住宅ローンはまだ残っているが、スーパーなどの生活利便施設や駅まで遠く、交通利便性がよくない…。家の中もちょっとした段差が大変など、若いころは気にならなかった点が気になってくるのが、60歳前後です。
このままこの家に住み続けて大丈夫なのかな、買い替えを検討した方がいいのかな、と漠然とした不安を感じることもあるでしょう。そんなときには、どのような選択肢や、解決策があるのでしょうか。
これまでに1,000棟以上の物件を見てきたマンションのプロフェッショナルであり、「60歳からのマンション学」(講談社+α新書)など多数の著書のある、マンショントレンド評論家の日下部理絵さんに解説してもらいました。
〈60歳から考える住まい選び特集1〉
このまま住み続けるのは無理! 60代で気づいた住まいの重大欠陥
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「ダウンサイジング」して利便性の良いマンションへ

定年近くになると、子どもが独立するなどして、使わない部屋が出てきたりします。部屋の数や広さを減らす代わりに、スーパーやコンビニエンスストア、レストランにカフェ、病院や習い事などの「生活利便施設」が徒歩圏内の住環境に移れば、生活の質(QOL)はぐんと向上します。
さらにエレベーターがあり室内も段差がなくフラットなど、バリアフリー化されているマンションを選べば老後の生活も安心できます。
こうしたマンションへの“ダウンサイジング”という選択が増えています。そのためには、今の家から「買い替え」や「住み替え」を検討することになります。
年齢で断られないUR

終の住処として、今の持ち家から新たな持ち家に買い替えるほか、今の持ち家は売却して賃貸物件に住み替えるという選択肢もあります。賃貸と分譲のどちらがいいかは、住む人によって変わります。
賃貸のいいところは、身軽に住み替えができることでしょう。
たとえば、終の住処と思って入居したら、近くに騒がしい住民がいて環境が良くないと感じたとき、賃貸なら、気軽に引越しをすることができます。また、天災などで建物がダメージを受けても、次の家に移りやすいことは、大きな利点でしょう。
「賃貸は自分のものにならないから」と考える方もいますが、見方によっては、家の相続問題と無縁となり、メンテナンスの手間が掛からず気が楽ともいえます。
デメリットは、分譲マンションに比べると、専有部分や共用部分など、全体的にワンランク下がる点です。
また一般的に、60歳以上になると、賃貸物件は借りにくいといわれます。オーナーの意向と、保証人を代行する保証会社の審査が影響するためです。
そこで、年齢で断られることがない都市再生機構(UR)で探すのも一つの手です。URは、本人確認のみで保証人や保証料は不要。家賃は高めでも、礼金、仲介手数料なし、更新料不要で費用面での負担を抑えられます。都内ならURより割安な東京都住宅供給公社(JKK東京)もあります。他にも、高齢者向け優良賃貸住宅や、サービス付き高齢者向け住宅が増えています。
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分譲マンションを買い替えるなら「売り」「買い」どちらが先か

現在、一戸建てや分譲マンションに住んでいる方は、分譲マンションへの“縮小買い替え(ダウンサイジング)”もよいでしょう。
家を売るステップは、以下の3ステップを参考にしてください。
家を売るステップ
- 不動産会社に依頼(一般媒介契約なら複数社OK)
- 査定額と自分の手放したい時期を踏まえ、値引きされてもよい金額で売り出す
- 3ヶ月での売却を目指す
買い替えは、売りと買いが同時に起こるので、とても難しく何から始めたらいいのか悩む人も多いでしょう。理想はほぼ同じタイミングで自宅を売却し、新居を買うのがベスト。これを「売り買い同時進行」といいます。
しかし現実的には同時進行は難しく、無理にタイミングをあわせようとすると、自宅を割安な価格で売却せざる得なかったり、新居を納得するまでじっくり探せない恐れがあります。そのため、無理に同時進行にせずに、「売り」か「買い」どちらかを優先して進めるのがおすすめです。売却を優先するのを「売り先行」、購入を優先するのを「買い先行」といいます。
住宅ローンの残債があるなら「売り先行」

新しく住む新居選びを優先するなら「買い先行」、住みながら売るなら「売り先行」がおすすめです。
「売り先行」は、自宅を売却した代金を、住宅ローンの残債があれば返済に充てることができます。余裕があれば、新居の購入資金にも充てられます。つまり、売却代金が確定してから新居を購入するので、新居の予算感が分かり、資金繰りがしやすいのです。今住んでいる自宅を売却しないとローン返済できない場合、必然的に「売り先行」を選ぶことになります。また、駅遠や築古など人気物件でない場合も、「売り先行」で焦らずに売却活動がいいでしょう。ただし、生活しながら売るので、内見時に生活感が出てしまい、売れにくいといわれています。売却後は、次の家を買うまでの仮住まいも必要になります。
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資金に余裕があるなら「買い先行」

資金に余裕があるなら、新居を買ってから家を売る「買い先行」という選択肢もあります。この場合、住宅ローンが完済しているか、退職金等で完済できることが望ましいでしょう。二重ローンになるとローンの審査が通りにくいばかりか、通っても条件が悪くなることがあります。自宅が思ったほど高く売れない恐れもあるので、注意が必要です。
新居は好みで選べばよいですが、将来を考え、専有部分・共用部分ともにバリアフリー化に対応しているか、リフォームやリノベーションできるか確認しておくと安心です。具体的には、「二重天井、二重床」になっていると、管理組合への申請は必要ですが、大幅に間取りを変えやすいです。
「買い先行」は、欲しい物件が売りに出た場合、タイミングを逃さずに購入できたり、仮住まいに移る必要もなく引越しも1回ですみます。引越しをすれば、自宅は空き部屋にできるので、必要に応じてモデルルームのようにステージングをしたり、購入希望者の内見予定もあわせやすくなります。
老後資金など資金計画を考えると、おすすめは家を売ってから新居を買う「売り先行」です。売ったお金を購入費に充てられ、売り急ぐ必要もないので、過度に値下げしなくて済みます。
自宅が売却できないときは、こんな工夫を

まず売り出し価格や不動産会社について、確認してみましょう。
価格を下げることで、予算感があわないからと見送っていた人が購入希望者となり、すんなり売れるかもしれません。また、不動産会社との契約内容を見直したり、新たな不動産会社にお願いするのも選択肢です。
さらに、今の家を売らずに、賃貸に出すという方法もあります。貸して新居を借りる、または新居の住宅ローンに、賃料を充てるのもよいでしょう。
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売却額より、ローン残債の方が多かったら

不本意な値下げなどして、ようやく売却できても、ローン残債が売却額を上回っている場合、足りないお金を用意する必要があります。
足りないお金は、「貯金などの手持ち資金で返済する」「親族などに借りて用立てる」他にも、買い替えるなら、次の新居のローンと返済途中の自宅のローンをまとめる「住み替えローン」を活用できるかもしれません。ただし、融資額が大きくローン審査に通過しない可能性や、返済額が大きくその後の生活に支障が出る恐れがあります。
また、新居の契約締結時に「買い替え特約」や「住宅ローン特約」などの特約をつけて、新居の契約をなかったことにするという手もあります。
売却できないからと理想とする住まい探しを諦めないで。困ったときは不動産会社、金融機関など、頼れる専門家に相談するのもよいでしょう。
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更新日: / 公開日:2022.11.30










