麻布十番駅周辺・約2.5haの再開発:住宅・商業・業務の導入計画

東京都内において最も市街地再開発事業の多い港区では、現在進行形で多くの再開発が進められている。そのうち、東京メトロ南北線と都営大江戸線の2路線が乗り入れている麻布十番駅を最寄り駅とする三田一丁目では、「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」が進められている。

再開発が進行しているエリアは、港区三田一丁目の一部地域(下図参照)であり、施行区域面積は約2.5ヘクタール(東京ドーム面積の約0.5個分)。施行者は、「三田小山町西地区市街地再開発組合」となっている。また、参加組合員として、三井不動産レジデンシャル株式会社、日鉄興和不動産株式会社、三菱地所レジデンス株式会社、一般財団法人首都圏不燃建築公社が参画(2023年1月の権利変換計画の認可に関するプレスリリース情報に基づく)していることが分かっている。

三田小山町西地区第一種市街地再開発事業の位置 ※出典:三井不動産株式会社(2023年1月)『「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜約2.5ha〜、住宅・商業・オフィスのミクストユースプロジェクト〜』三田小山町西地区第一種市街地再開発事業の位置 ※出典:三井不動産株式会社(2023年1月)『「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜約2.5ha〜、住宅・商業・オフィスのミクストユースプロジェクト〜』

この再開発は、北街区と南街区から構成されており、主要機能として約1,300戸の共同住宅、これらに加えて、オフィス・業務機能や店舗、保育園等の機能が導入される。また、インフラとして、広場や公園、オープンスペースが整備される計画となっている。

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再開発の背景と手続きの経緯

「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」が実施されるに至った背景には、三田一丁目地域の課題として、木造家屋の密集や緊急車両の通行が難しい狭隘(きょうあい)な道路があげられる。さらに、広場・公園といったインフラが不十分であったこともあげられる。

というのも、三田一丁目地域は、第二次世界大戦下におけるアメリカ軍の空襲を逃れた地域(下図参照)の一つであった。このため、戦前からの街並みが色濃く残っていた地域であり、そうした歴史的背景から防災面において課題があった。

港区の空襲による焼失区域 ※出典:港区(2025年3月)「平和の願いをこめて2025 ―今、語り継ぐ戦争の体験― 港区戦争・戦災体験集 第4集」p32-33港区の空襲による焼失区域 ※出典:港区(2025年3月)「平和の願いをこめて2025 ―今、語り継ぐ戦争の体験― 港区戦争・戦災体験集 第4集」p32-33

こうした背景のもと、麻布十番駅の南東部に位置する三田一丁目のエリアでは、防災性の向上や良好な居住環境をつくることを目的として、港区では2001年に地区計画(都市計画法に基づく都市計画のツールの一つで、街区単位のきめ細やかなまちづくりのルール)を定めている。その後、今回の再開発事業エリアの東側エリアでは、「三田小山町東地区第一種市街地再開発事業」が2009年に竣工、続いて、「三田小山町地区第一種市街地再開発事業」が2010年に竣工し、両事業により約1,000戸近い住宅が供給された。

今回の再開発事業でも、これまでの防災面での課題解決の方向性を踏襲し、住宅を中心とした再開発が進められている。これまでに、2016年6月に再開発に必要な都市計画の決定、その後、2020年9月には東京都から再開発事業の認可を受けている。

<これまでの主な経緯>
・1994年7月:三田小山町第3・5地区市街地再開発準備組合の設立
・2001年7月:三田小山町地区地区計画の都市計画決定
・2016年6月:三田小山町西地区第一種市街地再開発事業都市計画決定
・2020年9月:第一種市街地再開発事業認可
・2022年12月:権利変換計画認可
・2025年1月:建築着工

建築計画:北街区・南街区で整備される住宅・オフィス・店舗等の内容

「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」では、北街区と南街区において、それぞれ建築物が計画されている。これに加えて、合計約4,000m2に及ぶオープンスペース・親水広場、さらに歩道状の空地や通路が整備される。さらに、公共管理の施設として、区域内の道路拡幅や道路新設、オープンスペースとは別に約2,500m2の街区公園が(都市計画で定められる公園で、街区内の居住者利用を目的として)整備される。

