東京都の少子化の現状
2023年1月、東京都は「東京都の少子化対策の現在」(以下、都の少子化対策)を公表した。対策は総合的かつ継続的な内容となっているが、特に18歳以下の子どもに対して所得制限なく1人当たり月額5,000円を給付するといった大胆な施策もあり、大きな話題を呼んでいる。
少子化といっても、東京都は決して子どもが少ないわけではない。総務省統計によると、2020年10月1日時点における「0~4歳」の子どもの数は、全国で4,541千人であり、そのうち東京都は522千人でトップとなっている。「0~4歳」の人口の都道府県ランキングおよび全体に占める割合を示すと、以下の通りである。
「0~4歳」の人口と割合
1位 東京都 522千人 11.5%
2位 神奈川県 331千人 7.3%
3位 大阪府 318千人 7.0%
4位 愛知県 302千人 6.7%
5位 埼玉県 264千人 5.8%
全国 4,541千人 100.0%
出典:政府統計の窓口
「2020年都道府県、年齢(5歳階級)、男女別人口-総人口、日本人人口(2020年10月1日現在)」
東京都は人口が最も多いため当然の結果とも思われるが、全国の「0~4歳」の人口の1割以上は東京都が占めている。東京都は子どもが少ないというわけではなく、数としては全国で最も多い都道府県となっている。日本の「0~4歳」の子どもの10人に1人以上が「東京都生まれ」と捉えれば、決して少なくはないと捉えられる。
一方で、合計特殊出生率に関しては、東京都は全国で最下位となっている。合計特殊出生率は、2021年の全国平均が1.30であるが、東京都は最低の1.08という状況だ。
出生率とは、簡単にいうと1人の女性が一生の間に何人子どもを産むかの数を平均したものである。出生率は2.1程度ないと人口は維持できないとされている。東京都の出生率は2.1を大きく下回っているため、他県から流入してくる社会増を考慮外とすれば東京都出身者の人口は減っていくことが見込まれる。東京都は子どもの数が最も多い都道府県であると同時に、出生率が最も低い都道府県となっている。
少子化が進む背景
少子化は複合的な要因の結果生じており、原因を特定しにくい問題となっている。都の少子化対策では少子化の背景として、「未婚化・晩婚化」や「高い子育て費用」、「仕事と子育ての両立が困難」、「雇用の不安定化」の4つの要因を挙げている。
例えば、50歳時点における男性の未婚割合は1990年が5.6%であたったのに対し、2020年が28.3%と上昇している。未婚割合が増えれば、子どもも減ることとなる。
また、夫婦に対するアンケート調査の結果では、理想の子供数を持たない理由として「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」がトップとなっている。共働き夫婦では、日本は諸外国に比べて妻の家事や育児時間が長く、夫が短いことも指摘されており、仕事と子育ての両立が困難なことも少子化の理由となっている。非正規雇用の割合も、1984年が15.3%であったのに対し、2021年が36.7%と上昇しており、雇用の不安定化も少子化の一つの要因だ。
少子化対策が急務な理由
近年でも東京都はタワーマンションが建つとその周辺では小学校不足がニュースになることもあり、東京都の少子化対策が急務であるかどうかはピンとこない側面もある。しかしながら、都の少子化対策では、「若年層の人口は先細りであり、対策には一刻の猶予もない」というスタンスを取っている。
理由としては、日本の少子化が予想を上回るペースで進んでいることを挙げている。2020年の出生数は80万人を切っており、2017年の予測よりも8年早いペースで少子化が進んでいる状況だ。予想を上回るペースの少子化は国全体の数値であるが、東京都は出生率が全国最低であることに問題意識を持っており、東京都がなしうる対策を迅速に取り組んでいくとしている。
一方で、都の少子化対策では指摘されていないが、東京都が少子化対策に取り組む意義は大きいといえる。理由としては、東京都は出産適齢期の女性の人口割合が高く、日本の中で子どもの数が増える可能性が最も高いからだ。2020年10月1日時点における「20~39歳」の女性の割合を見ると、以下のようになっている。
