空家等対策特別措置法が改正に至った背景

「空家等対策特別措置法」では、『そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう』「空家等対策特別措置法」では、『そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう』

2023年6月14日に空家等対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)の一部が改正された。施行は公布の日から6ヶ月以内となっており、遅くとも2023年12月中旬には施行される予定である。
空家等対策特別措置法は、2015年5月に全面施行された比較的新しい法律だ。約8年の運用実績を踏まえ、2023年6月14日に大きな改正に至っている。大きな改正に至った背景としては、改正前の制度では十分な空き家対策の効果を上げることができなかったことが挙げられる。
まず、改正前の制度では、特定空き家に指定されると、行政から助言、指導、勧告、命令を受け、最終的には行政代執行によって空き家が強制的に取り壊されるという制度であった。
特定空き家とは、以下のいずれかの要件に該当する危険な空き家のことである。

・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態の空き家
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態の空き家
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態の空き家
・周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空き家

文章で表現するとイメージがわかないかもしれないが、実際には相当な「ボロ家」でないと特定空き家に指定されない。
特定空き家に指定されると、まず自治体から助言や指導を受けることになる。所有者が助言や指導の段階で何らかの対処をすれば、特に大きな問題はない。

空き家の固定資産税の取扱い

助言や指導を無視すると、次は勧告という段階になる。勧告はキーポイントであり、勧告を無視すると土地の固定資産税の住宅用地の軽減措置が解除される。つまり、土地の固定資産税が上がるということになる。

住宅用地の軽減措置とは、土地の上に住宅が建っていると、土地の固定資産税が安くなるという制度である。住宅用地の軽減措置がなくなると、一般的には土地の固定資産税は3~4倍程度上がってしまう。勧告を無視すると土地の上に住宅が立っている状態でも住宅用地の軽減措置がなくなってしまうことから、所有者に空き家改善の動機が強く働くという仕組みだ。それでも所有者が何も対策しない場合は命令が出され、無視すると行政代執行と呼ばれる手続きで空き家が強制的に取り壊される。もちろん、取り壊し費用は空き家の所有者に請求される。空き家の所有者が取り壊し費用を支払えない場合には、土地が公売によって強制的に売却され、最後には土地まで失う可能性もある。

国土交通省 空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(固定資産税等)(出典:国土交通省HP)国土交通省 空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(固定資産税等)(出典:国土交通省HP)

固定資産税の上昇と危険な空き家の解消効果

改正前の空家等対策特別措置法も、行政に強制的に空き家を取り壊す権限を与えた点では画期的な制度であった。しかしながら、効果が乏しいのは、特定空き家に指定されるまでのハードルが極めて高い点にある。

国土交通省では、1,741の市区町村に対して空家特別措置法の施行状況を調査(※)し、その結果を公表している。
※国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001632442.pdf)
調査結果によると、平成30年度(2018年度)住宅・土地統計調査により「不朽・破損あり」とされた空き家は100.6万戸あったが、そのうち特定空き家として把握されたものは4.1万戸にとどまっている。単なる空き家ではなく、不朽や破損があり、危険性が疑われる空き家のなかから特定空き家に指定されたものがわずか4%程度しかない。4.1万戸の特定空き家うち、除却や修繕等がなされた空き家は2万2,148件となっている。

内訳は以下の通りだ。
■助言・指導に至る前:9,622件
■助言・指導後、勧告に至る前:1万855件
■勧告後、命令に至る前:961件
■命令後、行政代執行に至る前:115件
■代執行:595件

内訳で注目したい点は、「助言・指導後、勧告に至る前」と「勧告後、命令に至る前」との間で1万855件から961件へと9割以上も激減している点である。勧告を無視すると土地の固定資産税が上がるため、住宅用地の軽減措置をなくすことは空き家の解消に極めて効果的な制度であることが分かる。ただ問題なのは、そもそも特定空き家に指定されている空き家が圧倒的に少ないことから、全体としては空き家解消の成果を上げにくい制度となっていた。そこで空家等対策特別措置法の効果を高めるべく、今回の改正に至ったのである。

