固定資産税の基本と築年数の影響
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・建物の所有者にかかる地方税です。購入価格ではなく「固定資産税評価額」に基づいて計算され、特に建物は築年数によって評価額が変わり、税額に影響します。
詳しくは、「固定資産税とは」をご覧ください。
築年数で変わる固定資産税のシミュレーション
固定資産税は、建物の経年劣化による評価額の減少や、新築時などに適用される軽減措置の期間満了によって税額が変わります。一戸建てとマンションでは、構造の違いから評価額の減り方が異なり、同じ価格帯でも税額が変わる傾向があります。
詳しくは、「〈新築・築浅・築古〉木造一戸建ての固定資産税をシミュレーション」をご覧ください。
固定資産税の負担を抑えるポイント
固定資産税は基本的に減額できませんが、自治体によっては減免制度がある場合もあります。また、物置の設置に注意したり、クレジットカード払いを利用してポイント還元を受けたりするなど、必要以上の負担を防ぐ方法はあります。
詳しくは、「固定資産税を安く抑える方法はある?」をご覧ください。

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土地や建物を保有するときには毎年、固定資産税が発生します。

 

固定資産税は不動産の条件や築年数によっても違いがあるため、具体的な費用を知りたい場合には、計算方法を正しく理解しておくことが大切です。

 

今回は固定資産税の計算方法を紹介したうえで、築年数別に一戸建てとマンションの固定資産税をシミュレーションします。

家の固定資産税

 

固定資産税とは、所有している土地・建物や機械・設備等の償却資産にかかる地方税(市町村税)であり、不動産も課税の対象となります。

 

毎年1月1日時点での所有者に納税義務が発生し、4回に分けて1年分を納付するのが一般的です。

 

固定資産税は購入価格ではなく、「固定資産税評価額」に基づいて決められ、そこからさらに特例や負担調整額などを反映させた「課税標準額」を基に計算します。

 

なお、評価額のおおよその目安としては、土地なら「地価公示価格の70%程度」、建物なら「時価の50~70%程度」とされています。

 

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固定資産税の計算方法

 

固定資産税は、土地と建物のそれぞれに課税されるものであり、それぞれ計算方法には若干の違いがあります。ここでは、固定資産税の計算方法を具体的に解説します。

 

土地の固定資産税は「課税標準額×1.4%(標準税率)」で求めます。地方税であることから、自治体によって税率に多少の差はあるものの、多くのエリアでは1.4%が基準とされています。

 

なお、マンションの場合は「1棟あたりの敷地面積を戸数で割ったもの」を土地の所有区分として計算します。

 

建物についても、基本的な計算式は「課税標準額×1.4%」であり、土地の場合と違いはありません。ただ、建物は経年によって価値が下がっていくため、評価額も低くなっていくのが一般的です。

 

そのため、固定資産税評価額の計算には「経年減価補正」と呼ばれる利率が用いられ、築年数ごとに価格が低くなるような補正がかかります。

 

築年数によって固定資産税額が変わる理由は、前述のとおり「建物の経年劣化」が評価額に反映されるためです。

 

また、もうひとつの理由として、「特例措置を受けられる期間」が決まっていることも大きく関係しています。

 

特例措置は条件に応じて適用期間が具体的に決められているため、一定の築年数を経過すると、かえって税額が高くなってしまうタイミングもあるのです。

 

そのため、軽減措置の仕組みについても正しく理解しておくことが大切です。

 

土地については、新築・中古ともに、面積に応じた以下の軽減措置を受けることができます。

 

軽減率

小規模住宅用地

(200平米以下)

評価額×1/6

一般住宅用地

(200平米を超える部分)

評価額×1/3

建物については、床面積120平米までの部分は、固定資産税は2分の1に減額されます。

 

ただし、建物の軽減措置には以下のような条件が設けられているため、注意が必要です。

条件

  • 共通の条件:床面積50平米以上280平米以下
  • 一般住宅:新築後3年間
  • 長期優良住宅:新築後5年間
  • 3階建て以上かつ耐火、準耐火建築物:適用期間2年間の延長

マンションの場合は、ほとんどが鉄筋コンクリート造の耐火建築物となるため、適用期間が2年間延長されるものと考えて問題ありません。

 

たとえば、新築かつ長期優良住宅であれば、合計で7年間にわたって、固定資産税負担額が2分の1になるということです。

 

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木造一戸建ての固定資産税

 

ここでは、新築と築浅、築古の3つのパターンを想定して、木造一戸建ての固定資産税を実際に計算してみましょう。

 

