多様化する玄関の鍵

防犯意識の高まりや技術の進歩により、玄関扉の「鍵(キーシステム)」の多様化が進んでいる。新築やリフォームを進める中で、玄関扉を選ぶ際には、どのような「鍵」にすればいいのか、悩む方も多いのではないだろうか。

玄関扉は、オリジナルの建具として造作することもあるが、住宅会社や工務店などに依頼して新築やリフォームを行う場合では、建材メーカーの商品から選択するケースが多いだろう。開き戸(ドア)か引戸か、間取りプランに適したスタイルを取り入れることはもちろん、デザイン性や機能性なども重要なポイントとなる。防犯性や利便性にかかわるアイテムとして「鍵」選びも重要だ。

通常、玄関扉商品には、いくつかの「鍵」が設定されており、標準仕様とオプション仕様がある。最近では、「鍵」という名称よりも、「キーシステム」などとも呼ばれ、各社とも性能を高めたタイプを揃えている。

玄関扉に限らず、「鍵」や「キー」、「ロック」などの名称がみられるが、本来、「鍵(key)」とは、鍵穴に差し込みまわして、「錠(lock、latch)」を開閉するもののこと。「錠」は、扉や引き出しに取り付け、鍵によって開閉する締まり金物のことを指す。玄関の場合、扉本体に付いているのが「錠」、持ち歩くのが「鍵」となる。これら、「鍵」と「錠」は、どのような進化をしてきたのだろうか。

一般的な手動錠よりも電気錠一体型の玄関扉が主流となっている [スマートドア]  YKK AP一般的な手動錠よりも電気錠一体型の玄関扉が主流となっている [スマートドア]  YKK AP

玄関の鍵はいつ普及した?

最古の鍵といわれるのは古代エジプト文明の時代に誕生した木製の鍵。かんぬきとピンを使用したものだ。古代ローマ帝国時代になると金属製がみられるようになり、鍵を錠に差し込み回転させ施解錠するタイプもみられるようになる。これが現在の鍵の形状のルーツと言えるようだ。

日本の場合、最古の鍵は7世紀中頃と推定される海老錠といわれるもの。唐櫃(からびつ)の錠として用いられた海老の形をした和錠だ。その後、大きな変化はみられず、比較的治安がよい江戸時代となっても、一般には鍵は必要がなく需要は限られていたという。職人によって、蔵などに用いられる和錠が作られていた。

明治後期以降、公共施設などに洋風建築が増えたことで開き戸(ドア)が取り入れられ、西洋のような錠前も増加。国内で鍵の開発が進み、高度経済成長期になると、開き戸には鍵を差し込むタイプの円筒形の錠前が普及。以後、より防犯性やデザイン性が高まったタイプがみられるようになった。

いつの時代でも、鍵の使用目的は基本変わらず、防犯性や安全性だが、加えて現代では、操作性・利便性も重要視されるようになり、いわゆる「鍵」の形状ではない、多様なタイプも多くみられるようになってきている。

ICタグキーをハンドルに近づけることで施解錠が可能。[ピタットキー]  YKK APICタグキーをハンドルに近づけることで施解錠が可能。[ピタットキー]  YKK AP

最近の玄関の鍵の種類と傾向

建材商品の玄関扉に設定されている鍵(キーシステム)は、メーカーや商品によって異なるが、主な種類は下記のようなタイプだ。

■シリンダー錠・シリンダーキー
鍵を差し込む部分が円筒であるシリンダーを用いるのがシリンダー錠。従来から使用されているタイプの鍵を用いるタイプだ。鍵の形状は、表面に多数の小さなくぼみのあるディンプルキーが普及している。

■電動で施解錠するキーシステム
電動で施解錠できるシステムは、大きく分けて、電池錠と電気錠(配線式・100V式)がある。電池錠は、電池で作動するので電気の配線工事が必要ないが、電気錠は電気配線を行い通電させて作動するため、配線工事が必要となる。

電池錠や電気錠のメリットは、操作性の高さだ。リモコンキーやカードキー、スマートフォンなどを用い、通常の鍵に比べ扉の施解錠の操作が簡単なのが特徴。たとえば、リモコンキーは扉から離れていても操作が可能なだけでなく、リモコンをバッグやポケットなどに入れておけば、扉のボタンを押すだけで施解錠することができるタイプなどもある。解錠後に自動で施錠し締め忘れを防止できる機能や誤操作を防止できる機能、不正解錠を防止する機能なども搭載されている。

さまざまな機能を持ち、より便利になっている電気錠・電池錠だが、新築やリフォームの際には、どのくらい取り入れられているのだろうか。YKK AP株式会社 住宅本部 住宅事業推進部 住宅商品企画部 ドア商品企画室 室長の片桐裕治さんによると、「当社の場合、AC電源や電池で錠の開閉ができる『スマートコントロールキー』の搭載率は71%(22年7月時点)です。ハンドルのボタンを押すかリモコンキーで施解錠可能な『ポケットキー』、ICタグキーをハンドルに近づけて施解錠する『ピタットキー』、生体認証(3D認証)の技術を採用した『顔認証キー』の3種類の中では、『ポケットキー』が人気です」と話す。

