日本社会は本格的な人口減少と少子高齢化の時代を迎えています。高度経済成長期から車社会の発展とともに、人々は都市部から郊外へと居住地域を拡大してきました。しかし、人口が減少していく今後の日本において、これまで通りに郊外へ市街地を広げ続けることには大きな弊害が予想されています。


その対策として全国の自治体で注目されているのが「コンパクトシティ」の構想です。コンパクトシティを推進することで持続可能な街づくりができると期待される一方で、推進にあたって生じるデメリットや問題点も指摘されています。


この記事では、日本におけるコンパクトシティの定義や背景、メリット・デメリット、そして国内外の成功事例や失敗事例を通して、持続可能な社会のあり方を探ります。


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  1. 日本で「コンパクトシティ」が推進される背景とは?
    1. コンパクトシティの定義とは
    2. 人口減少と少子高齢化の進行
    3. 地方自治体の財政難とインフラ老朽化
  2. 日本におけるコンパクトシティのデメリット・問題点
    1. 郊外や農村部に取り残される住民の生活利便性低下
    2. 既存インフラの維持管理費用が即座には減らない
    3. 中心市街地の地価高騰と居住コストの増加
    4. 住民の合意形成の難しさ
  3. コンパクトシティのメリット
    1. 日常の利便性向上と移動時間の節約
    2. 行政サービスや医療・福祉の効率化
    3. 高齢者の外出機会の創出とコミュニティ活性化
    4. 環境負荷の低減と自然環境の回復
  4. 日本国内のコンパクトシティ成功・失敗事例
    1. 【失敗事例】青森市:箱物行政による中心市街地活性化の難しさ
    2. 【成功事例】富山市:LRT(次世代型路面電車)を軸としたネットワーク型
  5. コンパクトシティ構想を持つ街での住まい探しのポイント
    1. 「立地適正化計画」の居住誘導区域を確認する
    2. ライフスタイルに合ったエリア選びを
  6. まとめ:日本の課題を解決するコンパクトシティ、自分に合った住まい選びを
  7. 【よくある質問(FAQ)】
    1. Q.1 コンパクトシティとは簡単に言うと何ですか?
    2. Q.2 なぜ日本でコンパクトシティが注目されているのですか?
    3. Q.3 コンパクトシティの最大のデメリットは何ですか?
    4. Q.4 コンパクトシティに住むメリットはありますか?
    5. Q.5 日本でのコンパクトシティの成功例はありますか?

コンパクトシティはインフラ維持と利便性向上に直結する

人口減少や財政悪化を背景に、都市機能を中心部に集約させることで、移動時間の短縮や行政サービスの効率化、環境負荷の低減が可能になります。 詳しくは、「コンパクトシティのメリット」をご覧ください。

 

郊外の住民孤立や中心部の地価高騰といったデメリットも存在

すべての住民が中心部に移住できるわけではなく、郊外の利便性低下や、需要集中による中心市街地の家賃上昇など、クリアすべき課題があります。 詳しくは、「日本におけるコンパクトシティのデメリット・問題点」をご覧ください。

 

成功の鍵は「既存資源の活用」と「地域特性に合わせた計画」

新しい箱物を取り入れるだけでは思うような効果が得られないリスクがあり、富山市のLRTのように既存の交通網や資源を活かし、住民ニーズに沿ったまちづくりが求められます。詳しくは、「日本でコンパクトシティを持続可能にするためのポイント」をご覧ください。

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日本の地方都市では、人口減少や財政難を背景に、都市機能を一定範囲に集約するコンパクトシティの推進が急務となっています。

コンパクトシティとは、郊外にむやみに拡大した住宅や商業施設、公共施設、医療・福祉などの都市機能を、駅周辺などの一定の範囲内に集約させる都市構造のことです。
国土交通省が推進する「立地適正化計画」などがその代表例であり、生活に必要な施設を歩いて行ける範囲や、公共交通機関で容易にアクセスできる範囲にまとめることで、効率的で持続可能な都市を目指しています。

日本においてコンパクトシティが求められる最大の理由は、急激な人口減少と少子高齢化です。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の総人口は長期的に減少していくことが予測されています。とくに地方都市では、若年層の流出と高齢化が同時に進行しており、税収が減少する一方で、高齢者の介護や医療など福祉サービスへの需要は増加の一途をたどっています。

税収が減るなかで、地方自治体にとって大きな負担となっているのが、道路や橋、上下水道、公共施設などの社会資本(インフラ)の維持管理費用です。

車社会が到来し、街は郊外へ広がりました

車社会が到来し、街は郊外へ広がりました

 