なお、今回はシミュレーションにあたり、以下の条件を設定しました。

設定条件

  • 土地の固定資産税評価額2,000万円
  • 建物の固定資産税評価額2,500万円
  • 土地面積120平米
  • 建物面積80平米
  • 計算は新築と築6年、築10年、築27年のそれぞれについて行う
  • 建物の経年減価補正率は東京法務局のデータ(※)を参照する

※東京法務局「経年減価補正率表

 

土地の固定資産税については、築年数に応じて変わるわけではありません。

 

このケースでは、土地の面積が200平米以下(小規模宅地)であるため、特例適用後の計算式は以下のとおりです。

計算式

土地の固定資産税

2,000万円×1/6×1.4%=4.67万円

 

建物の固定資産税は築年数によって異なるため、より細かな計算が必要となります。

 

まず、新築の場合については、特例が適用されるため、計算式は以下のようになります。

計算式

建物の固定資産税(新築)

2,500万円×1.4%×1/2=17.5万円

 

続いて、築6年のケースを見ていきましょう。築6年が経過すると、特例の適用期間からは外れてしまうため、税額が2分の1として計算することができません。

 

ただ、築6年が経過すると、建物の減価補正率は0.62となります。そのため、計算式は以下のとおりです。

計算式

建物の固定資産税(築6年)

2,500万円×0.62×1.4%=21.7万円

 

築10年が経過すると、減価補正率が0.5となり、建物の評価額はちょうど半分になります。そのため、最終的な税額は、新築で特例を適用した場合と等しくなります。

計算式

建物の固定資産税(築10年)

2,500万円×0.5×1.4%=17.5万円

 

さらに年数が経過して、築27年を超えると、減価補正率は0.2で固定されます。大幅に建物の評価額が下がるため、固定資産税負担額も少なくなるのです。

計算式

建物の固定資産税(築27年)

2,500万円×0.2×1.4%=7万円

これまでの結果を表にまとめると、以下のようになります。

 

土地の固定資産税

建物の固定資産税

合計額

新築

4.67万円

17.5万円

22.17万円

築6年

4.67万円

21.7万円

26.37万円

築10年

4.67万円

17.5万円

22.17万円

築27年

4.67万円

7万円

11.67万円

このように、一概に築年数が経過するほど安くなるわけではない点に注意しておきましょう。

 

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マンションの固定資産税

 

続いて、マンションの固定資産税についても同じように見ていきましょう。マンションの場合は、前述のように敷地面積を戸数で割って土地の面積を求めるため、一戸建てと比べて土地の価格は安くなります。

 

一方、建物は一般的に鉄筋コンクリート造になるため、評価額が高くなる点や減価補正率が小さくなる点に違いが生まれます。

設定条件

  • 土地の固定資産税評価額1,500万円
  • 建物の固定資産税評価額3,000万円
  • 土地面積80平米
  • 建物面積80平米
  • 計算は新築と築6年、築10年、築27年のそれぞれについて行う
  • 建物の経年減価補正率は東京法務局のデータを参照する

 

土地については、一戸建てと同じように築年数による違いはありません。

計算式

土地の固定資産税

1,500万円×1/6×1.4%=3.5万円

 

建物については、新築の軽減措置を適用すると以下の計算式になります。

計算式

建物の固定資産税(新築)

3,000万円×1.4%×1/2=21万円

 

続いて、築6年のケースを見ていきましょう。築6年のマンションでは、「長期優良住宅であるかどうか」によって、特例適用の有無が変わります。

 

鉄筋コンクリート造における築6年の減価補正率は0.8335となっているため、計算式に当てはめると以下のようになります。

計算式

建物の固定資産税(築6年)

一般住宅

3,000万円×0.8335×1.4%=35万円

 

長期優良住宅

3,000万円×0.8335×1.4%×1/2=17.5万円

 

次に、築10年のケースについて計算します。マンションは築10年が経過しても減価補正率は0.7397であり、建物の評価額が半分になるわけではありません。

計算式

建物の固定資産税(築10年)

3,000万円×0.7397×1.4%=31.1万円

 

マンションの場合は、減価補正率が固定されるのが築45年以降であり、築27年の時点では0.3596と一戸建てよりも建物の評価が高くなります。

計算式

建物の固定資産税(築27年)

3,000万円×0.3596×1.4%=15.1万円

これまでの結果を表にまとめると、以下のようになります。

 

土地の固定資産税

建物の固定資産税

合計額

新築

3.5万円

21万円

24.5万円

築6年

3.5万円

35万円

38.5万円

築6年(長期優良住宅)

