不動産情報ライブラリにて確認可能な都市計画情報の種類
取引価格情報や防災情報などの不動産取引時に不可欠な情報をWEBサイト上で重ねて表示できる「不動産情報ライブラリ(以下「ライブラリ」。)」が2024年4月から運用が開始された。
このライブラリでは、周辺施設情報などが閲覧可能で日常生活を送る上での便利な機能が備わっている。このため、こちらの記事を読んでいる方ですでに利用した経験があるという方もいるのではないだろうか。
都市計画情報の閲覧については、全国の各都市の都市計画情報を一つのWEBサイト上で自由に閲覧可能な公的なサイトは存在していなかった。このため、自治体ごとに公開している都市計画情報サイトを閲覧するか、またはPDF(紙データ)上の都市計画地図を閲覧する方法のいずれかを選択する方法がとられていた。
例えば、自治体を跨ぐと都市計画の情報公開方法や取得方法が異なるために、行政区域の境界付近の情報取得や研究等で都市圏の都市計画情報を分析する際には手間が大きかった。これがライブラリの公開により行政区域を跨いでも都市計画情報を簡単に確認できるようになっている。
本稿では、すでに利用したことがある方やこれから利用する方向けに、ライブラリをより便利に利用するために都市計画情報の種類や役割などについて解説していきたい。
はじめに、ライブラリにて閲覧可能な都市計画情報は次のとおりとなっている。
❶ 都市計画区域
❷ 区域区分
❸ 用途地域
❹ 高度利用地区
❺ 防火・準防火地域
❻ 地区計画
❼ 立地適正化計画
ライブラリにて確認可能な都市計画情報の役割
「都市計画区域」と「区域区分」は都市計画を理解するための基本的な情報となる。
都市計画区域は都市計画を実行する区域として都道府県知事が指定を行っており、一般的には都市圏を同一とする複数の市区町村によって構成される。
次に、「区域区分」は、市街化を促進する「市街化区域」と市街化を抑制する「市街化調整区域」とに区分する区域のことである。一定規模の人口を有する都市において設定されており、人口規模が小さい都市では設定されていない。
「用途地域」は、建物の用途や規模に応じて立地をコントロールする基礎的な手法である。住居系・商業系・工業系の3つに区分され、さらに13種類の地域に細分化されている。指定は市区町村が行っている。
「高度利用地区」は、一般的に市街地再開発事業とセットで指定される。高度利用地区の役割は、容積率(延べ面積/敷地面積)という建物のボリュームをコントロールする役割があり、用途地域に応じて定められる容積率を超えた容積率が指定される。
「防火・準防火地域」は、建物の耐火性能に関して制限を加える地域であり、建物が密集している駅前の中心市街地や沿道火災の発生の恐れのある幹線道路沿いに設定される。
「地区計画」は、街区単位で細かな規制(建物の高さやボリューム、外観、塀など)を行うために市区町村が指定する。新しい住宅街区の整備や市街地再開発事業などにおいて用途地域制限に加えて指定される。例えば、住宅街区では、住宅以外の用途を規制して良好な住宅地を確保するために指定が行われるケースがある。また、良好な景観形成を確保するために建物や外構等への規制が行われるケースがある。
「立地適正化計画」は、厳密には都市計画ではないものの、人口減少が進む地方都市では必須の行政計画の一つとなっており、まちづくりを進めるうえでの基本的な方針とされている。ライブラリでは「立地適正化計画」の計画対象区域と、「都市機能誘導区域」、「居住誘導区域」の3つを閲覧することができる。
「都市機能誘導区域」は、日常生活に必要不可欠な医療や福祉、商業などの施設を誘導・維持していく区域となっている。「居住誘導区域」は、一定の人口・人口密度を確保していく区域となっている。いずれも計画において明示されている。
ライブラリとは
ここでライブラリについて簡単に触れたい。
不動産情報ライブラリは、2024年4月から国が運用を開始しているWEBサイトで、不動産の取引価格、地価公示等の価格情報や防災情報、都市計画情報、周辺施設情報等、不動産に関する情報を閲覧することができる。日本全国の自治体の都市計画情報などを閲覧できる上に、スマートフォン上でも見やすいのが特徴となっている。また、これらの情報はすべて無料で閲覧することができる。
不動産取引や住まい探しの際には、とても参考になるのでまだ利用したいことがないという方は一度利用してみてはいかがだろうか。
都市計画情報を住まい探しに活かす方法