高度経済成長期、自動車の普及(モータリゼーション)によって人々の移動距離が広がり、中心市街地から離れた安くて広い土地に住む人が増加しました。これに伴い、商業施設も郊外に大型店舗を構えるようになり、市街地が無秩序に広がる「スプロール現象」が起こりました。

人口が増加し、経済が成長している時代は、郊外までインフラを整備・維持する財政的な余裕がありました。しかし、人口減少時代に突入した現在、広大なエリアのインフラを維持し続けることは困難であり、このままでは財政破綻に陥る自治体が出てくる懸念があります。

持続可能なまちづくりとして期待されるコンパクトシティですが、郊外の利便性変化や地価高騰など、推進する上ではいくつかのデメリットや問題点が存在します。

コンパクトシティの構想において、すべての住民を強制的に中心市街地へ移住させることはできません。そのため、一定数の人口が中心部に集中した際、郊外や農村部に住み続けることを選択した人々の生活利便性が悪化する恐れがあります。

郊外からスーパーや病院が撤退し、バスなどの公共交通機関の路線が廃止・減便されると、とくに自動車の運転が困難な高齢者にとって、日常生活の買い物や通院に大きな支障をきたすことになります。郊外に住み続ける住民との生活格差が生じやすい点も、検討すべき課題の一つです。

林業や農業などの第一次産業を営む人々は、中心地から離れた土地を生活拠点としているため、都市部の生活スタイルに合わせることは困難です。一部の住民が郊外に残る以上、自治体はそこにつながる道路や水道などの既存インフラを完全に放棄することはできません。

そのため、結果として少ない住民のために広大なインフラを維持し続けなければならず、想定していたほどの財政負担の軽減にすぐにはつながらないという構造的な問題があります。

都市機能が中心部に集約され、利便性が高まることで、そのエリアの土地や住宅の需要が急増します。これにより中心市街地の地価が高騰し、家賃や住宅購入価格が上昇するというデメリットが生じます。

 

居住コストが上がれば、若い世代や子育て世帯などの層が中心部に住むことが難しくなり、かえって家賃の安い郊外へ流出してしまうというリスクもあります。

長年住み慣れた土地を離れ、中心部へ移住することを促す政策は、慎重な合意形成が必要になることがあります。先祖代々の土地を手放したくないという思いや、住環境の変化に対する不安など、住民感情への配慮が必要です。住民との丁寧な対話と合意形成には多大な時間と労力がかかります。

デメリットがある一方で、適切に計画されたコンパクトシティには、移動負担の軽減や行政の効率化など、住民と自治体の双方に多くのメリットをもたらします。

コンパクトシティの大きなメリットの一つは、“利便性の向上と時間の節約”です。自動車に頼らず、徒歩や自転車、公共交通機関で移動できる範囲での生活を想定しています。

自動車を使わない生活が実現する

自動車を使わない生活が実現する

 

住宅の近くに職場、商業施設、病院、公共施設が集約されるため、日々の買い出しや通勤、通院にかかる移動の負担が大幅に軽減されます。移動時間が減った分、家族と過ごす時間や趣味の時間など、生活の質を高めることに活用できます。

都市機能が集約され、駅やスーパー、病院が徒歩圏内にある物件は、とくに単身者や自動車を運転しないシニア層にとって魅力的です。駅周辺の便利な物件を探して、利便性の高い暮らしを検討してみてはいかがでしょうか。

駅まで徒歩5分の便利な物件を探す

住民が一定のエリアに集中することで、行政は効率的にサービスを提供できるようになります。たとえば、訪問介護の移動ルートやゴミ収集のルートが短縮され、人員やコストの削減が図れます。また、救急車の到着時間や警察のパトロールも迅速化し、安全・安心な街づくりに寄与します。

徒歩や公共交通機関での移動が増えることで、街中で人とすれ違う機会が増え、地域コミュニティが活性化しやすくなります。運転免許を返納した高齢者にとっても、歩いて行ける距離に目的地があれば外出のハードルが下がります。これにより、高齢者の引きこもりの防止や、ウォーキングによる健康維持・医療費の削減効果も期待されています。

