新湾岸道路構想とは

新湾岸道路の早期実現を目指し、千葉県と沿線の千葉市、市川市、船橋市、習志野市、市原市、浦安市は「新湾岸道路整備促進期成同盟会」を設立新湾岸道路の早期実現を目指し、千葉県と沿線の千葉市、市川市、船橋市、習志野市、市原市、浦安市は「新湾岸道路整備促進期成同盟会」を設立

2023年5月26日、千葉県および千葉市、市川市、船橋市、習志野市、市原市、浦安市の7県市で構成する「新湾岸道路整備促進期成同盟会」が設立された。新湾岸道路整備促進期成同盟会は、2023年5月30日に国土交通省に対し新湾岸道路の整備促進に関する要望書を提出している。新湾岸道路のルートは未定であるが、千葉県の市川市から市原市までの東京湾沿いを通る構想だ。

具体的には、高谷ジャンクション周辺から蘇我インターチェンジ周辺ならびに市原インターチェンジ周辺までの湾岸部に多車線の自動車専用道路を通す要望がなされている。千葉市周辺部に土地勘のある人であれば、ルートを知るとかなり歓迎すべき構想と感じる方も多いと思われる。理由としては、千葉市内における湾岸エリアの高速道路事情はかなり悩ましい構造になっているからだ。現在、東京方面から湾岸エリアの高速道路を通って市原市や木更津市方面に向かおうとすると、千葉市の通過がかなりのネックとなる。

湾岸エリアは東京方面からは首都高速湾岸線を通り、高谷ジャンクションで東関東自動車道に接続し、千葉市の幕張メッセ周辺にある湾岸習志野インターチェンジまでは海沿いをスムーズに走れるルートになっている。ところが、湾岸習志野インターチェンジまで来るとそのまま海沿いを走って最短距離で市原市や木更津市方面に行けるわけではない。東関東自動車道は成田空港に向かう高速道路であるため、高速道路は湾岸習志野(または湾岸千葉)インターチェンジから内陸部に向かって大きく蛇行するルートとなっている。千葉市の中心市街地周辺の湾岸部には高速道路が通っておらず、一旦内陸部を通過している京葉道路を経由して再び東京湾沿いの館山自動車道に接続している。

つまり、東京湾沿いの高速道路は、千葉市の中心市街地を避けるような形で海沿いのルートが一旦途切れており、不便な構造となっているのだ。新湾岸道路のルートは未定であるものの、東京から市原・木更津方面へ東京湾沿いを一直線に通過する経路が想定されており、実現すれば極めて便利な自動車専用道路になるものと思われる。

事実上凍結した「第二東京湾岸道路」計画

東京湾沿いの高速道路が千葉市で内陸部に蛇行してしまうルートは長年の課題であり、新湾岸道路の構想は突如として現れたわけではない。実は同様の構想が以前から存在し、「第二東京湾岸道路」という名称で検討されてきた経緯がある。第二東京湾岸道路は1990年代に本格的な検討がなされていたが、2001年には事実上凍結した経緯がある。

凍結した理由は、2001年に当時計画されていた三番瀬の埋め立て計画が白紙撤回されたためだ。三番瀬とは、千葉県の浦安市と市川市、船橋市、習志野市の4市にまたがる干潟のことである。約1,800ヘクタールの干潟であり、多くの水鳥が飛来し、潮干狩りもできる浜辺となっている。

第二東京湾岸道路は、三番瀬を埋め立ててその上を通過する計画であったため、三番瀬保護団体や住民等の反対もあり実現に至らなかった。当時の千葉県知事であった堂本暁子知事は、三番瀬の埋立ての白紙撤回を公約としていたことから、2001年の初当選後に公約通り埋立てを中止している。ただし、今回の新湾岸道路は、第二東京湾岸道路と類似の構想ではあるものの、三番瀬を残すという点が大きく異なる。

2006年12月(堂本知事時代)に千葉県では「千葉県三番瀬再生計画」を策定しており、現在の千葉県では三番瀬の自然環境の再生と保全を目指した取り組みを継続している。7県市からなる新湾岸道路整備促進期成同盟会が国土交通省に要望した内容は、あくまでも千葉県三番瀬再生計画との整合性を図るものであり、かつての第二東京湾岸道路とは異なるのだ。

ふなばし三番瀬海浜公園ふなばし三番瀬海浜公園

渋滞の状況

新湾岸道路構想は、千葉県の湾岸エリアおける慢性的な交通渋滞の解消が目的だ。湾岸エリアで特に渋滞が深刻なのは、「船橋市~千葉市美浜区」間と「千葉市中央区」の2ヶ所となっている。湾岸エリアには国道357号線と国道14号線の2つが通っているが、これらの国道が特に混んでいる。
「船橋市~千葉市美浜区」間に渋滞が多く発生している理由は、船橋市や市川市の湾岸エリアに大型物流倉庫が多く集積していることの影響が大きい。

