コンパクトシティの背景

車社会が到来し、街は郊外へ広がりました
車社会が到来し、街は郊外へ広がりました

国立社会保障・人口問題研究所によると、2040年までに日本の人口は16%減少することが予測されています。人が減るなかで、持続可能な都市の姿としてコンパクトシティに注目が集まっています。コンパクトシティとは、郊外に広がった産業や生活機能を一定の範囲内に集中させるという構想です。

近い将来、懸念される課題は地方自治体の財政状況の悪化です。
出生率が下がり少子高齢化も拡大していることで、税金を納める層が減少している地域が増加しています。高齢者の介護など福祉サービスなどの需要は増える一方、あてられる予算は限られてしまいます。さらに、財政が厳しい自治体にとって公共施設や道路、上下水道の整備など社会資本の維持管理費用も大きな負担です。

こうした社会課題は高度経済成長の頃、中心地から郊外に人口が拡散していったことが背景にあります。車社会になったことで移動できる距離が広がり、中心地から離れて安くて広い土地に住む人が増加しました。それによって、商業施設など産業は郊外に移転し、多くの公共事業も行われました。
人口が増加し、経済も成長過程の頃は問題ありませんでした。しかし、人口減少時代に突入した今、このままでは財政破綻する自治体が出てきてしまいます。

コンパクトシティの概要

自動車を使わない生活が実現する
自動車を使わない生活が実現する

コンパクトシティの構想は、最近生まれたものではなく1988年頃からアイデアとして存在していました。しかし具体化されることはほとんどなく、2013年頃から日本社会が課題に直面しはじめてから活発に議論されるようになりました。

コンパクトシティでは、基本的に自動車を使わない範囲内での生活を想定しています。住宅や公共施設、商業施設を一定の範囲内に集中させるため、公共交通か徒歩で移動することが可能です。行政機能や訪問介護などの福祉サービスも効率化することができ、財政悪化に歯止めをかけることができます。

コンパクトシティのメリット・デメリット

街のために伐採した郊外で植樹が可能に
街のために伐採した郊外で植樹が可能に

コンパクトシティの大きなメリットは「利便性の向上・時間の節約」です。職場への移動・買い物・公共施設へのアクセスがすべてコンパクトになるため移動の負担が軽減します。移動時間が減る分、空き時間が生まれるため家族で過ごす時間や趣味の時間に活用することが可能です。

次に、「行政サービスの充実」があげられます。住民が集中するため収入が増え、自治体の財政状況は良好になるでしょう。老朽化した橋やトンネルを修復したり、福祉や教育などのサービスを充実させたり、豊かな住民生活が期待できます。また、「地域コミュニティの活性化」にもつながります。特に移動が負担になっていた高齢者にとって、病院や福祉施設への移動が楽になるため外に出る機会も増えるでしょう。

さらに環境問題にも貢献することが可能です。まず自動車の利用が格段に少なくなるため、排気ガスの排出による地球温暖化を抑制することにつながります。また、郊外に居住地を広げていくことで多くの山を削り森林伐採を進めてきましたが、コンパクトシティにすることで再び植樹をして森を増やすことができます。

しかし、多くのメリットがある反面、コンパクトシティが抱えるデメリットもあります。コンパクトシティに取り組む際に、すべての住民に移動を義務づけることはできません。そのため一定数の人口が集中したときに、残された人々の生活利便性が悪化する可能性があります。

また、林業や農業など第一次産業を担う人々は、中心地から離れた森林や広い土地を生活拠点としているため、都市部の生活スタイルとは異なります。第一次産業の人々や一部の人が郊外に残るとすると、既存のインフラ設備は維持していく必要がありますが、住民が減るため、自治体は既存施設などの維持管理が難しくなります。

コンパクトシティを成功させるために必要なこと

箱物をつくっても上手くいなかないかも…
箱物をつくっても上手くいなかないかも…

コンパクトシティを推進していく上で、地域によってメリット・デメリットが分かれてくるでしょう。地域の特性に合わせた独自のプランを作っていくことが重要です。

すでにコンパクトシティへの取り組みを実施した地域もあります。青森市は、除雪費用の負担軽減などを目的にコンパクトシティを実施しました。しかし、町を活性化するために新たに建設した大型の商業施設の運営がうまくいかず、債務が増加しました。

一方、富山市はコンパクトシティに取り組み、成果をあげています。自動車を使用しない町にするために公共交通機関を充実させることが必要でしたが、新たに建設するのではなく廃線になるレールを再活用することで費用を抑えています。

成功事例の都市は?

本当に必要なサービスを見極めることが大切
本当に必要なサービスを見極めることが大切

国土交通省は、2014年からコンパクトシティ形成支援事業を予算化し、46億円をあてています。これを新たな生活圏を再構築していく上で必要な施設移転などの経費に活用することが可能です。しかし、注意するべきことは青森市が行ったように箱ものを作るための費用に活用するのではなく、富山市のように地域の既存資源を活用して住民が本当に必要としているサービスの形を作っていくことです。

過去の事例を参考にした、地域に合ったコンパクトシティの実現によって、人々は持続可能で豊かな生活を送ることができるでしょう。

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