都市計画とは

名古屋市街地 ※画像素材:PIXTA名古屋市街地 ※画像素材:PIXTA

都市計画を知ることは人生を豊かにする一つの方法だと私は考えている。
一般的に「都市計画」と聞くと、都市のデザインやレイアウトなど、どちらかといえば硬直的な印象を受けやすい。また、まちづくりに関心がある方は、都市の未来像を描いたり、道路や上下水道、公園などの社会資本(インフラ)の整備を行ったりするための手段と認識しているだろう。

これらの認識に間違いはない。

しかしながら、都市計画の持つ役割や意義はそれだけにとどまらない。都市計画と人生設計は、一見縁遠いように思えるかもしれないが、実は密接に関わっている。

例えば、新しい住居を選ぶ際、家賃や職場へのアクセスのほかに、街の雰囲気も重視した経験はないだろうか。この街や都市ごとに異なる雰囲気を形づくる背後には、都市計画に基づく建築の制限や市街地開発の指針、公共施設の配置、自然環境との調和といった要因などが大きく関係している。そのため、都市計画を理解することは、街の将来の姿や、その姿が自身の人生設計とどのように関わるかを知る手がかりとなる。

そして、これらの都市計画を規定するのが都市計画法だ。

都市計画法とは

現代の都市計画法は、主に国土面積の3割のエリアに総人口の9割以上が居住する都市地域(都市計画区域)の土地利用を制限・誘導する。これは、都市の健全な発展を促し、都市に必要な道路や公園、下水、宅地整備などの市街地開発などを行うためのものである。都市計画区域を解説すると長くなってしまうので簡単にいうと「市街地の発展と自然環境の保護のバランスを取るために設定されるエリア」のこと。

ここでいう“健全”とは、例えば、中心市街地の建築物の不燃化による大規模火災の抑制、日照や採光不足の市街地形成の抑制、住宅や危険な工場の混在地の抑止、農地・山林等の保全、自然環境との調和、人口減少下での郊外への市街地の拡大防止などのことである。

都市計画法は、連動する建築基準法や都市再生特別措置法などの各個別法とともに、国内の社会資本整備、市街地整備、市街地の再生、景観・緑地、防災・災害復興などの役割を担う国民の経済活動を支える法律となる。なお補足として、都市計画法と連動した働きをする建築基準法の前身は、市街地建築物法という法律で旧都市計画法と同じく1919 (大正8) 年に制定された。これまでに大きな災害や社会情勢の変化がある度に基準が見直されたこで、地震や台風、積雪等に耐えうる建築物が建築されるようになっている。

次に現代の都市計画法の歴史に触れたい。

国内における都市計画区域内の人口 ※出典:令和4年都市計画現況調査(国土交通省)のデータを加工国内における都市計画区域内の人口 ※出典:令和4年都市計画現況調査(国土交通省)のデータを加工

都市計画の歴史

現代の都市計画制度が整ったのは1968 (昭和43)年となる。
これ以前は東京や大阪などの大都市への人口流入に伴う住宅・保健衛生問題への対応や、近代産業に対応するための工場等の環境整備、さらに戦災に対応するための施設整備(防空)などが盛り込まれた旧都市計画法(大正8年制定)が全国の市などで運用されていた。旧都市計画法は当初、6大都市(東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸)で適用され、その後、順次全国の市に適用されている。

しかしながら、太平洋戦争(第二次世界大戦)後の高度成長による爆発的な人口増加に伴い、無秩序な住宅開発や、大都市への人口流入などによる住環境の悪化などの多くの課題が生じた。こうした都市を取り巻く諸課題に対応するために抜本的な見直しが1968 (昭和43) 年に行われた。

この都市計画法の見直しにより、市街化を抑制する市街化調整区域と市街化を促進する市街化区域が誕生した。これを区域区分(通称=線引き)といい、2004(平成16)年に線引きを廃止した香川県を除く46都道府県の主要な都市圏を構成する市町村で指定されている。

この区域区分によって、郊外での無秩序な乱開発が一定程度抑制され、不経済な市街地拡大の防止や自然環境の保全などに一定の効果があったと言っていい。また、見直しにより開発許可制度が導入され、1,000m2以上の宅地の整備(三大都市圏では500m2)をする際には開発区域内の道路や緑地、排水処理、擁壁の安全性確保をはじめとする技術基準への適合性の審査・検査制度が実施されることになり、質の高い宅地が整備されるようになった。

次に具体的な都市計画の役割に簡単に触れたい。

日本全体及び首都圏の人口の推移 ※出典:令和4年版首都圏白書(国土交通省)のデータを加工日本全体及び首都圏の人口の推移 ※出典:令和4年版首都圏白書(国土交通省)のデータを加工

都市計画の具体的な役割

つくば駅前 ※画像素材:PIXTAつくば駅前 ※画像素材:PIXTA

都市計画の具体的な役割として、都市ごとの特徴や住民の意向などに合わせて建築のルール化や公共施設の配置、農林業との調和を図るなどがある。詳細は専門的な用語に基づく解説が必要となるためここでは割愛する。ここでは都市計画をイメージしやすいよう簡単に役割を解説する。

