香川の小中学生は自己肯定感が低い!?

丸亀町商店街から讃岐おもちゃ美術館の方向を見ると美術館とは反対側、道路の左側に子育て支援の場、わははひろばがある丸亀町商店街から讃岐おもちゃ美術館の方向を見ると美術館とは反対側、道路の左側に子育て支援の場、わははひろばがある

香川県高松市といえば大胆な再開発で高松丸亀町商店街が有名だ。その丸亀町商店街が新たに建てた丸亀町くるりん駐車場の1階に2022年4月、讃岐おもちゃ美術館がオープンした。運営しているのは1998年に創業した子育て支援団体、認定NPO法人わははネット(設立当初は子育てサークル輪母ネット)。

同団体は香川県内で地域子育て支援拠点を4拠点運営し、子育て情報誌おやこDEわはは(隔月。毎号2万5,000部発行)を発行するほか、香川県や高松市から子育て人材育成事業や働き方改革事業などを受託。さまざまな表彰も受けてきた団体である。

ただ、これまでベースとなってきたのは子育て支援、まちづくりや女性活躍というテーマが多く、おもちゃという言葉から子どもに関連がある事業であることは分かるものの、いささか毛色が違うような印象も受ける。

「長らく乳幼児を中心に活動してきたのですが、それだけではいけないと思った出来事がありました。2017年に行われた文部科学省の全国学力テストで香川県の小中学生の自己肯定率が全国ワースト1位だったのです。なぜでしょうと聞かれて絶句しました。息子が高校から大学に進学するタイミングで、彼にも香川の自慢できるところは? と聞いたのですが、上がってきたのはうどんくらい。瀬戸内海の美、風光明媚な風土に災害の少ない安全さ、ものづくりの盛んな土地柄、さまざまに誇れるものがあるのに、子どもたちには伝わっていない。そこでまずはふるさとを誇りに思ってもらい、さらに多世代と触れ合ったり、経験を重ねることで豊かな成長につなげ、自分への自信をつけてほしい。そんな思いから構想がスタートしました」とわははネット理事長の中橋恵美子さん。

丸亀町商店街から讃岐おもちゃ美術館の方向を見ると美術館とは反対側、道路の左側に子育て支援の場、わははひろばがあるわははねっとの中橋恵美子さん。朗らかな笑顔で楽しそうにひとつひとつ説明くださった

香川県はものづくりの盛んな土地柄

ヒントとなったのは東京の四谷にあるおもちゃ美術館。ここには日本の伝統的な木のおもちゃなどがそろえられており、実際に触って遊べるようになっている。館長の多田千尋さんとは以前から付き合いがあり、同じコンセプトで香川の工芸技術や伝統品をそろえた讃岐おもちゃ美術館を作ろうと考えたのである。

香川県ではものづくりが盛んで香川漆器や庵治(あじ)産地石製品、張子の虎、讃岐桶樽、讃岐かがり手まりなど、さまざまなジャンルの37品目が香川県伝統工芸品に指定されており、令和3年度末で126人が香川県伝統工芸士に認定されている。

「香川は県としては小さく、だから単に木を売るだけでなく加工が必要だったのではないか、あるいは水軍がいて船や神社を造る伝統があったからではないかなど諸説あるようですが、なぜ、ここまで伝統的工芸品が多いのかは分かっていません。ただ、せっかく多数あっても触ってはいけないもの、高いものという印象があるので、おもちゃ美術館ではそうしたものに気軽に触れるようにしようと思いました」

讃岐おもちゃ美術館入り口。右側のゲートは組手(くで)障子の技術を使って作られたもの。背後のうろこ壁は高松、丸亀それぞれの姉妹都市である秋田県由利本荘市の木工所が作ったもの讃岐おもちゃ美術館入り口。右側のゲートは組手(くで)障子の技術を使って作られたもの。背後のうろこ壁は高松、丸亀それぞれの姉妹都市である秋田県由利本荘市の木工所が作ったもの
讃岐おもちゃ美術館入り口。右側のゲートは組手(くで)障子の技術を使って作られたもの。背後のうろこ壁は高松、丸亀それぞれの姉妹都市である秋田県由利本荘市の木工所が作ったもの入り口天井などに吊るされていた讃岐折提灯はかつてお遍路さんが自作していたものを地元の提灯店に習い、スタッフが手作りした
墓石として最高級品という庵治石を使って作られたゆりかご。庵治石は入り口の手洗いにも使われている墓石として最高級品という庵治石を使って作られたゆりかご。庵治石は入り口の手洗いにも使われている

