おうちごはんで体をケアする、「薬膳料理」の基本と取り入れ方

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皆さんは「薬膳」に対してどのようなイメージを持っていますか?
「漢方薬」を思い浮かべる人が多いかもしれませんね。もちろん漢方薬の効能は大きいですが、日常で口にしている食事にも、少なからず効能が存在しています。東洋医学の考え方を生かして、自分に合わせた食事を取ること自体が「薬膳」なのです。

そうはいっても普段あまりなじみのない東洋医学を生活に取り入れることは難しいものです。
そこでこの記事では、私の持つ東洋医学系資格「中医薬膳指導員」、西洋医学系資格「管理栄養士」を生かして、「薬膳」の基本や日常生活への取り入れ方を紹介したいと思います。

薬膳ってどんなもの?

薬膳は、「東洋医学(中国伝統医学)」の中の栄養学です。中国の医薬学会における薬膳料理の定義は以下のとおりです。

『薬膳とは、中国伝統医学理論に基づいて作られた食事で、その目的は疾病の予防・病気の回復・健康保持を目的とした美味しい食事である』

「美味しい食事で健康を」という目的は、西洋医学とも一致していますが、薬膳料理とは東洋医学そのものであり、東洋医学抜きで語ることはできません。

薬膳とは

薬膳料理指導員として活動する中で、「薬膳とはどんなものだと思いますか?」と質問すると、以下のような声が多く挙げられます。

・料理の中に漢方薬を混ぜたもの
・日本人にはなじみの薄い伝統中華料理
・とにかく薬臭い料理

しかし、これらの考えには少し誤りがあります。
確かに食事に漢方薬を使えば効果は大きいですが、それでは食事とはいえません。東洋医学理論では漢方薬ではない食品についても、それぞれが持つ効能を明らかにしています。
ただし、食品の効能は漢方薬に比較して弱いものだからこそ、それを理解し、日々の食事で摂取し続けることに意味があります。まさにそれが薬膳の考えなのです。

西洋医学と東洋医学

日本では幕末の頃に、西洋医学が入ってきました。これを従来の医学と区別する必要に迫られ、西洋医学を「蘭方」、そして従来の医学を「漢方」と呼ぶようになりました。

従来医学である漢方は、それから日本の中で独自の漢方理論として残りますが、衰退していきます。一方で、西洋医学は科学の粋を結集し、目覚ましい進歩を見せ、驚異的に普及・発展していくことになります。

なぜ「薬膳は体にいい」とされるのか

薬膳は5,000年ともいわれる長い中国の歴史の中で培った、実践と記録、つまり人体実験の集大成です。現代栄養学の短い歴史からすると、その膨大な体験記録は無視できません。

伝説の人物である「神農(シンノウ)」は、自らを実験台にして1日に100種類以上の草木をなめて70種の毒に当たり、茶葉を噛んで解毒したそうです。その実験をまとめた「神農本草経」は、現在も薬物と食物のバイブルとなっています。
近年では、東洋医学理論上の食品効能を西洋医学が科学的に解明するケースもあり、その効果が認められ、生かされています。

薬膳の目的

東洋医学特有の考え方に、「未病(みびょう)」というものがあります。未病とは病気の手前の段階のことです。東洋医学ではこれを維持し、病気というステージに突入しないようにすることを最大の目的としています。

薬膳を用いる方の中には、不定愁訴(ふていしゅうそ)に悩む方が多いです。不定愁訴とは、病院で診察を受けても明確な診断が下されない症状を指し、「○○症候群」といった形で判断されることもあります。
東洋医学の人間や自然が持つ力を信じ、自然治癒力・抵抗力・生命力といったごく基本的な部分を重視する考え方が、これらの症状の緩和につながるケースもあり、注目されています。

薬膳の「味付け」と「食材」の効能

味付けによる効能

味は「五味」とされ、酸・苦・甘・辛・鹹(かん)に分けられます。これらについても薬膳では単なる味覚の表現だけではなく、それぞれに効能が備わっているものと考えています。

