中央区には湾岸エリアに位置しながら、これまで住宅地としてはあまり注目されてこなかった「豊海町(とよみちょう)」というエリアがあります。というのも、豊海町内には港湾関係の施設が多くあるなど、住宅以外のエリアが大半を占めているため、一般に住宅地として認識されていなかったのです。

しかし、近年になって大規模な市街地再開発が進められており、都心に近い湾岸エリアに暮らす新たな選択肢として豊海町が注目されつつあります。あわせて、豊海町の北側に隣接する「勝どき」エリアでも市街地再開発が進んだことで、周辺の街の印象が徐々に住宅寄りに変わりつつあるエリアと言えます。豊海町内では現在も、総戸数約2,000戸におよぶ大規模再開発が進められており、街並みが大きく変わるようなインパクトをもたらしています。

とはいえ、現時点でも居住用の住宅は極めて限定的です。しかし、視野を少し広げると、隣接する勝どきエリアには大規模な再開発によるタワーマンションが多く立地しており、勝どき・豊海エリアを一体的に見たほうが、住みやすさをイメージしやすくなります。そこで、これまで注目されているとは言い難かった「豊海町」にスポットを当てて、そのポテンシャルと住みやすさについて紹介していきたいと思います。中央区の物件を探す

豊海町の位置関係 ※出典:国土地理院地図一部加工

豊海町は、湾岸エリアに位置しています。1963年に東京港の埋め立て事業として誕生した町で、比較的新しい町です。また、町名である「豊海町」は、住民アンケートにより選ばれています。近年、大規模な市街地再開発が積極的に進められている勝どきエリアに隣接しています。

豊海町の多くは港湾法で定められている臨港地区(漁港区)に指定されており、その役割から、冷凍・冷蔵倉庫が多く立地しています。臨港地区とは港湾の管理運営のため定められており、詳細は割愛しますが、分区条例に基づき構造物が規制されます。豊海町の場合は漁港区ですので、東京港の機能を担うことに関連する施設のみを建築することが許されています。下の図をご覧いただくと、豊海町の多くを臨港地区が占めていることが分かると思います。

東京港臨港地区の抜粋 ※出典:東京都港湾局

こうした立地条件から、豊海町の住みやすさについては、臨港地区を除くエリアについて、さらには隣接する勝どき5、6丁目と一体的に捉えると理解が深まると思います。中央区が2016年に策定した「勝どき・豊海地区まちづくりガイドライン」によると、勝どき・豊海の街の将来像を「新しい都心ライフスタイルを育むまち 勝どき・豊海」とし、将来の街のイメージとして、「生活機能が充実したまち」「ウォーターフロントを活かした水辺と調和したまち」「賑わいのあるまち」「うるおいのあるまち」としています。豊海町の居住エリアは限られていますが、都心近接という立地と、隣接する勝どきエリアとの一体的なまちづくりにより、今後さらに住みやすさが高まっていくことが期待されます。ガイドラインのもとで進められる再開発や街区整備は、地域の魅力を高める取り組みとして、今後も重要な指針になるはずです。

豊海町の交通利便性

豊海町の最寄り駅は、都営大江戸線の勝どき駅です。加えて、豊海町に最も近い公共交通機関としては東京BRTがあります。東京BRTは都心と臨海地域を結ぶ次世代型の路線バスで、交差点でバスの通過を優先する仕組み(PTPS=公共車両優先システム)を導入し速達性を確保しています。豊海町からは、最寄りの停留所である「勝どきBRT」から新橋駅や虎ノ門ヒルズまで直通でアクセスすることが可能です。運行本数も多く、ピーク時には1時間あたり最大13本が運行されています。

<勝どき駅から主要駅へのアクセス時間>

・東京駅:約25分(月島駅乗り換えまたは大門駅乗り換え)

・品川駅:約25分(大門駅乗り換え)