場所については丸亀町商店街がちょうど駐車場ビルを造るタイミングで、同商店街とは子育て支援施設をつくって以来20年近い付き合いがあった。そこで1階の1100m2を使えばいいと声がかかった。中橋さんが聞いたところによると、商売をしたい人は多数来るだろうが、商売ではない人に入ってもらいたいという声があったのだとか。

丸亀町商店街では初期に建築されたマンションがシニア向けということで住民の年齢が高いが、それだけではバランスが悪い。ここにベビーカーのファミリーが入ってくることはまち全体のためにもプラスになるはず。

ただ、問題はこれまでとは桁違いの広さ、事業費が必要だという点。これまでは無借金で運営してきたものの、この規模となると資金集め、融資も必要になる。

讃岐おもちゃ美術館入り口。右側のゲートは組手(くで)障子の技術を使って作られたもの。背後のうろこ壁は高松、丸亀それぞれの姉妹都市である秋田県由利本荘市の木工所が作ったもの美術館入り口の讃岐提灯。世界の名工の称号を持つ高松市内の提灯店さんが手がけた。美しい

25年の積み重ねが幅広い支援につながった

だが、地元の人たちが応援してくれた。クラウドファンディングを実施、かつての利用者、地元企業から協力があり、500万円の目標に対して1,400万円あまりが集まった。最終的には4000万円の融資を受けることになったが、今も地元からの応援は続いており、美術館を支え続けてくれている。

それが可能になったのはこの25年間の活動の蓄積。

中橋さんが事業を始めたのはちょうど少子化が言われ始めたタイミング。他に先駆けての活動であり、香川県は他自治体に比べて規模の小さい自治体ということもあって先行事例として取り上げられることも多かった。子育て、福祉だけでなく、早くから働き方にアプローチ、企業と付き合ってきた点も大きかった。

「お父さんたちが早く帰れるようになれば、子育ても少しは楽になると企業には初期から働きかけてきました。自主事業で言いやすい立場でしたから、企業には耳に痛いことも言いましたが、それが逆に信用を得ることにもつながりました。子育て広場など、行政からの委託事業だけをやっていたら、そうした付き合いをすることもなかったでしょう」

寄付の依頼で企業を回ると「あなたに預けます、手伝わせてくれてありがとう」という言葉も出たとか。時間をかけて積み上げてきた信頼は大きい。

美術館入り口にはクラウドファンディング、寄付などで美術館設立に協力して人たちの名前、社名が掲げられている。左の赤い灯台は高松港にある世界初のガラスの灯台、通称せとしるべを模した形になっている美術館入り口にはクラウドファンディング、寄付などで美術館設立に協力して人たちの名前、社名が掲げられている。左の赤い灯台は高松港にある世界初のガラスの灯台、通称せとしるべを模した形になっている

それにそもそも「一番汗をかき、一番身銭を切ってきたのが誰かはみんな知っています」と中橋さん。わははネットを大きくしたい、自分が偉くなりたいではなく、子どもたちの未来を、みんなの幸せをと中橋さんが掲げる目標は明確で私欲がない。

特に今回は中橋さん自身が職人の働く現場に足を運んで、そこで得た感動を子どもたちに伝えたいという想いも強かった。このプロジェクトが動きだすまで職人の世界にさほど関心があったわけではなく、あちこちで何が素晴らしいか、何を紹介すべきかを聞いて各種のものづくりの現場を訪ねたそうだが、そこには涙が出るほどの感動があった。

「どの現場もきれいに片づけられており、そこで職人さんが黙々と鉋(かんな)をかけている。シャーッという軽やかな音、途端にふわっと漂う木の香り。五感で感じたものを子どもたちに伝えなければと思いました」

職人さんの多くは寡黙で、外に向けて自分たちの仕事をアピールすることは得意ではない。それはつらい思いをしているお母さんたちも同じで、なかなか助けを求める声を出せない。だが、と中橋さんは言う。

