高齢者への接客に必要な知識を確認できる『高齢者接客チェックリスト』

超高齢社会に突入し、内閣府の調査によると今や総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.9%に達している。そのような中で、高齢者の賃貸住宅探しは壮年期や中年期のようにはいかず、難しいと感じることが多くなっているようだ。

高齢化がますます進行する今、不動産会社が高齢のお客様に接する機会が増えることは必然だ。高齢者への接客に必要な知識の再確認と認知を広めるため、FRIENDLY DOORプロジェクトでは、2023年4月10日より『高齢者接客チェックリスト』を公開した。

今回はその内容を紹介する。

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『高齢者接客チェックリスト』ができた背景

増え続ける高齢者の人口に比例するように、高齢者向け施設やサービスなども年々増えている。2022年時点で賃貸物件に住む高齢者のみの世帯は292万世帯あり、そのうち183万世帯が民間の賃貸物件に住んでいるという調査結果が出ている。

賃貸住まいの高齢者の約62%が不動産仲介を利用している一方で、LIFULL HOME'Sが2022年5月に実施した「住宅弱者の『住まい探し』の実態調査」では、「高齢」であることを理由に家探しが困難になっている実情が明確に伝えられた。

調査では、高齢であることを理由に差別や不平等を感じたことのある高齢者は19.6%に上り、45.2%の高齢者が「高齢者であることがハードルとなり、候補となる物件が少なかった」、32.6%が「高齢であることを理由に入居審査が通るか不安だった」という回答があった。残念ながら、高齢者であることが部屋探しを難しくしているようだ。

FRIENDLY DOORとは、年齢、国籍、セクシュアリティ、経済力、社会的立場などを理由に住まい探しに困難を抱える人々に対し、親身になって住まい探しの相談に応じる不動産会社を検索できるサービスである。対象となるユーザーの中には、高齢者も含まれている。“高齢者に対して親身になる”とは、具体的にはどのようなことだろうか。

FRIENDLY DOOR を運用するLIFULL HOME’S ACTION FOR ALLでは、不動産会社が高齢のお客様に対する適切な対応を確認し、学べる『高齢者接客チェックリスト』を作成、2023年4月10日より提供を開始している。

『高齢者接客チェックリスト』ができた背景

『高齢者接客チェックリスト』とは?

『高齢者接客チェックリスト』は、高齢のお客様に対して不動産会社に求められる適切な対応を確認し、学ぶための、オンラインの無料チェックツールだ。

チェックリストは基礎知識、不動産会社対応の2パートで構成されており、基礎知識パートは7問、不動産会社対応パートは20問の全27問の設問が用意された。1問1点で採点し、総合して22点以上を目指してもらう設計になっている。設問は、公益財団法人日本賃貸管理協会 あんしん居住研究会で長年高齢者の住まいの問題に取り組んでいる伊部尚子さんに監修いただいた。

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『高齢者接客チェックリスト』基礎知識編

全7問の基礎知識編では、高齢者の暮らしにまつわる支援制度や事業についての知識を問う。実際の問題をピックアップして見ていこう。

一問目はこちら。
「厚生労働省が管轄し、市区町村ごとに高齢者の暮らしを地域でサポートするためにつくられた総合相談窓口があることを知っている」

ここでいう「高齢者の暮らしを地域でサポートするためにつくられた総合相談窓口」とは、市区町村の自治体で運営する“地域包括支援センター”のことを指す。
地域包括支援センターでは、専門知識を持った職員が、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援などの相談に応じており、介護保険の相談もできる。また、当事者や当事者家族だけでなく、「最近あのお年寄りの姿を見ていない」「近所の一人暮らしのお年寄りの様子が心配」といった近隣住人からの相談にも対応している。

全国の地域包括支援センター一覧は、厚生労働省の「地域包括ケアシステム」から検索することができるだろう。

さらに、地域包括支援センターの名称は、「高齢者あんしんセンター」「高齢者総合相談センター」など、地域によってわかりやすい名称に変わっている場合があることに留意しよう。

基礎知識引用1問目。厚生労働省が管轄し、市区町村ごとに高齢者の暮らしを地域でサポートするためにつくられた総合相談窓口があることを知っている基礎知識引用1問目。厚生労働省が管轄し、市区町村ごとに高齢者の暮らしを地域でサポートするためにつくられた総合相談窓口があることを知っている

