千葉県過去最大級となる団地リニューアルが始動
2025年10月31日、千葉県船橋市のJR京葉線南船橋駅前に位置する「若松二丁目住宅」において、マンション建て替えの本体工事に着手したことを「若松二丁目住宅マンション建替組合」他4社が2025年11月17日に公表した。
当該プロジェクトは、1969年にUR都市機構の前身となる日本住宅公団が建設した地上5階建て、全17棟、総戸数576戸から構成される「若松二丁目団地」の一部の敷地で行われる。なお、当該プロジェクトの北側に位置する賃貸住宅棟を含めると合計で1,900戸となる中規模団地であった。
プロジェクトには、「若松二丁目住宅マンション建替組合」に加え、参加組合員として野村不動産株式会社、三井不動産レジデンシャル株式会社、旭化成ホームズ株式会社、日鉄興和不動産株式会社という大手デベロッパー4社が参画。2007年の検討開始から約18年を経て、本体工事の着工となった。
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事業概要
当該事業では、マンション建替円滑法(2002年法)を活用した事業としている。同法の目的は、老朽化したマンションの建て替えを円滑に進めることにある。
法制定後、これまでに幾度も改正が行われており、2025年改正では、築40年以上のマンションが2024年末で約148万戸に達し、今後10年で2倍、20年で3.3倍に増加することや、そうした住戸のうち、世帯主の70歳以上が半数以上となることなどを背景に、一括売却や除却等における全員決議を多数決決議(5分の4)に緩和することなどが規定された。なお、同法は区分所有法とともに2026年4月に施行される。
※改正法の正式名称:老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律。公布:2025年11月27日
また、同法に基づき、国では、老朽マンションの建替促進にあたり官民による先導的なプロジェクトを推進するため各種支援措置を講じている。
今回の若松二丁目住宅のプロジェクトにおいても、国の「令和2年度マンションストック長寿命化等モデル事業(事業タイプ:計画支援型)」を活用している。この中では、「①分譲・賃貸複合団地の再生に必要不可欠な分譲・賃貸の分割整理」「②郊外団地建替えの課題となる区分所有者負担を軽減する方策」「③建替事業と保留敷地事業の一体的な街並み形成」の検討を行っている。
建替組合らのプレスリリースによると、現時点ではイメージパースの公表、ならびに工期を2期に分け、先行区画の竣工について2028年を予定しているとしている。
なお、予定戸数は、現地の標識看板によると合計は1,328戸(従前戸数の約2.3倍)となる。この約2.3倍という数字は、東京都のオープンデータ(東京都マンションポータルサイト、2025年12月11日最終閲覧)の建て替え前から建て替え後における増加割合から推計した戸数である平均約1.9倍、中央値約1.7倍よりも大きい。
これまでの事業の歩みについては、次のとおり。
・2007年:若松二丁目住宅団地管理組合において再生検討を開始
・2014年:事業協力者として、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、旭化成不動産レジデンス、日鉄興和不動産が参画
・2023年:3月に一括建て替え決議が成立
・2023年:12月に組合設立認可公告
・2025年:2月に権利変換計画認可を取得し、3月に解体工事に着手
【従前建物(若松二丁目住宅)の概要】
・所在地 :千葉県船橋若松2丁目4番6
・敷地面積:42,306m2(実測)
・延床面積:30,241m2
・戸 数:576戸
・構造規模:鉄筋コンクリート造 地上5階・全17棟
・竣工年 :1969年
・用途地域:第一種住居地域(容積率200%、建蔽率60%)
※出典:若松二丁目住宅マンション建替組合、野村不動産株式会社、三井不動産レジデンシャル株式会社、旭化成ホームズ株式会社、日鉄興和不動産株式会社(2025年11月17日)『「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」を利用した建替え事業「若松二丁目住宅マンション建替え事業」着工 千葉県内過去最大規模 従前戸数576戸の大規模マンション建替え』、ただし用途地域を除く。
建築は2期に分けて進行