「私は物事を伝えるのが得意だし、情報を拡散させることもできる。物を作ること、相談を聞くこともできないけれど、旗振り役として彼らに代わって喋ることができます」

香川の山林の豊かさを実感できる館内

古文書を張った張子の虎。現代の紙ではそれほど強いものにはならないそうで、時代によって紙の強度も違うものらしい古文書を張った張子の虎。現代の紙ではそれほど強いものにはならないそうで、時代によって紙の強度も違うものらしい

資金を集め、展示するものを多くの地元の職人さんたちに作ってもらい、全国で9館目としてオープンした讃岐おもちゃ美術館だが、他のおもちゃ美術館と違うのは街中のアプローチしやすいところにある、完全に民間の施設であること。商店街からすぐそこにエントランスが見えているのである。

では、実際の美術館内を見せていただこう。入ったところには組手障子の技術を利用したゲートがあり、その中には張子の虎。土産物品でも見かける香川の伝統工芸品だが、うち1体は江戸時代の古文書仕立て。昔の紙で作ると40キロほどの子どもが乗っても平気とのことで、あえて1体をこうしたのだという。

香川のブランド石・庵治石や讃岐装飾瓦の敷かれた通路を通って中へ入ると、まずはカフェとショップがあり、ここまでは無料で入れる。さまざまな工芸品が売られているので、街中の土産物店では満足できないという人は足を運んでみてほしい。

その奥に美術館のエントランスがあり、ここからは靴を脱いで入る。入館料は中学生以上の大人が900円、生後6ヶ月から小学生までが700円。平日半年のパスポートもあり、生後6ヶ月未満の子ども、障がい者手帳を持っている人は本人のみ無料だ。

古文書を張った張子の虎。現代の紙ではそれほど強いものにはならないそうで、時代によって紙の強度も違うものらしい左上/入ったところのカフェではお茶のほかランチ営業なども行われている。床に見えているのが庵治石。右上/讃岐装飾瓦。中央右手にあるおむすびが2つあるような模様は美術館のシンボル。右下/美術館入り口脇の展示スペース。取材直前に開かれていたG7の国際会議にちなみ、参加国のおもちゃが展示されていた。左下/地元の工芸品などを扱うショップ

入って左側にあるのが赤ちゃん木育ひろば。ここはゼロ歳から2歳児までの子どもがねんね、はいはい、よちよちして親子で遊べる場所で、このエリアのみ県産の杉が使われている。厚さは3センチ以上。やわらかく空気を含んでいるのが特徴で、子どもの肌にも優しい。歩いていて寝っ転がりたくなったのはナイショとしておこう。その他エリアの床は檜だ。

入った正面にはまんのう町の国有林から切り出してきたという樹齢58年というヒノキのシンボルツリーがそびえる。農林中央金庫高松支店からの寄付だそうで、周辺に置かれたアールのテーブルは塩江町産のやはりヒノキである。

シンボルツリーの左側には東かがわ市五名の森から切り出してきたという広葉樹。香川県ではヒノキが中心に育てられているものの、山々にはさまざまな雑木もあり、ここでは19の樹種、38本が立ち並んでいる。

「地元の林業家さんに雑木をお願いしますと言ったところ、雑木という木はないんですよと言われ、届いた木には1本ずつ樹種が書かれていました。そこで、展示の際にも樹種を明記、木1本にも違いがあり、多様です。ここでは木に穴を開けてそこに木のボールで作った虫を入れ、磁石でひょいっと摘まみ出して遊びます。また、月に1回、大人たちが瞑想をしに美術館に集まるのですが、その時には木を背に座ると実に落ち着きます」

古文書を張った張子の虎。現代の紙ではそれほど強いものにはならないそうで、時代によって紙の強度も違うものらしい赤ちゃんがはいはいしたり、よちよちして遊べるエリア。中央に見えているのは讃岐富士と呼ばれる飯野山
古文書を張った張子の虎。現代の紙ではそれほど強いものにはならないそうで、時代によって紙の強度も違うものらしい左上/シンボルツリー。右上/「雑木」のあるコーナー。右下/1本ずつ名称が記されており、意識してみるとそれぞれの木の違いが分かる。左下/赤井ちゃん木育ひろばにはこんなかわいいやつらも

