その年の世相や流行を反映する「ヒット商品」や「ヒット番付」

その年の末に近づく時期になると、「ヒット商品」「ヒット番付」という言葉を聞くことが多い。
その名前の通りその年に多くの売上をあげたものや流行をつくり出した商品やサービス、事象などをあらわしている。
代表的なものでは、毎年話題になる「日経トレンディ」がヒット商品をランキング形式でまとめた「ヒット商品ベスト30」だろう。2022年も11月4日発売の日経トレンディ12月号で発表された。その1位は、「Yakult1000/Y1000」。人気で店頭に並ぶとすぐに売れてしまい、一時期入手困難な時期が長く続いた。睡眠改善というところに目をつけたヒットは、この「Yakult1000/Y1000」を皮切りに各社が商品開発にのりだす流れをつくりだした。2位には「ちいかわ」、3位には「PCM冷却ネックリング」、4位には「何度も観た」という人も多い「トップガン マーベリック」、5位は「完全メシ」と続く。

日経トレンディだけなく様々な企業が年末に差し掛かるこの時期に、流行や世相を反映した「ヒット商品」「ヒット番付」をつくっているが、今回、LIFULL HOME'Sが「住まいのヒットワード番付」を発表した。
一見、住まいには、大きなトレンドが反映されにくいようにも思える。今回「住まいのヒットワード番付」として企画した意図と結果についてお伝えする。

今回、初の試みとなる「LIFULL HOME'S 住まいのヒットワード番付 2022」今回、初の試みとなる「LIFULL HOME'S 住まいのヒットワード番付 2022」

「住まいのヒットワード番付」とは

今回の企画をした株式会社LIFULL クリエイティブ本部ブランドコミュニケーション部PRグループの小田裕美さん今回の企画をした株式会社LIFULL クリエイティブ本部ブランドコミュニケーション部PRグループの小田裕美さん

はじめての試みとなる「LIFULL HOME'S 住まいのヒットワード番付 2022」。
株式会社LIFULLクリエイティブ本部ブランドコミュニケーション部PRグループの小田裕美さんに今回の企画の意図を聞いた。

「私たちのサービス、LIFULL HOME'Sは住まい情報を多くのユーザーに提供しています。住まいへの関心というと、毎日考えているわけではなく、実際は自分の生活や仕事のタイミングで住まいを探したり買ったりするときに、ようやく意識する方が多いと思います。また、住まいまわりのワードは普段の生活ではあまり聞かないワードもあります。私自身も自分事として考えた際に、“今まであまり意識はしていなかったのに、必要になったら急に情報を集めて、すごく高い買い物をする”といった課題を感じていました。住まいにまつわる出来事や課題や取組みが、もっと身近になってほしい。情報に接する機会として、今住まいを探している人だけでなく、面白くトレンドを振り返られるように、こういった住まいのトレンドをヒットワードとしてまとめてみようと思いました」と、いう。

「住まいのヒットワード」は、まずは2022年に話題となり、多くの新聞や媒体で取り上げられた住まいの関連ワードをピックアップ。不動産会社へアンケートをとり、気になったワードの集計結果をもとにLIFULL HOME'S内の事業本部とLIFULL HOME'S総研、LIFULL HOME'S PRESSで総合的に判断して番付を作成した。

東西の「住まいのヒットワード番付」の結果は

それでは、実際に東西の「住まいのヒットワード番付」結果はどうなったのか?
新型コロナウイルスの拡大に伴い生活だけでなく、住宅の考え方も変化がみえたここ数年の流れから、2022年は徐々に前の生活を取り戻しつつある。一方で、世界情勢や法改正など住まいに大きく影響する出来事も多くあり、番付をみると、今年ならではのキーワードに注目が集まった。

※ちなみに番付は、LIFULL HOME'Sに加盟する全国の不動産事業者へアンケートを実施し、その結果をもとにした総合的な判断で決定。なお、選ばれたヒットワードをわけた東西については、東日本・西日本などの地理的な関係はない。

社会情勢が反映されたワードが番付にならんだ「LIFULL HOME'S 住まいのヒットワード番付 2022」社会情勢が反映されたワードが番付にならんだ「LIFULL HOME'S 住まいのヒットワード番付 2022」

東の横綱は「建築資材の価格高騰」、西の横綱は「18歳からの住まい契約」

東の横綱には、円安やウッドショック、アイアンショック、ウクライナ情勢といった世界情勢により住宅へ大きな影響を与えた「建築資材の価格高騰」が選ばれた。
「建築資材の価格高騰」は、住宅価格の上昇のほか、建築スケジュールに遅延がでるなど住宅業界全体に混乱を与える状況にもつながった。不動産会社によると「購入検討者の多くのお客様が、価格が上昇していることを懸念している為、購入の動きが鈍っている。不動産業界も消費者も関心の高い内容だと思う」とのコメントもあった。
西の横綱は、「18歳からの住まい契約」。2022年4月からの成人年齢引き下げにより、18歳から1人でも賃貸借契約等、住まいの契約が結べるようになった。東西とも横綱は社会の制度や状況を反映した結果となっている。