・新宿駅:約24分

<勝どきBRT(停留所)から主要駅へのアクセス時間>

・新橋:約5分

・国際展示場:約11分

豊海町の買い物・飲食店事情

飲食店等が多く入る勝どきビュータワー ※2025年6月撮影

豊海町内には、現在のところ日用品を購入できる商業施設はなく、日常の買い物や外食には、隣接する勝どきエリアの利便施設を利用するのが一般的です。町内にはわずかに飲食店もありますが、スーパーマーケットやドラッグストアなどは勝どきエリアにあります。

勝どきエリアまでは徒歩でもアクセス可能な距離であり、都営バスや自転車を利用すれば月島方面への移動も容易です。もんじゃ焼き店や新鮮な海産物を提供する店舗など、月島・勝どきエリアならではのお店を堪能できる点は、食を重視する方にとっても魅力的に映ると思います。

また、2027年竣工予定の「豊海地区第一種市街地再開発事業」では、約2,400m2の商業施設ができる計画となっています。詳細なテナント構成は今後明らかになるものの、日常生活を支える店舗の出店も考えられ、今後は町内でも一定の生活利便性が確保されていくと考えられます。

豊海町周辺の自然環境

中央区立豊海小学校・幼稚園、豊海運動公園を晴海側より撮影 ※2025年6月撮影

豊海町の自然環境といえば、なんといっても水辺空間です。朝潮運河と隅田川に面している豊海町。特に朝潮運河沿いには「豊海運動公園」があり、グラウンドや芝生の多目的広場、バーベキューのできるデイキャンプ場、テラスなどが整備されており、運河と一体的な空間で自然環境を堪能することができます。

豊海町周辺の治安・ハザード

2024年の町丁別犯罪認知件数 ※出典:犯罪認知件数:警視庁「令和6年 区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数」。町丁別境界:e-Stat。下図:国土地理院地図。

豊海町のエリアでの刑法犯認知件数は、上図のようになっています。同じ中央区である銀座に比べると認知件数としては少ないことが分かります。

豊海町の犯罪認知件数は2024年で3件となっています。中央区全体が1,979件ですので、全体のごく僅かであることがわかります。また、隣接する勝どきエリアは124件、月島は80件となっており、いずれも都心部である銀座などと比較すると少ないことが分かります。このため、認知件数上でみれば治安は安定している方といえます。

豊海町の災害リスク(抜粋) ※出典:中央区河川洪水ハザードマップ

豊海町は、元は海だったところを埋め立てしてできた土地です。また、隅田川や朝潮運河に面しています。このため、豊海町内には、高潮浸水想定、河川洪水浸水想定が公表されています。

特に高潮浸水については、過去に、死傷者を伴う被害が発生しているため、居住する場合には正しくそのリスク(浸水範囲、浸水深など)を知っておく必要があります。なお、国や東京都は、過去の高潮浸水被害を経験して、護岸整備やスーパー堤防の整備などを積極的に進めています。豊海町や勝どきエリアに住む場合には、どのような災害リスクがあるのか知っておき、いざ災害が起きた場合の避難経路や避難先を確認しておくことをおすすめします。

︎参照:中央区ハザードマップ

︎参照:不動産情報ライブラリ

豊海町周辺の病院事情

残念ながら現時点において豊海町内には診療所や病院は設置されていません。しかし、隣接する勝どきエリアには、診療所が多くあり、そうしたエリアで医療を受けることが可能です。また、中央区では、休日時の応急診療所を区内の各所に設けています。豊海町内にはありませんが、路線バスや鉄道を利用することで容易にアクセス可能な場所にあるので、豊海町への居住を検討する場合には、医療施設の位置についても把握しておくことをおすすめします。

︎中央区「休日応急診療所・休日応急歯科診療所・休日応急薬局」

︎東京都「救急医療機関」

豊海町周辺の子育て環境

豊海町はコンパクトなエリアで子育てをするには便利だと思います。というのも、豊海町はそのエリア自体が狭く、さらに臨港地区の範囲を除くと、残りは豊海運動公園や小学校・幼稚園、豊海地区第一種市街地再開発事業のエリアとなるためです。再開発事業の隣接地に、小学校・幼稚園・公園がまとまっている点は、子育てを行う方にとっては嬉しいかもしれません。また、再開発では保育所も作られる計画となっており、この点もコンパクトな子育て環境という面でポイントが高いといえます。

