マットレス選びで失敗しないために

よい睡眠をとることは、健康にもつながるといわれる。睡眠不足のときに、学業や仕事などのパフォーマンスも落ちてしまった経験はないだろうか。その睡眠のために欠かせない寝具のなかでも、今回は、マットレスについてピックアップ。名古屋にあるオーダーまくらとマットレスの店「寝蔵(ねぐら)」に取材のご協力をいただいた。

「マットレス選びで、最も考えなければならないところはどこですか?」と最初にズバリ聞いてみた。
その答えは「正しい寝姿勢を保てる硬さ」。

人の体を支えるマットレスは大きく、重量もあり、なかなか簡単には買い替えられないものだ。快適に眠ることができる、自分に合ったマットレスを選ぶためのヒントを探りたい。

名古屋市天白区にある「寝蔵 名古屋平針店」。名古屋市西区に2号店、大阪市西区に3号店がある名古屋市天白区にある「寝蔵 名古屋平針店」。名古屋市西区に2号店、大阪市西区に3号店がある

日々の“疲れ”を取ることが大切

眠りは、体の疲れを取ってくれる大切な時間眠りは、体の疲れを取ってくれる大切な時間

「マットレスの目的は、究極は何かといいますと、疲れを取るということなんです。仕事や家事、育児など、その疲れを取るものとしてマットレスが重要になります」

少し前まで、寝具に求めるのは“寝心地”といわれていた。それが変化してきたという。それは、現代人を悩ます、首こりや肩こり、腰痛が関係する。

「首こりや肩こり、腰痛は若いときはあまり感じなくても、いずれやってくるものです。その予防のひとつとして、枕やマットレス、敷布団があると思ってもらうといいでしょう」とのこと。

肩こりや腰痛などは、姿勢が影響するともいわれる。人が立った状態で横から見て、耳、肩、腰、膝、くるぶしまでが一直線となっている正常立位姿勢が理想とされる。寝姿も、その状態を保ったままが理想的だという。

「背骨は真っ直ぐではなく、S字にカーブしています。寝てもその通りに支えてくれるものが必要になるんですね。背骨に沿う硬さで支えられる、いわゆる体圧分散をしてくれるマットレスがいいとされています」

冒頭の答え、「硬さ」というのはこうした理由からなのだ。

自分に合ったマットレスとは?

体圧分散とは、理想的な寝姿勢をキープするために、体にかかる圧力を分散させることをいう。

取材時に聞いた、ある調べによると、仰向けに寝たときにかかる体重バランスは、頭が8%、背中が33%、お尻が44%、ふくらはぎが15%なのだそう。体の出っ張った部分に圧力がかかるのがイメージできるだろう。硬すぎるマットレスの場合、腰回りなどの引っ込んでいる部分が浮いた状態になり、背中などが圧迫されてしまう。柔らかすぎれば、圧力が高いお尻あたりがぐっと沈み込み、寝姿勢が崩れる。体圧分散ができるマットレスだと、圧力が集中しやすいところは沈みつつ、腰回りなども浮くことなく、体に沿うというわけだ。

その判断を得るためには、可能であれば店頭で試し寝するのがいい。体形は人それぞれ。例えば背中やお尻のカーブが強い人や、フラットなラインの人、お尻よりも背中のラインのカーブが強い人などと形状の特徴があるため、合うか合わないかは実際に試すのがベストだ。

今回の取材では、「寝蔵」で導入している、寝具メーカー・西川の測定器で測定してもらう体験ができた。仰向けと横向きのデータが出るのだが、写真をご覧いただくと、背中とお尻の体圧がかなり高いことが分かる。専門店で、詳細な測定をしてもらうのも、ベストなものを選ぶ助けになるだろう。

実際に測定してもらったデータをもとに、マットレスで試し寝させてもらったが、確かに心地いい自然なフィット感を得ることができた。

マットレスには、コイルを使ったもの、ウレタンを使ったもの、そして高反発、低反発などと種類があるが、その素材を見るよりも先に自分に合ったものを探すのがいいそうだ。

お恥ずかしながら、筆者のデータを公開。赤いほど体圧がかかっているお恥ずかしながら、筆者のデータを公開。赤いほど体圧がかかっている
お恥ずかしながら、筆者のデータを公開。赤いほど体圧がかかっている「寝蔵」で取り扱っている寝具メーカー・西川のマットレスは、測定に基づいて硬さの異なる3種類のウレタン素材を組み合わせて一つのマットレスに仕上げる

寝返りのしやすさもポイントに。合わせて“枕”の重要性も!

