賃貸でも楽しみたい人、は結構いる

大手も続々参入。写真はハウスメイトが1月にはじめたカスタマイズサービス「rashiku」大手も続々参入。写真はハウスメイトが1月にはじめたカスタマイズサービス「rashiku」

カスタマイズできる賃貸住宅。最近、ほんとに増えてきた。
総合情報サイト「オールアバウト」が少し前に発表したオールアバウトアワード2013「国民の決断」という企画の住まい部門で「ワタシ好みの着せ替え賃貸」を第2位に選んだ。時代の変化を感じる。ぼくが2年前にはじめたときは愛媛県松山市にある管理会社「日本エイジェント」が管理物件の空室対策として先進的に取り組んでいたくらいで目立った事例はそんなになかったものだ。
それが今や「レオパレス21」や「ハウスメイト」などの大手プレーヤーの参入で全国に広がりつつあるし、日本で一番の大家さん「UR都市機構」まで『カスタマイズUR』を打ち出してきた。

なぜカスタマイズがウケたのか?ぼくが感じるに答えはシンプルだ。
ユーザーが求めているからだ。

供給サイドの画一的な押しつけを受け入れるのではなく、自分たちの好みや感覚を活かして「舞台」を彩っていく。家は借りようが買おうが、そこが暮らしの舞台であることに変わりないのだから、以前にも楽しみたい人はたくさんいたはずだ。それなのに長らく貸し手市場だった賃貸では借り手であるユーザーに舞台を楽しむことをあきらめさせてきた。
借り手市場になった今、供給サイドが変化し、その変化をユーザーが歓迎した。ただそれだけのことだ。

手が届く理想の実現

好きな壁紙を一緒に探す時間はいつも楽しい好きな壁紙を一緒に探す時間はいつも楽しい

今やカスタマイズの代表例となった「自分好みの壁紙を選ぶ」という行為。ぼくがカスタマイズの第一歩になぜ壁紙を選んだかというと、カーテンを選ぶように誰もが簡単にできるというユーザーサイドの「手軽さ」と、もともと貼っていたものだから余計なコストがかからないで済むという大家側の「手軽さ」が一致したからだ。ユーザーの「手が届く理想」の実現を供給サイドも大きなコストをかけずに後押しできたからだ。

これがウケた。想像以上にウケた。そもそも日本の賃貸住宅の壁は白だと思っていた人がほとんどだったから、鮮やかな色や柄が壁を彩ったときの楽しさといったら、サービスに取り組んだぼくらの想像をはるかに超えて大きかったようだ。目の前で壁紙を選んでいるユーザーのきらきらとした表情をみんなに見せてあげたい。日本中でこの楽しさを体感した人たちの声が凄い勢いでカスタマイズできる賃貸住宅を増やしている。

でもこの楽しさ。当然のようにわかる人とわからない人がいる。住まい手側にも供給側にも。どちらも「面倒」だと感じる人たちだ。
住まい手側は面倒であれば選ばなければいい。それでも住まいに立地やスペックを重視する人がカスタマイズしたくないのにカスタマイズ対象の物件を検討することがある。ぼくが運営するロイヤルアネックスでもカスタマイズを始めたころは「面倒だ」という人が何組か見学に来てこちらから入居をご遠慮いただいたことがある。無理をさせるのは良くないからだ。
厄介なのは面倒なのに取り組もうとする供給サイドの事業者たちだ。流行りものに乗っかる人たち。そういう人に限って「カスタマイズに取り組んだのに上手くいかない」と愚痴をこぼす。カスタマイズは手段であって、目的は楽しい舞台づくりなのだ。手段が目的化してしまっては誰も幸せにならない。

でもぼくはこの状況を冷静にみている。このような形だけの供給者は持続しないし淘汰されていくのが市場だと思う。

成熟していくカスタマイズユーザーたち

2013年はカスタマイズが認知され市民権を得た一年だった。2014年はカスタマイズが賃貸のみならず様々な住宅分野で広がりを見せていく予感がする。
実際に大手分譲デベロッパーもぼくのもとに視察相談に訪れはじめている。そして視察していく皆さんは一様にユーザーの成熟に驚き、感銘を受け「市場として無視できない現象だ」と口をそろえる。カスタマイズを望むユーザー・できるユーザーはもはや一握りではなく、どんどん増えているし、クオリティもあがっている。しかもカスタマイズの魅力を体験したユーザーは住んでからもカスタマイズを楽しんでいる。住みながら空間の魅力をさらに高め続けて愛着を重ねていくのである。壁紙の貼り方教室なども開催している輸入壁紙専門店「WALPA STORE」や、カスタマイズアイテムたちをいつでも簡単にネットで購入できる「R不動産toolbox」などの強力なサポーターの存在も大きい。
自分たちの暮らしの舞台を楽しくする魅力に気がついてしまったユーザーたちが住宅業界を大きくかえていく。それは今おこりつつある現実でそう遠くない未来の出来事だと思う。

賃貸を「あきらめていない」ユーザーは思ったよりたくさんいた。
賃貸を「あきらめさせていた」供給サイドは確実にかわりはじめた。
賃貸が変われば、住文化は変わる。
もう新しいものも完成品もあまり求められていないのだから。

そろそろ住宅もきれいで便利なモノより、楽しいコトが増えていくといいなと願う、2013年の年末。

カスタマイズユーザーのクオリティはどんどんあがっているカスタマイズユーザーのクオリティはどんどんあがっている

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