マンガやドラマなどの著名な作品に登場する間取りを何でも推理してしまう「間取り探偵」。今回探偵が取り上げたのは2000年に連載開始し、その後ドラマにもなった大人気作品の「JIN~仁~」です。

今回は江戸時代の武家屋敷について、間取り探偵がとても詳しく解説してくれたので、作品を思い出しながら楽しむのはもちろん、幕末ファンの方や、住宅や建築の歴史も楽しめそうです。
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東都大学附属病院脳外科医局長、南方仁(みなみかた じん)が幕末の江戸時代にタイムスリップしてしまうといった荒唐無稽なストーリー。
だけど、江戸時代の工作技術・化学力を駆使し、現代医学をどこまで再現できるのか?といった点で、とても興味深いお話。

 

そんな南方仁が居候する旗本、橘家の武家屋敷を作図しました。作図?今回は推理とは言いません。その理由はのち程。

 

仁が居候する橘家の間取り。</br>旧家によくある「田の字」と似ているように見えて、部屋の役割はそれぞれ違うようです。

仁が居候する橘家の間取り。旧家によくある「田の字」と似ているように見えて、部屋の役割はそれぞれ違うようです。

 

この建物は礎石(※1)を用いて、伝統構法(工法)(※2)で建てられています。仁は長屋門(※3)にある三帖ほどの番所に居候。

 

※1:礎石=石を基礎の代わりにその上に柱を乗せた。
※2:伝統構法(工法)=基本は在来工法と似ているが、釘や金物を使わずに手刻みの木材を組み合わせる工法。
※3:長屋門=武家屋敷門の様式。番所として家臣を住まわせた。

 

間取り図にある部屋の表示方法は、できる限り当時の名称を採用しています。長屋門?式台?槍床?次の間?等々、それぞれに番号を付けて解説してゆきますね。

ナンバリングした橘家の間取り図。</br>下の解説とあわせてご覧ください

ナンバリングした橘家の間取り図。下の解説とあわせてご覧ください

 

■長屋門:探偵が参考にした資料には、もともと⑭付近に長屋門がありました。さらに通常であれば門を挟むように①の部分にも②と同じ番所があるのが一般的です。
【天の声】「長屋門の位置は⑭からに①に移動するように。また、仁がどちらの番所に居るのかがわからなくならないよう、①の番所を削除してください」

 

■立派な門をくぐって④⑤の式台・玄関に向かう途中に③の厠(便所)。どうしてこんなところに?
【天の声】「街行く通行人の話を仁は厠で聞かなければなりませんのでココに設置してください」

 

■④式台(敷台とも書く):玄関先にある一段低い板敷の部分。武家屋敷においては、当家を訪ねてきた使者や客の家臣が控える場所としても使われました。
続いて玄関内にある⑤は槍床(やりどこ)と呼ばれ、中国では、槍を構えて隙間なく立ち並ぶ、戦闘態勢のさまを表しますが、幕末、江戸の作法では、奥座敷に通される前に敵意がないことを表すために刀や槍を置く場所として使われます。
あ、この玄関は、家の主より身分の高い人しか使えません。

 

■⑥奥座敷:この建物で一番良い場所に。身分によっては備えることのできない床間もあり、尚且つ来客専用の厠もあります。あくまで来客専用の部屋で家族でも使うことは稀でした。

 

■⑦次の間:来客があって家主が談笑している・密談をしているなどの場合、妻や使用人・家臣が控える部屋。

 

■⑧仲(中)ノ間:家の中心付近にあり、部屋と部屋の間にある部屋のことですが、用途は決まっていない予備室のような扱い。

 

■⑨居間:この時代では複数の用途がありました。くつろぐ場所はもちろん、家族全員の寝室・身分の低い者や同階級の友人が来た時の客間・橘家においては恭太郎の書斎と、⑥の奥座敷に比べてプライバシーのない窮屈な使い方ですね。

 

■⑩納戸(女詰所):現代、納戸と呼ばれるものは収納をイメージしますが、この場合は配膳室というかお客様に出す料理など盛りつけたり、その器などが置かれていた場所です。

 

■⑪茶の間:家族たちはここで食事をします。使用人たちは⑫の土間で。そうそう、この土間は、主より身分の低い者たちは玄関からではなくここから出入りしなければなりません。

 

【天の声】「⑬の場所にある男部屋(男性使用人の詰所)は必要ないのでとっぱらって頂戴」

 

■図の中にある小さい”青い丸”の建具は、有事の際に一気に家の中を駆け抜けられないようにジグザグに取り付けられています。

 

さて、ここでちょっとだけ武家屋敷の特徴や性格をお話ししたいと思います。
まず武家屋敷は天井が高い。それは、室内で槍や刀を振り回すことが出来るようにと言われています。また性格としては、家族の住まいというより接待空間としての意味が大きく、上司や仕事相手のおもてなしを重視しています。

 

そのために家族の部屋はすべて共有。もっとも大名クラスになれば別ですが。でも、橘家のような末座の旗本では、このくらいの建物を建てることが出来るのは実はかなり凄いことなのです。
橘家の先代は人格者であり商人などが「本当に橘様には良くしていただきありがたいことです。是非、偉くなってください!偉くなったらば私共をさらにお引き立てていただきたい」
なぁんて支援を受けていたのかもしれないですね。

 

所在地:江戸
推定床面積:110.96m2(長屋門・門脇の厠除く)
間取り:8室+長屋門番所
構造:伝統構法(工法) 平屋建
入居者:橘栄・恭太郎・咲・長屋門に南方仁

 

橘家の模型

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さて、推理でないと言いました。
では何を参考にして作図したかというと【天の声】から送られてきたメールに添付されたpdf.の図面。

 

いろいろと約束事があるのですべては説明できませんが【天の声】は原作者である“村上もとか”先生。
2010年とある雑誌の書き下ろしでご縁があって、もともと推理していたものを破棄して指示通り新たに作図したのです。
その後、2011年に村上先生の出身地である神奈川県大和市にある、つる舞の里歴史資料館・下鶴間ふるさと館にて行われた“村上もとか展”に模型を提供させていただきました。
当然探偵も行ってきましたとも。その二か月後に発生した東日本大震災の時にはエールを送ってくださいました。

 

村上もとか先生からのエール・めげずに上を向いて!

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更新日: / 公開日:2018.04.02