Park-PFIとは?

「Park-PFI」という言葉はあまり聞きなれないかもしれない。

この「Park-PFI」は、公園の管理と運営に民間企業が関わる仕組みのことで、これからの都市公園の整備・運用の新しい形として、まちづくりなどの取り組みで注目されている。普段聞きなれないとはいえ、「Park-PFI」を活用して整備された公園を利用した経験がある人はいるかもしれない。

例えば、福岡市の「天神中央公園」や新宿区都庁近くの「新宿中央公園」などには訪れたことはないだろうか。Park-PFI制度が創設される以前に官民連携事業として整備された渋谷区の「宮下公園(MIYASHITA PARK)」は、メディアやインフルエンサーにより紹介されていることもあって世間的な認知度は高いのではと思う。

新宿中央公園の概要等(出典:新宿区公式HP)新宿中央公園の概要等(出典:新宿区公式HP)

これらの公園は、行政と民間企業が連携したことで再整備された都市公園となる。そして、これらを可能にしたのが2017(平成29)年の都市公園法改正により制度化された「Park-PFI」(正式には、公募設置管理制度)である。

「Park-PFI」は、都市計画区域内(都市的土地利用をコントロールする区域)に設置される「都市公園」において、民間資金を活用した整備・管理手法として活用される。もう少しわかりやすく解説すると、公園内への飲食店や売店などをはじめとする公園利用者の利便性を高める施設の設置や、その施設管理を行う民間事業者を公募し、行政から選定された民間事業者が設置する施設から得られる収益を公園整備に還元する仕組み。

つまり、従来の行政のみが管理する場合に比べて、管理費用を圧縮することに加えて公園サービスの質が向上するというもの。
また事業者としては、設置物の管理期間が最長10年から20年に、建蔽率(敷地面積に対する建築面積の割合)は原則2%から+10%が加算されるなどのメリットがある。

国土交通省によると、2023(令和5)年3月末時点で全国131ヶ所の都市公園で「Park-PFI」が活用されている
※Park-PFIを活用している公園一覧はこちら

新宿中央公園の概要等(出典:新宿区公式HP)ParK-PFIの仕組み(出典:国土交通省)

開成山公園等Patk-PFIによって何が変わる?

この「Park-PFI」を活用した動きが、福島県郡山市の中心市街地にある開成山公園でも進んでいる。福島県内では須賀川市に続いて2例目となる予定だ。

郡山市が進める「開成山公園等Park-PFI」は、公園の総面積約30.3ヘクタール(総面積は東京ディズニーランドの約59%に相当する面積)のうち、約12.89ヘクタールを活用して既存施設のリニューアルや飲食店、多目的スペースなどの新設を予定している。すでに運営・管理を行う事業者は選定済みであり、選定された民間事業者のグループによって現地ではリニューアル工事が着々と進んでいる。

開成山公園のPark-PFIの事業スキームとしては、公募対象の公園施設のリニューアル等に係る費用の90%以内を郡山市が負担し、それ以外の費用とカフェ等の収益施設の整備費を公募で選ばれた民間事業者が負担するもの。整備後は、自ら収益施設の管理運営を行いつつ、指定管理者として特定公園施設を管理運営する。郡山市としては、財政負担(初期投資)の軽減と、中長期的な公園の有効活用、さらには市民サービス向上などを図ることが可能となる。

従来の行政単体による公園管理に比べて民間が運営することで柔軟な運用が可能となり、カフェやガーデニング雑貨、ベーカリー、ラーメンなどの店舗が設置されることは、公園に訪れる機会が増加する可能性が高くとなると考えられる。

開成山公園等Park-PFIのイメージ(*出典:郡山市公式HP)開成山公園等Park-PFIのイメージ(*出典:郡山市公式HP)

