親子間の借金が贈与と見なされる例
借用書がなかったり、返済期限や利子の設定がなかったりすると、親子間のお金のやりとりでも贈与と見なされ、贈与税の対象となる場合があります。収入に見合わない高額な借り入れも同様です。
詳しくは、「借り入れが贈与と見なされやすいパターンとは」をご覧ください。
贈与税を防ぐための具体的な対策
贈与税を防ぐには、借用書を作成し、金利や返済期間を具体的に定めましょう。返済は手渡しではなく、金融機関の口座振込で記録を残すことが大切です。これにより、正式な借り入れであることを証明できます。
詳しくは、「贈与税の発生を防ぐために行うべき対策方法」をご覧ください。
返済不要なら非課税制度を活用
もし返済不要の資金援助(贈与)であれば、「住宅取得資金等の贈与税の非課税制度」や「相続時精算課税制度」を活用できます。これらを併用することで、最大3,000万円まで非課税で資金援助を受けられる可能性があります。
詳しくは、「返済不要なら贈与税の非課税制度を上手に活用しよう」をご覧ください。

新築一戸建てを探す中古一戸建てを探す

住宅の購入資金を準備するうえで、親から一部の援助を受けるというケースも珍しくありません。資金援助を受ける方法にはさまざまなパターンがありますが、今回は「借り入れ」を利用する場合の注意点について解説します。

 

親子間で貸し借りをするとはいっても、状況によっては「贈与」があったものと見なされ、贈与税が発生してしまうこともあります。あとから税金のことで悩まずに済むよう、きちんとルールを理解しておきましょう。

住宅購入資金を借りるときの注意点

 

親から資金を借りるときには、きちんと段取りを踏んでおくことが大切です。その理由には、大きく分けて「無用なトラブルを防ぐため」と「贈与税の発生を防ぐため」という2点があります。

 

住宅購入資金は大きな金額となるため、親子間の貸し借りであっても、あとからトラブルとならないために後述する金銭消費貸借契約を締結し、明確な返済計画を立てることが大切です。

 

どのくらいの金額をいつまでに返すのか、お互いが明確に把握しておかなければ、購入後に無用なトラブルを呼び込む原因となってしまうのです。

 

そして、もうひとつの重要なポイントが「贈与税」です。贈与税とは、金銭のやりとりが贈与と見なされた場合に発生する税金のことです。

 

親子間であっても、金銭のやりとりが贈与と見なされてしまえば、贈与税が発生する可能性があります。そのため、貸し借りを行う前に、贈与と見なされないための注意点を押さえておくことが大切です。

借り入れが贈与と見なされやすいパターン

 

単なる借り入れのつもりであっても、状況によって贈与と見なされてしまう可能性があるので注意が必要です。

 

特に、親子間では管理が甘くなりやすいため、基本的なルールをないがしろにしないように心がけましょう。

 

ここでは、借り入れが贈与と見なされてしまうケースについて紹介します。

 

一般的な住宅ローンでは、自身の収入を基に現実的な返済プランを立てたうえで借入額を検討します。

 

そのため、親子間の貸し借りであっても、自身の収入から見て到底返済ができないほど高額である場合には、贈与と見なされてしまう可能性が高いです。

 

金銭の貸し借りにおいては、厳密にいえば一定の利息が発生するのが原則とされています。

 

そのため、まったくの無利子もしくは過剰な低金利で借り入れを行った場合、本来発生する利息分については親から贈与されたと見なされてしまうケースがあります。

 

もちろん、多少であれば、市場金利よりも金利を下げることは特に問題ありません。

 

返済期限が設けられていない場合、返済の意思があいまいになりやすいため、借り入れではなく贈与と見なされてしまうケースがあります。

 

また、返済期間が極端に長い場合も同様であり、お金を完済するという意思が明確に伝わらないため、贈与と判断されてしまう可能性があります。

 

借金は「金銭消費貸借契約」という契約の一種です。そのため、正式な借り入れであることを証明するためには、きちんと借用書を設けて契約を交わす必要があります。

 

借用書がなければ、あとから贈与と判断されてしまう可能性が高いので、きちんと準備しておくことが大切です。

 

