子連れでも安心して出かけられるモデルルーム

「パークホームズ調布桜堤通り」のモデルルーム内。キッズルーム(写真奥)には保育士が常駐している「パークホームズ調布桜堤通り」のモデルルーム内。キッズルーム(写真奥)には保育士が常駐している

新築分譲マンションの購入を検討する際、必ず訪れる場所がモデルルーム。しかし、小さい子どもを連れての見学となると、何かと大変だろう。そうしたなか、乳幼児連れでも安心して出かけられるよう、サービスを導入するモデルルームが出てきていると聞いた。そこで今回、取材に訪れたのは三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ調布桜堤通り」(東京都調布市)のモデルルーム。同社では2015年6月より、ファミリー層向け物件を対象に子ども連れの母親が落ち着いて見学できるよう、モデルルームのサービス拡充に力を入れている。その第1号がここである。

館内へ入ると、まず目に入るのは、エントランスに置かれたベビーカー。「このモデルルームでは、ベビーカーの貸し出しを行なっています。ただ2階へは階段を昇っての移動になりますから、ベビーカーでは移動できません。お子さんを抱っこしていただくかおんぶしていただくことになるので、ご希望の方には抱っこ紐の貸し出しをしています」と話すのは、三井不動産レジデンシャル・市場開発部ブランドマネジメントグループの山本洋介さん。同社で乳幼児連れ家族向けのサービス強化を発案し、推進する担当者である。山本さんはプライベートでは、7歳、5歳、3歳、0歳の4人の子どもの父親。子どもたちの世話をしたり、妻の気分転換も兼ねて1日中外へ遊びに連れていったりすることもあるといい、子育てに積極的に関わるイクメンである。そんな父親としての目線が活かされたサービスであることは、山本さんの詳細な説明ぶりからも感じられた。

揺れるベビーチェアやミルクを作るためのウォーターサーバーも

キッズチェアの貸し出しもあるので、母と子が並んで営業担当者の話を聞くことができる

キッズチェアの貸し出しもあるので、母と子が並んで営業担当者の話を聞くことができる

三井不動産レジデンシャルではファミリー向け物件のモデルルームにおいて、以前から授乳室やキッズルームの設備を導入していたといい、この「パークホームズ調布桜堤通り」でもオムツ替えや授乳ができる授乳室、遊具やおもちゃが揃うキッズルームを完備。また、おしりふきの用意や、キッズルームには保育士も常駐している。
「キッズルームはガラス張りで、すぐ隣が物件に関する商談スペースです。お母さんが商談中でもお子さんの様子が見えますので、安心していただけると思います」(山本さん)

モデルルームでは営業マンから物件の説明を聞いたり、いろいろ質問したりしていると、つい長時間の滞在になる。となると、小さな子どもがぐずったり、泣き出したりすることもあるだろう。そうしたケースを想定して、バウンサー(揺れるベビーチェア)や、商談中の母親のそばにいられるようなキッズチェアの貸し出しサービスもある。また、粉ミルクが用意され、適温のお湯が出るウォーターサーバーも設置されているので、ミルクを作って飲ませることもできる。さらにはベビー関連製品会社数社からの協力を得て、ベビーフードやドリンク、おやつなどのサンプルを用意。これらは持ち帰って試すことができるとあって、来場者に喜ばれているという。

出産や育児が住まい購入を考える、大きなきっかけになっている

このように子連れでやってくる母親への配慮がなされたサービスとなっているが、山本さんはどのような経緯で発案にいたったのだろう?

「私の主な業務は企業ブランディングや広報PR業務ですが、その一環でモデルルームのあり方を考える取り組みにも着手しています。まず、あらためて一般消費者の目線に立ってみて、モデルルームに来場するお客様はどういう方たちなんだろうと考えてみることから始めました。当社の近年の首都圏での調査データを調べてみたら、来場者の3組に1組がお子さんがいる子育て世代であることがわかりました。つまり、妊娠、出産、子育てというライフステージの変化が住まい購入のきっかけになっているわけです。では、そうした住まいの情報を必要としている子育て世代の方々にとって、モデルルームのサービスの現状はどうなんだろうと。私自身、子どもを連れてさまざまな商業施設に出かけていて、子連れでも安心して買い物などを楽しめるよう、サービスの行き届いた店が増えていると思います。一方、当社のモデルルームでは授乳室やキッズルームといった設備の導入は進めているのですが、まだまだできることがあるのではと、考えるようになったのです」(山本さん)

そこで課題を探るべく、山本さんが取った行動は子育て中の母親たちの声を聞いてみること。広報PR活動で培った人脈を活かし、乳幼児をもつ親を対象とする雑誌・Webサイトである『赤すぐ』の編集部に声をかけたところ、快諾してもらえた。
まず、『赤すぐ』編集部の協力により、育児中の母親のニーズをつかむために読者にインターネット調査を実施。次のような結果だった。

