毎年9月下旬に公報される「都道府県地価調査」
「地価は絶対に下がらない」。かつての日本ではそう信じられていた。いわゆる「土地神話」だ。それゆえ多くの人は、多少無理をしてでもローンを組んで土地付き一戸建てを手に入れようとした。「損をすることはないのだから」と。しかし、バブル崩壊によってこの神話も消え去った。
ところが明るい兆しが見えてきた。国土交通省の「令和4年(2022年)都道府県地価調査」の結果によると、日本の住宅地の平均地価が31年ぶりに上昇に転じたのだ。同調査は、毎年7月1日を基準日として不動産鑑定士等が全国約2万地点(基準地)の評価を行い、毎年9月下旬に公報されるものだ。不動産査定価格の目安とされる公示地価の半年後に評価されることから、地価公示を補完する役割も担っている。そこで同調査の結果を基に地価が上昇している地域の特徴を考えてみたいと思う。
住宅地の全国平均価格が31年ぶりに上昇
上記のように日本の住宅地の価格は、バブル崩壊以降下がり続けてきた。直近でいうと2018(平成30)年の平均変動率は-0.3%、2019(令和元)年は-0.1%と微減だったが、コロナ禍に入った2020(令和2)年は-0.7%、2021(令和3)年は-0.5%と下落率が大きくなっていた。
ところが最新のデータである2022(令和4)年の平均変動率は、0.1%のプラスに転じた。住宅地の価格がプラスになったのは、実に31年ぶり。特に地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の上昇率は6.6%と、その高さが目立っている。背景には、コロナの影響などで減少していた住宅地の需要がやっと回復してきたことや、低金利政策の継続、リモートワークの普及などに伴う郊外部地価の上昇といったことが考えられる。一方で地方四市以外の地方圏では、人口減などによって需要の減少が続いており、地価の下落も継続している。
また、最も上昇率が高い都道府県は沖縄県(2.7%)、最も上昇率が高い基準地は北海道北広島市共栄町4丁目(29.2%)となった。その理由については後述する。
三大都市圏(東京、大阪、名古屋)の状況
では、各地域の状況を細かく見ていこう。まずは東京、大阪、名古屋の三大都市圏から。東京圏の平均変動率は1.2%で2年連続の上昇となっている。その中で上昇率トップ3となった基準地が①茨城県つくばみらい市陽光台4丁目(10.8%)、②茨城県つくばみらい市富士見ヶ丘4丁目(10.4%)、③茨城県つくばみらい市紫峰ヶ丘2丁目(10.0%)だ。すべてつくばみらい市とは驚きである。2006年に伊奈町と谷和原村が合併して誕生したつくばみらい市は、2005年のつくばエクスプレス開業以降、東京のベッドタウンとして開発が進み、2005年以降市域の人口は増加が続く(総務省統計局 国勢調査による)。田畑も残る風光明媚な住環境の一方、秋葉原駅までつくばエクスプレスで40分以内という利便性の高さも魅力だ。
次に大阪圏は、平均変動率が0.4%で3年ぶりに上昇した。その中で上昇率トップ3となった基準地は、①大阪府松原市天美東6丁目(8.2%)、②兵庫県神戸市灘区泉通5丁目(5.9%)、③兵庫県神戸市灘区楠丘町6丁目(5.7%)だ。
そして名古屋圏。平均変動率は1.6%と三大都市圏でもっとも高く、2年連続で上昇している。その中で上昇率トップ3となった基準地は、①愛知県名古屋市錦1丁目(16.7%)、②愛知県名古屋市中村区則武2丁目(14.5%)、③愛知県名古屋市千種区橋本町2丁目(12.4%)だ。
圧倒的な勢いを見せる北海道北広島市
地方圏において特徴的なのは、やはり地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の平均変動率(6.6%)の高さだろう。しかも同地域は10年連続で上昇している。だからといって、地方全体が活気づいているかといえばそうではない。地方圏のうち地方四市を除く地域の平均変動率は-0.5%と下落が継続している。
そのような地方圏において、圧倒的な勢いを見せるのが北海道北広島市だ。同市は全国の住宅地のなかで変動率トップ3を独占した。
1位:北海道北広島市共栄町4丁目(29.2%)
2位:北海道北広島市稲穂町東6丁目(29.1%)
3位:北海道北広島市若葉町3丁目(29.1%)
北広島市の地価が上昇している大きな要因は、2023年3月オープン予定の「北海道ボールパークFビレッジ」だ。これは北海道日本ハムファイターズの新本拠地となる球場「エスコンフィールド北海道」をはじめ、フィンランド式サウナを楽しめるヴィラや認定こども園、レジデンスなどを擁する大型複合施設。全国変動率トップの北広島市共栄町4丁目は、ここから1㎞程度の距離だ。「北海道ボールパークFビレッジ」がオープンし、街がより活気づけば周辺の地価はさらに上昇するだろう。
コロナ前後で最も地価が上昇した都道府県は?
最後にコロナ前後(2019年→2022年)で地価が上昇した都道府県を紹介しよう。地価上昇率トップ5は以下になる。
(単位:円/m2)
1位:福岡県:15.36%(5万2,100円→6万100円)
2位:北海道:14.58%(1万9,200円→2万2,000円)
3位:宮城県:14.14%(4万300円→4万6,000円)
4位:沖縄県:10.32%(5万9,100円→6万5,200円)
5位:千葉県:6.30%(7万4,600円→7万9,300円)
このトップ5を確認すると、2つの特徴が見えてくる。一つは再開発。1位の福岡県では、2015年から再開発事業「天神ビッグバン」が進行中だ。同事業は、福岡市中心部の慢性的なオフィスビル不足を解消するために着手されたもので、2024年までに30棟のビルが建て替えられ、年間8,500億円の経済波及効果が期待されている。再開発といえば「北海道ボールパークFビレッジ」も同じだ。
もう一つは人口増。2021年10月1日現在の人口推計(総務省統計局)によると、前年比で人口が増えている都道府県は沖縄県のみ(人口増加率0.07%)。首都である東京都でさえ26年ぶりに減少している。人口が増えている地域は、当然ながら住宅需要も高まる。それゆえ地価が上昇するのだ。
このように地価が上昇している地域には、明確な理由がある。逆もまた然り。これから家探しをする人は、今現在の住みやすさや活気だけでなく、その地域の再開発計画や将来推計人口にも注目してほしい。
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