環境問題への貢献も大きなメリットです。自動車の使用頻度が減ることで、排気ガス(CO2)の排出量が抑えられ、地球温暖化の抑制につながります。

街のために伐採した郊外で植樹が可能に

郊外の自然環境の回復と安全な国土づくり

また、無秩序に開発された郊外の土地を自然に返し、植樹を行って森林を回復させることで、土砂災害などに強い国土づくりを進めることが可能になります。

日本国内では、すでに多くの自治体がコンパクトシティに向けた取り組みを行っています。ここでは、代表的な失敗事例と成功事例を紹介します。

青森市は、全国に先駆けてコンパクトシティ構想を打ち出し、郊外への無秩序な拡大を抑え、中心市街地の活性化と冬場の除雪費用の削減を目指しました。そのシンボルとして、中心部に第三セクターが運営する大型複合商業施設(アウガ)を建設しました。

箱物をつくっても上手くいなかないかも…

巨大な施設(箱物)を作るだけでは街の活性化に繋がらないケースも

 

しかし、車社会に慣れ親しんだ住民のライフスタイルを急に変えることは難しく、無料駐車場を備えた郊外の大型ショッピングモールに顧客が流出しました。結果として期待されたほどの集客・収益が得られず、施設は経営破綻し多額の負債を抱えることになりました。「巨大な施設(箱物)を作るだけでは、街の活性化にはつながらない」という重い教訓を残しています。

富山市は、日本におけるコンパクトシティの成功モデルとして国内外から高く評価されています。富山市は「お団子と串」という概念を提唱し、拠点となる地域(お団子)を公共交通網(串)でつなぐ「公共交通を軸としたネットワーク型コンパクトシティ」を目指しました。

特徴的なのは、LRT(次世代型路面電車)の導入です。廃線になりかけていた鉄道路線を再活用・近代化することで初期費用を抑えつつ、バリアフリーで乗り降りしやすいLRTを整備しました。さらに、中心市街地への居住を促進するための補助金制度も整備しました。これにより、中心部の地価の下げ止まりや、転入者の増加、歩行者通行量の増加といった成果を上げています。

将来を見据えて家を購入したり借りたりする際には、その街の「立地適正化計画」を確認し、中長期的な利便性を見極めることが重要です。

現在、全国の多くの自治体が国土交通省の支援のもと「立地適正化計画」を策定しています。この計画では、将来的に人口を維持し、インフラ投資を集中させる「居住誘導区域」と、医療・商業などの施設を集積させる「都市機能誘導区域」が定められています。

本当に必要なサービスを見極めることが大切

誘導区域の確認と中長期的な利便性を見極める

 

居住誘導区域外で家を購入した場合、将来的に周辺のスーパーが撤退したり、バス路線がなくなったり、道路や水道などのインフラ更新の優先度が変わったりするリスクがあります。家探しの際は、自治体のホームページなどで立地適正化計画のマップを確認し、候補の物件が居住誘導区域内に入っているかを確認することをおすすめします。

コンパクトシティ化が進む都市では、中心部と郊外の二極化が進みます。通勤や買い物、将来の運転リスクを考えて「利便性の高い中心部」を選ぶか、あえて車での生活を前提に「自然豊かで広い敷地が持てる郊外」を選ぶか。メリットとデメリットを比較し、自分たちのライフプランに合った選択をすることが大切です。

日本におけるコンパクトシティ構想は、人口減少と地方財政の悪化を乗り越えるための重要な選択肢です。移動時間の短縮や行政の効率化といったメリットがある半面、郊外に住み続ける住民への配慮や地価高騰といったデメリット・課題も抱えています。

これから地方移住や住み替えを考えている方は、検討している自治体がどのような都市計画を持っているのかを事前に確認することが大切です。中心部に住む利便性と、郊外で暮らす魅力、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、ご自身の将来を見据えた住まいを探してみてください。

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A.1 郊外に広がった住宅や商業施設、病院、公共施設などの都市機能を、駅周辺など一定の範囲内に集約させ、徒歩や公共交通機関で生活できるようにする都市構造のことです。

A.2 急激な人口減少と少子高齢化により、地方自治体の税収が減る一方で、広大なエリアに広がる道路や水道などのインフラ維持が財政的に限界を迎えているためです。

A.3 郊外や農村部に住み続ける人々の周辺からスーパーや病院が撤退し、生活利便性が大きく悪化する恐れがあることや、中心市街地の地価・家賃が高騰してしまう点です。

A.4 自動車がなくても生活しやすく、日々の買い物や通院などの移動時間が大幅に節約できます。また、行政サービスが効率化され、地域コミュニティも活性化しやすくなります。

A.5 富山市が有名です。廃線になりかけていた鉄道路線をLRT(次世代型路面電車)として再活用し、公共交通を軸に都市機能を集約させることで、中心市街地の活性化に成功しています。

更新日: / 公開日:2016.09.28