酸味
肝臓を守り、発汗調節・止瀉(ししゃ※下痢を止めること)といった効果があるとされます。また、渋味も含んでいます。


苦味
心臓を守り、炎症をしずめたり、胃の調子を整えたりする効果があるとされます。

甘味
脾臓・胃を守り、滋養や消化器系の動きを活発にする効果があるとされます。

辛味
肺を守り、体内の老廃物を発散させ、気や血液の巡りをよくする効果があるとされます。

鹹味(かんみ)
腎臓を守り、血液をきれいにして、老廃物の排泄を行う効果があるとされています。また、鹹は単なる食塩ではなく、西洋医学で言うところの「ミネラル」も含んでいます。

ただしそれぞれの効果は、とり過ぎるとその臓器をかえって傷めるものと考えられているため、適度なバランスが大切です。

食材が持つ効能

食材ごとにも効能があります。

食味
その食品が前述の「五味」のどれに属するか

食性
体を温める食品であるかどうかの判断を行うもので、温・涼または平(どちらでもない)と分類されます。

帰経(きけい)
どの臓象(「臓」は体の中にある臓器を指し、「象」はその臓器がもたらす生理・病理現象を指す)に効果があるかが記載されています。

主要効能
その食材がもたらす、具体的な効能が記載されています。主に漢字で「補肺養陰(ほはいよういん)」「発汗解表(はっかんかいひょう)」といった記載になっています。

薬膳を日常生活に取り入れてみよう

それでは薬膳をどうやって生活に取り入れるのがよいのでしょうか。ここでは私の実体験を含め、3つのポイントを紹介します。

体の状態に合わせて、必要なものを

薬膳を生活に取り入れるにあたり、「どんな食事が必要なのか」を理解することが大切です。目的がはっきりしていると、どんな食材を食べるべきか分かりやすくなります。

ここからは私の生活を一例として紹介します。

わが家の悩み①:冷え性
私の家族は、夫婦と子ども2人の4人で、私だけが男性です。家族みんな大きな病気を抱えてはいませんが、私も含めて夏以外の季節になると冷え性が気になっています。住まいが北海道東部というのも関係しているかもしれません。

薬膳は食材の効果を考慮して組み合わせを考えるのが基本です。肉はおおむね体を温めるのでそこまで気にしていませんが、レンコン・ゴボウ・タケノコ・キュウリといった野菜類は体を冷やしてしまうため、一度に大量に使用する料理は控えています。

また、主食では小麦よりも体を温める効果のある米飯をメインにし、体をより温めるもち米を定期的に食べるようにしています。逆に夏場は、体を冷やしてくれる食材を取り入れることで体温を下げるように気をつけることが多いです。ここで挙げた以外にも、夏野菜には体温を下げる性質がありますので、覚えておくと便利ですよ。

わが家の悩み②:便秘
もう一点、私以外はみんな便秘がちなので、「潤腸通便」という効能をもつ食品を取り入れるようにしています。手に入りやすい食材としてはくるみ・パイン・バナナにその効果があり、子どもが好むのでよく食卓に並べています。

また、子どもが幼い頃に熱を出しやすかったため、「解表」という熱を外に出す効能がある生姜をよく食べさせていました。このように、食事をする人の体調に合わせて設計していくことが、薬膳の効果的な活用方法です。

ただし、それを行うには「診断」が必要となり、薬膳の理論を少々踏み込んで理解しなければなりません。そのためハードルが高いと感じる人が多く、薬膳料理の普及や理解が進まない原因であると、私は考えています。

食材はできるだけ皮ごと使う

薬膳自体が自然との調和を重要視する学問です。食材の選び方はなるべく自然な形で加工、栽培されたものを選びましょう。また、野菜の表皮は効能が強いとされるため、可能な限りよく水洗いして皮ごと調理することが望ましいです。

メニューは好きなものを自由に

目的が定まれば、自然と使用すべき食材が見えてきます。その食材を用いて自由にメニューを考えていきましょう。難しく考えず、ぜひお好みのメニューを作ってみてください。

季節に合わせたおすすめの薬膳レシピ

薬膳に限らずですが、食事は季節に合わせて楽しみたいですね。後半で述べますが、冬は陰が隆盛で陽が後退し、寒さの邪気と乾燥の邪気が強まって厳しい季節となり、下記のような症状が起こりやすいです。

