冬季の電力需給の見通し

経済産業省資源エネルギー庁が発表した「2022年度冬季の電力需給対策」からこの冬期の電力需給状況の予測や対策を振り返る経済産業省資源エネルギー庁が発表した「2022年度冬季の電力需給対策」からこの冬期の電力需給状況の予測や対策を振り返る

2022年11月1日に資源エネルギー庁は2022年度における冬季の電力需給の見通しについて公表した。一般的に家庭での電力消費量は夏場より冬場の方が大きくなる。冬場はエアコンで温度を調整する際、室内外の温度差が大きくなることからエアコンへの負荷が重く、夏場よりも電力消費量が増えることが知られている。

電力の需要に対し供給が足りるかについては、「予備率」という指標で予測される。予備率とは、ピーク時の電力需要に対する供給力の余裕を示す指標だ。具体的には、供給力から最大需要を差し引いた値を最大需要で割って求めた数値が予備率となる。

予備率 = (供給力 - 最大需要) ÷ 最大需要

供給力は発電能力から算出できる既知の数値となり、固定値となる。それに対して、最大需要は予想値であることから、変動値となる。最大需要の予想値は3%程度の差異が生じる可能性があることが知られており、予想との差異を鑑みると予備率は3%以上が安定供給の目安となっている。

2022年11月1日に公表された試算では、2022年12月~2023年3月にかけての予備率は、国内のいずれの地域で3%を上回っている状況になる。そのため、「大規模な電源脱落」や「想定外の気温の低下による需要増」といった一定の状況を除けば、2022年度の冬季の電力は基本的に足りる見込みとなっている。

経済産業省資源エネルギー庁が発表した「2022年度冬季の電力需給対策」からこの冬期の電力需給状況の予測や対策を振り返る出典:経済産業省
2022年度冬季の電力需給対策 (概要)
https://www.meti.go.jp/press/2022/11/20221101003/20221101001-2.pdf
2022年度冬季の電力需給見通し

これまで行われた対策

2022年度の冬季の電力は、実は2022年6月7日の段階では一部の地域で予備率が3%を下回り、供給不足に陥ると見込まれていた。しかしながら、発電所のトラブルからの早期復旧や電源の補修計画の変更、電源募集(kW公募)の実施、原子力発電所の特重施設※の設置工事完了時期の前倒し等の対策が行われたことで需給見通しが改善される結果となった。

※特重施設:特定重大事故等対処施設の略、原子炉格納容器の破損による放射性物質の放出を抑制するための施設のこと

近年、毎年のように電力需給がギリギリの状態に陥ってしまったのには理由がある。原因としては、東日本大震災以降、原子力発電の発電量を大幅に減らしたことが大きい。東日本大震災以前の2010年では火力発電は約65%、原子力発電は約25%程度の電気を作っていたが、2019年では火力発電が約76%、原子力発電が約8%という稼働状況となっている。

ただし、原子力発電に関しては、国が定めた基準に合格しているものから順次運転を再開している状況にある。2022年6月以降、原子力発電所の特重施設の設置工事を前倒しで完了させており、原子力発電の供給量が徐々に増えてきたことが予備率の改善に寄与したものと思われる。

さまざまな取組みいより需給見通しが改善傾向にあるさまざまな取組みいより需給見通しが改善傾向にある

冬季の電力需給の懸念点

冬季の電力需給には、「想定を超える電力需要の増加」と「燃料の調達リスク」の2つの懸念点が挙げられる。

想定を超える電力需要に関しては、直近では2022年度の夏季に厳しい暑さが原因で想定最大需要を上回ったばかりである。近年は異常気象に伴い想定最大需要の予測が難しくなってきており、冬季においても厳しい寒さが生じれば想定最大需要を上回ってしまう可能性もある。

また、リモートワークの普及によって日中家にいる人が増えたことも予測が外れやすくなる原因となっている。ここ1~2年は過去の経験値から推測しにくい状況が続いており、生活様式の変化が電力需要の想定を見誤らせる可能性を生んでいる。

燃料の調達に関しては、2022年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻によりLNG(液化天然ガス)が安定的に確保できなくなるリスクが存在する。日本の主力発電である火力発電は、LNGと石油、石炭の3つを資源として発電が行われている。2019年においては、LNGが約49%、石油が約42%、石炭が約9%の割合となっており、LNGが最大のエネルギー資源となっている。火力発電におけるLNGの割合が高いのはLNGが石油や石炭と比べるとCO2の排出量が少ないことが理由である。日本をはじめ世界各国がCO2の削減目標を掲げており、世界におけるLNGの需要量は増加傾向にある。

LNGは新潟県や千葉県でも採掘できる資源であるものの、日本はLNGの97.8%(2019年)を輸入に頼っており、輸入依存度が極めて高い資源となっている。2022年に入って以降、ヨーロッパを中心に各国がロシア産エネルギーへの依存度低減を進めており、非ロシア産のLNGの調達競争が激化している。2019年における日本のLNGの輸入先は1位のオーストラリアが39.2%、2位のマレーシアが13.0%、3位のロシアが8.3%となっており、非ロシア産のLNGの価格高騰は影響が大きい。

