国民にあまねく注意喚起と、身を守る対応を促す緊急地震速報
「ギュイギュイギュイ。地震です。地震です」
どんな楽しい場面や心穏やかなシーンでも、一瞬で緊張した空気に変えてしまうのが緊急地震速報。人の多い場所だと、あちらこちらから一斉に鳴り響き、多くの人が一様に固まってしまう。
日本に住む人の多くが一度のみならず経験したことがあるであろうこのアラームシステムだが、これから先も地震から逃れることのできない日本で、このアラームのことを知り、その対応をあらかじめ心得ておくことは、地震被害を最小限にする第一歩だと思う。
そこで、知っているようで知らないことの多い緊急地震速報の仕組みや、発出される意味、そして、鳴ったときに私たちが取るべき行動などをまとめてみた。
緊急地震速報の仕組み。スマホは設定を要確認
実際に地震が発生したときには、誰が、いつ、どのように地震速報を出すのだろうか。
緊急地震速報の提供開始は、2007年10月1日にさかのぼる。緊急地震速報を発表する気象庁は、全国約690ヶ所の気象庁の地震計・震度計と、さらに国立研究開発法人 防災科学技術研究所の全国に約1,000ヶ所ある地震観測網を利用している。
これら、地震計を利用した仕組みはこうだ。地震の波は高速で地盤の中を伝わる。まず、震源からP波と呼ばれる速度が速く揺れの小さい波が起こる。その次に速度が遅く揺れの大きな、建物などに被害をもたらす波が伝わる。これがS波と呼ばれる地震波だ。固い岩盤の中では、P波は秒速6~7キロくらい、S波は秒速3.5キロくらいのスピードで伝わる。つまりP波のほうがS波より早く伝わる。具体的には震源から100km離れていればP波は15秒後、S波は30秒後くらいに到達。P波を感じてからS波を感じるまでに15秒程度の時間があるというわけだ。
緊急地震速報は、早く伝わるP波を地震計で感知して、震源の位置や地震の規模(マグニチュード)、遅れて伝わるS波の到達時刻を瞬時に予測し、すぐさま自動的に発表する仕組みだ。短時間で人々に伝えるためには、発せられた情報を即座に伝える情報通信システムも重要だ。
テレビ、ラジオなどの放送のほか、個人保有率が69.3%(2020年)に上るスマートフォンは、今や最も重要なメディアであるといえる。しかしスマホの場合、設定によっては緊急地震速報が鳴らない場合もあるようだ。あらかじめ端末の「設定」アプリなどから、「通知」の項目内の「緊急速報」がオンになっているか確認しておきたい。
室内にいるときに緊急地震速報が鳴ったら?
アメリカの南カリフォルニアで生まれ、行政や各種団体が地震対応として広く日本にも普及させようとしている訓練がある。「シェイクアウト:SHAKE OUT」と呼ばれる訓練だ。シェイクアウトは「地震をふっ飛ばせ」といった意味の造語。シェイクアウト訓練は、一定の場所に集まる従来の防災訓練とは異なり、「その時にいる場所」で地震が発生したと想定して、各自が自発的かつ臨機応変に自分の身を守る行動を取る。
「低く、頭を守り、動かない」が大原則
訓練では、訓練開始の合図とともに、①「Drop (まず低く)」まずその場で姿勢を低くする。 次に② 「Cover (頭を守り)」落下物から頭を守るために、机やテーブルの下に潜り込む。潜り込む場所がない場合、カバンなどで身を守る。 そして③ 「Hold on (動かない)」姿勢を低くして頭を守った状態で、揺れが収まるまでじっと動かない。この3つの安全行動は「命を守る3動作」とされ、実際の地震発生時に有効とされる。
地震による被害は、地震の揺れそのものよりも、揺れによって生じた家屋の倒壊・落下・移動、落下物への接触などによるものが多いとされ、阪神・淡路大震災の被害調査でも、室内での負傷の原因の半数近くをこれが占めるという調査もある。緊急地震速報が発出され揺れを感じた場合、「まず低く、頭を守り、動かない」。これが、大原則であるということを常日頃から頭に入れておきたい。
ここで大切なのは、地震発生と同時に動いて火を止めに行ったり、ブレーカーを落としに行かないことだ。かつては、揺れを感じたならば即座に火を消しに行く、ということが推奨されていたこともあったが、現在ではガスや電気も揺れを感知し即座に供給を遮断するシステムが普及している。総務省消防庁のホームページでも、「あなたを守る次の行動」として、火への対応は揺れが収まってから。外へ飛び出すのもその後で、としている。
屋外にいるときに緊急地震速報が鳴ったら?
