全国の地価公示の動向
2024年1月1日時点の地価公示は、全用途平均および住宅地、商業地における全国平均が3年連続で上昇し、上昇率も拡大している。
全国の地価は、景気が緩やかに回復している中、三大都市圏および地方圏ともに上昇が継続するとともに、三大都市圏では上昇率が拡大し、地方圏でも上昇率が拡大傾向となる等、地域や用途により差がありつつも上昇基調を強めている。全国平均の上昇率は、全用途平均で+2.3%、住宅地で+2.0%、商業地で+3.1%、工業地で+4.2%という状況だ。
2024年の地価公示のキーワードとしては、「人流回復」が挙げられる。人流回復は国内のみならず海外からのインバウンドも回復しており、いずれも地価を上昇させる要因となっている。
日本一地価の高い東京都中央区の銀座地区では、国内の接待や会食需要が戻りつつあることや、海外からのインバウンド回復による高額品等の消費が好調であることによって店舗の収益性は回復しており、地価上昇に繋がっている。
また、大阪市の道頓堀地区では、入国制限の緩和以降、海外からの大幅な人流回復を受け高い上昇率の地価高騰が生じている。道頓堀地区にある「大阪中央5-19」では、+25.3%も上昇し、上昇率は全国の商業地において8位にランクインしている状況だ。
北海道の地価公示の特徴的な動き
北海道全体としては、千歳市における大手半導体メーカーのラピダスの進出効果が大きな話題となっている。
千歳市の地価は、ラピダスの進出決定以降、価格時点が2023年7月1日となる都道府県地価調査の時点で既に大きく上昇し始めた。半年後の価格時点である2024年1月1日の地価公示でもラピダス効果の勢いは止まらず、千歳市の地価は大きく上昇している。ラピダス効果は、単に千歳市の工業地の地価を押し上げただけでなく、周辺の住宅地や商業地も含めて広範囲な地価上昇を生み出したことが特徴だ。
千歳駅周辺ではラピダスの進出決定以降、工場建設作業員や進出予定の関連企業の共同住宅、ホテル、事務所用地の需要が旺盛となっている。住宅地の標準地である「千歳-19」の上昇率は+23.4%であり、住宅地として全国2位(北海道内でも2位)の上昇率である。
また、商業地の標準地である「千歳5-4」の上昇率は+30.3%であり、商業地として全国3位(北海道内では1位)の上昇率だ。
工業地については、関連企業の工業用地等の需要が旺盛となっており、地価は大幅な上昇に転じている。
工業地の標準地である「千歳9-2」の上昇率は+19.0%であり、昨年の0.0%と比較すると大幅な上昇となる。
近年、国内の工業地の地価上昇は、ほとんどがインターネット通販の旺盛な需要を背景として大型倉庫が建設できる物流適地で生じる現象となっている。純然たる工場用途を原因とする地価上昇は少なかったが、千歳市の工業地の地価上昇は工場用途を原因としており極めて特徴的といえる。
倉庫需要だけでは周辺の住宅地や商業地まで地価を上昇させる要因とはならないが、工場用途を原因とする工業地の地価上昇は周辺地域に共同住宅やホテル、事務所用地の需要も生むため、影響力が大きい。なお、北海道では近年は北広島市に建設されたエスコンフィールドの再開発事業により、北広島市における地価の高い上昇率が話題となっていた。
2024年の地価公示では千歳市の高い上昇率が目立ったが、北広島市においても未だに高い上昇率は健在である。商業地の標準地である「北広島5-2」の上昇率は+25.3%であり、全国の商業地の上昇率ランキングにおいても9位という高い上昇率を維持している。
住宅地の状況と値動きの背景
北海道はラピダスが進出した千歳市の他に、もう一つ大きな話題がある。
それは、富良野市における住宅地の高い上昇率だ。住宅地の標準地である「富良野-201」では、上昇率が+27.9%にもなっており、全国の住宅地の上昇率ランキングにおいて堂々1位の上昇率となっている。
