贈与された資金で家を購入するときは、贈与税がどのくらいかかるか気になるところでしょう。しかし、親など直系尊属からの贈与であれば、最大3,000万円まで非課税になる制度があることをご存じでしょうか。直系尊属以外からの贈与でも一定額非課税になる制度があり、これらを利用することで税負担を軽減させることができます。

この記事では、家の購入時における贈与税の非課税制度について、その要件と限度額や計算方法、注意点などを詳しくご説明します。

贈与税

家の購入、新築、増改築等をするための資金として贈与を受けた場合、贈与税の課税方式は次の3つです。受贈者(贈与を受ける人)は申告をする際に選択できます。

  • 住宅取得等資金の贈与税の非課税
  • 暦年課税
  • 相続時精算課税

各課税方式は、対象となる人や非課税額などの要件が異なります。なかには併用できるケースもあるため、それぞれの特徴を知っておくことが大事です。以下に、それぞれの要件や限度額、注意点などをまとめましたので確認していきましょう。

住宅取得の場合の直系尊属からの贈与

「住宅取得等資金の贈与税の非課税」制度とは、住宅の取得資金として親や祖父母など直系尊属から贈与を受けた場合につき、要件を満たすことで一定額まで非課税になる制度です。非課税の特例という位置づけで、その限度額は最大3,000万円となります。

 

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度について、詳しく見ていきましょう。

 

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度を利用して非課税にするためには、受贈者と建物のそれぞれが要件を満たす必要があります。

 

贈与を受ける「受贈者」には、贈与者の子や孫などの直系卑属であること、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上であること、年間所得が2,000万円以下であることなどの要件があります。また建物には、家屋の床面積が50m2以上240m2以下、床面積の2分の1が受贈者の居住用であるなどの要件があります。

 

簡単にまとめると、「20歳以上の受贈者が自ら住むために購入した住宅である」という条件を満たす必要があるということです。

 

非課税になる限度額は以下の表のとおりです。

 

【消費税率10%の場合の非課税限度額】

住宅購入などの契約締結日

省エネ住宅などの場合

左記以外の場合

2019年4月1日~2020年3月31日

3,000万円

2,500万円

2020年4月1日~2021年3月31日

1,500万円

1,000万円

2021年4月1日~2021年12月31日

1,200万円

700万円

 

【上記以外の契約の非課税限度額】

住宅購入などの契約締結日

省エネ住宅などの場合

左記以外の場合

~2015年12月31日

1,500万円

1,000万円

2016年1月1日~2020年3月31日

1,200万円

700万円

2020年4月1日~2021年3月31日

1,000万円

500万円

2021年4月1日~2021年12月31日

800万円

300万円

 

また、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度は、後に紹介する暦年課税方式の基礎控除110万円と併用できるため、2つの方式を合わせれば最大3,110万円の贈与額が非課税になります。加えて、適用期間が限定されている特例ではありますが、相続時精算課税方式とも併用でき、こちらは合わせて最大5,500万円まで非課税になります。

 

住宅取得等資金の贈与税の非課税制は、限度額内の贈与を受けて贈与税が0円になった場合でも、申告しなければ適用されません。必ず納税地の所轄税務署への申告が必要です。

 

申告期限は、贈与を受けた年から次の年の2月1日〜3月15日の間に限られているため忘れずに申告しましょう。申告の際には、贈与税の申告書、戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書のコピーといった書類が必要です。

 

詳細の要件については、国税庁ホームページをご確認ください。

 

参照:「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」(国税庁ホームページ)

年間110万円以下であれば申告も不要です

年間110万円以下であれば申告も不要です

暦年課税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計に対して、贈与税を計算する方式です。直系尊属と、直系尊属以外の親族や他人から贈与を受けた場合に適用されます。なお、暦年課税は贈与全般に関する課税方式のため、贈与金の仕途は住宅取得資金に限りません。

 

暦年課税の計算式は以下のとおりです。

贈与税=(1年間に贈与された額ー110万円)×税率ー控除額

暦年課税には年間110万円の基礎控除があり、110万円までは非課税となります。また、年間の贈与額が110万円以下であれば申告の必要もありません。年間の贈与額が110万円を超えた場合は、超えた分に贈与税がかかるので、以下の税率と控除額を基に計算して申告します。

 

暦年課税方式の税率と控除額は、「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の2通りあります。贈与する側や贈与される側の条件によって、適用される税率と控除額が以下のように異なります。

 

まず「特例贈与財産用」は、祖父母や父母などの直系尊属が、その年の1月1日現在で20歳以上の者に贈与する場合に適用されます。直系尊属なので、兄弟姉妹や配偶者の祖父母や父母などが贈与する場合は当てはまりません。

 

一方、「一般贈与財産用」は、特例贈与財産用以外の場合に適用される税率です。たとえば、親から未成年の子へ、兄弟間、夫婦間、他人から贈与される場合などに適用されます。

 

それぞれの税率と控除額は以下のとおりです。

 