もう一つ加えて重要になるのが「寝返りのしやすさ」だと教えていただいた。

「人間は寝るときにじっと止まってはいません。仰向けに寝ていると体の接地面が大きいので汗をかいて蒸れてしまいます。そうすると、体に風を当てて乾燥させるように自然に動くことがあるからです。睡眠は、脳の休みと筋肉の休みを交互にしているのですけれど、筋肉の休みのときは脳が起きているので、体が動きます。それが寝返りです。逆に、脳が休みのときはそんなに寝返りはしません。しかし、寝返りが多すぎると、深い眠りができていないことになるので、朝起きてもちょっと気だるかったりして、疲れが取れるどころか、疲れてしまうことにもなるのです」

ずっと仰向けでは圧迫感もあるので、寝返りは必要だ。自然な反応として起きる寝返りが打ちやすく、深い眠りができて疲労を回復できるマットレスがいいということになる。

マットレスが柔らかすぎると寝返りがしにくく、通気性も悪くなる。そして、その寝返りをサポートする機能が枕にあるそうだ。

筆者は仕事柄、パソコンに向かう時間が長いこともあり、姿勢の悪さは自覚があったのだが、かなり首が前に出ていることも分かった。そのデータをもとに簡易的に調整した枕も一緒に試させてもらった。

仰向けのときもほどよいフィット感だと感じたが、寝返りを打つように横向きになったときに驚いた。スムーズに横向きになれて、そしてピタッとはまったのだ。横向きになれば肩の高さの分、隙間ができるが、その隙間がなくなるように、寝返りで動いたときの高さが調整されていた。それによって動きがスムーズだったようだ。

実は筆者はマットレスを1年ほど前に買い替えたばかり…。そういったすぐにはマットレスを替えられないとき、枕だけでも替えると眠りがよくなるそうだ実は筆者はマットレスを1年ほど前に買い替えたばかり…。そういったすぐにはマットレスを替えられないとき、枕だけでも替えると眠りがよくなるそうだ

1人暮らし、新婚でのマットレス選び

夫婦でも、シングルベッドでそれぞれに合ったマットレスを使うのがおすすめ夫婦でも、シングルベッドでそれぞれに合ったマットレスを使うのがおすすめ

さて、マットレスについては、1人一台を基本とするのがおすすめとのこと。というのは、男性、女性ということだけでなく、1人1人体つきが違うからだ。

例えば新婚で、新居にベッドを購入するとき、ダブルサイズ以上を選ぶことが多いのではないだろうか。そうすると、マットレスの硬さはどちらかの好みに寄ったものになってしまう可能性がある。そのため、それぞれの体にあったマットレスにできるシングルサイズを2台並べるほうがいいそうだ。

「新婚さんの場合、女性が妊婦になる可能性がありますし、マットレス選びは真剣に選んでもらった方がいいですね。男性は腰痛率が高く、予防という面でも大切です。仕事やスポーツ、趣味いずれのときでも首と肩、腰は連動しているといってもいいくらいですから、負担のないものにして、ストレスを抱えないように。寝ることは、その日のストレスをその日に解消することでもありますから」

1人暮らしであれば、シングルやセミダブルが選択肢になる。体のサイズによって、セミダブルが寝返りしやすいかもしれないが、その分、幅が大きくなるので、部屋の間取りを考慮するといいそうだ。

新婚などでシングルを2台並べるときは、四畳半の部屋では置けないこともないがほぼベッドが占める寝室になってしまう。ゆとりをもつならば、4m×4mほどの大きさがあるといいそうだ。

夫婦でも、シングルベッドでそれぞれに合ったマットレスを使うのがおすすめ1人暮らしの場合は、部屋の大きさでベッドにするか、片付けられる敷布団にするかの選択も

マットレスの寿命は?

マットレスの寿命は、約10年が目安とのこと。体格がいい人の場合は圧力がかかって中の素材がへたることもあり、それより短くなることも。へたりが集中しないためには、頭と足の位置を変えたり、裏返したり、マットレスの向きや面をローテーションするのがいい。

また、マットレスの大敵は湿気とのこと。結露する窓辺にピッタリ寄せると、マットレスにもカビが生えてしまう。通気性のよい場所に置くのがいい。

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さまざまな研究が進んだことで、健康やよい睡眠のための寝具が誕生している。選択肢が広くなっているが、それだけに迷ってしまうことも。

今回取材に答えてくださった寝蔵のスタッフさんは「体のこりや、夜寝るまでに時間がかかるというときは寝具の専門店にご相談していただくのがいいですね。その専門店も今後の付き合いができるところを見つけてもらうと、よりいいです。家電や車などでもそうですが、悩みを相談できるお店を見つけられれば、暮らしやすくなりますよね」とお話をいただいた。

長く付き合い、日々の自分、体のためにもなるものだからこそ、自分に合ったものを選ぶようにしたい。


取材協力:寝蔵 https://negra.jp/