2026年4月1日、改正区分所有法が施行

2026年4月1日、改正区分所有法が施行された。区分所有法はマンション管理の基本的な枠組みを定めた法律だが、各マンション固有の詳細なルールについては、管理規約によって個別に規定する必要がある。改正法の施行に先駆け、2025年10月に管理規約の作成・改正における標準的なひな形である「マンション標準管理規約」も改正された。

各マンションは必ずしも管理規約を標準管理規約に準拠させなければならないわけではないものの、今回の改正では、総会の運営手続きや決議要件など管理組合の運営に直接かかわる重要事項が見直されている。

さくら事務所のマンション管理コンサルタント土屋輝之さんに、管理規約の中で見直しておきたい20の項目を聞いた。

区分所有法改正の背景


2026年4月の区分所有法改正のポイントは、次の4つだ。

1. 決議要件の緩和
2. 再生手法の多様化
3. 管理計画認定制度の拡充
4. 所在不明区分所有者の除外制度新設

「近年、高経年マンションが顕著に増加しており、とくに築40年を超えるマンションでは設備の劣化や修繕の必要性が高まっています。一方で、高経年マンションの世帯主の多くはご高齢の方であり、役員のなり手不足や総会決議の難航、修繕積立金の不足などの課題が累積しています。今回の区分所有法改正は、こうした課題の解決を目的にしています」(土屋輝之さん、以下同)

さくら事務所のマンション管理コンサルタント土屋輝之さんに、管理規約の中で見直しておきたい20の項目を聞いた。さくら事務所マンション管理コンサルタント 土屋輝之さん

マンション管理規約見直しチェックリスト

改正区分所有法等施行に先駆け2025年10月、標準管理規約が改正された。中でも「強行規定」は、管理規約の内容にかかわらず強制的に適用される規定であるため、現行の管理規約がこれに抵触している場合や対応する定めが存在しない場合には改正法違反となり、総会決議の無効や訴訟リスクを招くおそれがある。法的拘束力のない「任意規定」についても、未整備のままではトラブルの温床となりかねないことから、この機会に併せて整備しておくことが望ましいといえる。

土屋さんによれば、今回の標準管理規約改正に伴い見直しておきたい項目は全20。

標準管理規約改正に伴い見直しておきたい項目一覧

NO. 項目 強行規定/任意規定
1出席者による多数決強行規定
2総会の定足数緩和強行規定
3共用部分の変更決議強行規定
4緊急時の招集手続き強行規定
5不在者・管理者規定任意規定
6保存行為の実施請求任意規定
7再生・売却制度任意規定
8理事長の代理権強行規定
9役員の代理・資格任意規定
10本人確認と個人情報任意規定
11工事の事前承認義務任意規定
12細則への委任規定任意規定
13構造躯体の保全義務任意規定
14配管の管理区分と更新任意規定
15立ち入りおよび保存行為の実施権限任意規定
16窓ガラス・サッシの改良任意規定
17共用設備の管理責任任意規定
18ペット飼育細則任意規定
19バルコニー使用制限任意規定
20喫煙ルールの整備任意規定

以下に、土屋さんの解説を交えながら3つのカテゴリに分けて紹介する。

1.総会・決議・運営ルール(NO.1~10)

総会・決議・運営ルールで見直しておきたい項目は以下の10項目。

NO. 項目 強行規定/任意規定
1出席者による多数決強行規定
2総会の定足数緩和強行規定
3共用部分の変更決議強行規定
4緊急時の招集手続き強行規定
5不在者・管理者規定任意規定
6保存行為の実施請求任意規定
7再生・売却制度任意規定
8理事長の代理権強行規定
9役員の代理・資格任意規定
10本人確認と個人情報任意規定

『1.出席者による多数決』『2.総会の定足数緩和』の解説

『1.出席者による多数決』および『2.総会の定足数緩和』は、今回の改正のポイントのひとつである決議要件の緩和に関する項目である。いずれも強行規定で、管理規約が変更されていない場合も、2026年4月1日以降に議案書が配布された管理組合総会では、改正区分所有法の規定が適用されることになる。

「決議要件が大幅に緩和されたことにより、改正前の規定では否決となる場合でも、改正後の規定では可決となるケースが十分に考えられます。不要なトラブルを回避するためにも、早い段階で改正標準管理規約に準拠した決議要件に変更することが望まれます」

「定足数については、まず『半数以上』と『過半数』の違いを正確に理解しておく必要があるでしょう。『半数以上』は半数を含みますが『過半数』は半数を含みません。『半数以上』であれば、議決権総数の50%であれば可決となります。一方で『過半数』であれば51%でなければ可決とはならないことになります。規約を改正する際には、過半数の定義を注記しておくと良いかもしれません」

『3.共用部分の変更決議』の解説

『3.共用部分の変更決議』も強行規定であり、瑕疵による権利侵害やバリアフリー化などの決議要件が「4分の3」から「3分の2」に改正されたことに伴う項目だ。

「改正前の決議要件では否決されていたものが、決議要件の緩和によって可決される可能性があります。強行規定であるからとはいえ、管理規約を変更せず、唐突に改正後の決議要件を適用して強引に可決させるようなやり方をすれば、住人からの反感を買いかねません。強行規定であることを盾に強引な運用をすることは極力避け、管理規約を変更することが望ましいでしょう」