<子連れでショッピングを楽しむときにあるとよいサービス>
●授乳室(個室、カーテン)などがある   82%
●オムツ替えスペースがある   81%
●オムツ用ビニール袋がおいてある   35%
●キッズスペースがある   28%
●ベビーカーが借りられる   19%
●ベビー休憩室(泣いても大丈夫)がある   18%
※「赤すぐママ隊」調べ(調査対象83名、複数回答含む)

左上)専用の授乳室。オムツの交換にも利用できる。右上)バウンサーの貸し出しも行なっている。右下)すべり台のあるキッズルーム。左下)キッズルームにはおもちゃ類も揃う。

左上)専用の授乳室。オムツの交換にも利用できる。右上)バウンサーの貸し出しも行なっている。右下)すべり台のあるキッズルーム。左下)キッズルームにはおもちゃ類も揃う。

子育て中の母親たちにとって、モデルルームは敷居が高い場所!?

ベビーフードやドリンクなどのサンプルコーナー。妊娠中の人のためのマッサージオイルなども用意ベビーフードやドリンクなどのサンプルコーナー。妊娠中の人のためのマッサージオイルなども用意

加えて山本さんは『赤すぐ』読者数十名に対してグループインタビューを行ない、モデルルーム見学について、母親たちの声を聞いた。

最も多かったのは、妊娠中や乳幼児連れのモデルルーム見学は日常の買い物と比べ、敷居が高いという声だった。「赤ちゃん連れで行って泣いてしまって、周りに迷惑をかけたら困る」「物件の販売をする場所だから子連れで行ってもいいのかどうかわからない」「滞在時間が長くなると抱っこ紐だけでは疲れてしまう」といった不安や心配の声が聞かれたという。
「物件に興味があっても買う気がないなら行ってはいけないのかな、という声も多数聞かれました。当社では住まいに興味をお持ちであれば買う、買わないにかかわらず、ご来場いただきたいというスタンスなのに、子育て中のお母さんをはじめとする消費者の方々はそうは思っていない。お互いの想いがマッチングしていないと感じました」(山本さん)

なにより、このグループインタビューで山本さんが痛感させられたのは、情報を発信することがいかに重要であるかということ。「当社ではキッズルームや授乳室完備のモデルルームもあるのですが、子育て世代の方にはほとんど知られていないことがわかりました。それもそのはずで、当社ではそういう情報を外に発信してこなかったんです。でも商業施設のケースを考えると、授乳室やキッズルームなどの情報をホームページで伝えたり、店内にもわかりやすく表示してお客様に案内しています。そういう他業種の取り組み方を学び、子育て世代の方が気軽に立ち寄れるモデルルームへと変えていかなければと思いました」と、山本さんはふり返る。

そんな山本さんの考えを、インターネット調査とグループインタビューの結果とともに現場の営業スタッフに伝えたところ、「ぜひ一緒に取り組みに加わりたい!」と予想以上に前向きな反応が得られたという。

高齢者や障がい者に配慮したモデルルームスペースづくりにも取り組みたい

三井不動産レジデンシャル株式会社市場開発部ブランドマネジメントグループの山本洋介さん。マンションコミュティの活性化にも取り組んでいる三井不動産レジデンシャル株式会社市場開発部ブランドマネジメントグループの山本洋介さん。マンションコミュティの活性化にも取り組んでいる

そうして山本さんはアイデアを練り、前述のようなサービスへと進化させることができた。と同時に、折り込みチラシに情報を盛り込む、館内に案内を表示するという具合に、現場の営業担当者から情報発信に注力してもらえるようになったという。
「設備面も重要ですが、個々のお客様に合わせた接客のしかたや、お子さん連れのお客様に配慮する気遣いも重要。こうしたことを現場の営業担当が自ら考えてくれたりと、意識の変化が見られたこともよかったです」と、山本さん。

こうした乳幼児連れ家族向けサービスを今年6月から開始し、「来場者アンケートは現在集計中ですが、ほとんどの方が子連れ向けサービスに満足してくださっているようです。販売面でも、この調布の物件は好調です」と、手応えを感じている。同様のサービスは、現在ではこのほかにも同社が首都圏で展開する8つの物件のモデルルームで実施している。いずれも2015年12月末までの期間限定でのサービスというが、「今後は子育て世代向けサービスがマンションモデルルームでは当たり前のものになるといいなと思います。ゆくゆくはご高齢の方や障がいのある方にも配慮したサービスも、モデルルームスペースに導入していきたいです」と、山本さんは抱負を語る。

マンションモデルルームは、将来の暮らしを思い描くための場でもある。住まいに興味を持つ人がより訪れやすいような場になることを期待したい。