【2023年1～3月期 概要編】首都圏郊外のファミリー向き賃貸物件・中古マンションはここ1年で強気の賃料・価格設定へ～LIFULL HOME'Sマーケットレポート

LIFULL HOME'Sマーケットレポートでは、LIFULL HOME'Sで掲載された物件データおよびユーザーから問合せのあった物件（以下、反響物件※1）データを四半期・マーケットごとに公開している。本稿では「LIFULL HOME'Sマーケットレポート 概要編」として、2023年1～3月期のレポートより、特徴的な動向をまとめてお伝えする。

なお、今回から賃貸・中古マンションは、間取りに応じて「シングル」と「ファミリー」に分類し、それぞれデータを掲載・分析している。
詳細データは下記の各レポートを参照いただきたい。

※1　反響物件：ユーザーがLIFULL HOME'Sを介して不動産会社に問合せた物件

■ 詳細レポート
2023年1～3月期 賃貸 首都圏版
2023年1～3月期 賃貸 近畿圏版
2023年1～3月期 賃貸 愛知・札仙広福版
2023年1～3月期 中古マンション 首都圏版
2023年1～3月期 中古マンション 近畿圏版
2023年1～3月期 中古マンション 愛知・札仙広福版
2023年1～3月期 中古一戸建て 首都圏版
2023年1～3月期 中古一戸建て 近畿圏版
2023年1～3月期 中古一戸建て 愛知・札仙広福版

■ 過去のレポート
2022年10～12月期 概要編

2023年1～3月期の首都圏（※2）ファミリー向き賃貸物件は掲載平均賃料・反響平均賃料ともに前年から上昇し、掲載賃料が11万1,198円（前年比109.3%）、反響賃料が11万5,662円（同104.7%）となった。近畿圏（※3）でも掲載賃料が7万9,134円（前年比103.6%）、反響賃料が8万7,741円（同103.2%）と、首都圏よりもやや小幅ながら上昇傾向だ。

首都圏のエリア別では、郊外で直近1年間掲載賃料の上昇が継続している。東京都のうち、23区を除いたエリア「東京都下」は8万9,268円（前期比102.1%・前年比108.5%）、「神奈川県」は9万1,874円（前期比101.7%・前年比107.9%）、「千葉県」は7万8,793円（前期比103.5%・前年比109.6%）だった。1都3県で上昇が最も顕著なのは「埼玉県」で、7万8,905円（前期比103.3%・前年比112.3%）となった。
一方、都心部の「東京23区」の掲載賃料は2021年以降下落基調で推移していたが、繫忙期を迎え、前期から1万円以上上昇し、2023年1～3月期は17万5,904円（前期比108.2%・前年比107.0%）だった。

※2　首都圏：東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県
※3　近畿圏：大阪府、兵庫県、京都府

図1：都市圏別 ファミリー向き賃貸物件における掲載賃料・反響賃料推移

2023年1～3月期の首都圏シングル向き賃貸物件の掲載平均賃料は7万3,977円（前年比101.1%）と、ファミリー向き物件とは異なり横ばい傾向となっている。しかし、「東京都下」が5万6,281円（同104.2%）となっているほか、「神奈川県その他（※5）」が5万1,437円（同105.8%）、「埼玉県」が5万5,571円（同104.5%）、「千葉県」が5万8,387円（同103.5%）などと、とりわけ郊外の掲載賃料はゆるやかな上昇基調にある。

また、近畿圏シングル向き賃貸物件の掲載賃料は、5万5,559円（前年比103.6%）となった。2府1県はいずれも前年比103%台で、小幅ながら上昇基調だ。

一方の反響平均賃料は、首都圏全体が7万4,426円で前年比100.9%、「東京都下」「神奈川県その他」「埼玉県」「千葉県」といった郊外でも前年比99～101％台と、ほぼ横ばいに。近畿圏全体では5万7,794円で前年比101.0%、2府1県はいずれも100～101%台と首都圏同様ほぼ横ばいとなった。
なお、シングル向き賃貸物件の反響平均専有面積は首都圏が27.0m2（前年比98.1%）、近畿圏が27.9m2（同98.9%）と、わずかに減少傾向にある。

図3：都市圏・エリア別 シングル向き賃貸物件における掲載賃料・反響賃料推移

2023年1～3月期の首都圏ファミリー向き中古マンションの掲載平均価格は、4,151万円で前期比101.7%・前年比104.6%と、継続的な上昇が続いていた2021年と比較すると頭打ち傾向にある。反響平均価格も3,245万円で前期比100.5%・前年比101.8%と、ほぼ横ばいだ。
エリア別で見ると、「都心6区（※4）」は掲載価格8,352万円（前年比95.2%）、反響価格7,303万円（同96.5%）で、前年と比べて掲載・反響とも下落しているが、郊外では依然上昇が続き、「東京都下」の掲載価格は3,301万円（前年比112.7%）、「神奈川県」は3,331万円（同110.1%）、「千葉県」は2,815万円（同116.9%）だった。一方、反響価格は前年から上昇しているものの、掲載価格との乖離は広がり、「東京都下」が2,583万円（前年比105.7%）、「神奈川県」が2,526万円（同103.2%）、「千葉県」が2,075万円（同108.2%）だった。