空家等対策特別措置法の主な改正内容

空家等対策特別措置法が施行されてからも、空き家の増加が止まらず居住目的のない空き家はこの20年間で約1.9倍も増加空家等対策特別措置法が施行されてからも、空き家の増加が止まらず居住目的のない空き家はこの20年間で約1.9倍も増加

2023年6月14日に交付された空家等対策特別措置法の主な改正点は、「管理不全空き家の創設」と「空家等活用促進区域」「緊急代執行制度」の3つの制度の創設である。

管理不全空き家の創設

改正点の最大の目玉は、管理不全空き家という新しい制度の創設である。管理不全空き家とは、放置すれば特定空き家になるおそれの空き家のことを指す。相当なボロ家ではなくても、ガラスが割れている、ヒビが入っている等の状況でも管理不全空き家に指定される可能性はある。
管理不全空き家に指定されると、市区町村長から指導と勧告を受けることになるが、勧告を受けた管理不全空き家は住宅用地の軽減措置がなくなるという点が大きな改正ポイントだ。
改正前の特定空き家でも住宅用地の軽減措置をなくす制度は、空き家対策に極めて効果的な実績があった。改正後の空家等対策特別措置法では、住宅用地の軽減措置をなくすタイミングを大幅に前倒しするため、かなり実効性が高まるのではないかと期待される。
では、どの程度の割合の空き家が管理不全空き家に指定されるのかという点が気になるところである。国土交通省では、平成30年度(2018年度)住宅・土地統計調査で「不朽・破損あり」とされた100.6万戸の空き家のうち、市町村が把握している管理不全空き家は53.5万戸あると公表している。つまり、不朽や破損がある空き家のうち、50%以上の空き家が管理不全空き家に指定される可能性があるということだ。改正前の特定空き家に指定されていた空き家はわずか4%程度であったことから、行政のメスが入る空き家は大幅に増えることになる。
空家等対策特別措置法の改正は実質的な増税とも揶揄されるが、それは住宅用地の軽減措置がなくなる可能性のある空き家が大幅に増えるためである。

空家等活用促進区域の創設

改正後の空家等対策特別措置では、空き家の活用の拡大策も講じられている。具体的には空家等活用促進区域が創設され、柔軟な用途変更ができるようになる。
市町村の作成した指針に沿ったものであれば、店舗を建てられない地域でもカフェとして活用できることもある。市街化調整区域内(※)の空き家活用にもメスが入っており、今までどうすることもできなかった空き家も何らかの活用ができる可能性が期待される。
(※)市街化調整区域とは、原則として建物を建てることができない都市農村地域のこと。

緊急代執行制度の創設

特定空き家の除却(取り壊し)に関しては、以前よりも円滑にできるようになる。改正前の制度では、命令から代執行を行うまで、相当の猶予を設ける必要があり、崩落しかけているような空き家を迅速に取り壊すことができなかった。改正後は緊急代執行制度が創設され、命令および相当の猶予を経ずに空き家を強制的に取り壊すことができるようになる。

その他の国土交通省の対策

国土交通省では、空家等対策特別措置法の改正だけでなく、空き家対策総合支援事業として2016年より包括的な支援を行ってきた。空家等対策計画に基づき市町村が実施する空き家の活用・除却にかかる取り組みや、NPOや民間事業者等がモデル性の高い空き家の活用などにかかる調査検討または改修工事等を行う場合に補助金などで支援をしている。
NPOや民間事業者等が行う改修や調査検討等に関しては、国が直接支援している点も特徴だ。補助金は、活用や土地整備に関しては補助率3分の1、除却に関しては5分の2を得られる。補助の対象となっているのは、創意工夫を凝らしたモデル性の高い空き家の改修工事・除却工事等となっている。
空き家対策は2015年あたりから実証を繰り返しつつ徐々に前進しているため、空家等対策特別措置法の改正によって今までの努力がさらに実ることを期待したい。

空き家対策総合支援事業(出典:国土交通省HP)空き家対策総合支援事業(出典:国土交通省HP)