全国の住宅地の上昇率ランキングは、2位が北海道千歳市の「千歳-19」(+23.4%)であるが、富良野市の地価上昇はラピダス効果をも上回る結果となった。富良野市の地価が大きく上昇した理由は、外国人による別荘やコンドミニアム用地等の需要が強まったためだ。
富良野市は、通年で観光やリゾートを堪能できる地域として外国人に人気のエリアとなっている。行動制限緩和以降、需要が一層増大したことから需要が強まっており、高い上昇率が継続している。
「富良野-201」の上昇率は2023年が+22.1%、2024年が+27.9%であり、2年連続で2割以上の上昇となった。
同様の動きはニセコ山麓のリゾートエリアでも生じており、行動制限緩和以降、外国人富裕層向けの高級別荘やコンドミニアムの事業計画が再開している。近隣の住宅地の標準地である「倶知安-3」(北海道倶知安町)の上層率は+5.8%(2023年は+3.3%)であり、上昇率が拡大した状況だ。
一方で、札幌市内の住宅地では、地価や建築費の上昇により、これまで旺盛だった住宅需要は落ち着きを見せ始めている。札幌市では、住宅地の値動きは一戸建て地域とマンション地域で異なっていることが特徴だ。
一戸建て地域である厚別区や白石区、手稲区、清田区等の市外縁部では落ち着き始めて上昇率が大幅に縮小したのに対し、中央区やその隣接区の地下鉄徒歩圏の利便性が良好なエリアではマンション用地の需要が堅調となっている。 市内の外縁部の一戸建て需要が弱まったことで、札幌市内の住宅地の上昇率は2023年の+15.0%から、2024年は+8.4%へと縮小している。
同様の現象は札幌市周辺市の住宅地にも生じ始めている。住宅地の上昇率は、江別市が+11.7%(昨年は+27.5%)、恵庭市が+14.0%(昨年は+26.4%)、北広島市が+11.4%(昨年は+26.2%)、石狩市が+11.0%(昨年は+20.9%)となっており、いずれの市も大幅に縮小している。
商業地の状況と値動きの背景
商業地に関しては、全国の商業地上昇率ランキングのTOP10において北海道の標準地が5地点もランクインしている。
北海道内で最も上昇率が高いのは、「千歳5-4」(北海道千歳市)の+30.3%だ。千歳市の標準地は、TOP10の中に3地点が入っている。
また、以前より高い上昇率を示していた北広島市の商業地もランクインしており、「北広島5-2」の上昇率は+23.3%で全国9位となっている。さらに全国10位は、「札幌東5-6」(北海道札幌市)の+23.0%となっており、札幌市内の標準地もランクインしている。
札幌駅の東側では北海道新幹線のホームが設置される予定であり、再開発進展の期待感や地下鉄駅周辺ではマンション用地需要が堅調なことが高い地価上昇に繋がっている。その他として、「札幌中央5-2」(北海道札幌市中央区すすきの地区)では、人流回復による店舗需要の回復や、すすきの駅周辺の複合商業施設の開業に伴う集客力向上により、+17.2%という高い上昇率の地点も生じている。
工業地の状況と値動きの背景
北海道は、千歳市の工業地の上昇が話題となっているが、物流適地の工業地も高い上昇率を示している。「恵庭 9-1」(北海道恵庭市)は、幹線道路や高速道路へのアクセスに優れ、物流関連施設の需要が旺盛であることから上昇率は+22.3%となっており、工業地の中で全国5位(北海道内では1位)となっている。
今後の動向
千歳市におけるラピダス効果は、非常に大きな影響があり、千歳市周辺の地価上昇はしばらく続くものと予想される。
北海道は外国人に人気のリゾート地を多く抱えており、富良野市やニセコ周辺は今後も地価上昇が継続することが期待できる。一方で、住宅地に関しては、一戸建て地域とマンション地域で需要に差が見られ始めてきており、上昇率は二極化していく可能性はある。
札幌市内はタワーマンションが次々と建設されている状況にあり、雪の影響でマンションを選択する人も増えていることから、マンション用地は今後も地価上昇が続いていくことだろう。
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