数料体系を見直していくことも重要である。実施した作業と労力に見合った手数料が取れる体系が必要になるものと考える。
または、仲介機能が維持できない地域またはセグメント化された市場では、消費者が自らで売却ができるような市場を創設していくことも含めて検討していかなければならないものと考える。
マルチハビテーションの促進
第二に住宅需要を拡大させる方策を考えてみよう。
住宅需要を拡大させる方法としては、潜在的に眠っている需要を掘り起こしていくことが必要である。
もっとも大きな需要としては、海外からの不動産投資である。海外からの住宅に対する投資は、東京を中心として一部の大都市部で拡大しているが、その需要をさらに拡大させていく可能性も考えられる。さらには国内需要においても、多様な住まい方を促進させることも考えられよう。
具体的にはマルチハビテーションの促進である。国内の交通インフラ・ネックワーク機能の向上によって、時間的な移動距離が短縮される過程で複数地域を拠点として住まうことが容易になりつつある。しかしながら二つ目以上の住宅に対する取得費用は、一つ目の住宅に比較して相対的に大きいことから、その格差によって住宅需要を萎縮させてしまっている可能性も否定できない。そのような需要を一層掘り起こしていくことで空き家が減少することができれば、社会的なコストを低下させるように作用する。そのように考えれば、二つ目以上の住宅を購入する消費者を政策的に支援していくことの社会的意義は大きいはずである。
住宅の多用途転換を促進する家守事業
続いて住宅の多用途への転換である。
B&B(ベッド・アンド・ブレックファースト:朝食付きの宿泊施設)に代表されるような一時的な利用や、カフェ、スモールビジネスの拠点への転用などといったことも新しい空間需要を創造することができる。そのようなことを実現していくためには、地場に根付いた住宅産業に関わる専門家の地域間連携を進めていかなければならないであろう。いわゆる家守事業(※)と呼ばれるものである。なによりもこのような事業を、ビジネスとして成立するような土壌を育成していかなければならないものと考える。
前述のように住宅価格の低価格化、将来における住宅仲介産業のリスクの高まりが予想される中では、現在の事業モデルのままで不動産仲介の維持ができなく地域が多く出てくるものと考える。そのような中で事業の多角化、または事業の一部としての不動産仲介として捉え直していくことが求められるであろう。
その最も有力な候補として、家守事業があると考える。
※家守事業:家守とは、ビルオーナーから空室を借り入れ、そこに新たな経済の担い手を呼び込むとともに、こうしたテナントと地域企業や住民などとの交流や連携をプロデュースしながら、地域経済の活性化やコミュニティの再生を目指す民間事業者である。家守の由来は、江戸時代、不在地主から長屋の差配を任された大家である。
※住宅新産業研究会 提言:「透明で中立的な不動産流通市場の条件~情報流通整備と新産業の重要性」
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