水族館は新施設やリニューアル施設が続々オープン、でも「老舗」も負けていない
この夏、水族館がお薦めだ。
コロナ禍で2度にわたり、遠出が制限された夏休みだが、今年はできれば家族旅行に出かけたい。それでも海外はなかなか勇気が出ない。となると、国内地方都市。国内旅行の計画時にお薦めしたいのが水族館だ。水族館は、都道府県にたいてい1つ以上あり、大人も子どもも楽しめる観光施設だからである。
筆者は7月下旬に上梓する『イラストで読む建築 日本の水族館 五十三次』(青幻舎刊)の中で、全国53件の水族館をリポートしている。実際には60件以上見に行った。水族館はここ数年、新施設やリニューアル施設が続々とオープンしており、今が旬だ。それらの新顔には最新の映像技術やアクリル水槽の技術が導入され、予想通り面白い。だが、実際に回ってみて、“予想以上”に面白かったのは“老舗”の水族館だった。ここでは、筆者お薦めの老舗5館を、イラストを交えて紹介する。
まずは、地名を聞くだけで涼しさを感じる北海道から行こう。
01.おたる水族館──夏季のみ実施の屋外ショーは独特の空気感
「おたる水族館」は、1959年に開館した「小樽市立水族館」を前身とし、1974年に第三セクター小樽水族館公社による経営に移行して現施設となった。同館で有名なのは、屋内の展示よりも「海獣公園」という屋外エリアだ。海を仕切っただけの豪快なプールでアザラシやトドを飼育し、夏季のみ公開されるショーが人気を呼んでいる。
海獣公園のショーは、セイウチ、アザラシ、ペンギン、トドがそれぞれ10分ずつ、場所を隣に移しながら行われる。観客がみんなで移動するので、不思議な一体感がある。
それぞれのショーには独特の味があって、ミニ番組を見るよう。例えばペンギンショーは、ペンギンたちがたまにエサにつられて指示に従うものの、ほとんど芸をしない姿が憎めなくて面白い。
本館から海獣公園に向かう散歩道も、なんともいえない緩さに心がほっこりする。「建物の外」をいかに魅力的に感じさせるかは、コロナ禍以降、建築設計の最重要テーマの1つ。施設は古さが目立つが、全体の考え方は極めて先進的である。
02.青森県営浅虫水族館──演劇のような劇場型イルカパフォーマンス
前身となる施設は、1924年に完成した東北帝国大学の浅虫臨海実験所。これは研究を行う実験室と別に水族館を建て、一般来訪者が見学できる先駆的な施設だった。現在の「青森県営浅虫水族館」となったのは1983年。
トンネル水槽がある「むつ湾の海」(冒頭の写真)では、ホタテの養殖の様子や陸奥湾に生息する生物を展示。トンネル水槽は、日本初となった魚津水族館(1981年完成)の2年後に完成した。長さは15mあり、魚津水族館よりも長い。
人気のイルカパフォーマンスは、屋内プールで通年開催。完全屋内なので、夏も涼しい。津軽三味線やねぶた囃子をイメージした音楽に合わせたイルカたちのパフォーマンスは青森ならでは。この屋内プールは、劇場建築で言うところの「プロセニアム形式」で、パフォーマンスの開始とともに幕が左右に開き、終わると閉じる。これは水族館のショーではとても珍しく、演劇を見たような余韻が心に残る。
03.東海大学海洋科学博物館──アクリル大水槽の先駆け、春までで見納め
「東海大学海洋科学博物館」は、東海大学海洋学部に付属する施設で、海に関する知識の普及を目的に一般公開している。建物の設計を手掛けた山田守建築事務所は、建築家の山田守(1894~1966年)が開設した設計事務所。山田はモダニズム建築の旗手の1 人で、代表作に日本武道館や京都タワーがある。東海大学の関連施設も多く設計した。
展示は1階の水族館部門と2階の科学博物館部門で構成。1階は中央に幅10m、奥行き10m、高さ6m の大水槽があり、これは四方向アクリルガラスの水槽では日本最大級だ。水槽内では約50種1000 個体以上の生き物を展示している。
