急務となっている都市鉄道ネットワークの構築
やっとコロナ禍の収束が見えてきた昨今、再度訪日外国人の増加や各国の都市間のさまざまな競争が激化していくだろう。そのような状況下で急務となっているのが、東京圏(都心部から概ね半径50㎞の範囲)の都市鉄道ネットワークの構築だ。同地域内の空港アクセスの改善、列車遅延への対応、外国人の利便性向上などが求められている。
都市鉄道ネットワークの方向性は、国土交通省内に設置された交通政策審議会において検討が続いている。2016年に同審議会が答申した交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」で、意義あるプロジェクトのひとつとして挙げられているのが「埼玉高速鉄道線の延伸(浦和美園~岩槻~蓮田)」だ。同区間が位置するさいたま市では、浦和美園から岩槻までを先行整備区間として、新たに埼玉スタジアム駅(臨時駅)および中間駅の設置を検討。さらに2023年3月には「地下鉄7号線中間駅まちづくり方針」を策定している。埼玉高速鉄道線(地下鉄7号線)の延伸に伴い、どのようなまちづくりが検討されているのだろうか。
岩槻駅から都心への電車移動の多くが乗り換え不要に
まちづくりの前に、まず埼玉高速鉄道線延伸のメリットを確認しておこう。もっとも大きなメリットは「速達性の向上」、つまり目的地到達に要する時間が短縮できることだ。例えば岩槻駅を利用して都内へ行こうとする場合、多くは大宮駅などのターミナル駅を経由しなければならない。それが埼玉高速鉄道線の延伸によって乗り換えの回数が大幅に減り、次のように乗車時間を短縮できる。
後楽園駅まで、現状約1時間6分が約44分に(約22分の短縮)
飯田橋駅まで、現状約1時間9分が約47分に(約22分の短縮)
六本木一丁目駅まで、現状約1時間21分が約57分に(約24分の短縮)
麻布十番駅まで、現状約1時間23分が約60分に(約23分の短縮)
まちづくり方針には4つのテーマが掲げられている
中間駅周辺は、浦和美園地区と岩槻地区の2つの副都心の中間に位置し、緑豊かな市街地の空白エリアとなっている。西側に国道122号と東北自動車道が通っており、岩槻ICまでは約3.5kmと自動車移動での利便性は高い。また、目白大学さいたま岩槻キャンパスがあり、順天堂大学医学部付属病院の建設も予定されている。
このように発展の可能性を秘めた地域におけるまちづくり方針には、4つのテーマが掲げられている。
テーマ① ニューノーマルに相応しい多様性に対応した職住遊学を実現するまち
新型コロナウイルスの流行により、リモートワークが普及し、職住遊学の境界線が緩やかになった。そこでフレキシブルな働き方に対応したゆとりある住環境を創出する、といったことが検討されている。
テーマ② 楽しむオープンスペースにより、人々がつながるまち
緑豊かな自然環境を活かし、歩行者を中心とした新たなコミュニティやにぎわいを創出する。例えばスマートな交通網と心地よいオープンスペースなどによって歩くのが楽しくなる雰囲気づくりを推進する。
それぞれの地域特性を活かした持続成長を目指す
テーマ③ 自然と先端技術が融合した持続可能なまち
浦和美園地区では、過去に自動運転EVバスの実証実験を行っている。さいたま市の担当者によると、中間駅周辺でも、このような先端技術や新しいエネルギーシステムの導入などによって、持続可能なまちづくりを進めるという。また、医療系の大学などがある地域性を活かし、産学公民の連携による健康維持などの社会施策に取り組む。
テーマ④ 地域内外のつながりにより成長し続けるまち
浦和美園地区が自動運転EVバスの実証実験の実施など最先端技術を取り入れることに積極的な一方、岩槻地区は、かつて城下町として栄えたことから、ひな人形など古き良き文化を今に伝えている。前出の担当者によると、まちづくりでは、これらの地域特性を活かした持続成長を目指すという。
最大のネックは採算性
このように人にも環境にもやさしいまちづくり方針だが、実現への道のりは少々遠そうだ。その大きなネックとなっているのが、延伸線の採算性の確保。そもそも鉄道の延伸が実現しなければ、まちづくりも実現できない。延伸を確定させるには、まず採算性を確保しなければならない。人口減の時代に突入した日本においてこれは、どの延伸計画においても深刻な課題といえる。そのため現在鉄道事業者は、採算性の向上を図るための調査を行っている最中だ。同時にさいたま市では、今年度(2023年度)中に鉄道事業者が国土交通省に事業の申請をできることを目指して取組みを行っているという。各方面で検討を重ね、最善の方法でのまちづくりを実現してほしい。
公開日:






