CO2排出量削減の鍵を握る住宅・建築物

今年(2023年)の夏は、記録的な暑さだった。1898年から統計を開始した日本の平均気温偏差(過去30年の平均値との差)は過去最高を記録した。ここまで暑いと、より心配になってくるのが地球温暖化だ。これに対し政府は2030年までに温室効果ガス46%減(2013年比)、2050年までにカーボンニュートラル実現を掲げている。日本においてCO2排出量削減の鍵となっているのが住宅・建築物だ。全排出量の約3分の1を占めている。そのため、今後住宅の省エネ対策の義務付け、段階的な基準引き上げが予定されている。

これに先立ち、2024年4月から「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」がスタートする。同月以降、新築建築物を販売・賃貸する事業者は、その広告等において省エネの表示ラベルを表示しなければならない。これによって消費者は、建築物を購入・賃借する際に省エネ性能の把握や比較が容易になる。政府は、同制度を実施することで消費者の省エネへの関心が高まり、省エネ性能の高い住宅等の供給が促進されることを期待している。そこで具体的にどのような制度なのか、私たち消費者にとってどのようなメリットがあるのかを解説しよう。

住宅・建築物は、日本のCO2排出量の約3分の1を占めている住宅・建築物は、日本のCO2排出量の約3分の1を占めている

「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」の概要

「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」では、売主となる販売事業者、サブリースを含む貸主となる賃貸事業者に、建築物の省エネ性能表示の努力義務が課せられる。不動産広告の広告主となる仲介事業者や、オーナーから入居者募集広告を委託される賃貸管理事業者といった事業者は努力義務対象とはならない。

対象となる建築物は、分譲一戸建て、分譲マンション、賃貸住宅、買取再販住宅、貸し事務所ビル、貸しテナントビルなどのうち、2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物。また、その物件が再販売・再賃貸される場合にも対象となる。2024年3月以前に建築申請を行った物件については、2024年4月以降も表示は任意だ。なお、注文住宅や自社ビルなど販売・賃貸する用途ではない建築物は対象外。

発行されるのは「省エネ性能ラベル」と「エネルギー消費性能の評価書」

建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度では、「省エネ性能ラベル」と「エネルギー消費性能の評価書」の2種類がセットで発行される。それぞれ、内容を見てみよう。

省エネ性能ラベル

「省エネ性能ラベル」とは、ポータルサイトやチラシなどの広告に使用するためのラベル画像のこと。記載される内容は次の項目だ。

・エネルギー消費性能(以下すべて住宅の場合)

国が定める省エネ基準から、どの程度消費エネルギーを削減できるのか星の数で示す。

・断熱性能

「建物からの熱の逃げにくさ」と「建物への日射熱の入りやすさ」の2点から断熱性能を示す。

・目安光熱費

省エネ性能に基づいて算出した電気・ガス等の年間消費量に、全国統一の燃料単価を掛け合わせて算出した1年間の光熱費の目安。

・自己評価/第三者評価

省エネ性能の評価が、販売・賃貸事業者による自己評価か評価機関によるものかを示す(評価機関については後述)。

・建物名称

評価対象が判別できるように物件名を設定する。必要に応じて部屋番号なども掲載する。

・再エネ設備の有無

太陽光発電システムなどの再エネ設備の有無を表示。

・ZEH水準

ZEH水準を達成しているとチェックマークが付く。

・ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)

ZEH水準の達成に加えて、太陽光発電の売電分も含めて年間のエネルギー収支がゼロ以下でチェックマークが付く。

・評価日

評価された日付を示す。

省エネ性能ラベル例。エネルギー消費性能などが一目で分かるように表示される(出典:国土交通省HP)省エネ性能ラベル例。エネルギー消費性能などが一目で分かるように表示される(出典:国土交通省HP)

