ローン負担の軽減や節税対策、将来の家賃収入などを目的に、自宅の一部を賃貸住宅として活用する『賃貸併用住宅』が注目されています。このページでは『賃貸併用住宅』を建てる前に知っておきたいメリットとリスクについてご紹介します。

住宅を建てるときの借入れといえば、まず『住宅ローン』を連想する方が多いでしょう。住宅ローンは“ローンの借り入れを行う契約者本人が住宅の所有者となり、そこで居住すること”が条件となっているため、より多くの人たちが住まいを取得しやすくなるよう『長期借入れ可能』かつ『低金利』に設定されています。また、住宅ローンの審査については、基本的に本人の年収や返済負担率によって判断されますが、同じ住宅を建てる場合であっても、“賃貸住宅を建てるケース”では、借入れの事情が少々異なります。

 

契約者本人がその場所で暮らさない賃貸住宅の場合は、低金利の住宅ローンの要件が適用されず、『アパートローン』をはじめとした投資用のビジネスローンを組むことになるため、借入れの際には“その不動産投資が成り立つかどうか?”によって厳しく審査されます。加えて、アパートローンは住宅ローンに比べると『短期借入れ』かつ『高金利』となっていることが多いため、借入れの際には慎重に商品内容を検討することが大切です。

 

では、自宅と賃貸住宅を兼ねた『賃貸併用住宅』の場合はどうなるのでしょうか?

 

賃貸併用住宅を建てる場合には、一般的に《建築面積のうち、住居部分が51%以上を占めること=賃貸部分が49%以下であること》という面積割合の条件をクリアしていれば、住宅ローンの利用が可能となります。つまり、総2階建ての賃貸併用住宅で、1階を自宅・2階を賃貸住宅とする場合、賃貸スペースとなる2階部分が1階部分よりも少しでも狭ければ、住宅ローンを利用して賃貸併用住宅を建てることが可能となります。こうして住宅ローンを使うことで、低金利のメリットに加えて住宅ローン減税も活用できるため、所得税の節税効果がより大きくなります。

 

住まいを取得すると、その後継続して納付しなくてはいけない税金のひとつが『固定資産税』です。固定資産税は毎年1月1日時点の土地や建物などの所有者(固定資産税課税台帳に登録されている人)に対して市区町村が課税を行う税金ですが、自宅や賃貸住宅などの敷地に対しては課税評価が軽減される特例が設けられています。その特例では「1世帯あたり200m2までの敷地は小規模住宅用地として、その評価額の1/6を課税標準とする」とされており、ここで賃貸併用住宅の節税メリットが生まれます。

 

例えば、300m2の敷地に1世帯の住宅を建てた場合、200m2を超える100m2分はこの特例から除外されてしまいますが、同じ300m2の敷地に自宅1世帯+賃貸1世帯の賃貸併用住宅を建てた場合、敷地内に2世帯が住んでいるとみなされるため、200m2×2世帯=400m2までが減額特例の対象とされます。

 

このように敷地の面積や世帯数によって節税効果が変わってくることを考慮した上で、賃貸併用住宅の新築や建て替えを検討しましょう。

 

賃貸併用住宅を建てるということは、毎月の賃料を得るための“不動産賃貸ビジネスを営む”ということ。利益が出れば、当然ですが所得税が課税されます。ただし、賃貸部分に投資した建築費や設備費等については、耐用年数に応じて毎年少しずつ『減価償却費』を計上できるほか、賃貸部分のローン利息や固定資産税、損害保険料等も経費として計上できますから、確定申告を行うことで所得税の節税につながります。
もちろん、給与所得者(サラリーマン)でもこうした経費の計上が認められますので、少々面倒でも毎月の経費管理を行い、必ず確定申告を行うようにしましょう。

 

配偶者や親・祖父母から土地や建物を相続する場合に発生する相続税は、相続税評価額と呼ばれる相続税法によって算出されます。この場合、自宅の敷地を相続するよりも、賃貸住宅が建っている敷地(賃家建付地)の方が、約20%程度相続税課税評価額が低くなるほか、賃貸住宅の建物(貸家)の場合はさらに約30%程度評価額の低減につながります。(※1)
賃貸併用住宅の場合は、敷地・建物それぞれにおいて、賃貸部分の評価額を低くおさえることができるため、相続税の節税効果が高くなります。

 