また、近畿圏ファミリー向き中古マンションの掲載価格は、2,730万円で前年比105.4%と、4四半期続けて前年比105%台で安定的な上昇が続いている。一方反響価格は2,248万円で前年比97.2%とやや下落した。

※4　都心6区：千代田区、港区、中央区、新宿区、渋谷区、文京区

図4：都市圏別 ファミリー向き中古マンションにおける掲載価格・反響価格推移

2023年1～3月期のシングル向き中古マンションの掲載平均価格は、首都圏全体が3,352万円（前期比101.2%・前年比105.5%）で1年以上上昇傾向が続く。一方で反響平均価格は2,081万円（前期比98.2%・前年比96.9%）と下落しており、掲載価格との乖離が広がっている。エリア別の掲載価格では、「埼玉県」が1,898万円（前期比99.4%・前年比115.6%）、「千葉県」が1,830万円（前期比114.7%・前年比131.6%）と、東京都と比べて物件数こそ多くはないが、両県で特に顕著な上昇がみられる。

図6：都市圏別・エリア別 シングル向き中古マンションにおける掲載価格・反響価格推移

2023年1～3月期の首都圏の中古一戸建ての掲載平均価格は、3,761万円（前年比106.7%・前期比98.5%）となり、本レポートの計測開始（2021年4～6月期）以降一貫して上昇していたが、初めて下落に転じた。エリア別では、「東京都」が5,812万円（前期比97.9%）、「神奈川県」が3,674万円（同99.0%）で前期を下回り、「埼玉県」が2,786万円（前期比100.6%）、「千葉県」が2,658万円（前期比100.8%）でわずかに前期を上回っている。
なお、首都圏の反響価格は2,428万円（前期比97.1%）で、2四半期続けて下落した。

図7：都市圏別 中古一戸建てにおける掲載価格・反響価格推移

賃貸と中古マンションは、郊外化需要を期待した賃料・価格設定に。掲載価格が下落に転じた中古一戸建ては、今後の価格動向に注目

ファミリー向き物件の掲載賃料・価格の上昇傾向が、主に郊外で続いている。東京都の2023年3月の転入超過は3万9,305人となりコロナ禍以前の水準に迫っている（※5）が、0～14歳に限ると1,446人の転出超過（※6）で、東京都からのファミリー世帯の流出は、コロナ禍以降現在も続いているといえる。継続的な物価高が住居費の下押し圧力となっていることや、首都圏ではテレワークが比較的定着していることなどが要因として考えられるが、賃貸物件の入居率の上昇（※7）や新築マンションの供給減少・価格高騰（※8）を背景に、それらの受け皿となる地域で、需要の高まりを期待した賃料設定・価格設定が行われている可能性もある。

なお、首都圏郊外ではシングル向き賃貸物件の掲載賃料も上昇傾向にあるが、ユーザーのニーズを反映した反響賃料は追随せず横ばい傾向となっている。反響専有面積がやや下落基調で推移していることから、単身ユーザーは希望の専有面積を狭めることで、賃料水準の上昇に対応していると推察される。

また、掲載価格の上昇が続き、反響価格との乖離が広がっていた首都圏の中古一戸建ては、ついに掲載価格が下落に転じた。新築住宅と比べて買い手のニーズに合わせた価格設定を行うことが多い中古住宅は、反響価格の動向が今後の掲載価格を占う指標のひとつとなるが、反響価格は前期に続き下落しており、引き続き注視する必要がありそうだ。


※5　2017年～2019年の3月平均は3万9,530人の転入超過。2021年3月は2万7,803人の転入超過（住民基本台帳人口移動報による）
※6　2017年～2019年の3月平均は133人の転入超過。2021年3月は2,609人の転出超過（住民基本台帳人口移動報による）
※7　首都圏における2020年上期の入居率は95.7%、2021年度の入居率は97.8%（公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」による）
※8　2022年度の発売戸数 は前年度比 12.9％減。平均価格 は同8.6％アップ（不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向」による）

■ 調査概要
集計対象データ：2023年1月1日～3月31日に、LIFULL HOME'Sで登録・公開された、賃貸マンション・アパート、中古区分マンション、中古一戸建て
分析：株式会社LIFULL　LIFULL HOME'S PRESS編集部

※記事中のデータ・グラフ画像等は「LIFULL HOME'S PRESS調べ（2023年5月掲載）」のクレジットを明記の上、ご自由にご使用いただけます。

■ 詳細レポート
2023年1～3月期 賃貸 首都圏版
2023年1～3月期 賃貸 近畿圏版
2023年1～3月期 賃貸 愛知・札仙広福版
2023年1～3月期 中古マンション 首都圏版
2023年1～3月期 中古マンション 近畿圏版
2023年1～3月期 中古マンション 愛知・札仙広福版
2023年1～3月期 中古一戸建て 首都圏版
2023年1～3月期 中古一戸建て 近畿圏版
2023年1～3月期 中古一戸建て 愛知・札仙広福版

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