また、今後注目したいのは、実用化が進んでいる生体認証タイプのキー。顔認証や音声認証などは非接触での認証ができることから、最近では需要が高まっているようだ。YKK APが行った『生体認証に関する生活者の意識調査』によると、生体認証の認知度の高さや、自宅の玄関扉のカギとして『顔認証』による施解錠機能が期待されていることが確認できたという。

ポケットや鞄にリモコンキーを入れハンドルのボタンを押すか、リモコンキーで施解錠可能。[ポケットキー]  YKK APポケットや鞄にリモコンキーを入れハンドルのボタンを押すか、リモコンキーで施解錠可能。[ポケットキー]  YKK AP

「顔認証」に魅力を感じる人は約52%

調査によると、『生体認証』の認知度については、「知っている人」は84.3%、「使ったことがある」「現在も使っている人」は53.4%と、多くの人に認知されていることが分かる。また、『生体認証』を「使ったことがある」「現在も使っている」人のうち、『顔認証』を一度でも「使ったことがある」「現在も使っている」人は65%という結果だ。空港やホテル、オフィスなどの入館・入場システムなどでの利用経験、スマートフォンやパソコンのロック解除など、日常的にも身近な技術になってきているのだろう。

では、自宅の玄関扉のカギの施錠や解錠機能としてはどうだろうか?『顔認証』に魅力を感じる人は52.1%となっており、『生体認証』として浸透している『指紋認証(57.9%)』に次いで2番目に多いという。これは、カードやリモコンなどのモノを使う鍵の施解錠機能よりも高い結果であり、玄関扉の鍵として人の顔を照合して識別する技術に魅力を感じる人も多いということが読み取れる。

また、玄関扉のカギの施解錠における困りごとは、「大きな荷物を持ちながらの施解錠」「郵便物や手荷物で手が埋まっている時の施解錠」などが挙げられるという。『顔認証』であれば、荷物などで手がふさがっていても施解錠ができ、カバンの鍵を探したり、夜間など暗い中で鍵穴を探すこともなく、その利便性に魅力を感じる人も多いのかもしれない。

『顔認証』の魅力としては「セキュリティ面で安心できそうだから(63.8%)」、「鍵を探す手間がなくなるのが楽だから(61.5%)」「鍵の施解錠に細かい操作が必要ないのが楽だから(42.1%)」を挙げる人が多く、やはり玄関の鍵に関しては、セキュリティと利便性が重要なことが分かる。

グラフ(上)ご自宅の玄関扉(ドアや引戸)の「カギの施錠や解錠」の機能として、以下の機能は魅力的ですか? (下)どのような点で魅力を感じましたか?グラフ(上)ご自宅の玄関扉(ドアや引戸)の「カギの施錠や解錠」の機能として、以下の機能は魅力的ですか? (下)どのような点で魅力を感じましたか?

片桐さんも「2021年に新開発した『顔認証キー』は、顔認証センサーの前に立ち、ハンズフリー・キーレスで顔だけで施解錠できる利便性が特長です」と話す。では、この『顔認証キー』はどのような人(家族)に向いているのだろうか。

「使い方次第でさまざまな年代の方にお使いいただけると思います。たとえば、子育て世代であれば、お子さんを抱いていたり、荷物を持ちながらお子さんと手を繋いでいるなど、両手が塞がっている時でも扉の前に立ち『顔認証』 するだけで施解錠可能。顔認証センサーは小学校低学年の子ども(身長約120cm)の認証もできます。また、20人まで登録でき、必要なくなれば簡単に消去できるので、家族はもちろん、合いカギを渡す必要のある親族の方、また、訪問介護の方などを登録することなども考えられるのではないでしょうか」と片桐さん。


【調査概要】
実施時期 / 調査方法  2021年10月13日~20日 / インターネット調査(YKK AP調べ)
対象者 / サンプル数   全国の20歳~60代男女 / 1,099人

わが家にあった玄関の鍵を選ぶには?

玄関扉には、従来の鍵から最新のキーシステムまで、さまざまなタイプが揃っているが、鍵は家族みんなが日々使用するもの。選ぶ際には、できる限り建材メーカーのショールームで実物の確認をし、その機能を理解することが大切だ。

片桐さんは「毎日開け閉めする玄関扉なので、ご家族それぞれの利用しやすい施解錠方式で暮らしにあったキースタイルを選んでいただくことが大切です。また、施工面では、電気式・電池式の2つの電源方式があるので、リフォームで玄関ドア交換をする場合などは、電池式を選ぶことで電気工事が不要になります」とアドバイスする。

メーカーのショールームでは実際に施解錠操作のできる展示もみられる。家族みんなで実際に動かし、その操作性を確かめたい。特に幼いお子さんやご高齢の方がいらっしゃる場合などは、その使い勝手を十分に検討すること。また、消費電力や電池交換の時期、停電時の対処法なども確認しておきたいポイントだろう。

片桐さんによると「当社場合、『ポケットキー』のリモコンキーと『ピタットキー』のICタグキーとも非常用収納カギが標準搭載されているので、停電時でも安心です」とか。日々の暮らしをイメージしながら、わが家にとって必要な機能の優先順位を明確にして選ぶようにしたい。

リモコンキーを携帯してドアの前に立つだけで施解錠が可能。[スマートドア 顔認証イメージ] YKK APリモコンキーを携帯してドアの前に立つだけで施解錠が可能。[スマートドア 顔認証イメージ] YKK AP

協力  YKK AP

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