次の問題を見てみよう。
「人が亡くなって長期間発見されなかった場合の告知義務について、国土交通省で策定された「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の内容を把握している」

高齢者の部屋探しが難しい要因のひとつに、高齢による事故や孤独死の不安が挙げられる。「事故物件として掲載されると、資産価値が下がるのでは」というオーナーや不動産会社の懸念から、審査が通りづらいという話も少なからずあるようだ。

しかし、国土交通省が2021年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告知事項にならないとされた。

ただし、発見が遅れて特殊清掃等が行われた場合は、告知する必要がある。その場合も、発見されてから概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよいことになっている。

基礎知識引用1問目。厚生労働省が管轄し、市区町村ごとに高齢者の暮らしを地域でサポートするためにつくられた総合相談窓口があることを知っている基礎知識引用2問目。人が亡くなって長期間発見されなかった場合の告知義務について、国土交通省で策定された「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の内容を把握している

『高齢者接客チェックリスト』不動産会社対応編

不動産会社対応編は、賃貸仲介業務の流れに則した内容になっている。全20問で構成されており、内訳は来店時5問、申込時7問、契約時1問、更新時1問、入居中2問、退去時4問の6つのカテゴリで構成される。

来店時の設問から見ていこう。
「来店時:来店時に、高齢者の普段の健康状態について適切な把握ができる」

お客様の健康状態を聞き出すことはプライバシーに踏み込むように感じられるかもしれないが、情報を共有することで不慮のトラブルを未然に防ぐことや、円滑かつ安心な入居にもつながる。ヒアリングするべき健康状態について、具体的には、“身体的な健康状態”と“精神的な健康状態”にフォーカスして尋ねるといいだろう。

◆身体的な健康状態
足腰が弱くなり階段の上り下りが大変になってきた、室内移動に手すりが欲しいなどの、高齢者本人が普段の生活の中で不自由に感じていることを聞き取ろう。手すりの設置工事には壁に穴あけが必要にるが、オーナーが許可する場合もある。

◆精神的な健康状態
認知症が進行していても、日常的に身近に接している人でないと気づけない場合がある。接客していて、何かおかしいと感じたら、保証人や緊急連絡先にある親族、地域包括支援センターに相談してみよう。

高齢者接客チェックリスト不動産会社対応編TOPページ高齢者接客チェックリスト不動産会社対応編TOPページ
高齢者接客チェックリスト不動産会社対応編TOPページ不動産会社対応編引用1問目。来店時に、高齢者の普段の健康状態について適切な把握ができる

次に注目するのは、「申込時:高齢者の入居者に対しての見守りサービスの情報提供ができている」という問いだ。

先にも触れたが、孤独死の蓋然性が高い高齢者の場合、そのリスク軽減には見守りが非常に効果的だ。今では、自治体や民間企業がさまざまな「安否確認」を目的としたサービスや商品を取り扱っている。

指定した電話番号に機械音声で見守りの連絡が定期的に入るもの、ドアの開閉動作をセンサーで感知するもの、電気の使用量の変動を感知するもの、警備会社と連携しているものなどがある。金額も月々数百円から数千円程度までと、必ずしも高額なわけではない。

また最近では、給食・配食サービスや、新聞配達員・郵便局員といった、生活に密着した見守りサービスも増えている。住まいの形態に関係なく個人で契約できるサービスもあるので、必要に応じて本人や親族に提案するのもいいだろう。自治体独自の見守りサービスもあるので、各市町村の高齢者福祉に関する部署や、地域包括支援センターに確認していただきたい。

高齢者接客チェックリスト不動産会社対応編TOPページ不動産会社対応編引用2問目。高齢者の入居者に対しての見守りサービスの情報提供ができている

高齢者への適切なサービス提供のために

高齢者の入居を受け入れるにあたり、オーナーや不動産会社が抱えるリスクは確かにあるかもしれない。しかし、『高齢者接客チェックリスト』の全問題に解答することで、高齢者をサポートする制度やサービスが多いことを知ることができるはずだ。

この『高齢者接客チェックリスト』は、不動産会社のスタッフに高齢者の住宅課題や適切な接客方法への理解を促すことで、高齢者が直面する住まい探しの困難の解消を目指している。ぜひトライして、適切なサービスの提供に役立てていただきたい。

▼高齢者接客チェックリスト
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※本記事の内容は、LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL note 2023年5月掲載当時のものです

高齢者への適切なサービス提供のために

【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。

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