3.5万円

17.5万円

21万円

築10年

3.5万円

31.1万円

34.6万円

築27年

3.5万円

15.1万円

18.6万円

あくまでも一例ではあるものの、マンションは建物の評価額が落ちるスピードが遅いため、同じ価格帯の一戸建てよりも固定資産税の負担額は高くなる傾向があります。

 

ただ、特例の適用期間や土地の広さによっても結果は異なるため、実情に応じて計算することが大切です。

 

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固定資産税を安く抑える方法

 

固定資産税は計算方法が明確に決められているため、特例を利用する以外には、基本的に減額することができません。

 

ただ、必要以上の負担を防ぐ方法はあるので、最後に具体的なポイントを紹介します。

 

物置やシャッター付きのガレージなど、屋根と三方を囲んだ壁がある建物については、自治体によって固定資産と認定されてしまう場合があります。

 

基礎を固定していなければ例外的に課税されないなどのルールが設けられていることもあるため、設置する前にきちんと決まりを確かめておくことが大切です。

 

自治体によっては、固定資産税の減免制度を設けているところもあります。制度の有無や条件は自治体によって異なるため、減免措置についても自治体のルールを確認しておくことが大切です。

 

固定資産税の納付は、現金だけでなくクレジットカードや電子マネーなどを利用することができます。

 

税額自体は変わらなくても、手数料との差し引きによってはポイント還元分がお得になるため、積極的に利用してみましょう。

 

固定資産税は滞納すると延滞金が生じてしまいます。延滞金の利率は最大で年14.6%と高く設定されているため、滞納が起こらないように計画的な支払いを行うことが大切です。

固定資産税を確認する

  • 固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課せられる地方税
  • 土地と建物のそれぞれに課税され、税率は1.4%が標準
  • 築年数によって税額が異なるのは「建物の経年劣化」と「特例の適用期間」による影響
  • 一戸建てとマンションでは、同じ価格帯の物件でも固定資産税が異なる
  • 固定資産税は負担を増やさないための注意点を押さえておくことが大切
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Q.1 固定資産税は、家を買ったら毎年支払うものですか? 税額の決まり方も教えてください。

A.1 はい、固定資産税は、家や土地を持っている限り毎年支払う税金です。税額は購入価格ではなく、自治体が決める「固定資産税評価額」を基に計算されます。評価額の目安は、土地が公示価格の70%程度、建物が時価の50~70%程度です。

Q.2 「家が古くなると固定資産税は安くなる」と聞きましたが、本当ですか?

A.2 はい。建物は年数が経つにつれて価値が下がるため、その評価額も下がり、固定資産税は安くなっていきます。ただし、土地の評価額は築年数で変わらないため、土地にかかる税金は基本的にそのままです。

Q.3 新築の家は税金が安くなると聞きましたが、どれくらい、いつまで安くなりますか?

A.3 新築の建物には、固定資産税が一定期間2分の1になる軽減措置があります。期間は、一般的な木造一戸建てなら新築後3年間、マンションなどの耐火・準耐火建築物なら新築後5年間です。「長期優良住宅」に認定されると、それぞれ2年間延長されます。

Q.4 新築の軽減措置が終わると、税金が急に高くなることがあると聞きました。

A.4 はい。軽減措置の期間が終わると税金の割引がなくなるため、一時的に負担額が上がることがあります。たとえば、あるシミュレーションでは、木造一戸建ての場合、新築時よりも軽減措置が切れた築6年目の方が税額は高くなりました。

Q.5 同じような価格帯なら、一戸建てとマンションの固定資産税はどちらが高いですか?

A.5 一般的にはマンションの方が高くなる傾向です。マンションは頑丈な鉄筋コンクリート造で、木造が多い一戸建てに比べて建物の価値が下がりにくく、評価額が高く維持されるためです。ただし、土地の広さなどによっても異なります。

Q.6 庭に物置やカーポートを置きたいのですが、固定資産税はかかりますか?

A.6 屋根があり、三方を壁で囲まれた物置やシャッター付きのガレージなどは、固定資産税の課税対象となる「建物」と見なされる場合があります。判断基準は自治体によって異なるため、設置する前に役所の窓口などで確認しましょう。

Q.7 固定資産税の負担を少しでも軽くする方法はありますか?

A.7 税額自体を下げるのは難しいですが、負担を増やさないための工夫はできます。自治体が対応していれば、クレジットカード払いでポイントを貯めるのも一つの方法です。税金を滞納すると高い延滞金がかかるため、期限内に計画的に支払うことが重要です。

更新日: / 公開日:2021.10.04