【一般贈与財産用(一般税率)】

基礎控除後の課税価格

200万円以下

300万円以下

400万円以下

600万円以下

1,000万円以下

1,500万円以下

3,000万円以下

3,000万円超

税率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

10万円

25万円

65万円

125万円

175万円

250万円

400万円

 

【特例贈与財産用】

基礎控除後の課税価格

200万円以下

400万円以下

600万円以下

1,000万円以下

1,500万円以下

3,000万円以下

4,500万円以下

4,500万円超

税率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

10万円

30万円

90万円

190万円

265万円

415万円

640万円

 

たとえば、祖父母が未成年の子に1,000万円の贈与をする場合の贈与税は、一般贈与財産用(一般税率)を使って以下のようになります。

 

基礎控除後の課税価格=1,000万円ー110万円=890万円

贈与税=890万円×40%-125万円=231万円

 

年間の贈与額が基礎控除の110万円以内であれば、贈与税がかからず申告も不要だと説明しました。しかし、一定額の贈与を一定期間にわたり受け取る約束がされている場合は「定期贈与」とみなされ、贈与額の合計額に対して贈与税が課税されます。

 

たとえば、毎年100万円の贈与を10年間受けたとしましょう。この贈与があらかじめ贈与者と受贈者の間で契約(約束)されている場合は、1,000万円の贈与を受けたとして贈与税が発生し、申告も必要になります。

 

詳細な要件については、国税庁ホームページをご確認ください。

 

参照:「贈与税の計算と税率(暦年課税)」(国税庁ホームページ)

相続

相続時精算課税制度とは、60歳以上の親や祖父母から、その年の1月1日現在で20歳以上の直系卑属である子や孫へ生前贈与が行われる場合に利用できる制度です。特例控除によって累計贈与額の2,500万円まで非課税となり、相続するまでの贈与額を相続財産に加算でき、相続税で精算する仕組みです。なお、こちらも贈与金の仕途は住宅取得資金に限りません。

 

相続時精算課税による贈与税は、次のように算出します。

 

贈与税=(贈与額-2,500万円)×20%(一定)

 

たとえば、5,000万円の贈与を受ける場合は、次のように算出されます。

 

贈与税=(5,000万円-2,500万円)×20%=500万円

 

相続時精算課税が適用されるためには、贈与する人が60歳以上である必要がありました。しかし、贈与者の年齢が60歳未満でも、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度と併用することで相続時精算課税を利用できる特例があります(2021年12月31日まで)。

 

住宅取得等資金の贈与税の非課税制と相続時精算課税併用した場合、3,000万円+2,500万円で 最大5,500万円まで贈与金を非課税にできるということです。ただし、併用は適用期間が決まっているため注意しましょう。

 

具体的な要件は、贈与を受ける人が推定相続人、または孫である、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上である、資金の全額を住宅用家屋の新築等に充てるなどがあります。新築建物自体にも要件があり、一定の面積や築年数であること、受贈者が居住するなどがあります。

 

相続時精算課税制度を一度利用したら、以降の贈与は一貫して相続時精算課税方式で行う決まりです。そのため、年間の贈与が110万円以下だった年は、暦年課税方式であれば使える110万円の基礎控除がなく、税務署への申告も必要となります。

 

詳細な要件については、国税庁ホームページをご確認ください。

 

参照:「相続時精算課税選択の特例」国税庁ホームページ

祖父母や親からの贈与を受ける以外にも、資金を調達する方法があります。ここでは、贈与税がかからない他の方法についてご説明します。

 

親から、贈与ではなく融資を受ける(お金を借りる)という方法もあります。融資ならいずれ返済するお金なので、贈与税がかかりません。

 

ただし、借用書を作成するなどの対応をしないと、親子などの間柄だと返済がきちんと行われないこともあるかもしれません。その結果、融資ではなく贈与とみなされて、贈与税が発生してしまう可能性があります。そのため、親からの融資を受けて住宅を購入する際には、きちんと借用書を作成しましょう。

 

親と共同名義で家を購入すれば贈与税はかからないので、節税目的で共同名義にする人もいます。また購入した家に親と同居しなければならないという決まりもありません。ただし、親にも固定資産税などの支払い義務が生じるので注意が必要です。

 

贈与された資金を住宅の購入に充てる場合、贈与税がかかることに注意が必要です。贈与税の課税方式には、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」「暦年課税」「相続時精算課税」の3つがあり、受贈者が申告時に選択できます。

 

住宅取得資金として親や祖父母から贈与を受けた場合は、まずは最大3,000万円が非課税になる「住宅取得等資金の贈与税の非課税」制度の要件をチェックしましょう。この制度は、「暦年課税」と「相続時精算課税」のいずれかと併用が可能ですから、それぞれの特徴を理解したうえで、合わせ技で節税効果を高めるのがおすすめです。

 

ほかにも、親族などから融資を受ける、共同名義で住宅を購入するという贈与税がかからない方法があります。贈与税が最も少なくなる方法を選ぶとよいでしょう。

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