続く展示室では窓のような形状の水槽が波形に並び、駿河湾の生き物を展示する。さらに進むと子どもが大好きなクマノミの展示コーナーで、リング状の水槽を中央に設置。このコーナーの裏手に回ると、クマノミ育成の舞台裏も見られる。
実はこの施設、2023年3月末で一般の有料入館を終了することが決まった。遠足など特別な見学には使用される見込みだが、家族で普通に見に行ける夏は今年が最後となる。隣接して立つ東海大学自然史博物館(同じく山田守建築事務所の設計)も来年3月末で一般の有料入館を終了するので、併せて訪れたい。
04.越前松島水族館─館長発案、「超異次元」な海面浮遊体験
「越前松島水族館」は景勝地・東尋坊のほど近くにあるパビリオン型の水族館だ。1959 年(昭和34年)に開館し、60 年以上の歴史を持つ。
特に歴史を感じるのが「おさかな館」。館の公式サイトにも「ちょっとレトロな雰囲気の、希少価値ある施設です」と書かれている。施設内には水族館の元祖的な展示である「汽車窓式水槽」が並ぶ。水槽の中の装飾はつくり物ではなく「本物の岩」を組み合わせたもの。ガラスは現在主流のアクリルではなく、強化ガラスを使用している。老舗水族館では、むしろそういう希少さを楽しんでほしい。
同館で比較的新しい施設が2009年にオープンした「海洋館」。ここには、館長発案のユニークな水槽、「さんごの海」がある。ガラス張りの水面の上を歩けるようになっており、さらに壁や天井が鏡面。「超異次元な海面浮遊体験」という触れ込みもウソではないレアな体験だ。
海洋館には3000匹のイワシが泳ぐ「海洋大水槽」もある。海洋大水槽では、2 階の水面上からエサやり体験ができる。館のサイトでは「お客様ご自身がイワシの群れをおもしろく動かすことができます」と説明。エサのペレットは1カップ100円。「いつでもOK♪」と軽いノリなのが、老舗ならでは。
05.神戸市立須磨海浜水族園──神戸の歴史の証人も建て替えへ
ここも夏は今回で見納めとなる施設だ。神戸市須磨区の海岸沿いにある「神戸市立須磨海浜水族園」の本館。愛称「スマスイ」。日本初の本格的水族館といわれる「和田岬水族館」(1897 年)を前身とする歴史の古い水族館だ。現在の名称と建物になったのは1987年。
本館は2つの三角屋根が蝶ネクタイのようにつながった形。大型水族館ブームの先駆けとして、完成当時「東洋一」とうたわれた水量1200トンの「波の大水槽」が目玉だ。
にぎやかな屋上の展示も楽しい。屋上には「水辺のふれあい遊園」があり、ペンギンやアザラシ、ウミガメなどをかなり間近で観察できる。タッチングプールではガラ・ルファ(ドクターフィッシュ)のほか、エイにも触れることができる。
1995年の阪神・淡路大震災では、停電や断水により、飼育生物の半数以上を失った。それでも、スタッフの努力と多くの水族館からの支援により、被災から約3ケ月後に営業を再開した。そうした歴史の証人でもある。
かつては本館の他に、いくつかの建物に分かれた分棟型水族館だったが、現在は本館だけが残っている。本館の営業は2023年5月まで。敷地内に新施設が建設中で、2024年春に開館予定だ。
53の日本の水族館にそれぞれ違った魅力
この夏お薦めの老舗水族館5館、いかがだっただろうか。これらの施設、見ていると気持ちがほっこりする。「ほっこり」というのは、暑いときにはむしろ体感温度を下げる感情である。
もちろん、それ以外の水族館にもそれぞれの魅力がある。そしてそれらは、「建築」の視点を加えて見ると、さらに楽しめる。ぜひ『イラストで読む建築 日本の水族館 五十三次』を片手に、家族で地方都市の旅に出かけていただきたい。
『イラストで読む建築 日本の水族館 五十三次』(青幻舎刊、編著:宮沢洋+Office Bunga、2530円)
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