コロナ禍で移住相談件数がV字回復
2002年より都市住民への移住支援・情報提供を行っている、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが「2021年移住希望地域ランキング」を発表した。東京都にある同センターの窓口利用者(相談者)とセミナー参加者を対象に、地方移住に関するアンケートを毎年実施している。
結果をご紹介する前に、相談件数(面談・電話・メール・見学・セミナー参加)について触れておきたい。前回発表された「2020年移住希望地域ランキング」は、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発出や相談会の中止などの影響で相談・問合せ数が減少したとあった。
2021年は、前年比で約29%増の4万9,514件に。引き続きコロナ禍であったが、昨年から回復したうえ、過去最高を記録した2019年の4万9,401件をも上回った。また、移住相談会・セミナーなどの開催数は前年比で約61%増の562回となり、こちらも相談件数同様、過去最高だった2019年の回数を更新した。
オンラインセミナーの実施もあり、コロナ禍においても参加しやすい環境が整えられていることも大きいだろう。そのなかで移住希望の思いは確かに高まっているようだ。
移住希望地域1位は?
さて、ランキングの結果だが、2020年と同様に新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン形式でのセミナーが多かったことで、窓口での相談者とセミナー参加者を分けて発表している。
まず、窓口相談者におけるランキングの1位は、昨年に続いて静岡県だった。年代別では20歳代以下~60歳代までがそれぞれ1位、70歳以上では2位と、全世代に人気の移住希望先であることが分かる。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターのプレスリリースでは「静岡県は、市町と連携して移住フェアやセミナー、出張相談会等を数多く開催し、その参加者が窓口相談につながった」としている。
そして、2位に福岡県、3位に山梨県がランクイン。そんななか、鹿児島県が昨年の20位から14位に、群馬県が昨年の10位から5位にと、大幅にランクアップした県もあった。自治体のPRや相談者の情報収集によって変動があるように思われ、興味深い。
一方、セミナー参加者のランキング1位は、広島県。同県の年間のセミナー回数は39回だったという。「広島県は、窓口相談での相談傾向を独自に分析し、県庁自らでセミナーを企画し、移住相談者のニーズに即したセミナーをタイムリーに実施することで、セミナー参加者の人気を集めた」(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター プレスリリースより)という。
2021年の移住相談傾向は? 女性と20代の相談者が過去最高に
プレスリリースには、2021年の移住相談の傾向についても記載があった。相談者の性別を見ると、2014年から着実に女性の割合がアップ。2021年は過去最高の45.4%と、ほぼ半分に。また、相談者の年代では、20代が過去最高の21.9%となった。
移住というと家族でというイメージもあるが、若い世代の関心も高まっているようだ。
移住希望をかなえるためにまずは情報収集を
総務省が公表した「住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果」によると、前年に比べて東京都の転出者数が全国の中で最も増加した。また、東京23区は転出者が転入者を上回る“転出超過”となった。これは外国人移動者を含めた統計を公表するようになった2014年以降で初めてのことだという。
ただ、東京都全体、また東京都に神奈川県、埼玉県、千葉県を含めた東京圏で見ると、人数は縮小してはいるものの、まだ転入超過という状態ではある。
では、転出超過となった東京23区から、どこに転出しているのかを見ると、神奈川県横浜市、川崎市、埼玉県さいたま市、川口市、千葉県市川市という順に。なお、これは2018年から順位が変わっていない。
現状では、都心部から離れつつも、首都圏内での移動が多い傾向だ。コロナ禍でテレワークという就業スタイルが浸透したが、実際に遠く離れた地に移住となると、完全在宅のフルリモートができるか、そうでなければ転職という選択が必要になることが考えられることも一因ではないだろうか。
とはいえ、今回紹介した移住希望地ランキングでは、首都圏以外が多く上位に入っている。移住を受け入れるため、各自治体が就労のサポートをする動きもある。セミナーや相談会が活況となっている今、自分が希望する地域での暮らしについて情報を上手にキャッチして決断していってほしいと思う。
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