新築一戸建てを探す 中古一戸建てを探す

贈与税の発生を防ぐために行うべき対策方法

 

これまでに紹介したケースを踏まえて、贈与税の発生を避ける具体的な対策方法を見ていきましょう。

 

金利の設定は、一般的な住宅ローン金利を踏まえて考えるといいでしょう。住宅ローンは自動車ローンや教育ローンなどの通常のローンと比べて、もともとの金利が低く設定されています。

 

2022年7月現在も低金利が続いており、変動金利で年1%未満、固定金利でも年1.5%未満が一般的です。なお、前述のとおり、親子間のため平均より多少は低くても問題はありません。

 

親から借り入れを行う場合には、親の年齢を考慮して返済期間を決めることが大切です。

 

たとえば、現在60歳の親からお金を借りるなら、一般的な住宅ローンの最長返済期間である35年で設定してしまうと、完済は95歳とかなり高齢になってしまいます。

 

そのため、基本的には通常の住宅ローンよりも短めに設定し、元気なうちに返済を終えられるように心がけることが大切です。

 

贈与と見なされることを避けるためには、必要事項を盛り込んだ借用書を用意して、きちんと金銭消費貸借契約を交わすことも大切です。

 

詳しい書き方は後ほど詳しく解説するので、併せて確認しておきましょう。

 

実際に返済がスタートしたら、毎回の記録をきちんと残しておき、すぐに証明できるような状態を保つことが大切です。

 

そのため、返済は手渡しで行うよりも、金融機関の口座を使って行う方が望ましいといえます。

金銭消費貸借契約書(借用書)の書き方

 

金銭消費貸借契約書(借用書)には、特に決まったフォーマットはありませんが、必要事項を忘れずに盛り込むことが大切です。ここでは、いくつか押さえておきたいポイントを見ていきましょう。

 

契約書には、以下の項目を記載しておきましょう。

契約書に記載する項目

  • 契約書の作成日
  • 借主、貸主の氏名・住所
  • 借主、貸主の押印
  • 借入金額
  • 金銭を渡した日付
  • 返済方法
  • 返済期日
  • 利息
  • 遅延損害金の取り決め
  • 期限の利益喪失について

「期限の利益」とは、返済期限が来るまで、借りたお金を返さなくてもいいという意味です。

 

住宅ローンなどの一般的な借り入れにおいて、約束した期日(毎月の返済日)まで返済を待ってもらえるのは、厳密にいえば借主に期限の利益が設けられているためといえます。

 

しかし、借主が一定期間にわたって返済を怠った場合には、期限の利益が失われてしまいます。すると、金融機関は借主に対して、すぐに残金の一括返済を求めることができるのです。

 

これを「期限の利益喪失」といい、金銭の貸し借りにおいては重要な項目のひとつでもあります。

 

親子間の貸し借りにおいては、必ずしも記載をしなければならないというわけではありませんが、トラブルを避けるためにきちんと契約書を残したいという場合は盛り込んでおくと安心です。

 

借入額が1万円を超える場合は、契約書の作成時に収入印紙が必要となります。印紙代は取引する金額に応じて異なるので、確認漏れがないよう注意しておきましょう。

 

基本的にはどちらも同じ内容を証明する書類ではありますが、借用書はあくまでも「借主が貸主に差し入れる」という性質を持った書類です。

 

そのため、貸主が原本を持っていればよく、借主にはコピーを渡すだけで問題ありません。

 

一方、金銭消費貸借契約書は双方が当事者として署名・捺印する必要があるため、原本を2部作成しなければなりません。

 

印紙代も2通分かかるので、特別な事情がない限り、個人間であれば借用書で十分といえます。

 

新築一戸建てを探す 中古一戸建てを探す

返済不要なら贈与税の非課税制度を上手に活用しよう

 

当初は借り入れをするつもりでも「途中で返済の必要がなくなった」「贈与に近いやりとりであることが分かった」という場合には、早い段階で贈与税の対策を練っておくことが大切です。

 

ここでは、贈与税の発生を抑える2つの特例について解説します。

 

親や祖父母といった直系尊属から住宅資金の贈与を受ける場合には、一定の金額まで贈与税が非課税になるという制度があります。

 

