東三河の玄関口として栄えてきた豊橋市
各地の駅前開発が盛んになっている。その理由は、利便性の向上や居住空間のニーズ、あるいは人口減による対策など、土地によってさまざまだ。
そんななか、愛知県豊橋市でも豊橋駅前の再開発が進められている。豊橋駅は、JRの新幹線と在来線、私鉄の名古屋鉄道、加えて豊橋鉄道が隣接したターミナルで、東三河の玄関口といわれる。
愛知県の南東部に位置し、静岡県と接する豊橋市。市域面積261.91平方キロメートルに、約37万人の市民が暮らす。西は三河湾、南は太平洋に面し、東は丘陵地帯と、豊かな自然に恵まれた土地だ。
市では、1998(平成10)年以降、「都市計画マスタープラン」の策定・改定を行いながら、将来を見据えた都市づくりに取り組んでいる。また、2018(平成30)年に策定した「立地適正化計画」において、豊橋駅周辺地区における賑わいと活気に満ちた拠点の形成が図られている。
今回はそれらの計画を参考に、どのように変わりつつあるのか、実際に見てきた。
豊橋市が目指す集約型都市構造
国は、近年の急速な情報化、国際化、少子高齢化などの社会経済情勢の変化に対応した都市再生を図るための措置を定めた「都市再生特別措置法」を2002(平成14)年に制定。その後、2014(平成26)年に施行された「改正都市再生特別措置法」は、“コンパクトシティ法”とも呼ばれている。人口減少・高齢化社会に向けて立地の良い場所で人々が安心して暮らせる、コンパクトなまちづくりが推進されている。このコンパクトシティ法を受け、各市町村では「立地適正化計画」を策定している。
豊橋市でも他の地方都市と同様に、まちの発展として市街地の拡大が進められてきた。しかし、豊橋市の「立地適正化計画」では、「豊橋駅周辺の中心市街地や公共交通の沿線で、今後かなりの人口が減少し、このままでは市街地の人口が大きく減り始める前にまちの賑わいや活力が失われ、公共交通を維持できなくなる恐れがあります」と記載。
豊橋市ではその課題を解消するため、「歩いて暮らせるまち」「暮らしやすいまち」「持続可能なまち」をテーマに集約型都市構造を目指すことに。
そんななかでも、豊橋駅を中心とした地域は、公共交通機関が集中しているほか、市役所などの行政機関、商業施設、文化施設などがある、まさに“拠点”となる場所だ。
現状の課題をもとに、対象区域をゾーニング
「豊橋駅周辺地区市街地総合再生基本計画」のなかには、地域の現況と課題が書かれている。例えば、歩行者天国などのイベントで賑わい創出の取組みなどが行われている一方で、大型商業施設の郊外への進出やインターネットを利用した購買の増加などで、まちの求心力低下が懸念されること、旧耐震基準の老朽建築物が数多く残っていることなどだ。
その状況を踏まえたうえで、歩いて暮らせるまちづくり、商業地域、賑わいの拠点となる施設を結ぶ回遊動線といった、まちづくりの優先すべき要素を考慮してゾーン分けがされた。下記がその図である。
集約型都市構造に向けた利便性の高い生活環境がある対象区域全体を「ストック活用ゾーン」とし、この区域内で主な整備が進められている。そのなかでは、地方都市においては一般的にみられる、民間再開発を核とする。
新たな居住空間や商業ビルによって活性化が進む豊橋駅東口
民間の再開発事業は、2002(平成14)年に始まり、現在進行中のものを含めて、10件が実施されている。
そのうちの9件が豊橋駅東口に接したエリア。路面電車が中央を走る駅前大通と、古くからの商店街が近くにある広小路通りと呼ばれる通り沿いに建設。高層マンションのほか、駅に近いところにホテルやオフィス、飲食店などが入居する複合商業施設の2棟ができた。いずれも豊橋駅から徒歩圏内であるが、路面電車を利用することもでき、利便性が高い。
ビルの間にパブリックスペースも整備