事業計画に記載される総事業費は約1,750億円が予定されている。

三田小山町西地区第一種市街地再開発事業の構成(北街区・南街区) ※出典:三井不動産株式会社(2023年1月)『「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜約2.5ha〜、住宅・商業・オフィスのミクストユースプロジェクト〜』三田小山町西地区第一種市街地再開発事業の構成(北街区・南街区) ※出典:三井不動産株式会社(2023年1月)『「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜約2.5ha〜、住宅・商業・オフィスのミクストユースプロジェクト〜』
三田小山町西地区第一種市街地再開発事業の構成(北街区・南街区) ※出典:三井不動産株式会社(2023年1月)『「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜約2.5ha〜、住宅・商業・オフィスのミクストユースプロジェクト〜』図 完成予想CG ※出典:三井不動産株式会社(2023年1月)『「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜約2.5ha〜、住宅・商業・オフィスのミクストユースプロジェクト〜』

<北街区>
・敷地面積:約10,964m2
・建築面積:約5,710m2
・延べ面積:約106,810m2(容積率算定対象の延べ面積:約75,800m2)
・建蔽率:約52 %
・容積率:約691 %
・用途:住宅、オフィス、店舗、駐車場、駐輪場
・住宅戸数:695戸
・構造規模(住宅A棟):鉄筋コンクリート造、地下1階地上42階、高さ約165m
・構造規模(オフィス棟):鉄骨造、地下1階・地上8階、高さ約37m
・設計者:株式会社アール・アイ・エー
・施工者:戸田建設株式会社東京支店
・建築着工:2025年1月
・竣工予定日:2030年3月
※出典:三田小山町西地区市街地再開発組合「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業 事業計画書」、または現地設置の建築計画標識(東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例第5条第1項に基づく標識。現地確認は2026年2月下旬)による。

<南街区>
・敷地面積:約9,473m2
・建築面積:約5,030m2
・延べ面積:約71,100m2(容積率算定対象の延べ面積:約47,000m2)
・建蔽率:約53%
・容積率:約496 %
・用途:住宅、飲食店舗、保育園、駐車場、駐輪場
・住宅戸数:B棟507戸、C棟140戸
・構造規模(住宅B棟):鉄筋コンクリート造、地下1階・地上31階、高さ約120m
・構造規模(住宅C棟):鉄筋コンクリート造、地下1階・地上16階、高さ約64m
・設計者:株式会社アール・アイ・エー
・施工者:大成建設株式会社東京支店
・建築着工:2025年1月
・竣工予定日:2029年7月
※出典:三田小山町西地区市街地再開発組合「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業 事業計画書」、または現地設置の建築計画標識(東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例第5条第1項に基づく標識。現地確認は2026年2月下旬)による。

<住宅部分の概要>
住宅部分は、合計1,342戸が供給され、すべてが区分所有として計画されている。それぞれの住宅の間取りに応じた計画戸数と戸あたりの床面積は次のとおり。
・1Rおよび1LDK
 予定戸数:319戸、戸あたりの床面積:約30〜57m2
・2LDK
 予定戸数:443戸、戸あたりの床面積:約50〜360m2
・3LDK
 予定戸数:568戸、戸あたりの床面積:約68〜225m2
・4LDK
 予定戸数: 12戸、戸あたりの床面積:約162〜340m2
※出典:三田小山町西地区市街地再開発組合「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業 事業計画書」

また、マンション販売に関するサイトがすでに立ち上がっており、北側の名称が「パークコート麻布十番東京ザ タワー ノース」、南側が「パークコート麻布十番東京ザ タワー サウス」となっている。それぞれの入居時期は、北側が2030年6月下旬、南側が2029年10月下旬が予定されている。

三田小山町西地区第一種市街地再開発事業の構成(北街区・南街区) ※出典:三井不動産株式会社(2023年1月)『「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜約2.5ha〜、住宅・商業・オフィスのミクストユースプロジェクト〜』北街区および南街区の断面図 ※出典:三田小山町西地区市街地再開発組合「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業 事業計画書」
三田小山町西地区第一種市街地再開発事業の構成(北街区・南街区) ※出典:三井不動産株式会社(2023年1月)『「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜約2.5ha〜、住宅・商業・オフィスのミクストユースプロジェクト〜』再開発の現場(北街区) ※2026年2月下旬撮影

再開発事業のスケジュール

改めて、今回の市街地再開発事業では、事業のメインである建築物の整備については2025年1月に着工しており、すでに現地では建築工事が進められている。建築工事の竣工予定は、現地に設置されている標識看板では完了予定として北街区が2030年3月、南街区が2029年7月となっている。

