奈良時代から日本の要所だった多賀城市

宮城県多賀城市の歴史を紐解くと、遥か昔まで遡ることになる。奈良時代(710年~794年)の律令制度のもと、同地域は朝廷の出先機関として周辺の軍事統括や当時緊張関係にあった蝦夷や新羅との外交の舞台として機能していた。朝廷にとって、福岡県の大宰府と並ぶ重要な拠点だったのだ。その根拠のひとつとして、多賀城碑がある。これは762年に建碑された多賀城(庁舎)の修築記念を記したものだ。日本各地の古代碑のうち、歴史上極めて重要とされる日本三古碑のひとつであり、国宝にも指定されている。

そして現在の多賀城市は、杜の都・仙台のベッドタウンとして発展を続けている。仙台市への通勤率は4割超。その交通手段のハブとなっているのが、仙台駅まで乗り換えなし約20分のJR東日本「多賀城駅」だ。

かつて同駅から徒歩約6分の場所に東北学院大学多賀城キャンパスがあった。11.6ヘクタール(東京ドームの約2.4倍)という広大な敷地だ。現在、この好立地において再開発計画が進行している。

ミサワホームが再開発計画を主導

東北学院大学多賀城キャンパス跡地の再開発計画は、同大学の多賀城キャンパスが仙台市内へ移転し、跡地を売却することから始まった。売却先が決まったのは2023年8月。ミサワホーム株式会社と同グループ会社が東北学院と土地売買契約を交わした。

同年12月には、同社と多賀城市が、まちづくりに関する包括連携協定を締結。連携事項は以下の9つ。

1. 中心市街地の開発に関すること
2. 生涯にわたる健康づくりに関すること
3. 防災・減災対策に関すること
4. 地域の安全・安心に関すること
5. こども・青少年育成に関すること
6. 高齢者・障がい者支援に関すること
7. 環境対策・リサイクルに関すること
8. 良好な交通ネットワークの構築に関すること
9. その他、市民サービスの向上・地域社会の活性化に関すること

具体的には、一戸建て住宅や分譲マンションといった住環境、商業施設、医療施設、子育て支援施設、スポーツ施設などを整備し、健康増進・賑わい創出・子育て支援、生活利便・防災機能などを兼ね備えた「多世代に魅力的な地域拠点」を目指すとしている。

全体イメージパース(画像:ミサワホーム株式会社)全体イメージパース(画像:ミサワホーム株式会社)

敷地の大半を近隣商業地域へ変更

再開発は以下の3つのエリアに区分けして進められる予定だ。

・眺望を活かした住宅エリア
・商業施設とマンションを併設する地域の賑わいエリア
・地域住民の健康増進エリア

しかしながらこの開発には、大きな壁もある。11.6ヘクタールの対象地のほとんどが第一種中高層住居専用地域なのだ。つまり、大規模な商業施設は建てられない。そこで8.5ヘクタールを近隣商業地域へ変更する計画だ。

赤枠内が再開発予定地。大半が第一種中高層住居専用地域となっている(出典:多賀城市資料)赤枠内が再開発予定地。大半が第一種中高層住居専用地域となっている(出典:多賀城市資料)

多賀城市が複合スポーツ施設を整備

また、敷地内の野球場跡地は、ミサワホームから多賀城市が買い取り、同市の「スポーツウェルネス施設整備基本構想」によって複合スポーツ施設が整備される。この背景には、多賀城市のスポーツ施設の老朽化がある。総合体育館は1979年、市民プールは1982年に開館。市内全10校の小・中学校の屋外プールも築30年以上が経過し、それぞれ修繕費の確保に苦慮している。そこで規模を縮小しつつ、学校のプール機能も併せて合築移転をする計画だ。これが実現できるのも、各小中学校から車で10分以内という好立地ゆえだろう。なお、宮城県が公表した津波浸水想定の結果、大規模災害時の指定避難所に指定されている総合体育館が浸水エリアになったことから、その代替施設という役割もある。

水色部分が野球場跡地。ここに複合スポーツ施設が整備される(出典:多賀城市資料)水色部分が野球場跡地。ここに複合スポーツ施設が整備される(出典:多賀城市資料)

各施設の詳細は現在検討中

この再開発計画は、ミサワホームの未来を見据えたまちづくり事業のブランド「ASMACI(アスマチ)」が中心となって進められる。同ブランドでは、オフィスビルやマンションをはじめ、医療・介護・子育て支援を中心に社会課題の解決に向けたコンパクトシティ型不動産開発などを展開している。

今回の再開発においても、地域経済の活性化が大いに期待できる。商業施設の開発などによって新たな雇用機会が生まれ、利便性の高い住まいが創出されることで幅広い世代が共存するまちに生まれ変わるはずだ。

多賀城市に問合せたところ、各施設の詳細は、現在検討中とのこと。その青写真などが確定したうえで工事は着工する。つまり、可能性は無限大。東北の地に新たな未来都市が誕生することを期待したい。