例えば、城下町としての歴史を持つ都市の旧市街地では狭隘な道路が複雑に形成されており、これにより、高層の建築物や大型の商業施設の構築が困難となることから防災性の面での課題も生じることがある。しかしながら、そのような趣ある市街地が持つ景観や歴史的価値は、街の魅力を向上させることで経済的利益をもたらすこともある。鎌倉や京都はその典型例で、歴史的な街並みの保全と新しい市街地開発のバランスを取るための柔軟な都市計画(市街地再開発や景観形成など)が行われている。

一方で、新しく都市開発が進められる地域、例として、つくばエクスプレス線沿線では、過去の歴史的な都市形成の成り立ちに縛られることなく、計画的な市街地の形成が可能となるため、東京圏の増え続ける人口の受け皿となっている。

また、具体例として、都市計画には、建築物の形態や用途を誘導・制限するための「用途地域」や、建築物の不燃・耐火性を強化する「防火・準防火地域」、用途地域を補完する「特別用途地区」といったものがある。このうち用途地域は、特定の地域における建物の利用形態を定める役割を持ち13種類が存在する。例えば、「第一種低層住居専用地域」では、用途地域を厳しくすることで高さ10m以下の低層住宅や関連施設以外の建築を排除し閑静な住宅街地の形成を図る機能を有している。

仮に、住宅街において中大規模の工場の立地も可能な工業地域が指定されている場合、工業地域と知らずに土地を購入すれば、後から工場や倉庫の建設により住環境が悪化する可能性がある。このことは日常生活に大きな影響を及ぼす可能性がある。一見このようなことは起こりえないと考えがちだが、地域によっては住宅地と工業地の需給バランスによって工業地域が住宅地化されている例がよくある。しかしながら、都市計画の情報を事前に把握していれば、このようなリスクを回避することも可能となる。

次にこうした役割を担う都市計画の必要性を簡単に解説したい。

都市計画の必要性

昭和48年の東京上空 ※画像素材:PIXTA昭和48年の東京上空 ※画像素材:PIXTA

なぜ都市計画が必要になるかというと、都市計画が社会の諸課題の解決を図れることにある。

少し昔の話だが、退職間近の先輩から聞いた話として、その先輩が上京した当時、高度成長を続けるかつての東京の第一印象は「極めて臭い」ものだったらしい。街中には排気ガスが立ち込め生活排水により都市が汚染されていた。特に東京湾では赤潮等により悪臭が発生し、今でこそ人気の江戸前寿司を食べる気にはなれなかったらしい。

このような状況は、急激な都市化や人口の集中に対して、適切な都市インフラの整備が追いつかなかったことが背景にある。
戦後の高度経済成長においては、都市環境の質は犠牲にされることが多く、結果として無秩序で劣悪な宅地開発が全国で進行した。その影響で、都市の一部のエリアでは健全な発展を遂げることができず、課題を抱えた都市環境が形成された。

このような課題を解決する手段として、計画的かつ段階的な都市開発の実施が必要不可欠であるとして現代の都市計画制度に見直しが行われた経緯がある。現代では過去の都市課題への対処はほぼ解決しつつあるが、現代では新たな課題が生じている。それは、地方における人口減少とこれに伴う人口密度の低下である。

郊外への市街地拡大と人口減少による市街地の人口密度低下に伴い、今後、社会資本(インフラ)維持が困難となることが予想されている。こうした課題への対策として、2016年に「立地適正化計画制度」が導入され、緩やかに市街地の範囲を縮小して人口密度を確保するコンパクトシティの形成が推進されている。国によると2023(令和5)年3月末現在で全国675都市で取り組まれている。今後の地方都市の発展の方向性を示す重要な手段になるので次回以降で機会があれば詳しく解説したい。

最後に、よくある都市計画に対する誤解として、まちづくりとの違いを簡単に解説する。

都市計画とまちづくりの違い

画像はイメージ ※画像素材:PIXTA画像はイメージ ※画像素材:PIXTA

都市計画は、都市ごとに掲げたまちづくりの目標や方針を実現するための手段の一つとして使用される。ここでの「まちづくりの目標や方針」とは、自治体ごとに策定している中長期の土地利用のあり方を示す「都市計画マスタープラン(都市計画法第18条の2)」や「立地適正化計画(都市再生特別措置法第81条)」を指す。

都市計画には、用途地域による土地利用方法のコントロール、道路や公園などの都市施設の整備、区画整理や再開発といった市街地再生整備が含まれる。さらに、各都市では、建築物の密集地での大規模な火災を防ぐための防火地域の指定、景観地区指定による景観誘導、駅前での市街地再開発などが実施されており、さまざまなツールや法令と連携して、計画的かつ段階的にまちづくりの目標を実現していく。

一方、まちづくりとは、地域住民や団体、自治体、企業などが連携して、より良い都市環境や地域社会を創造するための総合的な活動の総称であり、都市計画とは性質が異なる上に都市計画を包含するものである。つまり、都市計画は、まちづくりを実現するための重要な役割を果たす手段である。

今回紹介した「都市計画」は、都市計画の役割の一部に過ぎないが、根本にあるのは都市の持続的な開発を通じて人々の生活を豊かにすることにある。また、同時に皆さんが住むまたはこれから住む予定の街や都市を形づくっていくものであり、都市計画を知り将来を予見することは日常生活をより豊かにする鍵となる。

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