2022年現在では、一定の要件を満たした場合に「省エネ等住宅なら1,000万円まで」「一般住宅なら500万円まで」の住宅取得資金贈与が非課税となります。

 

詳しい要件については、国税庁のホームページに記載されているので確認しておきましょう。

 

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対して財産の贈与が行われたときに利用できる制度です。

 

具体的には、贈与された財産のうち2,500万円までを贈与税の対象から外し、相続時に相続税の対象として計算し直す仕組みです。

 

この制度は前述の非課税制度とも併用できるので、一般住宅であれば最大で「500万円+2,500万円=3,000万円」までの金額を贈与税がかからずに援助してもらうことができます。

 

ただし、この制度はあくまで贈与から相続へと扱いを切り替えるものであり、相続時には相続税の対象として計算される点に注意が必要です。

 

なお、税率や細かな税制を比較すると、贈与よりも相続として扱ってもらう方が税金対策上は有利であるケースが多いです。こちらも、詳しい要件は国税庁のホームページで確認しておきましょう。

親子間で話し合う

  • 親子間の借り入れでも、きちんとルールを守らなければ贈与税が発生してしまうケースがある
  • 「借用書がない」「利息や返済期限がない」など、借金であることが分からない場合は贈与と見なされる可能性がある
  • 借用書は必要事項をきちんと盛り込んで作成する
  • 返済記録を残すためにも、返済は手渡しより金融機関の口座を利用する方が安心
  • 贈与の場合は贈与税の非課税制度などをうまく活用しよう
新築一戸建てを探す 中古一戸建てを探す

Q.1 親から住宅購入のお金を借りるだけなのに、税金がかかるって本当ですか?

A.1 はい。親子間の貸し借りでも、契約書がないなど「借り入れ」だと証明できない場合は「贈与」と見なされ、贈与税がかかる可能性があります。思わぬトラブルを避けるためにも、事前にルールを決めておきましょう。

Q.2 税務署に「贈与」だと思われないようにするには、何をすればいいですか?

A.2 「贈与」と見なされないためには、「借り入れ」である証拠を残すことが重要です。具体的には、借用書(金銭消費貸借契約書)の作成、利子の設定、返済期限の設定、返済記録を残す、の4点がポイントです。

Q.3 借用書って、どうやって作ればいいですか? 書き方に決まりはありますか?

A.3 決まった書式はありませんが、契約日や貸主・借主の氏名と住所、借入額、返済方法、返済期日、利息などを盛り込んだ借用書を作成しましょう。当事者双方の押印も必要です。また、借入額が1万円を超える場合は、収入印紙も忘れずに貼りましょう。

Q.4 親子間なので、利子なし(無利子)で借りたいのですが、問題ありますか?

A.4 無利子で借りた場合、本来支払うべき利息分が「贈与」と見なされ、贈与税の対象になる可能性があります。トラブルを避けるため、年1%程度など、わずかでも利子を設定することをおすすめします。金利の目安は、一般的な住宅ローン金利を参考にしましょう。

Q.5 返済の記録はどうやって残すのがいいですか? 手渡しはダメですか?

A.5 手渡しでの返済は記録が残らないため、避けた方がよいでしょう。金融機関の口座振込であれば、「いつ、誰から誰へ、いくら返済したか」が通帳に記録として残るため、確実な証拠になります。

Q.6 親から「返済はいつでもいいよ」と言われています。返済期限を決めなくても大丈夫ですか?

A.6 返済期限を決めないと、返済の意思がないと見なされ、贈与税の対象となる可能性があります。親の年齢を考え、無理のない返済期間を設定することが大切です。完済時に親が高齢になりすぎるような長期の計画は避けましょう。

Q.7 親が「やっぱり返済は不要」と言ってくれました。この場合、何か手続きは必要ですか?

A.7 親から返済が不要と言われた場合、そのお金は「贈与」にあたります。その際は、贈与税の負担を軽くできる特例制度の利用を検討しましょう。「住宅取得資金等の贈与税の非課税制度」などを活用すれば、条件によってまとまった金額でも非課税で贈与を受けられる可能性があります。

更新日: / 公開日:2020.04.15