関西圏の方ならよく聞く話ですが、京都市内の移動はバスが多く、大阪市内は地下鉄が一般的。そんな大阪にも本数は京都ほど多くありませんが、バス移動が楽しいところがあります。
このコーナーでは、あまり知られていない大阪市内のバスの魅力について、さまざまな系統に乗って降りて、その近隣にあるスポットなどを巡りながらお伝えしていきます。
今回は、「大阪で最も低い山」として知られる天保山へ向かう88号に乗ります。天保山には観覧車や水族館もあり、観光客や家族で賑わう場所。電車で向かう人も多い場所ですが、一味違った道中をお届けします。大阪府の物件を探す

土佐堀通りを走る大阪シティバス。土佐堀通り沿いにはオフィスビルをはじめ専門学校、マンションなど多数のビルが並ぶ

中之島の国立国際美術館と大阪中之島美術館。左には大阪市立科学館があり、芸術文化が密集するゾーン。ここから御堂筋を越え東に向かうと国宝を多数有する東洋陶磁美術館も

出発は、このコーナーではもうお馴染み(?)になった大阪駅前のバスターミナルです。88号に乗車したら、バスはまず御堂筋を南に向かいます。そして、10分程度で淀屋橋に到着、そこからは、土佐堀通りを西に進路を取ります。

この土佐堀は、豊臣期に土佐の商人が多く住んだ土佐座の地といわれています。そのため、この通りの横を流れる川を土佐堀川と名付け、そのすぐ側を平行に走る道を土佐堀通りと呼んでいるそうです。

淀屋橋から中之島の西の端まで続く土佐堀付近には、国立国際美術館、大阪中之島美術館、大阪市立科学館といった文化施設をはじめ、ホテルのほか、バラ園、カフェ、ワインショップ、パン屋に居酒屋など個人商店も多く、大阪のキタやミナミの中心と違い、落ち着いた雰囲気を味わえる大阪でも珍しい場所になっています。中之島の歴史を振り返ると、江戸時代、諸藩の蔵屋敷が集中し、全国各地の物資が集まっていました。いわゆる大阪(当時は大坂)の「天下の台所」の中枢を担っていたのがここ中之島です。そして、その後、それらの蔵屋敷が払い下げられて、その場所に文化施設が立ち並ぶようになりました。

東洋陶磁美術館の東側にある中之島公園。薔薇の季節に無数の種類の花が咲き誇る

中之島と市民に親しまれている名称ですが、実は1978年に、ようやく中之島1丁目〜6丁目と統一されました。それまでは塩屋六左衛門町、治郎兵衛町・小倉屋仁兵衛町(こくらやにへいちょう)・庄村新四郎町など商人の名前がついた町も多数ありました。変遷を知るとなかなかおもしろい

日本最初の市電の道

中之島に別れを告げるとみなと通りに入ります。このみなと通りも歴史が古く、近隣に大阪府庁舎や大阪市庁舎があったためか、大阪初の市電が走った通りでもあります。今ではその面影を感じられるのは、九条駅付近に建てられた大阪市電創業の地と掘られた石碑のみとなりました。

そんな約6キロ続くみなと通り界隈には、川口基督教会や京セラドーム大阪、通り沿いではありませんが、九条駅付近には大阪屈指の元気な商店街・ナインモール九条商店街もあり、大阪の下町を味わえます。さらに、大阪の映画館の良心とも言える「シネ・ヌーヴォ」をはじめ、商店街内には若い店主の居酒屋やバーなども多数。さらに南へと進めば、今では住宅地が広がり、その面影は全くありませんが、大正時代から1930年までオープンしていた、市岡パラダイスと呼ばれた娯楽施設がありました。大劇場(桂座)のほか、野外劇場、大浴場、遊園地、動物園などがあり市民がずいぶん楽しんだそうです。

ナインモール九条商店街。道幅も広く、多くの人が利用する生活のための商店が並ぶ。その脇道に入ると若者の経営する居酒屋やカレー店などおもしろい店が多数

過去に大阪府庁舎のあった江之子島エリア近くにある川口基督教会。近くに外国人居留地もあったそう

上空からみた京セラドーム大阪。手前にある丸い球体のものはガスタンク。手前の大正区で街の雰囲気がガラリと変わり、昭和の住宅街が広がる

どんどんとみなと通りを進み大阪港の付近まで来ると、朝潮橋駅前にある八幡屋公園に到着します。ここには、いわゆる公園機能のほか、大きなプールやバスケットボールやバレーボールといった室内競技だけでなく、柔道なども可能な畳の部屋のほか、会議にも使える部屋と充実の体育館があります。屋外のグラウンドも多数あり、港区民の祭りなどもここで開催されることが多いのだとか。また春秋にはたくさんの花が公園内で見頃を迎えるそう。春はもちろん桜。芝生広場を取り囲むようにソメイヨシノが咲いています。

春はそれだけでなく、テルテモモ、コブシ、コデマリ、レンギョウ、梅雨の6月には、ジャカランダ、ガマズミなど、秋には銀杏並木のほかヤマモミジ、ハギなどたくさんの植物が楽しめます。スポーツを楽しむ人々だけでなく、憩いの広場として楽しむ区民、住人のさまざまな人間模様が見られるのも公園の良さでもあります。

こちらが八幡屋公園。奥にあるのが体育館で開園は大正12年。面積は、12.4ヘクタールとかなりの大きさ。1996年に大阪プールと大阪市中央体育館がこちらに移転し、現在の形になりました

公園内に咲く桜。お花見のシーズンには多くの市民が訪れている

いよいよ執着地点である天保山に到着です。前述の通り天保山は、大阪一低い山です。2014年までは、日本一低い山でもありましたが今は2番目になっているそうです。

こちらの天保山は、自然にできた山ではなく江戸時代に安治川・木津川両河口に上流から土砂が流れ、船の航行が困難になることがあったそうで、その土砂を取り除いてできました。江戸の頃から船の往来はありましたが、大型船が入れるようになったのは、その後ずいぶん経過した明治の時代になってからだったそうです。

現在は、観光地としての賑わいがあり、1990年にオープンしたジンベエザメなどが飼育されている「海遊館」を筆頭に家族連れで賑わう施設が目白押しです。そのほか、大正12年に建てられた通称・赤レンガ倉庫の旧住友倉庫にあるクラシックカーを展示する施設などもあります。

1周約20分。112.5メートルの高さを誇る大きな観覧車がランドマークにもなっている。奥に見えるのが天保山大橋

大阪の下町と近代建築が混ざり合う住宅地

今回バスに乗って巡ったのは、大阪駅前から、天保山までです。大阪駅を出て、土佐堀通りを進むこの道には、商業施設やオフィスビルなどが多く、住居は中之島の西端に到着してようやく現れる程度です。川沿いのマンションなどは眺めもよく、人気のエリアです。

そして、そこから南に下ると一気に庶民的なエリアに入り、一戸建て住宅が多数立ち並びます。ドームと長屋などが残るエリアのコントラストは、大阪の伝統的な街並みと近代建築が重なり合うおもしろい風景を生み出しています。

◆本記事の担当者

取材・文:松村貴樹

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