また、災害時の防災拠点やイベントとして利用可能な大屋根の新設や規模の大きい芝生広場などの設置などは、中心市街地の総合公園としての魅力が増すものと考えられる。

郡山市の総合公園としての役割を担っている「開成山公園」は、街なかに設置されており公共交通のアクセスが良い。

このため、リニューアル後の経済情勢にもよるが、公園が広域集客装置として機能することができれば、周辺への不動産投資を誘導することができるかもしれない。なお、郡山駅前では市街地再開発事業も進んでいるほか、開成山公園に隣接する総合体育館などの改修工事も進められているなど、官民による活発な投資が行われている。

開成山公園等Park-PFIのイメージ(*出典:郡山市公式HP)開成山公園Park-PFIのイメージ(出典:郡山市公式HP)
開成山公園等Park-PFIのイメージ(*出典:郡山市公式HP)開成山公園の位置

開成山公園に新たに導入される機能

郡山市が公表している資料によると、リニューアル(一部改修も含む)される施設としては、バラ園、園路、芝生広場、駐車場(拡充)、野外音楽堂、新たに設置される施設として、公募対象公園施設(カフェや飲食、物販など)、水鏡、トイレなどとなっている。

開成山公園等Park-PFIのイメージ(*出典:郡山市公式HP)開成山公園等Park-PFIのイメージ(*出典:郡山市公式HP)

コラム:開成山公園は東北地方で2番目の人口を有する市となった原点

開成山公園は郡山市の原点ともいえるべき歴史ある場所というのは福島県内出身者にあまり知られていないかもしれない。

郡山は明治時代に入ると、明治政府により国営農業水利事業第1号の開拓事業が実施される。
猪苗代湖(国内4番目に広い湖)から安積原野(郡山)に水を引き原野を開拓したもので、1879(明治12)年から約3年間で延べ85万人が携わり、国家予算の3分の1を要した大事業(安積開拓・安積疏水開さく事業という)となった。

開成山公園モニュメント 開拓者の群像(2023年12月撮影)開成山公園モニュメント 開拓者の群像(2023年12月撮影)

この事業のために、旧久留米藩(現在の福岡県久留米市)をはじめ全国の多くの旧士族が入植してきた歴史がある。

この安積開拓で灌漑用の池として整備されたのが開成山公園内の「五十鈴湖」となっている。当時の池の土堤には、山桜2,856本、ソメイヨシノ・八重桜1,036本が植えられたとされる。このうち一部の桜は現在でも残っており、当該公園が桜の名所としても有名となったゆえんとなっている。

安積疏水によってもたらされた効果は原野の開拓にとどまらず、豊富な水源を利用して水力発電や水道施設の整備が進められた。

これにより、郡山への工場立地が進んだことも郡山市が明治以降に急速に発展した理由でもある。江戸時代には旧宿場の一つにすぎなかった地域が、わずか150年ほどで歴史あるほかの地域を抜き、東北2位の人口を有するまでに急成長したのは明治時代の功績が大きい。つまり、開成山公園は郡山の歴史を今に伝える重要な地といっていい。

開成山公園モニュメント 開拓者の群像(2023年12月撮影)開成山公園の桜(出典:郡山市公式HP)

生まれ変わる開成山公園のオープン予定日

郡山市によると2024(令和6)年4月からの共用開始を予定している。

昨年12月に現地を訪れた際には急ピッチで工事が進められていた。建築途中の飲食店などの工事が目にとまった。

おそらく開拓の歴史として残る公園内の桜が見頃の季節に合わせてオープンするのではないかと思う。花見の季節ということあって、リニューアル後は多くの人でにぎわうのは間違いない。

2023(令和5)年12月撮影2023(令和5)年12月撮影
2023(令和5)年12月撮影2023(令和5)年12月撮影

ちなみに、開成山公園は、世界に一つだけのマンホール蓋「ポケふた」を見ることができる。

これは、福島県と株式会社ポケモンが東日本大震災後に締結した連携協定によるもので、公園内には「ポケふた」のみならず「ふくしま応援ポケモン」である「ラッキー」をモチーフにした遊具で遊ぶこともできるようになっている。

ぜひ、桜が咲く頃に郡山を訪れてみてほしい。

2023(令和5)年12月撮影2023(令和5)年12月撮影
2023(令和5)年12月撮影2023(令和5)年12月撮影

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