職人が本気を出して作った品々

漆の滑り台。漆製品というと大事にしまわれていることが多いが、ここでは触り放題、滑り放題。そうやって使うことで塗り重ねた漆が模様となって現れる漆の滑り台。漆製品というと大事にしまわれていることが多いが、ここでは触り放題、滑り放題。そうやって使うことで塗り重ねた漆が模様となって現れる

さらに進むと漆(!)で作られた滑り台やヒノキの卵がたっぷり入ったプール、小さな大師堂などさまざまなものがあり、なかにはうどん王国らしく、木で作ったうどん玉をてぼ(長い柄のついた細長いざる)で湯がく体験ができるコーナーも。

見学させていただいて驚いたのはどれも本物、きちんと作られているという点だ。たとえば漆の滑り台は香川県漆芸研究所の協力で誕生した世界にひとつだけの品。子どもが滑れば滑るほど表面が削られ、時間がたつと15層にも塗り重ねた5色の色漆が現れ、誰も見たことのない柄が出てくることになっているのだとか。それまでに何年かかるか分からないが、よいものを作るのは時間に関係のない作業ということだろう。

漆の滑り台。漆製品というと大事にしまわれていることが多いが、ここでは触り放題、滑り放題。そうやって使うことで塗り重ねた漆が模様となって現れる左上/ひのきでできた卵のプール。その中にいくつかオリーブ、そら豆も交じっているそうで、それを探して遊ぶのも楽しい。右上/醤油造りなどに使われてきた木桶を茶室にした桶庵。右下/ごっこうどん屋。ひのきで作られたうどんやてんぷらでうどん屋さんごっこが楽しめる。左下/てまりドーム。中央に手まりで作った盆栽、ドームにはたくさんの手まりもぶら下がっている
サイズは小さくてもプロの技が隅々まで生きたこども大師堂サイズは小さくてもプロの技が隅々まで生きたこども大師堂

あるいは小さな大師堂。仁尾町の株式会社菅組の宮大工さんが作ったもので、本物の10分の1サイズとなっており、反り屋根、垂木、裏甲、茅負など宮大工の技術の粋が凝らされていて、見れば見るほどこだわりを感じる。単なるミニチュアではなく、サイズにかかわらず、魂のこもった作品になっているのである。

技術のある人間からすればその技術をフルに出せること、それを求められるのは楽しい仕事だ。だが、今、職人さんにそこまでの要求をする依頼主は少なく、逆に予算に合わせてこのくらいでいいよというような仕事も多い。

ところが、おもちゃ美術館に関わった職人さんたちは全員、本気を出して取り組んだ。子ども相手だから手を抜こうではなく、子ども相手だからこそ本物を見せよう。それは子どもたち、あるいは孫たちに自分の仕事を見せたい、残したいという気持ちではないだろうか。実際、完成後、家族を連れて見に来る職人さんも多いそうである。

漆の滑り台。漆製品というと大事にしまわれていることが多いが、ここでは触り放題、滑り放題。そうやって使うことで塗り重ねた漆が模様となって現れる古式の、普通は床に敷くものではない置き畳。手縫いだそうで、こちらも小さくても本物

おもちゃ学芸員さんという大きな存在

けん玉が置かれたコーナー。けん玉や独楽など単純だが奥が深い遊具に子どもたちは夢中になるようだけん玉が置かれたコーナー。けん玉や独楽など単純だが奥が深い遊具に子どもたちは夢中になるようだ

もうひとつ、おもちゃ美術館で大事な存在はボランティアとして関わるおもちゃ学芸員さんたちだ。訪れる人たちとコミュニケーションをしながら遊ぶという役割を担っており、現在は100人以上が研修を受けて参加している。大学生からシニアまで年代は幅広く、男女は半々くらい。子ども好き、木好き、工芸好きと関わる理由は人それぞれで、平日は午前、午後で3人くらいずつ、休日にはそれぞれ5人くらいが待機している。