東京都 26.4%
秋田県 14.4%
全国平均 20.3%
出典:政府統計の窓口「2020年都道府県、年齢(5歳階級)、男女別人口-総人口、日本人人口(2020年10月1日現在)」より筆者が割合を算出
「20~39歳」の女性の割合は、東京都では26.4%となっており全国平均の20.3%よりも高い水準となっている。2021年時点で最も高齢化が進んでいる秋田県(14.4%)と比較すると、10%以上も「20~39歳」の女性の割合が高い。以前より出産適齢期の女性が東京都へ集まっていることが指摘されており、東京都の子どもの数が多い要因の一つとされている。
東京都は出産適齢期の女性の割合が大きいことから、仮に東京都の対策がうまくいけばインパクトのある成果が得られることが期待される。数のポテンシャルという意味では、東京都が少子化対策を積極的に行う意義は非常に大きいのだ。
東京都の主な少子化対策
都の少子化対策では、出会いから結婚、出産、子育てに至るまで総合的・継続的な支援をシームレスに実施するとしている。「結婚支援マッチング事業」や「018サポート」、「第二子の保育料無償化」、「東京都立大学等の授業料実質無償化の実施に向けた準備」等の新しい支援が行われる予定だ。
支援策は多岐に渡っているが、その中でも主だったものを紹介する。
(1)018サポート
都の少子化対策で最も注目を集めているのが、18歳以下の子供に対し月額5,000円が給付される「018サポート」だ。ネット上でもかなりの物議を醸しており、意見の分かれる対策とも思われる。
対象者は、都内に在住する0歳から18歳までの子どもの約200万人とされており、親の所得制限がない点が特徴だ。5,000円の根拠は、東京都の教育費は全国平均よりも1人あたり5,000円程度高いことを理由として挙げている。018サポートが実際に少子化対策となるかは不明だが、このような対策が地域で線引されることにより、不動産市場や人の動きに影響が出ることは考えられる。
例えば、以前より東京都は千葉県よりも子育て支援が手厚いため、千葉県の北西部などのエリアでは、子どもが小さいうちは23区内に住み、子どもが成長したら千葉県の浦安市等に引越すという行動が以前から見られる。018サポートのようなわかりやすい対策が行われることにより、千葉県から東京都への引越しが増えることが考えられる。神奈川県や埼玉県でも同様の感覚を持っている人は多く、年間6万円の給付がされ職場も近くなるならと、都内への引越しを検討する人は増えると思われる。
(2)都立大学・都立高専の授業料実質無償化
2024年度から、都立大および都立産技高専において授業料を実質無償化される予定だ。
対象者は年収910万円未満や住所等の要件を満たす世帯となっている。
日本はかねてより教育費の高さが問題となっており、特に大学などの高等教育費の家計負担が重く、子どもを持つことを躊躇させる大きな要因になっていることを理由として挙げている。高等教育の無償化は既に2020年度から私立高校で始まっており、さらに大学まで拡充する形となっている。
(3)住宅関連の施策
住宅関連の施策に関しては、結婚予定者のために都営住宅やJKK住宅を提供することが計画されている。JKK住宅とは、東京都住宅供給公社の供給する住宅のことであり、礼金や仲介手数料、更新料がない等のメリットがある住宅である。
対象者は、年齢が世帯全員40歳未満とされており、交通利便性の高い公的住宅を結婚予定者に優先的に提供することが予定されている。
また、子育て世帯に配慮した住宅の供給促進事業として、認定住宅における改修や新築に対する直接補助が実施される計画もある。「東京こどもすくすく住宅認定制度」という制度名を予定しており、一定の要件を満たせば補助金がもらえる制度となっている。
都の少子化対策では、国や他県では実行しにくい対策も多く盛り込まれている。先駆的な取り組みが多いため、数年間実施した後にどの対策が効果的であったかを定量的に知りたいところである。少子化対策のパイオニアとして、国政や他県へ還元してくれることも期待したい。
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