総務省消防庁は「地震!! そのとき、あなたはどうする!?~外出編~」で、屋外で地震に遭遇した場合の対処方法を9つのシーンにまとめている。要約して紹介する。
1. 密集した市街地にいるとき
屋根瓦や屋外広告物の落下に注意し、持ち物などで頭部を保護する。建物やブロック塀に近づかない。できる限り道の中央を通るようにし、公園や広場に避難する。
2. ビル街にいるとき
ガラスの破片、外壁のタイルやレンガ、屋外広告物が落下してくる恐れがあるため、持ち物などで頭部を保護。近くに強固な耐火ビルがあるときは、一時的な避難場所として利用してもよい。
3. 劇場、デパート等にいるとき
劇場などでは、天井に吊り下げられている物が落下してくる恐れがあるため、持ち物などで頭部を守る。デパートやスーパーなどでは、ガラスケースや陳列棚、吊り下げ物などから離れる。ホテルなどでは、ドアを開放して逃げ道を確保。将棋倒しの恐れもあるので、あわてて出口や階段に殺到せずに、事業所の責任者の誘導や指示に従って避難する。停電による閉じ込めの恐れがあるためエレベーターによる避難はしない。エレベーターに乗っているときに地震があったら、各階のボタンをすべて押し、最寄りの階で降りて、誘導灯に従い階段を使って避難する。
4. 車を運転中に地震を感じたら
あわてて急停車することなく、ハンドルを取られないようにしっかりと握り、徐々に速度を落とし、消火栓などを避けて道路の左側に停車して様子を見る。ラジオなどで交通、火災、津波などの情報を聞くことも大切。緊急車両が通行できるよう道路の左側に停車し、エンジンを止め、トンネルの入り口や交差点には停車しないよう注意する。やむを得ず自動車を置いて避難する場合は、火災を引き込まないように窓を閉め、キーをつけたままドアをロックせずに避難。
5. 電車・地下鉄・バスに乗っているとき
吊り革や手すりにしっかりつかまり、姿勢は低くする。電車や地下鉄は、地震のときには安全装置が働いて停車するようになっている。列車が停車したからといって、外に飛び出すと反対側の電車にはねられたり、垂れ下がった架線などで感電する危険もあるので、乗務員の指示に従って避難する。
6. 地下街にいるとき
地下街は比較的安全とされている。一時的に停電になっても誘導灯や非常用照明装置がついているので、あわてて出入り口に殺到せず、警備員や従業員の誘導に従って避難する。
7. 観光地等土地に不案内な場所にいるとき
デマなどに惑わされることなく、防災行政無線等による避難指示の放送などに従い、適切な行動をとるようにする。
8. 海岸やウォーターフロントにいるとき
すぐさま逃げる。震源に近いところでは津波情報が出る前に津波が来る恐れがあるためだ。海岸では高台に逃げる。高台がないところではできる限り海から離れるように避難する。
9. 川や丘陵地にいるとき
川にいるときには上流にダムがある場合、ダムが壊れる可能性があるため、上流や下流に逃げず、川と直角の高台に逃げる。また、河口付近にいる場合もすぐ高台に避難。がけ崩れから逃げるため、地鳴りがしたらすぐ高台へ逃げる。間に合わないときは、土砂をかぶらないよう大きな木の下に隠れるなどが必要。
いつか来る巨大地震に備えて、進化する緊急地震速報
2つの地震波の到達速度の違いを利用して予測する緊急地震速報。その仕組みから、内陸直下の活断層地震のように、震源のすぐ近くの場所では警報が揺れの到達に間に合わない場合も想定されている。特に活断層近辺に住居がある場合など、震源の直近では、人命を左右する強い揺れが速報のアラームと同時に襲ってくることも考えられる。このため、速報に頼ることなく日常から建物の耐震化や、室内では家具の配置や固定化によって地震への備えを進めておく必要があるだろう。鉄道や高速道路でも、今後、さらに高速な情報処理システムの利用や深部地震計の設置など、システムの迅速化、高度化が望まれている。
2023年2月1日からは、速報に長周期地震動階級の予想値を追加して提供している。船に乗っているような周期の長い揺れである「長周期地震動」は、震源が浅く、マグニチュードが7以上の巨大地震の場合に大きくなりやすく、周期の短い波に比べて遠くまで伝わる特徴がある。さらに、大規模な平野などの柔らかな地盤が厚く分布する場所で揺れが増幅され、長時間にわたって揺れが続くことも特徴で、高層建築物などをゆっくり大きく揺らし被害をもたらすとされている。タワーマンションの高層階などでは、長周期地震動に対する警戒と備えも必要だ。
地震予知は困難だといわれる中、多くの地震災害を経験し進化してきた緊急地震速報。たとえ短い時間でも、揺れる前に心の準備をはじめ、対応に猶予時間が確保できる緊急地震速報は、南海トラフ地震などの発生が予測される日本において、その重要性がますます高くなっている。今後も、さらなる進化を期待したいものだ。
■参考
気象庁「緊急地震速報について」
https://www.data.jma.go.jp/eew/data/nc/
総務省消防庁「地震!! そのとき、あなたはどうする!?~外出編~」
https://www.fdma.go.jp/publication/ugoki/assets/2001_02_3.pdf