民間による再開発では、事業の検討段階からの勉強会の開催や助言など、市が積極的な支援を行っている。また、公開空地や歩行者空間の確保、屋上・壁面の緑化、駐輪施設の整備など、一定の基準を満たす再開発事業に対しては補助金を交付し、よりよいまちづくりを目指す。
2021年11月に開業した24階建ての複合ビル「emCAMPUS(エムキャンパス)」の東棟には、2・3階に「まちなか図書館」という名の市立図書館が入る。この図書館は、“知と交流の創造拠点”がコンセプト。本との出合いで知の世界を広げるだけでなく、さまざまな講座やセミナーを開催して、人、まちとつながる拠点として、まちづくりの一端を担う。交流できる拠点として、従来の“おしゃべり厳禁”ではなく、BGMが流れるなかで友人と会話をしてもOKという次世代の図書館となっている。
また、現在、emCAMPUSの西棟を建設中だが、この東棟との間に「まちなか広場」という名称の多目的空間とみどりの空間の2つの機能を備えた広場がオープン。ここはもともとあった市の児童広場を再整備した。駅の北にある児童施設「こども未来館(ここにこ)」と、駅の南にある「穂の国とよはし芸術劇場(プラット)」と結ぶ回遊動線の一つとなる。
木陰とベンチのある、まちなかの緑の癒し空間として滞在の時間を生み、多目的空間としてイベントなどを予定して賑わいを創出する、また、駅前大通とビルを挟んで南側にある“水上ビル”という名で親しまれている小売店や飲食店などが入った3つのビル群までの空間をつなぐという、まちのつながりの役割も持つ。
筆者が訪れたとき、平日だったが、ランチタイムの会社員や、小さな子どもを連れた母親たちなど、緑の空間でひと息入れる市民の姿があった。筆者も本取材で対象地区を歩いて見回っている合間にリラックスすることができ、この空間の価値を強く感じた。
一方、豊橋駅西口の状況は…
そして、豊橋駅の通路を渡った先の西口はというと、東口のような商業施設は少ないためか、落ち着いた雰囲気が漂う。三河湾沿岸にある工業地帯や、市民病院などへのアクセスはこちら側が近いのだが、タクシー乗り場はあっても、公共バスの多くは東口に集約されている。
ただ、豊橋駅でも西口は新幹線乗り場に近く、住宅のニーズは高いということで、現在、再開発事業により商業機能を備えた高層マンションが1棟建設中だ。
西口駅前は、送迎車両の待機スペース不足、歩行者と車両の動線の錯綜などが課題で、その環境整備も検討されているという。それが進めば、より便利になるはずだ。
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豊橋市は、国土交通省が2019年に募集を開始した「ウォーカブル推進都市」に賛同。“居心地が良く歩きたくなるまちなかづくり”を推進する。豊橋駅前の再整備のなかでも、歩く楽しみを加えて、回遊性を図っており、歩行者や自転車に配慮したストリートデザイン事業も行った(※本稿3ブロック目で紹介したゾーニングの図を参照)。
愛知県は車社会といわれる。実際に住んでいる者としてその理由に感じるのは、公共交通機関が東京や大阪ほどに網羅されていないことだ。移動手段は車が便利な場面も多い。しかし、高齢化社会においては歩いて行ける距離に行きたいところが集約されていることが望ましいのは想像に難くない。豊橋市では、さらなる豊橋駅前の再開発事業の計画も検討しているという。遠くない未来のためのまちづくりに期待が高まる。
参考:豊橋市都市計画マスタープラン2021-2030
https://www.city.toyohashi.lg.jp/6928.htm
豊橋市立地適正化計画
https://www.city.toyohashi.lg.jp/31847.htm
豊橋駅周辺地区市街地総合再生基本計画
https://www.city.toyohashi.lg.jp/17999.htm