船橋市や市川市の倉庫群は、成田空港と東京都の中継地点に位置し、広い土地も有することから物流適地となっている。成田空港は輸入額では国内最大の貿易港となっており、多くの商品が輸入されている。
船橋市や市川市は大消費地の東京に近く、成田空港からの物資を運び込みやすいため、物流の一大拠点となっているのだ。そのため、船橋市や習志野市周辺では、貨物輸送のための大型車の混入率が千葉県内平均よりも高い。

また、「千葉市中央区」の湾岸エリアに関しては、高速道路がないことと中心市街地への車の流入者量が多いことから、慢性的な混雑が発生している。千葉市の湾岸エリアは、湾岸習志野(または湾岸千葉)インターチェンジから蘇我インターチェンジまでの間が高速道路の空白地帯となっており、空白地帯を直線的につなぐ国道357号・14号線に車両が集中している。

特に国道357号腺の下り方面において千葉西警察入口交差点と稲毛浅間神社前交差点の間は、かねてから慢性的な渋滞が問題視されている。稲毛浅間神社前交差点は、湾岸エリアから内陸部にある京葉道路の穴川インターチェンジに向かう分岐点であり、反対車線からの右折等も多く、渋滞が発生しやすい場所となっている。

千葉西警察入口交差点と稲毛浅間神社前交差点の間は特に渋滞がひどいことから、国と千葉市では国道の一部を高架構造にする立体化(検見川立体)も検討している。

■千葉県の湾岸地域の交通状況と課題について<br>
千葉県湾岸地区道路検討会幹事会 令和2年5月26日<br>1.千葉県の湾岸地域の交通状況と課題について [渋滞損失]<br>出典:国土交通省関東地方整備局ホームページ■千葉県の湾岸地域の交通状況と課題について
千葉県湾岸地区道路検討会幹事会 令和2年5月26日
1.千葉県の湾岸地域の交通状況と課題について [渋滞損失]
出典:国土交通省関東地方整備局ホームページ

期待されること

新湾岸道路ができれば、湾岸エリアの「交通渋滞の解消」と東京と千葉間の「移動時間の短縮」の2つの効果が期待される。

新湾岸道路ができれば国道357号と14号線を通過する一部の車両が捌けることになり、国道の渋滞はかなり解消されるものと思われる。
千葉市の湾岸エリアの高速道路空白地帯も解消されることから、市原・木更津方面へ向かう車両が国道を通過する量も少なくなり、千葉市中央区の渋滞緩和が期待できる。

また、新湾岸道路が整備されれば、東京と千葉間の移動時間の短縮にもつながる。新湾岸道路のルートは今のところ未定であるが、仮にかつて計画されていた第二東京湾岸道路に近い経路になるとすると、現在の東関東自動車道よりも海側を通ることが予想される。

東京湾を陸上のトラック競技場に例えれば、最もインコースとなるルートとなり、東京と千葉の距離も短くなる。インコースを自動車専用道路で走れるようになれば、移動時間は短縮され利便性も向上することが期待される。

■千葉県の湾岸地域の交通状況と課題について<br>
千葉県湾岸地区道路検討会幹事会 令和2年5月26日<br>7.千葉市・市原市の交通状況<br>出典:国土交通省関東地方整備局ホームページ■千葉県の湾岸地域の交通状況と課題について
千葉県湾岸地区道路検討会幹事会 令和2年5月26日
7.千葉市・市原市の交通状況
出典:国土交通省関東地方整備局ホームページ

実現に向けての課題

実現に向けての課題は、三番瀬の保全と住民の理解を得ることにある。かつて存在した第二東京湾岸道路の計画は、三番瀬の保護団体の反対が強く頓挫してしまった経緯がある。

新湾岸道路は第二東京湾岸道路とは異なり、三番瀬を保全する計画であることを保護団体や住民にしっかり理解してもらう必要がある。千葉県三番瀬再生計画との整合性を図ることは必須条件であり、保護団体や住民の理解を得られるような計画にしていくことが課題だ。

また、新湾岸道路は千葉市や市川市、船橋市、習志野市、市原市、浦安市の6市に影響を与える計画であるが、期待度は自治体によって異なると思われる。千葉市や市原市は恩恵を受ける可能性が高いが、市川市と船橋市、習志野市、浦安市の4市は三番瀬保護団体の反対を受ける可能性があり、慎重な態度を取らざるを得ない。複数の自治体で温度差が異なるため、千葉県がリーダーシップを取って自治体の意見をまとめていくことも重要となる。

三番瀬保護団体の理解を得ることは最初のハードルであり、それを乗り越えたら周辺の開発計画への配慮も課題となってくる。特に千葉市の湾岸エリアには幕張新都心を抱えており、既に大規模な開発が行われている。
ルートによっては街づくりの妨げにもなりかねないため、各方面との調整も必要となっていくだろう。

■千葉県の湾岸地域の交通状況と課題について<br>
千葉県湾岸地区道路検討会幹事会 令和2年5月26日<br>1.三番瀬再生計画について<br>出典:国土交通省関東地方整備局ホームページ■千葉県の湾岸地域の交通状況と課題について
千葉県湾岸地区道路検討会幹事会 令和2年5月26日
1.三番瀬再生計画について
出典:国土交通省関東地方整備局ホームページ

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