全国の地価公示の動向と福岡市との比較

全国の地価公示の概況と福岡の地価公示を振り返る全国の地価公示の概況と福岡の地価公示を振り返る

2022年の地価公示は福岡市が大きく躍進している。福岡市の凄さを知るためにも、まず全国の地価公示の動向と比較してみたい。2022年の全国平均は、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇している。
工業地は、2021年も上昇していたことから、6年連続の上昇となっている。

2021年は新型コロナウイルスの影響で全用途平均・住宅地・商業地はいずれも下落したが、1年後の2022年にはいずれの用途も上昇に転じ、全体としては回復傾向にある。昨年の2021年は全国的に地価が下落した地点が多かったが、福岡市の地価は下落していない。2022年の福岡市の地価公示は、住宅地は10年連続、商業地は10年連続、工業地は9年連続での上昇となっている。そのため、福岡市は新型コロナウイルスの影響をほとんど受けていないといえる。

また、上昇率に関しても福岡市は高い値を示している。用途別にみると、住宅地の変動率は全国平均が+0.5%、東京圏が+0.6%、大阪圏が+0.1%、名古屋圏が+1.0%となっている。一方で、福岡市の変動率は+6.1%である。

全国の地価公示の概況と福岡の地価公示を振り返る令和4(2022)年地価公示 圏域別・用途別対前年平均変動率
出典:国土交通省ウェブサイト

地方圏の人口10万以上の市の対前年平均変動率
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467029.pdf

商業地の変動率は、全国平均が+0.4%、東京圏が+0.7%、大阪圏が+0.0%、名古屋圏が+1.7%となっている。一方で、福岡市の変動率は+9.4%である。

工業地の変動率は、全国平均が+2.0%、東京圏が+3.3%、大阪圏が+2.5%、名古屋圏が+1.6%となっている。一方で、福岡市の変動率は+14.5%である。

令和4年地価公示の概要(福岡県)
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/611385_61059706_misc.pdf

用途別・圏域別対前年平均変動率の推移
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467043.pdf

このように福岡市はここ数年連続で地価が上昇し続けており、またその上昇率も高いことから、全国の中でもかなり地価が上がっている地域であるといえる。

福岡市の商業地が大きく上昇

福岡の地価公示の特徴は、なんといっても商業地の目覚ましい上昇率である。商業地の上昇率の全国トップ10のうち、福岡市の標準地が7地点もランクインしている。トップ10にランクインしている標準地は、以下の通りである。

3位:「福岡博多5-21」(福岡市博多区祇園町) 上昇率+18.0%
5位:「福岡博多5-5」(福岡市博多区博多駅南3丁目1) 上昇率+16.2%
6位:「福岡中央5-26」(福岡市中央区渡辺通2丁目) 上昇率+15.6%
7位:「福岡中央5-7」(福岡市中央区清川2丁目) 上昇率+15.2%
8位:「福岡中央5-20」(福岡市中央区天神4丁目) 上昇率+15.1%
9位:「福岡東5-2」(福岡市東区名島3丁目) 上昇率+14.9%
10位:「福岡博多5-11」(福岡市博多区博多駅東3丁目) 上昇率+14.9%

商業地の変動率上位順位表(圏域別)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467034.pdf

1位と2位は北海道北広島市、4位は北海道恵庭市となっている。ランキングは「上昇率」であるため、もともと地価が低い地域は伸びしろが大きくランクインしやすい。一方で、福岡市はもともと地価が高い大都市であるにも関わらず、上昇率ランキングで上位を占めていることは特筆すべき点にあたる。

令和4(2022)年地価公示 商業地の変動率上位順位表(圏域別)<br>
出典:国土交通省ウェブサイト令和4(2022)年地価公示 商業地の変動率上位順位表(圏域別)
出典:国土交通省ウェブサイト

なぜ福岡市がこのような躍進に至ったかというと、福岡市の都市政策である「天神ビッグバン」が功を奏したことが挙げられる。天神ビッグバンとは、天神交差点から半径500m、広さにして約80haの範囲で一定期間のうちに建て替えを行うと、容積率の割り増しをもらえる制度のことである。容積率とは敷地面積に対する延床面積の割合のことであり、容積率が高いほど賃貸面積を増やせるため、より収益性の高いビルを建てることができる。

この天神ビッグバンの最大のポイントは、「期間限定」という部分である。2026年度末までに竣工させたビルが、割り増し容積率をもらえる期限となっている。このような割り増し容積をもらえる制度には「エリア限定」というのはよくあるが、「期間限定」というのは珍しい。

天神ビッグバンでは、エリアも期間も限定したため、ここ数年のうちに古いビルの建て替えが一気に生じている。複数の再開発プロジェクトが同時多発的に発生したことで、加速度的に街がリニューアルされて地価が大きく上昇した結果となっている。天神ビッグバンは、「天神交差点から半径500m」という狭いエリアにしか適用されていないが、その波及効果は大きい。