再開発エリア周辺の駅・地価情報

今回の再開発エリアは東京メトロ南北線と都営大江戸線の2路線が乗り入れている麻布十番駅に近接している。また、敷地の周囲を巡るように、首都高速2号目黒線と首都高都心環状線が並行している。加えて、エリア周囲には、港区らしく超高層マンションや寺社、高校・大学、病院、大使館・領事館など、多様な用途が混在しているのが特徴となっている。また、JR線の最寄駅は田町駅であり徒歩で約20〜25分で到達できる位置にある。

麻布十番駅の利用者数は近年増加傾向あり、一時はコロナ禍によって減少したもののその後は改善傾向にある。また、当該地が位置する「三田一丁目」の人口は2026年1月1日時点で4,553人。人口の年代構成では港区全体と比べて0~14歳の割合が若干多く、比較的若い世代の割合が多い地域となっている。

麻布十番駅の1日平均乗降者数の推移(2015→2024年度) ※出典:東京メトロ、東京都麻布十番駅の1日平均乗降者数の推移(2015→2024年度) ※出典:東京メトロ、東京都
麻布十番駅の1日平均乗降者数の推移(2015→2024年度) ※出典:東京メトロ、東京都三田一丁目人口及び世帯あたりの人口の推移(2017→2026年) ※出典:港区

また、港区は東京都内でも地価が高い地域に該当するため、近傍の住宅地地価平均は港区全体よりも低いものの、この10年の推移は一貫した上昇傾向にあり2025年1月時点で約216万円となっている。なお、マンションの販売価格は地価のほか建築費、金利、需給等の影響も受けるため、価格の水準は今後の販売情報で確認したい。

麻布十番駅の1日平均乗降者数の推移(2015→2024年度) ※出典:東京メトロ、東京都三田一丁目および港区の人口構成等 ※出典:港区住民基本台帳
麻布十番駅の1日平均乗降者数の推移(2015→2024年度) ※出典:東京メトロ、東京都三田小山町西地区市街地再開発事業近傍3地点住宅地平均および港区の住宅地平均の推移(2016→2025年)※出典:国土交通省「地価公示」

周辺データと留意点:ハザード・住環境

市街地再開発事業では、エリアの西側と北側を「古川」が流れている。この古川の水源は新宿御苑の湧水によるものだが、港区が公表している「浸水ハザードマップ(2024年4月)」および「高潮浸水ハザードマップ(2025年7月)」によると、当該河川により再開発エリアについても一部浸水(最大3m未満)する恐れがあるとしている。

ただし、こうした防災面の課題に対し、今回の再開発の事業計画では、防災備蓄倉庫や非常用発電設備の設置などに加えて、水害対策として、防潮板の設置等を計画するとしている。なお、浸水および高潮浸水ハザードマップは再開発に伴う計画地盤面を反映したものではないことには留意が必要である。

居住環境としては、2路線の公共交通(鉄道)が乗り入れており充実した交通環境にあるほか、周囲の緑地環境として、北東側には「芝公園」、西側には「有栖川宮記念公園」という比較的規模の大きい公園が位置しているのが特徴となっている。また、当該エリアの北側には昭和の高度成長を象徴する「東京タワー」を望むことができる。

港区浸水ハザードマップ(抜粋) ※出典:港区(2025年7月)「港区高潮浸水ハザードマップ」港区浸水ハザードマップ(抜粋) ※出典:港区(2025年7月)「港区高潮浸水ハザードマップ」

まとめ

今回は、港区三田一丁目で建築工事が進められている「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」を紹介した。当該地では、これまでに行われた再開発(2009年、2010年)に続き、連続性のある一体的な住宅供給が計画されている(なお、今回の再開発では住宅以外にもスーパーやオフィス機能なども導入される)。

今回の再開発も統一的なまちづくりの目標のもと実行されるため、短絡的な単一開発ではない点も、新しい住宅地としてさらに港区のステータスを高めることが期待される。

昨今、都内では市街地再開発の延期が発表されることが増えている中、すでに工事着手済であり、完了予定時期も示されていることから、今後の進捗を追いやすい再開発事業といえる。

再開発の現場(南街区) ※2026年2月下旬撮影再開発の現場(南街区) ※2026年2月下旬撮影