『4.緊急時の招集手続き』の解説

『4.緊急時の招集手続き』も強行規定で、改正前の標準管理規約では緊急に総会を招集する際の通知の発送の最短期間が「5日間」だったが、改正後は「1週間」となっている。

「緊急性を伴う議案を審議する臨時総会の招集に際し、改正前の規定に準じて1週間を下回る期間に短縮した場合には、管理組合総会が無効となる可能性があるため注意が必要です」

高経年マンションの増加に伴い、建替えを検討する管理組合も増えている。しかし、これまでの区分所有法では、建替え決議には「区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成」という高いハードルがあったため、実現が難しいことも少なくなかった。

『7.再生・売却制度』の解説

『7.再生・売却制度』は、区分所有法改正により一定の条件を満たす場合には建替えの決議要件が「4分の3」に緩和されることを受けたもので、更新・売却・除却といった新たなマンション再生手法も同様に決議要件は原則5分の4で、一定の条件を満たす場合は4分の3に緩和される。

「これまでに建替え決議が僅差で否決されていたケースでも、改めて決議が行われる場合には、強行規定であることから規約変更されていない場合でも可決に転ずることが考えられます。とくに建替えや一棟リノベーション、敷地売却などを検討している管理組合は規約変更は必須と考えられます」

さくら事務所のマンション管理コンサルタント土屋輝之さんに、管理規約の中で見直しておきたい20の項目を聞いた。出典:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001971486.pdf)
さくら事務所のマンション管理コンサルタント土屋輝之さんに、管理規約の中で見直しておきたい20の項目を聞いた。出典:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001971486.pdf)

2.専有部分・リノベーション(NO.11~17)

専有部分・リノベーションで見直しておきたい項目は以下の7項目。

NO. 項目 強行規定/任意規定
11工事の事前承認義務任意規定
12細則への委任規定任意規定
13構造躯体の保全義務任意規定
14配管の管理区分と更新任意規定
15立ち入りおよび保存行為の実施権限任意規定
16窓ガラス・サッシの改良任意規定
17共用設備の管理責任任意規定

専有部分・リノベーションに関する項目はすべて任意規定であるが、土屋さんによれば、専有部分のリフォーム工事に関する規定が曖昧であることによるトラブルは少なくない。とくに『11.工事の事前承認義務』については、「申請書類の提出期日」および「理事長の書面による承認」が必須条件として明記されるのが望ましいという。

「申請書類の提出期限が規定されていない規約は少なくありませんが、リフォーム工事会社が着工予定日の直前に提出し、工事内容を十分に精査することなく承認せざるを得ない状況に陥っているケースも散見されます。その結果、リフォーム後に騒音トラブルなどが発生してしまえば、リフォームを承認した理事長の責任にもなりかねません。そもそも理事長がリフォーム内容を精査し、承認するという仕組み自体にも無理があるため、工事内容の精査を第三者の専門家に委託するような仕組みも併せて検討してもらいたいと思います」

また『12.細則への委任規定』も非常に重要な項目で、専有部のリフォーム工事については、申請の仕組みだけでなく、使用する建材や内装材の性能に関する制限が詳細に規定されていることが望ましいという。

「床フローリングの遮音性能、床材として大理石などの天然石の利用に関する制限、間仕切りを変更したことによる自動火災報知器の感知器増設や移動、楽器演奏に使用する防音室の設置に伴うスプリンクラーや自動火災報知設備の警報装置の増設など各種法令への準拠に関することなどが詳細に定められていることは、マンションでの生活における安心に資するものであり、トラブル防止の観点からも重要です」

3.生活・使用ルール(NO.18~20)

生活・使用ルールで見直しておきたい項目は以下の3項目。

NO. 項目 強行規定/任意規定
18ペット飼育細則任意規定
19バルコニー使用制限任意規定
20喫煙ルールの整備任意規定

生活・使用ルールに関する項目もすべて任意規定だが、暮らしに近い規約であることから、強行規定を見直すタイミングで今一度、内容を精査しておくのが賢明だろう。

「ペットの飼育問題は、分譲マンションのトラブルの代表格ともいえます。ペット飼育細則の規定では、飼育可能なペットの種類・サイズ・数などのルールが明確に定められていることがポイントとなります。過去には、専有部分に大型の水槽を多数設置し、観賞魚の繁殖を業務として行っていたという事例もありました。こうしたことを想定し、水槽を設置する場合の水槽の大きさや設置後の重量まで規定しておくと安心でしょう。爬虫類や猛禽類などを飼育したいと考える人もいるため、犬や猫に限らず、飼育できるペットの範囲を具体的かつ網羅的に定めておくことがトラブル防止の鍵となります。

喫煙に関するトラブルは近年、やや減少傾向にあるものの、喫煙ルールが明確に定められているマンションに限定して購入を検討する方も少なくありません。明確にルールを規定することが、資産価値向上の一助となる可能性もあります」

まとめ

現時点で管理規約を見直していなかったとしても、総会の招集手続きや総会の定足数・多数決要件など強行規定については、改正法が適用となる。規約を見直さないままでいると、これらの手続きや決議が違法となるだけでなく、無効とされるおそれがあることから、速やかな変更が望ましいといえるだろう。

一方、任意規定についても、過去のトラブル事例や変化したライフスタイルに対応するための改正である。土屋さんによれば、見方によっては任意規定の見直しの方が難しい側面もあるという。管理会社や第三者の専門家の力も借りながら、任意規定を採用した場合に何がどう変わるかなどを住人に説明し、納得したうえでの変更が望まれる。

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