この項では「住宅」に絞ってライブラリの活かし方を伝えていきたい。
冒頭に記載している都市計画情報以外にも知っておくべき情報はあるが、住まい探しにおいては必要最低限の情報を閲覧できると言っていい。住まいにおいて何に重点を置くかによって注視するべき情報は異なってくるが、市街地においては、「用途地域」や「防火・準防火地域」、「立地適正化計画」が重要になる。
「用途地域」は13種類あるが、特に住環境に配慮した地域としては、最も用途制限が厳しい「第一種低層住居専用地域」、続いて「第二種低層住居専用地域」、「田園住居地域」、「第一種中高層住居専用地域」の順となる。
これに日常生活施設へのアクセス性を考慮し、立地適正化計画のうち「居住誘導区域」内であるかどうか、ならびに「都市機能誘導区域」に近接しているかどうかでみると比較的、利便性の高い居住環境を確保することができる。
ただし、これらの地域は、従前から住宅地として人気である可能性が高く、地価も周辺に比べて高いケースが多いので不動産情報ライブラリの「地価公示」を表示する設定にし、重ねて閲覧してみてほしい。地価公示や取引価格情報と照らしてみると意外にも穴場なエリアを見つけることができるかもしれない。
また、「防火・準防火地域」の情報にも留意が必要となる。これら地域は、建物が密集している駅前の中心市街地や幹線道路沿いに指定されている。建物の防火性能を高めて市街地での延焼火災を防ぐ役割がある。このため、建築物は他のエリアに比べて耐火性能が求められることで、非防火・準防火地域に比べて建築コストが高くなる傾向にある。
ライブラリにて確認できない都市計画情報と検索方法
ライブラリにて確認できない都市計画情報のうち、住まい探しにおいて重要な情報をいくつか紹介したい。
【不動産情報ライブラリに掲載されていないが住まい探し等で重要な都市計画情報】
・特別用途地区
・景観地区
・都市計画道路 など
「特別用途地区」は、「用途地域」を補完する役割がある。「地区計画」も同様の役割を担うことができるが、「特別用途地区」は、「地区計画」よりも広い範囲で指定される。都市づくり上、住宅の立地を抑制する「特別用途地区」もあるため、住居系の用途地域であるもののライブラリの地図情報にて住宅の立地が確認できない場合には注意してほしい。
次に、「景観地区」は建物の外観等を誘導・規制する区域として歴史的な街並みを有する都市の一部などで指定されている。建物を建てる場合には、色彩や規模などが制限されるため街並みに合わせた住宅をつくりたくない方は避けてほしい。一方で良好な景観地区の中での生活を希望している方にとっては最適となる。
「都市計画道路」は、現在約7.1万kmあり、このうち改良・概成済は約5.6万kmと、約2割が計画・整備中の状況にある。このため、計画道路に接する敷地で、かつ計画道路が完了していない場合には、将来的に建物の移築が必要となるケースや、建築時に3階建てを建築することができないケースもあるため注意が必要となる。
これら紹介した都市計画情報は、各自治体が公開している都市計画情報(専用サイトやPDF)にて確認することができるが、専門知識がないと調べるのが難しいケースがあるため、「調べ方が分からない」といった方や、「見方が分からない」という方は建築士や宅建士などの専門家にご相談いただきたい。
都市計画情報を閲覧する場合の留意点
大きな留意点としては2つある。
1つ目は、ライブラリでの都市計画情報では「地区計画」が指定されている範囲を閲覧できるものの、具体的な制限内容を知ることはできない。
このため、地区計画に該当しているエリアでは、自身で各自治体の地区計画の内容を確認する必要性がある。一般的に地区計画は建物制限を強化する場合に設定される。例えば、「第一種低層住居専用地域」では、一戸建て住宅以外にも、マンションや学校、宗教施設などの建物の立地が可能なため、良好な住空間を確保するために一戸建て住宅以外の立地を制限するケースがある。
2つ目は、ライブラリにて閲覧可能な都市計画情報は、情報更新が間に合っていないケースがあることに留意してほしい。用途地域をはじめとする都市計画は決定した後も社会経済情勢の変化や、民間事業者からの都市計画提案などにより年に数回は変更が行われている。ライブラリに掲載されている都市計画情報は、参考情報として扱うようにしてほしい。
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