『小規模宅地等の特例』では、居住していた自宅の土地を配偶者や同居している子どもが相続する場合、敷地面積330m2までは80%の評価減を受けられる特例がありますが(※2/特定居住用宅地等)、親と同居していない子どもが土地を相続する場合は、基本的にこの特例は対象外となってしまいます。
ただし、賃貸併用住宅の場合、賃貸部分(貸付事業用宅地等)とみなされた敷地については、特定居住用宅地等より評価減幅は少ないものの貸付事業用宅地等の減額割合が適用され、50%の評価減となります。つまり、賃貸併用住宅なら親と同居していない場合であっても、賃貸部分に関して相続税の節税メリットが期待できます。

 

(※1)国税庁 貸家建付地の評価
(※2)国税庁 小規模宅地等の特例

 

賃貸併用住宅で節税する

賃貸併用住宅で節税する

毎月の家賃収入や、節税効果・相続対策など様々なメリットが期待できる賃貸併用住宅ですが、通常の一戸建て住宅を建てるよりも建築コストは多額になり、同時にローンの借入れ金額も大きくなります。
また、一般的な賃貸併用住宅の住宅ローン審査は、将来期待できる家賃収入の見込み額を年収に加えることはできず、あくまでも契約者の現在の所得額によって返済能力があるかどうかが判断されるため、希望する金額の借入れができない場合もあります。

 

所得税・相続税の節税についても将来的な税制改正が見込まれるため、長期的な節税メリットを確証できるものではありません。建てた後で、「こんなはずではなかった」という後悔をしないためにも様々な情報を集め、賃貸併用住宅を建てる目的を明確にしておくことをおすすめします。

 

目的を明確にする

目的を明確にする

賃貸併用住宅では、同一の建物内で壁や床ひとつ隔てただけの空間に他人と一緒に暮らすことになるため、プライバシーが確保された通常の一戸建て住宅とはやはり住み心地が違います。場合によっては物件オーナーとして入居者のクレーム対応も行わなくてはなりません。以下の失敗例を参考にして“賃貸オーナー”としての心構えを持ちましょう。

 

賃貸住宅の運用は、入居者が継続的に入居してくれるからこそ成り立つもの。賃貸部分の快適性や設備・仕様に手を抜いてしまうと、ずっと空室が続いてしまうことにもなりかねません。自分たちの居住空間は二の次として、まずは“魅力ある賃貸空間づくり”を心がけましょう。

 

上階・下階で自宅と賃貸部分を分ける場合、事前に想定しておきたいのは“生活時間帯の違い”です。高齢者世帯は早起き、若者世帯は夜更かしなど、世代の違いによって活動時間がまったく異なるため、リビングの足音や水まわりの流水音などがお互いのストレスになりかねません。リビングや寝室など上下階の間取りの配置についてもじっくり検討しましょう。

 

一般的なアパート・マンション経営と違い、賃貸併用住宅の場合は高い利回りを求めることはできません。しかし、住宅ローンが完済できた後は、入居者さえいれば毎月安定した収入が見込めるほか、将来の相続対策にもつながります。ちなみに、賃貸併用住宅の場合、平均的な利回りは4~5%前後とされています。地域の家賃相場についてもリサーチした上で、収益をシミュレーションしてみましょう。

 

家賃の設定や空室対策、建物管理まで、すべて保証会社におまかせの『家賃保証』システムは賃貸オーナーにとって心強い存在ですが、契約から数年後に家賃の見直しが行われることもあります。当初の保証内容が確実に継続するとは限らないため、“保証会社にまかせっきり”は危険です。

 

中古の賃貸併用住宅であっても、面積割合が要件に適合していれば住宅ローンの利用が可能です。また、中古物件の場合はすでに建物が完成しているため「適正家賃を想定しやすいこと」や、新築よりも予算を抑えることができるため「新築物件と比べて高い利回りが期待できること」などのメリットが挙げられます。ただし、そもそも中古の賃貸併用住宅は物件数が少なく、設備の更新が行われていない場合は購入後に大きなメンテナンス費用やリフォーム費用が発生してしまうリスクも想定しておきましょう。

 

賃貸併用住宅は、「自宅」でありながらも「不動産経営ビジネス」を行うのと同じこと。経営が成り立たなければ、家賃収入や節税のメリットよりも住宅ローンの返済負担のほうが大きくなってしまう可能性もあります。「継続的な入居が見込める立地であるかどうか?」など、エリアに応じて空室リスクも念頭におかなければいけませんし、入居者を惹きつけるためのノウハウも必要になります。

 

また、建物の維持管理・税制の改正・決算や申告方法についても常に最新の情報をキャッチし理解しておく必要があるため、各分野において信頼できるアドバイザーを確保することも重要です。あなたの大切な資産を守るためにも、“本気で大家ビジネスにチャレンジする”という覚悟を持ちましょう。

 

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