「つくばエクスプレス 中古マンション価格上昇率ランキング」 開業から18年、駅前開発による価格上昇が顕著に

つくばエクスプレスは、首都圏北東部の交通網の整備、JR常磐線の混雑緩和による通勤・通学時の快適性の向上、首都圏での住宅共有の促進などを目的として、2005年に開業した

首都圏の新築分譲マンションの平均価格は2023年3月に1億円を超え、中古マンションの価格も上昇傾向が続いている。2022年10～12月に登録・公開された首都圏の中古マンションのデータをまとめた「LIFULL HOME'S マーケットレポート」においても、掲載物件平均価格は、東京都が4,861万円で前年比105.1%、神奈川県が3,032万円で前年比111.2%、埼玉県が2,655万円で前年比108.8%、千葉県が2,688万円で前年比112.9%となっている。

なかでも2005年に開業以来、各駅の周辺でさまざまな開発が進められてきた「つくばエクスプレス」沿線は、周辺エリアより中古マンション価格の上昇率が顕著に高い駅が見られる。つくばエクスプレスは、東京都の「秋葉原」駅を起点とし、埼玉県、千葉県、茨城県「つくば」駅までの20駅、約58kmを最速45分で結ぶ交通路線である。交通利便性の高さに加え、自然豊かな住環境も魅力で、特に子育て世帯からの人気が高い沿線だ。
実需要の増加が価格上昇につながっていると考えられるが、今注目されている駅、また、今後の開発によりさらなるまちづくりが期待される駅はどこなのか。今回は、つくばエクスプレス沿線の中古マンション価格上昇率が高い駅をランキング形式で発表する。

まずは上位駅を見ていこう。つくばエクスプレス沿線の中古マンションの価格上昇率1位は、「流山おおたかの森」となった。LIFULL HOME`S住まいインデックスによれば、同駅の標準的な中古マンション価格は直近の3年間で67.10%程度上昇している。これは、2020年3月時点の平均価格2,652万円から67.10％上昇し、2023年3月時点で4,432万円になったことを意味する。同駅がある千葉県の価格上昇率20.38%と比較すると3倍以上の高水準となっており、需要の高まりがうかがえる。

「流山おおたかの森」は「秋葉原」まで約30分、東武アーバンパークラインも利用できるなど、優れた交通利便性に加え、中古マンション価格相場を押し上げた背景には、次々と進む大規模な駅前開発があると考えられる。駅周辺には大型ショッピングモール「流山おおたかの森S・C」をはじめさまざまな商業施設が整っており、2022年6月には「流山おおたかの森S・C ANNEX2」「GREEN PATH」の2施設がオープン。毎年のように新施設が完成している。
2023年5月25日には、駅ナカ商業施設「TXグランドアベニューおおたかの森」が大幅リニューアルオープンすることでも注目を集めている。つくばエクスプレスの高架下を利用した商業施設で、フードコートや人気のスイーツ店など、飲食店を中心とした全13店舗、近隣のファミリー世帯が日常的に利用しやすそうなバラエティ豊かな店舗が入るという。
つくばエクスプレスの中期経営計画では、沿線ブランド向上の軸として「流山おおたかの森近傍の開発・整備」が挙げられており、今後のまちづくりによってさらなる価格上昇の可能性も考えられそうだ。

▼「流山おおたかの森」の住まいと暮らしやすさ【住まいインデックス】
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/chiba-pref/09938-st/
▼「流山おおたかの森」の中古マンションを見てみる【LIFULL HOME'S】
https://www.homes.co.jp/mansion/chuko/chiba/nagareyamaotakanomori_09938-st/list/

「都心から一番近い森のまち」「母になるなら、流山市。」のキャッチコピーを掲げる「流山おおたかの森」駅がある流山市。子育て世帯の流入が続き、若い世代による新しい街のコミュニティが次々と生まれている

2位には、埼玉県八潮市の「八潮」がランクイン。直近3年間での中古マンションの価格上昇率は35.17%と、埼玉県の平均上昇率22.97%と比べても高い水準だ。とはいえ同駅の築10年の中古マンションの価格相場は3,169万円と、都心の同築年数の物件と比べると値ごろ感があるといえる。賃貸マンションの賃料は直近3年間で8.75%上昇と、埼玉県の平均上昇率7.24%と同程度だった。
「八潮」は、埼玉県八潮市内の唯一の駅としても話題となった。東京都足立区と葛飾区に接し、都心から約15km、「秋葉原」まで約20分と都心へのアクセスも優れている。駅前には食料品や日用品がそろう商業施設があり、暮らしやすい環境となっている。八潮南部西地区と東地区では道路、公園などの都市基盤の整備と良質な住宅・宅地の供給など、大規模なまちづくり事業が進められている。1位の「流山おおたかの森駅」と同様、駅周辺の利便性向上とまちづくりへの期待値が価格上昇につながっていると考えられる。