ウッドショックに続き、ウクライナ・ロシア情勢で建築建材は高騰となった(※写真はイメージ:PIXTA)ウッドショックに続き、ウクライナ・ロシア情勢で建築建材は高騰となった(※写真はイメージ:PIXTA)

東の大関には、「住宅地価上昇」が選ばれた。コロナ禍によるテレワークが定着し、住環境への関心が高まったことで、郊外や都市部周辺の地域を中心に利便性、ゆとりを求めた住み替え、移住の需要が拡大したことが要因となった。一方で、西の大関には「不動産DX加速」が選出された。オンライン内見や不動産取引の電子契約解禁など不動産業界全体でDXが加速した年でもあった。実際に「お客さまがオンラインで内覧~契約を希望されるケースが増えた」という不動産会社の声も届いている。

東の関脇には「ワークスペース付きマンション」、西の関脇に「転職なき移住」が新たな潮流として選ばれた。「ワークスペース付きマンション」は、共用部や室内に仕事スペースが設けられており、リモートワークに配慮したマンションが人気となっている。不動産会社からは「コロナ禍で在宅勤務が定着しつつあり、ワークスペース付住戸を多数見かけるようになった」とのコメントがよせられている。また、現在の仕事を続けながら郊外や地方へ移住する「転職なき移住」にも注目が集まった。リモートワークの浸透により、仕事場とは別の場が求められるようになったようだ。

ウッドショックに続き、ウクライナ・ロシア情勢で建築建材は高騰となった(※写真はイメージ:PIXTA)かつてはラウンジなどの共用部をワークスペースとして設計するマンションもあらわれた(※写真はイメージ:PIXTA)

「事故物件ガイドライン」「ZEH-M」「平屋ブーム」も番付に。
気になる株は「核シェルター」と懸念される社会情勢も反映

小結には、東に「事故物件ガイドライン」(※正しくは「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」)、西に「ZEH-M(ゼッチエム)」が選出された。
国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定。今まで自然死とそれ以外の死の要因が物件に与える影響(いわゆる事故物件の扱い)があいまいであったが告知の範囲を明確化することで、家主や管理会社と住まい手のスムーズな契約ができることを目的としている。これにより、過剰な物件への影響の不安から、単身高齢者の賃貸借契約が妨げられないようになることがのぞまれる。西の小結は「ZEH-M(ゼッチエム)」に。住宅に定着してきた断熱性・省エネ性能を上げ、創エネルギーにより年間の一次消費エネルギー量の収支をプラスマイナス「ゼロ」にするNet Zero Energy House (ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、通称「ZEH(ゼッチ)」の波がマンションにも到来。 不動産会社からも「社内でZEHマンションについての検討が多かった」という声があったという。

国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定。自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい、とした(※写真はイメージ:PIXTA)国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定。自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい、とした(※写真はイメージ:PIXTA)

東の前頭「住宅関連ドラマ」は、“正直不動産”や“魔法のリノベ”といった不動産や住宅にまつわるテレビドラマが放送され、注目があつまった。一方で、西の前頭には「平屋ブーム」が選出。平屋は、建築着工数が年々増え続けている。バリアフリーという観点や耐震面、かつコロナ禍で郊外や地方移住により、広い土地を確保することで得られる“ゆとり”、マンション世代である若者層のニーズの拡大もその要因の一つと考えられる。

気になる株のワードは、東は「木ション」、西は「核シェルター」に。
「木ション」は木造マンションの略称で、木造建築の課題である耐火、耐久、耐震性などの基準を満たす技術が開発で進化した年に。また、建設時の二酸化炭素の排出をおさえ、炭素の貯蔵量、排出量の優位性において、脱炭素にも貢献できる点で大きな注目を浴びている。近年では、地上5階建ての木造マンションなども登場した。
一方、西の「核シェルター」は、昨今のウクライナ侵攻や隣国のミサイル発射など世界情勢への不安から、注目が集まる結果に。危機意識の高まりから身を守る手段として自宅用核シェルターの検討や、実際にメーカーへの問合せも増えているようだ。

今年が初となる「住まいのヒットワード番付」。PRグループの小田さんは
「みなさんに興味を持ってみてもらえるランキングになったと思います。このランキングを通じて、一人でも多くの方々が住まいの最新トレンドを知り、住まいとそれを取り巻く環境に興味関心をもっていただくことで、ひとりひとりの住まい選びの後押しになれば幸いです」という。

国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定。自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい、とした(※写真はイメージ:PIXTA)隣国からのミサイル発射でたびたび「Jアラート」の警報が鳴ることも(※写真はイメージ:PIXTA)

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