今後のウクライナ情勢によっては、LNGを安定的に確保できず、需給がひっ迫しかねないリスクを抱えている。

リモートワークの普及により予測が難しい状況となっており、また予想を上回る冷え込みが発生した場合などは想定最大需要を上回ってしまう可能性が懸念されるリモートワークの普及により予測が難しい状況となっており、また予想を上回る冷え込みが発生した場合などは想定最大需要を上回ってしまう可能性が懸念される

今後の対策

電力需給対策は、「供給対策」と「需要対策」、「構造対策」の3つが計画されている。2022年6月7日にも同様の対策が公表されている。2022年11月1日に公表された対策項目と、6月時点との違いは以下の通りである。

供給対策

・電源募集(kW公募)により、休止電源を稼働し、供給力を確保
・追加的な燃料調達募集(kWh公募)の実施による予備的な燃料の確保
・発電所の計画外停止の未然防止等の徹底による、安定的な電力供給
・再エネ、原子力等の非化石電源の最大限の活用

供給対策として、6月時点では「発電事業者への供給命令による安定供給の確保」という対策項目もあったが、11月時点では削除されている。

需要対策

・無理のない範囲での節電の協力の呼びかけ
・省エネ対策の強化
・対価支払型ディマンド・リスポンス(DR)の普及拡大
・産業界、自治体等と連携した節電体制の構築
・需給ひっ迫警報等の国からの節電要請の高度化
・セーフティネットとしての計画停電の準備

需要対策として、6月時点では「節電・省エネキャンペーンの推進」とされていた対策が、11月時点では「無理のない範囲での節電の協力の呼びかけ」に表現が弱まっている。また、6月時点では「使用制限令の検討」という項目もあったが、11月時点では削除されている。さらに、6月時点にはなかったが、11月時点で新たに「省エネ対策の強化」が加わっている。

構造対策

・容量市場の着実な運用、災害等に備えた予備電源の確保
・燃料の調達・管理の強化
・脱炭素電源等への新規投資促進策の具体化
・揚水発電の維持・強化、蓄電池等の分散型電源の活用、地域間連系線の整備

構造対策に関しては、6月と11月の時点で特に違いはない。11月に示された予備率は6月時点よりも改善されており、対策の内容も全体的に6月時点より緩やかな傾向が出始めている。

出典:経済産業省<br>2022年度冬季の電力需給対策 (概要)<br>
https://www.meti.go.jp/press/2022/11/20221101003/20221101001-2.pdf<br>
2022年度冬季の電力需給対策出典:経済産業省
2022年度冬季の電力需給対策 (概要)
https://www.meti.go.jp/press/2022/11/20221101003/20221101001-2.pdf
2022年度冬季の電力需給対策

省エネ対策の強化

11月の需要対策では、6月時点にはなかった「省エネ対策の強化」が新たに加えられている。省エネ対策は、実施する事業者や個人に対して補助金制度も設けられている点が特徴だ。事業者向けと家庭向けの補助金制度は以下の通りである。

事業者向け

・省エネ設備投資補助金:複数年の投資計画に切れ目なく対応できる新たな仕組みを創設
・ものづくり補助金:省エネ対策を推進するためグリーン枠を強化
・省エネ診断の拡充:工場・ビル等の省エネ診断の実施やそれを踏まえた運用改善等の提案にかかる費用の補助

家庭向け

・住宅省エネリフォーム支援:高効率給湯器の導入や断熱窓への改修に対する支援
・電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金:省エネ家電等への買い換えを促進

その他として、ライフスタイルの見直しや事業オペレーションの工夫等を通じて、省エネを図る具体的な取り組みの周知・広報を行うことになっている。

出典:経済産業省<br>2022年度冬季の電力需給対策 (概要)<br>
https://www.meti.go.jp/press/2022/11/20221101003/20221101001-2.pdf<br>
省エネ対策の強化出典:経済産業省
2022年度冬季の電力需給対策 (概要)
https://www.meti.go.jp/press/2022/11/20221101003/20221101001-2.pdf
省エネ対策の強化

家庭でできる省エネ行動

取り組みの周知・広報については、例えば、2022年11月1に公表された「冬季の省エネルギーの取組について」では、以下のような行動が省エネにつながると挙げられている。

https://www.meti.go.jp/press/2022/11/20221101001/20221101001-1.pdf

・暖房:適切な室温管理(暖房の場合は室温20度目安)をすること。エアコンのフィルターは適切に清掃すること。なお、新型コロナウイルス感染症を予防するため、換気扇や窓開放によって換気を確保すること。

・給湯:シャワーは不必要に流したままにしないこと。入浴は間隔を空けずにし、追い焚きの回数を減らすこと。

・冷蔵庫:無駄な開閉を控えるとともに、開閉は手早く行うこと。食品の傷みに注意しつつ、適切な温度設定とすること。放熱スペースの確保のため、周囲と適切な間隔を空けて設置すること。

・照明:不要な照明はこまめに消灯すること。

・調理: ガスコンロは、炎が鍋底からはみ出さないように調節すること。炊飯器は、タイマーを上手に使うなどにより、なるべく保温時間を短くすること。

省エネは身近な取り組みからでもできることは多いので、参考にしていただけると幸いである。

引き続き家庭でできる省エネ行動は継続したいものだ引き続き家庭でできる省エネ行動は継続したいものだ

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