一方、塾や子どもの学びの施設などは勝どきエリアを利用する必要があること、災害リスクに重点を置いている方にとっては、もしかしたら子育て環境としては若干のマイナスに働くかもしれません。

︎中央区「子育て・教育」

豊海町周辺の家賃相場

豊海町は、都営大江戸線が乗り入れている「勝どき駅」を利用することができ、都心方面へのアクセス性に優れています。また、鉄道のみならず、都営バスや東京BRTなども利用できる環境にあることも比較的交通利便性が高いといえます。勝どき駅の家賃相場は、総じて隣駅の月島駅よりも若干高めとなっています。また、参考として掲載している隣接駅の築地市場駅と比較すると、勝どき駅のほうが低い家賃相場であることがわかります。

<勝どき駅の家賃相場>

・ワンルーム:15.04万円

・1LDK:22.89万円

・2LDK:30.11万円

<月島駅の家賃相場>

・ワンルーム:13.81万円

・1LDK:20.67万円

・2LDK:28.25万円

<築地市場駅の家賃相場>

・ワンルーム:17.46万円

・1LDK:32.21万円

参照元:LIFULL HOME'S家賃相場 勝どき駅(2025年7月24日時点)

豊海町内の市街地再開発事情

配置イメージイラスト・建物断面イメージ ※出典:三井不動産レジデンシャル株式会社(2023年2月27日)『「豊海地区第一種市街地再開発事業」着工 都心大規模複合再開発プロジェクト、2027年竣工予定』

豊海地区第一種市街地再開発事業の状況 ※2025年6月撮影

現在、豊海町では、中央区立豊海小学校・幼稚園に隣接する土地で大規模な市街地再開発「豊海地区第一種市街地再開発事業」が進められており、2027年には総戸数約2,000戸に及ぶ住宅が供給される予定となっています。建物名称は「THE TOYOMI TOWER MARINE &SKY」とされ、地上54階、地下1階、高さ189mに及びます。住宅に加えて、店舗や公共施設(集会所、区民館)の設置が予定されています。

【□関連リンク】中央区豊海エリアで市街地再開発が進行中。地下鉄新線の構想がある豊海エリアは今後どう変化するのか(LIFULL HOME'S PRESS)

晴海埠頭より豊海地区・勝どき地区を撮影 ※2025年6月撮影

本稿では、東京都中央区・豊海町の住みやすさについてご紹介しました。

これまで豊海町といえば、東京港の港湾機能を担う臨港地区としての印象が強く、いわゆる住む場所というイメージを抱く方は少なかったかもしれません。しかし、都心に隣接しながら、隅田川や朝潮運河に接し、東京湾を望む開放的な水辺環境が広がる豊海町です。近年の再開発によって、この地に新たな居住価値が生まれつつあります。

実際、中央区が定めた「勝どき・豊海地区まちづくりガイドライン」では、「新しい都心ライフスタイルを育むまち」がまちづくりのテーマに掲げられています。単に大規模マンションを建てるだけではなく、水辺との調和、生活利便性の向上、人にやさしい歩行空間の整備など、住む人が快適に、そして豊かに過ごせる環境づくりが進められています。

特に注目したいのが、豊海町内で進行中の大規模な再開発事業です。約2,000戸の住宅に加え、保育所や商業施設などを併設した複合開発が2027年度の完成を目指して進められており、完成した際には、街の景色や人の流れは大きく変わると考えられます。加えて、勝どきエリアでも市街地再開発が進められており、一体的に街並みが変わっていくのかもしれません。

豊海町は、今はまだ認知度が低い場所かもしれませんが、都心近接でありながら、水辺の自然や再開発による新しい街並みが広がる豊海町が、落ち着いた環境での子育てを考えている方や、都市と自然のバランスを大切にしたい方にとって、憧れのエリアになる日も近いかもしれません。

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