▼「八潮」の住まいと暮らしやすさ【住まいインデックス】
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/saitama-pref/09935-st/
▼「八潮」の中古マンションを見てみる【LIFULL HOME`S】
https://www.homes.co.jp/mansion/chuko/saitama/yashio_09935-st/list/

「八潮」駅周辺。同駅でもつくばエクスプレス高架下を利用した商業施設「TXアベニュー八潮」の全面リニューアルが計画されている

3位は、都心から茨城県への玄関口となる「守谷」がランクイン。中古マンションの価格相場は直近3年間で32.26%上昇、茨城県の平均上昇率17.00%に比べて高めの水準となっている。築10年の中古マンションの価格相場は3,412万円と、2位の「八潮」と同様、都心の物件と比較すると手の届きやすい価格帯であるだろう。
「守谷」から「秋葉原」までは約40分。都心に勤めながら自然豊かな環境で暮らしたい人にとって十分許容できる所要時間といえそうだ。つくばエクスプレスだけでなく関東鉄道常総線も利用でき、都心へのアクセスのしやすさ、子育て環境の充実度からファミリーから人気を集め、守谷市の人口は増加傾向にある。2022年4月には地域コミュニティを育む拠点として、駅東口に公園と商業施設が融合した複合商業施設「ブランチ守谷」がオープンした。「守谷駅」も今後の暮らしやすさ向上に期待できる駅といえるだろう。

▼「守谷」の住まいと暮らしやすさ【住まいインデックス】
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/ibaraki-pref/07626-st/
▼「守谷」の中古マンションを見てみる【LIFULL HOME`S】
https://www.homes.co.jp/mansion/chuko/ibaraki/moriya_07626-st/list/

「守谷」も、2023年度末に駅ナカ商業施設「TXアベニュー守谷」のリニューアルが予定されている

4位以降は「柏たなか」（価格上昇率29.66%）、5位「流山セントラルパーク」（同27.91%）～10位「青井」（同19.41%）となり、10位以内のどの駅も県平均より高い価格上昇率を示している。「柏たなか」から隣駅の「柏の葉キャンパス」一帯にかけては、広域で“柏の葉のまちづくり“として大規模なまちづくりが進められている。今後の住環境への期待値の高さがうかがえる結果となった。

11位以降は、14位「秋葉原」（同16.20%）、16位「新御徒町」（同15.22%）、18位「北千住」(同14.81%）など、県全域の平均とほぼ同水準の価格上昇率となった。比較的都心に近い駅は、開発真っ只中の上位駅と比べると価格上昇率は緩やかであるが、つくばエクスプレスでは「つくば」駅から常磐線「土浦」駅に至る延伸計画も検討中であり、今後の物件価格や賃料変化にも注目したい。

総務省によれば、2022年の0～14歳の転入超過者数が多い全国の自治体には、3位につくば市、4位に流山市といったつくばエクスプレスの主要駅がある地域がそれぞれランクインしている。ランキング上位に入った駅以外にも、つくばエクスプレス沿線には“柏の葉国際キャンパスタウン構想”を掲げ、公・民・学が連携した開発が進む「柏の葉キャンパス」や、高水準の研究・教育施設が集積した「研究学園」など、特徴的なまちづくりが進む駅が多い。今後もつくばエクスプレス沿線はファミリー層から注目される街として進化していくものと期待される。

都心からほど近く、ファミリーで暮らしやすいつくばエクスプレス沿線で物件の購入を検討する人は多いだろう。中古マンションの価格上昇率は顕著に高い一方で、賃料の変化はそれほど大きくない。1位の「流山おおたかの森」の直近3年間の賃料上昇率は17.25%（前述のとおり中古マンションの価格上昇率は67.10%）、「八潮」の賃料上昇率は8.75%（価格上昇率は35.17%）、「守谷」は2.62%（価格上昇率は32.26%）となっている。需要の増減や住宅ローン金利の動向などにより左右されやすい物件価格に比べ、近隣相場や過去事例から設定されることの多い物件賃料は、急激な値動きが起きにくいためと思われる。まずは賃貸物件で住居費を抑えながら、新しく整備された街の住み心地を体験してみるのも、一つの選択肢としてよいかもしれない。

「柏の葉キャンパス」駅の周辺環境

■参照データ
・LIFULL HOME`S住まいインデックス
・対象物件：該当駅に所在するマンション　築10年/専有面積70m²　
・対象期間：2023年3月時点（住まいインデックスのデータは月に一度更新されます）
・上記対象物件において、一般的な不動産鑑定フローに倣い、膨大なLIFULL HOME'S掲載データ、立地要素、時間要素、物件個別要素、エリアごとの相場観及び近隣過去事例より、LIFULL HOME`S独自開発のフローにて価格算出