「美術館ですから、配置、物は美しくと考え、走るな、危険などといった注意書きはもちろん、説明書きなどの貼りものはありません。子ども子どもしたものがないので大人、男性でも居心地がいいはずですが、最初は遊び方が分からないということも。そこで大事なのが赤いエプロンをしたおもちゃ学芸員さん。置かれているものの由来、遊び方を説明、遊べるようにするのが役目。けん玉の仕方を教えると子どもたちは一生懸命にやってみて、できるようになると教えてくれた学芸員さんに報告。そこで褒められてうれしそうに笑う場面をよく見かけます。親御さんはうちの子が電池の入っていないおもちゃで根気よく遊ぶなんてと驚かれますが、できないならできるようにしたい、できて褒められたらうれしい。感謝される学芸員さんもうれしい。ここでは遊んで幸せな経験ができます」

けん玉が置かれたコーナー。けん玉や独楽など単純だが奥が深い遊具に子どもたちは夢中になるようだおもちゃ学芸員さん集合! さまざまな年代、性別の人たちがボランティアとして参加している

これは子どもに限らない。車椅子で家族とともに不機嫌そうな顔で来館したおじいさんは独楽回しの妙技に周囲から感嘆の声を寄せられれば立ち上がってさらに技を見せてくれるし、おばあさんのお手玉もしばしば絶賛される。

高齢者だけでなく、子どもの付き添いで来たはずのお父さんが大人げなく、子どもを放置して積み木に夢中になっている姿もあるそうで、遊びにはさまざまな年代に向けて不思議な作用があるようだ。

けん玉が置かれたコーナー。けん玉や独楽など単純だが奥が深い遊具に子どもたちは夢中になるようだ館内には本文で紹介できなかったコーナーも多数ある。左上/木のおもちゃの手作り体験ができるいとのこや。右上/積み木コーナー。国産材を中心とした各種の積み木がそろう。右下/賞をもらったおもちゃをそろえたグッド・トイのコーナー。左下/ボードゲームが集められているコーナー

利用しにくい人たちにも開かれた場に

館内にある木工スペース・いとのこやを使ってのものづくりその他のイベントも開催されている館内にある木工スペース・いとのこやを使ってのものづくりその他のイベントも開催されている

開業から約1年。これまでの来場者は約4万5,000人。平日には近隣の1歳くらいまでの子どもを連れたファミリーが多く、それ以外に来館者が多いエリアとしては四国、岡山、広島、関西あたり。9割以上は親子連れだが、時にはおじいちゃんたちと親子、1人の赤ちゃんに何人もの大人ということも。

土日には外国人も含め、観光客の来館も多い。ヨーロッパの人は工芸品に関心が強く、アジアの人はお手玉やけん玉など類似の遊びがあるようで、懐かしいと言われることが多いと中橋さん。

「本当は初年度に5万5,000人を目指しており、まだまだ知ってもらえていないと思っています。特に平日は来館が少なく、近隣の大人も来ていません。おもちゃと聞くと子どものものと思ってしまうからでしょうが、来ていただければボードゲームそのほか、大人も楽しめる遊びが多数あることが伝えられると思います」

また、料金がかかることなどもあって遊びに行きにくいと感じている人たちにも来てもらいやすい場にしていきたいというのもこれからのテーマ。

「在宅療養する子どもたちの家族会に無償で貸し切り利用していただいたことがありますが、泣かんばかりに喜んでいただきました。家族にとって子どもは常にケアの対象。遊びを考えたことがなかったけれど、ここへ来て子どもが本当に楽しそうにしていたというのです。また、普段は遊びに連れて行ってもらいにくいきょうだい児(病気や障害のある子の兄弟姉妹)の子たちも喜んでいました。最初はどう接すれば良いのか戸惑っていたスタッフも、経験を重ねれば他の子どもたち同様に接することができるはず。勉強させてもらおうと思っています」

夏休みにはひとり親世帯の交流会などが予定されており、今後もさまざまな子どもたちの遊びの場として使われていくことを考えているという。

個人的には取材で訪れたため、自分自身が遊べなかったのが残念で仕方ない。私がメモを取っている前で中橋さんがカタカタと動かしていた遊具は一体、なんで動いていたのだろう、ヒノキの卵のプールに足を突っ込んだらどんな感じがするのだろう……。遊びは好奇心、五感を刺激するもの。子どもにも、大人にも必要、そんなことを思った。

というわけで、高松を訪れたら子どもの有無に限らず、ぜひ。職人さん、木や伝統工芸に関心のある人やこの頃、面白いことがないという人にもお勧めしたい。

讃岐おもちゃ美術館
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