商業地の上昇率全国トップ10の中に入っている地点は、天神ビッグバンから外れているエリアもあり、既に周辺エリアまで地価上昇が波及していることがわかる。福岡市の商業地は10年連続で上昇しているが、先に天神周辺が上昇したことで2022年時点では地価上昇が周辺エリアまで及んでいる状況である。2015年から始まった天神ビッグバンの及ぼした影響は、局所的・短期的なものではなく、広域的・長期的な効果があったということが実証されている。

例えば、他の大都市である名古屋市の商業地は、2021年は▲2.1%の下落で、2022年は+3.2%の上昇となっている。それに対して、福岡市の商業地は、2021年は+6.6%の上昇、2022年は+9.4%の上昇となっており、お見事というほかない。

街づくり政策が新型コロナウイルスのような外部要因を打ち負かした好事例であり、他の自治体でも導入されていくものと思われる。

令和4(2022)年地価公示 商業地の変動率上位順位表(圏域別)<br>
出典:国土交通省ウェブサイト天神ビジネスセンタービル 天神ビッグバン再開発ビルの第1号

福岡市の住宅地は6.1%の上昇

福岡市の住宅の上昇率は+6.1%であり、全国平均の+0.5%と比較しても十分に高い。福岡市は職住近接しているため、商業地がマンション用地と競合することが多い。

地方圏の人口10万以上の市の対前年平均変動率
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467029.pdf

福岡市は天神ビッグバンによって利便性の高いエリアの地価が上がっており、マンション用地の高騰も生み出している。住宅地の場合、福岡市の波及光波は広範囲に及んでいる。近年、福岡市は九州全域から人を集めており、九州の中で「福岡一極集中」が発生している。

本州で東京一極集中によって隣接する神奈川県や埼玉県、千葉県の地価が上がっているように、九州でも福岡市周辺の自治体は住宅地が上昇している。例えば近隣の大野城市にある「大野城-2(大野城市上大利2丁目)」は、福岡市への交通アクセスが良いため、2022年は+11.1%上昇している。

特徴的な地価動向が見られた各地点の状況
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001469931.pdf

福岡市の商業地は変動率上位に7つランクイン

福岡市は天神ビッグバンによって、商業地が上昇し続けており、しかも商業地の上昇率全国トップ10の中に7地点もランクインしている。福岡市で最も上昇率が高かった地点は「福岡博多5-21(福岡市博多区祇園町)」(上昇率18.0%)であり、天神ビッグバンのエリア外の地点となる。

特徴的な地価動向が見られた各地点の状況
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001469931.pdf

「福岡博多5-21」が上昇した理由は、2023年3月に開設予定の地下鉄七隈線の新駅「櫛田神社前駅」に対する期待感によるところが大きい。新駅は天神地区と博多地区の中間地点にあり、利便性が高い立地となっている。

天神ビッグバンは単に地価を上げただけでなく、地下鉄七隈線に新駅を作るきっかけを後押しいている。新駅計画ができ、さらにその周辺の地価も上がったことから、天神ビッグバンは福岡市に好循環を生んでいるといえる。

福岡県福岡市の福岡博多5-21(祇園駅170m)は18.0%上昇。令和5(2023)年3月に地下鉄七隈線の延伸で設置される新駅「櫛田神社前駅」周辺は地価の向上が継続している。写真は福岡市地下鉄七隈線福岡県福岡市の福岡博多5-21(祇園駅170m)は18.0%上昇。令和5(2023)年3月に地下鉄七隈線の延伸で設置される新駅「櫛田神社前駅」周辺は地価の向上が継続している。写真は福岡市地下鉄七隈線

福岡市の工業地は+14.5%と大きく上昇

福岡は、工業地の上昇率も目覚ましい。全国平均の上昇率が+2.0%である中、福岡市の上昇率は+14.5%である。福岡市の工業地では、特に「福岡東9-1(福岡市東区箱崎ふ頭5丁目)」が大きく上昇しており、その上昇率は+19.3%にもなっている。「福岡東9-1」の上昇率は、工業地の中で全国7位にランクインしている。

特徴的な地価動向が見られた各地点の状況
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001469931.pdf

2022年の地価公示では、インターネット通販の拡大から工業地の中でも倉庫建設に適した物流適地の上昇が目立っている。「福岡東9-1」周辺も倉庫街であり、地価が大きく上昇する結果となった。

福岡県福岡市の福岡東9-1(箱崎九大前駅1.6km)は19.3%上昇。写真は福岡市東区福岡県福岡市の福岡東9-1(箱崎九大前駅1.6km)は19.3%上昇。写真は福岡市東区

今後の動向

福岡の場合、政策によって能動的に街づくりを推進してきたことから、来年も地価上昇をキープできる可能性は高いと思われる。しかし、2022年に入って以降、住宅ローンの10年固定の金利上昇や、ウクライナ情勢等の不安要素は浮上しているため、予断は許さない状況にはあるといえる。

外部要因に対しては、何もしなければ受動的に悪影響を受けてしまうが、福岡は新型コロナウイルスのような外部要因を跳ね返してきた実績がある。福岡には外部要因に関わらず自ら地価を上げるパワーがあるため、少なくとも天神ビッグバンが終わるまでは大きく崩れることはないと思われる。今後は、福岡の成功モデルが全国に波及していくことを期待したい。

福岡市中央区天神福岡市中央区天神

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