エネルギー消費性能の評価書

「エネルギー消費性能の評価書」とは、建築物の概要と省エネ性能評価を記した保管用の証明書のこと。記載される内容は次の項目だ。

・建築物の種類

住宅(住棟)、住宅(住戸)、非住宅建築物、複合建築物のどれかを示す。

・自己評価/第三者評価

省エネ性能の評価が、販売・賃貸事業者による自己評価か評価機関によるものかを示す。

・物件概要

建物名称、所在地、地域区分、構造、階数、延べ面積、再エネ設備とその容量を示す。

・評価概要

評価日、評価対象、評価手法、評価者を示す。

・エネルギー消費性能

国が定める省エネ基準から、どの程度消費エネルギーを削減できるのかを示す。

・断熱性能

「建物からの熱の逃げにくさ」と「建物への日射熱の入りやすさ」の2点から断熱性能を示す。

・目安光熱費

省エネ性能に基づいて算出した電気・ガス等の年間消費量に、全国統一の燃料単価を掛け合わせて算出した1年間の光熱費の目安。

・総合判定

省エネ基準と誘導基準(ZEH水準)が達成できているのかを示す。

省エネ性能ラベル例。エネルギー消費性能などが一目で分かるように表示される(出典:国土交通省HP)エネルギー消費性能の評価書例。保管用の証明書で、ラベルより詳しい内容となっている(出典:国土交通省HP)

2つの発行物の発行方法

省エネ性能評価ラベルとエネルギー消費性能の評価書の発行方法は、自己評価と第三者評価の2種類がある。

自己評価

販売・賃貸事業者が自ら、国が指定するWEBプログラミングもしくは仕様基準に沿って、建築物の省エネ性能評価を行うこと。

第三者評価(BELS)

第三者の評価機関に依頼し、省エネ性能を評価すること。既存の第三者評価制度のBELS(ベルズ)を利用すれば、ラベルや評価書にBELSマークを表示することができる。これによって、その評価書は各補助制度の証明書類として活用できるとともに、評価書自体の信頼性が向上すると考えられる。

消費者としてのメリット

建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度によって消費者の省エネへの関心が高まり、省エネ性能が高い住宅が普及すれば、消費者にとって次のようなメリットがある。

光熱費が削減できる

省エネ住宅は、冷暖房効率がいいので光熱費を削減できる。さらに太陽光発電システムを設置すれば、より多くの削減が期待できる。

季節を問わず快適

省エネ住宅の室内は、夏は涼しく、冬は暖かい。季節を問わず快適に過ごすことができる。

体への負担が低減

部屋ごとの温度差が少なくなるので、風邪や熱中症、ヒートショックなどのリスクを低減する。

掃除が楽になる

断熱性能が高い建物は結露が発生しにくくなるため、掃除が楽になる。また、カビやダニの発生も抑制する。

睡眠の質がアップ

快適な室内環境によって、睡眠の質の向上が期待できる。

結露によるカビは、アレルギーの原因にもなる結露によるカビは、アレルギーの原因にもなる

消費者は表示有無の確認が大事

広告等への省エネ性能評価ラベルの表示については、努力義務が課せられている販売・賃貸事業者は、社会的に影響がある悪質な行為を行うと勧告・公表・命令を受けることがあり得る。たとえば、相当数販売しているのに表示していない、表示内容に偽りがある、といった場合だ。しかしながら、基本的には広告等に省エネ性能評価ラベルを表示しなかったといって、すぐに処罰を受けるということは今のところない。

けれども消費者にとって省エネ住宅が普及するメリットは大きい。そのため分譲、賃貸問わず2024年4月以降に新築住宅を探す際は、まず省エネ性能評価ラベルの有無を確認したい。そうすれば事業者の営業姿勢をある程度判断できるし、省エネ住宅の普及にもつながるはずだ。

国土交通省が事業者に向けて公表したガイドラインでは、顧客との商談・契約・引き渡しの際に、評価書を使用して、省エネ性能を説明することが望ましいとされている国土交通省が事業者に向けて公表したガイドラインでは、顧客との商談・契約・引き渡しの際に、評価書を使用して、省エネ性能を説明することが望ましいとされている

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