建設資材の値上がりが続いている

建設工事に伴うさまざまな費用が上昇している建設工事に伴うさまざまな費用が上昇している

国内経済のデフレ脱却を目指す「アベノミクス」が始まって1年あまりが経過した。さまざまな指標が期待先行で好転している面も否めないが、「デフレ脱却」は簡単にいえば「値上げ」だ。不動産関連をみても、円安の影響で輸入資材の価格が高騰しているだけでなく、国産品の値上がりが目立つようになってきた。

その背景には、震災復興事業の本格化、公共事業の拡大、そして不動産市場の回復などが挙げられる。国土交通省がまとめた2013年の新設住宅着工戸数は、前年比11.2%増の980,025戸で、伸び率は17年ぶりの大きさとなった。1996年のピーク時(約164万戸)からは4割ダウンの水準にとどまっているが、リーマンショック後に大きく落ち込んだ2009年に比べれば、約24%のアップとなっている。

建設資材の需要は旺盛で、国土交通省の「主要建設資材月別需要予測」によれば、2014年3月はセメントが前年比21.4%増、生コンクリートが同18.8%増、木材が同12.4%増、普通鋼鋼材が同13.5%増、形鋼が同14.6%増など、軒並み2ケタの増加が見込まれている。前年が少なかったことによる反動増などという話ではなく、2010年度からおおむね増加傾向が続いているのだ。

価格自体は1年前に比べてあまり変化がない建設資材もみられるが、とくにマンションやビル建設に使用される異形棒鋼、H型鋼、コンクリート型枠用合板、構造用合板(針葉樹)などは、過去1年間で25%〜30%の値上がりを示している。逆に値下がりをした資材はほとんどなく、全体的には約1割近くのアップと推定される。

工事の増加で人手不足は深刻さを増している

震災復興事業、公共工事、さらに民間の工事が増えるにつれ、人手不足(職人不足)が次第に顕著となってきた。そのため、建設工事に従事する作業員の人件費である「労務費」も膨らみつつある。国土交通省が定める「公共工事設計労務単価」は、2014年2月時点で「普通作業員」が2012年比24.5%増、「鉄筋工」が同24.6%増、「型枠工」が同24.9%増となっている。

民間では地域によっても異なるが、鉄筋工や型枠工の労務費が1年前より5割アップ、リーマンショック後の最安値と比べれば2倍程度となっている例もあるようだ。なお、国土交通省による労務単価は1997年〜98年頃に比べて、2割ダウン程度の水準にとどまっている。これから本格的に景気回復が進めば、まだまだ上昇する余地が大きいともいえるだろう。

人手不足は簡単に補えるわけではない。豊富な経験をもつ「熟練工」が足りないのだ。1995年以降、建設労働者が徐々に減りつつあったなかで、2008年のリーマンショック後に市場が急激に落ち込み、その減少に拍車をかけたとみられる。技能工はピーク時から約3割減っているといわれ、最近の需要増に追いつけない状態が続いている。

マンションの場合には立地や建物のグレードにもよるが、おおむね建設費の30〜40%程度が労務費とされる。一戸建て住宅であれば、さらに大きな割合を占めることになるだろう。人手不足とそれに伴う人件費の高騰が、今後の住宅価格に影響を及ぼすことは必至だ。

政府は2014年1月に、建設現場における外国人の活用を拡大させる方針を固めたようだが、6年後の東京五輪開催に向けた工事もこれから本格化する。慢性的な人手不足の状況から脱却することはしばらく望めないだろう。

大都市圏の地価が上昇し、用地仕入れが難しい状況になっている

リーマンショック後に下落傾向が続いていた国内の地価だが、大都市圏を中心に上昇へ転じるエリアが拡大している。2013年3月に発表された公示地価(1月1日時点)の住宅地平均は、東京圏がマイナス0.7%、大阪圏がマイナス0.9%、名古屋圏が0.0%(横ばい)だったが、個別にみれば上昇地点は数多く存在している。

立地条件のよいエリアを中心に4〜5年前から地価が上昇を示していた地点もあるが、昨年の公示地価ではそれが急増した。2013年中はさらにその傾向が強まっており、今年3月に発表される公示地価(2014年1月1日時点)では、住宅地平均が上昇となる可能性は高い。大都市圏だけでなく、地方の中心都市などでも同様の傾向がみられる。実際の取引価格は、公示地価より顕著な上昇を示しているケースも多いだろう。

すべての住宅地の価格が一様に上昇するわけではなく、個別の要因に大きく左右される。しかし、立地条件のよさが問われやすいマンションでは、「値上がりしそうもない用地」を仕入れることは難しく、価格上昇中の用地を仕入れざるを得ないことが多い。今後の需要を考えれば、以前のように郊外立地を推し進めることも困難だ。地価上昇時には、まとまった用地の売り惜しみが生じるほか、デベロッパー同士の競合も激しくなりやすい。

マンション用地ほどではないにせよ、建売住宅などの用地でも同様の傾向は生じる。立地条件の優れた物件であればあるほど、地価上昇の影響は避けられないのだ。

今後の住宅価格はどうなる?

新築マンション、建売住宅などの価格がじわじわと上がり始めている。しかし、今のところ急激な価格上昇はないようだ。

東京都区部で立地条件のよいエリアのマンションなどは、高額所得者の需要が旺盛なだけでなく、海外からの投資需要も活発であり、建設資材や人件費の高騰、地価上昇などを販売価格に転嫁しやすい条件が揃っている。その一方で、以前に比べれば経済環境は改善されているが、住宅購入者の所得増加にはまだ繋がっていない。値上げによって市場が落ち込むシナリオも考えられるため、供給側にとってしばらくは我慢の展開を強いられるだろう。

さらに、4月の消費税率引上げによって一時的に景気が減速、停滞が免れないと予測されており、その影響を見極めるためにしばらくは販売価格の引上げに慎重にならざるを得ないといった状況もある。消費税率引上げの影響を、どれくらいの期間で脱するかがカギとなるが、もし仮に、増税後の落ち込みが少なく経済環境の持ち直しが早ければ、住宅価格の上昇傾向が顕著になるのは意外と早いだろう。値上げをしない代わりに、住宅の床面積を縮小して販売価格を抑えるといった動きも出てくると考えられる。

いずれにしても原価の上昇要因が目白押しの環境の中で、現在の価格水準を維持することは困難であり、遅かれ早かれ値上がりは避けられない状況となっている。一部には、市場の動きに関わりなく今年の春頃から建築費上昇の影響が顕著になるという見方もあるようだ。

2007年頃にマンションの「新価格」「新新価格」などといわれ、急激に販売価格水準が上昇したことを記憶されている方も多いだろうと思う。当時ほどの値上がりが再現されることはないかもしれないが、今後の動きには十分に注意を向けておきたい。

「値上がりすれば売れなくなる、だから値上げはできない」という見方をする人もいるようだが、住宅ローン金利や住宅価格の先高感があるかぎり、緩やかな値上げ傾向のときにはかえって積極的に購入を検討する人も多いのだ。

2014年 03月02日 10時23分