1.寒邪により気や血の停滞が起こり、神経痛・関節痛・痺れ・肩こり・風邪の症状
2.乾邪による鼻、口の渇き、肺の傷つき、毛髪のかさつき、肌荒れの症状
3.腎臓の働きが弱くなり足腰の痛み、むくみ、尿異常などの症状

それでは、これらに対してどんな食物が効果的か、その一部を紹介します。

① 陽気を補う食べ物
くるみ、ねぎ、にら、ピーマン、かぼちゃ、海老、牛肉、鶏肉、羊肉、生姜、唐辛子、にんにく、こしょう など

② 腎臓をサポートする食べ物
とうもろこし、くるみ、栗、キャベツ、さやいんげん、アナゴ、イカ、ウナギ、海老、牡蠣、シジミ、豚肉、羊肉、鶏卵、ブドウ など

③ 乾邪を弱め、うるおいをもたらす食べ物
みかん、梨、杏子、ブドウ、リンゴ、梅、パイン、レモン、冬瓜、豆腐、ハム、牛乳 など

薬膳料理では、以上のような食材の情報をもとに料理を考えていきます。

冬瓜と鶏のレモンスープ

陽気を補いつつ、湿潤効果のある食品で温かいスープを作ります。生姜の皮は効果が強いのでよく洗って丸ごと使いましょう。冬瓜はなければかぶや大根で代用できます。

【材料4人分】
冬瓜 200g
鶏手羽先 200g
生姜 薄切り3枚程度
水 1L
昆布 10cm程度
ナンプラー 大さじ3
鷹の爪 1本
レモン 1/4個

【作り方】
※下準備
・冬瓜は皮をむいて一口大に切っておく
・鶏手羽先は軽く水洗いしてザルにあげておく

① 鍋に分量の水・冬瓜・生姜・鶏手羽先・昆布を入れて火にかけます。沸騰したらアクを取り、弱めの中火で40分程度煮ていきましょう
② ナンプラー、鷹の爪を加えて5分煮たらレモンを搾り入れ、器に盛りつけます

ミルク湯豆腐

乾燥が進む季節に、体内に必要な水分である「津液(しんえき)」を補う食品を使った鍋物レシピです。簡単ですが、濃厚な味わいで体が温まります。

【材料4人分】
絹ごし豆腐 2丁
ゆずの皮 1/4個
牛乳 600mL
塩 小さじ1/5
ポン酢 適量

【作り方】
※下準備
・豆腐は8等分に切っておきましょう
・ゆずは皮を切り取り、白い部分をそいでから千切りにする(白い部分には苦味があるので取り除きます)

①鍋に牛乳・塩・豆腐を入れて弱火にかけましょう
②ふつふつとしてきたらゆずの皮を加えます
③ポン酢をつけていただくのがおすすめです

キャベツとくるみのアンチョビーソテー

冬は腎臓の消耗が大きくなり、そのサポートを行う必要があります。陽気を補う食材と合わせシンプルな洋風ソテーにします。

【材料4人分】
キャベツ 300g(1/4個程度)
くるみ 20g 
にんにく 1/2かけ
鷹の爪 1本
アンチョビ 3枚
オリーブオイル 大さじ1.5
塩 適量
こしょう 適量

【作り方】
※下準備
・キャベツは1口大に切ります
・にんにくは皮をむいて丸いまま包丁で潰しておきましょう
・鷹の爪は種を取ります

①フライパンにオリーブオイル・にんにく・鷹の爪を入れて弱火にかけ、香りが出たらキャベツとくるみを加えます
②そのまま強めの中火で2~3分炒めていきましょう
③ 全体のカサが減ったら中央にアンチョビを加え、潰しながら炒めます
④ 塩、こしょうで調味し、全体を炒め合わせたら完成です

薬膳をさらに知ろう

薬膳には東洋医学理論が欠かせません。最後にその各論を簡単に紹介します。

陰と陽

東洋医学理論の代表的なものに陰陽学説というものがあります。簡単に言うと、あらゆる物事や事柄を「陰と陽」の一対で示すものです。

陰と陽のバランスが取れている状態がベストであり、これが崩れると病気や不調のリスクがある、という考え方です。陰と陽は片時もじっとしていることがなく、常に動いているので、季節や症状に合わせてこのバランスを整えていくことが大事です。

