家を買うなら長期的な視点で。自治体の将来性をどう見る?
長く暮らしたい街を選ぶとき、その街についてしっかりと調べて、慎重に選びたいと思う人が多いだろう。調べるポイントは居住環境や物件はもちろん、ほかにチェックしたいのが地方公共団体(地方自治体、以降「自治体」)の経済力である。
実は、自治体の財政の健全性を測る指標はいくつかある。これらの指標は、首都圏など都市部であれば数値が良いとは限らない。また各指標は、毎年発表されている。そこで長く暮らしたい街を選ぶ際に参考にしたい、自治体の健全性を測るための各指標について解説をしていこう。
ちなみに各指標は、総務省の公式サイトで確認できる。
参考:総務省|地方財政状況調査関係資料|地方公共団体の主要財政指標一覧
財政力指数:自治体の「財政の豊かさ」を見る指標
財政力指数とは、地方自治体の財政力を示す指数である。基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値になる(参考:総務省 公式サイト)。
基準財政収入額とは、地方自治体の標準的な地方税収額を指す。自治体が徴収できると想定される「税収」のことである。また基準財政需要額は、地方自治体が行政サービスを合理的に行った場合に必要と想定される「経費」を指す。
つまり財政力指数は、自治体の「想定税収 ÷ 想定経費」の過去3年間の平均値である。
財政力指数の数値が高いほど、自治体の自主財源の割合が高いと判断でき、財政状況に余裕があるとされる。
財政力指数は、政府が自治体へ交付する地方交付税を決める際の判断材料でもある。数値が1を下回れば、地方交付税の普通交付金が交付される。いっぽう1を超える自治体は、普通交付金が交付されない「不交付団体」となる。つまり普通交付金を交付しなくとも、自治体の自主財政のみで行政サービスが運営可能と想定できるのだ。財政の豊かな自治体であるとされ、「富裕団体」と呼ばれることもある。
2022年度(令和4年度)で、財政力指数が1を超えて普通交付税の不交付団体となっている自治体は、都道府県では「1.06397」の東京都のみである。また、都道府県の財政力指数の平均値は「0.49378」となっている。同じく2022年度の市区町村における普通交付税の不交付団体は、全国で71団体。東日本に多く、西日本には少ない傾向だ。なお、市区町村における財政力指数の平均値は「0.49」。財政力指数がもっとも高いのは、飛島村(愛知県)の「2.02」である。
財政力指数は、自治体の「財政の豊かさ」を測る目安ともいえる。指数が1を下回って普通交付税が交付されている自治体は、「国からの仕送り」をもらって運営しているような状態だ。
経常収支比率:自治体の「余裕資金の多さ」を見る指標
経常収支比率とは、地方自治体の財政構造の弾力性を判断するための指標である。経常的経費(人件費、扶助費、公債費等のように毎年度経常的に支出される経費)にあてられる一般財源の額が、一般財源(経常一般財源。地方税、普通交付税を中心とする毎年度経常的に収入される財源)、減収補填債特例分および臨時財政対策債の合計額に占める割合のことを指す(参考:総務省 公式サイト)。
つまり簡潔にいうと「『毎年確実に見込める収入』のうち、何%を『毎年必要な経費』にあてているのか」を示す数値だ。また地方自治体の財政構造の弾力性とは、必要な経費以外に使える財源が多いか少ないかということである。弾力性が高いと、必要な経費以外に使える財源が多く、さまざまな行政サービスや施策を実施しやすい。いっぽうで弾力性が低い場合は、必要な経費へ財源をあてることで手いっぱいであり、新たな行政サービスや施策を行いにくいといえる。
経常収支比率は、自治体の「余裕資金の多さ」を測るものといえる。経常収支比率が高いほど、自治体の財政構造の硬直化が進んでいることを表す。なお市区町村の場合は、経常収支比率の数値は75%を下回るのが望ましいとされている。
2022年度の都道府県における、経常収支比率の平均値は「92.6%」。また、市区町村の経常収支比率の平均値は「92.2%」だ。経常収支比率の数値が75%を下回る市区町村は、全国で64団体。財政力指数と同じく、東日本に多く、西日本に少ない傾向がある。
実質公債費比率:自治体の「借金返済割合」を見る指標
実質公債費比率とは、地方自治体の一般会計等が負担する元利償還金および準元利償還金の標準財政規模に対する比率の過去3年間の平均値。借入金(地方債)の返済額、およびこれに準じる額の大きさを指標化したものである(参考:総務省 公式サイト)。
つまりわかりやすくいえば「『毎年確実に見込める収入』のうち、何%を借金返済にあてているのか」を示す数値だ。家計であれば、収入における借金返済割合といえる。
実質公債費比率は、数値の低い方が借金返済率が少なく、借金の負担が小さいと考えられる。「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」において、早期健全化基準は、市区町村・都道府県とも25%が適切とする。また財政再生基準については、市区町村・都道府県ともに35%が望ましいとされている。
なお 2022年度において、自治体の実質公債費比率が25%を超えているのは、「67.4%」の夕張市(北海道)のみ。ほかはいずれの自治体も25%以下となっている。また実質公債費比率の都道府県における平均値は「10.1%」、市区町村における平均値は「5.5%」である。
将来負担比率:自治体の「借金残高の負担度合い」を見る指標
将来負担比率とは、地方自治体の一般会計等が将来負担すべき実質的な負債の、標準財政規模に対する比率を指す。借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担等の、現時点での残高を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す指標である(参考:総務省 公式サイト)。
簡潔にいえば「借金残高の、標準的な財政規模に対する負担度合い」といえる。注意点は、あくまで現時点での借金をもとにしたものであること。のちに新たに大きな借金が発生すると、数値は悪化する可能性がある。
なお将来負担比率は、算出されていない自治体もある。
「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」における早期健全化基準では将来負担比率を、都道府県と政令指定都市は400%、市区町村は350%としている。
2022年度では、都道府県・市区町村とも早期健全化基準を満たしている(算出されていない自治体除く)。都道府県で将来負担比率がもっとも高かったのは、「326.4%」の兵庫県。いっぽう、もっとも低かったのは「17.3%」の東京都であった。市区町村で将来負担比率がもっとも高かったのは、「234.4%」の長井市(山形県)。もっとも低かったのは「0.0%」の久山町(福岡県)である。
なお将来負担比率の都道府県の平均値は「154.2%」、市区町村は「8.8%」であった。
街選びは総合的な視点で
普段、地方自治体に関する数値はあまり見ない人も多いと思われる。数値をチェックするのは、慣れるまで大変かもしれない。しかし数値にすることで、自治体の判断基準がハッキリするというメリットがある。
自治体の財政状況は、行政サービスに大きく影響する。行政サービスは、暮らしに直結する大事なことである。長く住み続けたい場合、街選びの際に総合的な視点で街の状況をチェックするようにしたい。数値の面でも、時間をかけてしっかりと自治体を検証をすることをおすすめする。
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