季節でいうと春・夏は陽が、秋・冬は陰がそれぞれ活発となり、臓器では心臓・肺が陽、肝臓・腎臓・脾臓が陰に分類されます。さらに紹介すると、天地・上下・左右・昇降・昼夜・明暗・熱寒・動静・出入も陰陽(左が陽、右が陰)に分類されています。

これらの考えを食事に利用する場合、「冬の季節は陰が活発になり、陽が弱くなるので、陽の性質の食物を食べる」「春は肝臓の機能が盛んになり、陰気を使い過ぎてしまうため、食事で陰を補う」必要があるのです。

五行理論

五行理論では、宇宙の万物が「木・火・土・金・水(もくかどごんすい)」という5種類の物質「五行」で構成され、それらの物質の相互作用で成り立っているという考え方です。

5種の物質はそれぞれが助け合っているのですが、なかには対立する関係もあります。「臓器」や前述の「季節」についても、それぞれがどれかの物質に属しています。

たとえば「肝臓は木、心臓は火、腎臓は水」、「春は木、夏は火、冬は水」といった具合です。それらの対立関係や協力関係を理解して食事を構成することが、薬膳設計に必要とされています。

臓器と健康

臓器に関して、東洋医学では西洋医学と異なる解釈があります。それらを総じて臓象と呼び、「臓」は体の中にある臓器を指し、「象」はその臓器がもたらす生理・病理現象を指しています。

ここから分かるとおり、東洋医学は臓器の個々の実態だけではなく、その働きを合わせて考えるという点が特徴的です。
以下に臓器を記します。

五臓:心・肺・脾・肝・腎
六腑:胆・胃・小腸・大腸・膀胱・三焦
奇恒の腑:脳・髄・骨・脈・女子胞(子宮)

ほとんどは西洋医学と同様に考えられていますが、六腑の中の「三焦」についてはあまり知られていません。これは「気」の通り道を司る、目に見えない器官であり、東洋医学に特有の考えです。

しかしながら、今でも「五臓六腑に染み渡る」という言葉が使われていることからも、昔から日本では東洋医学が盛んだったといえます。そのほかに、「脈」をある種の臓器として捉える点も、東洋医学の特徴です。

前述のとおり、東洋医学では人体を構成している各臓器や組織を、「機能で分かれるが、構造では分かれていない1つのもの」と考えています。よって、各臓器はつながり、お互いを助け合いながら活動をしているのです。
つまり薬膳は、臓器や組織のバランスをとりもつような食事の構成や、治療の方針を大切にしているといえるでしょう。

自分に合った食生活を楽しく

今回の記事では、薬膳料理の基本を紹介しました。私自身も以前は薬膳料理を漢方薬そのものだとイメージしていました。ところが縁あって学ぶことになり、薬膳の難しさに困惑しつつも、その道に魅力を感じ、今に至っています。

「気」なんていささか信じられないし、宗教的だと思う方も少なくないでしょう。しかし、鍼灸についてはどうでしょうか。何の薬も用いず、針を経絡(ツボ)に刺すことで効果を発揮しています。鍼灸も東洋医学の考えがもとになっているため、薬膳と基本的な考えは一緒で、気の通り道である経絡を刺激して治療を行っています。

鍼灸と比べるとまだ認知度が低い薬膳ですが、今回の記事を読んで、少しでも多くの人が薬膳に興味を持っていただけたらうれしい限りです。ぜひ、自分に合った食生活の一部として、無理なく楽しく取り入れてみてくださいね。

takasue

takasue薬膳調理指導員、管理栄養士、調理師、精神保健福祉士

外資系ホテルでの10年にわたる調理師経験の中で、食と健康の関係性に興味を持ち、薬膳料理指導員、管理栄養士、精神保健福祉士の資格を取得。現在はフリーランス栄養士、大学講師、食品製造コンサルタントの傍らライティングを行う。

※このページの内容は、2021年3月18日時点での情報です。掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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