【A・B棟】
・主要用途:共同住宅
・階数規模:地上15階、高さ44.9m
・延べ面積:5万6,890.80m2
・住戸数 :820戸(うち、ワンルームなし)
・着工予定:2025年10月
・完了予定:2028年9月
・設計者 :株式会社長谷工コーポレーション
・施工予定者:株式会社長谷工コーポレーション
【C棟】
・主要用途:共同住宅
・階数規模:地上15階、高さ44.9m
・延べ面積:1万2,974.86m2
・住戸数 :167戸(うち、ワンルームなし)
・着工予定:2025年10月
・完了予定:2028年9月
・設計者 :株式会社長谷工コーポレーション
・施工予定者:株式会社長谷工コーポレーション
【D棟】
・主要用途:共同住宅
・階数規模:地上15階、高さ44.9m
・延べ面積:26,365.34m2
・住戸数 :341戸(うち、ワンルームなし)
・着工予定:2028年1月
・完了予定:2030年7月
・設計者 :株式会社長谷工コーポレーション
・施工予定者:株式会社長谷工コーポレーション
※上記情報は、船橋市環境共生まちづくり条例第15条第1項等に基づき設置された「建築計画のお知らせ」標識による(2025年12月12日時点)
若松二丁目住宅の歴史
旧日本住宅公団により若松二丁目住宅が建設された1969年当時は、JR京葉線は開通しておらず(全線開通は1990年)、最寄り駅は京成線の船橋競馬場(1927年開業)であった。
国土地理院が公表している空中写真を見ると、若松二丁目住宅が建設される前は海だったことが分かる。その後、千葉港港湾整備とともに埋め立てが進められ、当該地は団地として造成されたことが分かる。このように変遷を追うと、駅周辺が急速に発展してきたことをうかがい知ることができる。
JR南船橋駅周辺における開発動向
約30分でJR東京駅まで到達する距離に位置する千葉県船橋市南部のJR南船橋駅。同駅の周辺には、ららぽーとTOKYO-BAYや船橋競馬場、IKEA Tokyo-Bayが立地しており、読者の中には、商業地としてイメージしていることも多いかもしれない。
また、市では、2017年以降、更地であった同駅南側エリアのインフラを整えてきた経緯がある。同市によると、JR南船橋駅南口に位置する約4.5ヘクタールの土地が2017年度に千葉県企業庁より船橋市へ譲渡された。
同市では、周辺に大型商業施設が密集していることや、住宅や食品産業を中心した工場が集積している状況を踏まえ、臨海部エリアの特性を生かした玄関口としてふさわしい拠点形成を図ることを目的に官民連携により開発を進めてきた。その中において、駅前広場や芝生広場などの公共スペースに加え、スーパーや医療等の日常生活サービス施設、マンション(パークホームズ南船橋、パークホームズLaLa南船橋)などが建設された。加えて、最近では児童相談所が2026年7月の開設に向けて整備が進められている。商業地として知られる南船橋駅周辺においても南側エリアにおいて、住宅地を含む開発が進められたことで、住宅地としての評価も受けているように感じられる。
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若松二丁目住宅のような事例は今後増加するのか
国の推計によると、築40年を超えるマンションストックは2024年末時点で約148万戸に達し、10年後には現在の約2倍へ急増する見込みだ。また、旧耐震基準ストックで見ると、約103万戸に達する(2024年末時点)。こうした中、近年、顕著な傾向を見せているのが「マンション建替円滑化法」に基づく建て替えの増加である。国によると、2025年3月末時点で、累計で323件(約2.6万戸)と増加傾向にある。
権利関係がシンプルな小規模マンションであれば、同法によらない手法(区分所有法ベース)でも合意形成は容易といえる。しかしながら、若松二丁目住宅のような大規模団地では権利者の多さが合意形成の壁となる。権利者が増えれば、それだけ多様な意見が増えることで意見がまとまらないためだ。
そのため、規模の大きな案件においては、法的な枠組みで合意形成を円滑に進めることができる「マンション建替円滑法」の採用が増加している。これは、これまで、権利関係で困難とされてきた大規模マンションの再生がいよいよ本格化しつつある。加えて、近年の法改正による要件緩和も追い風となり、今後、同法を活用した大規模建て替えはさらに加速していくことが想定される。
まとめ
千葉県内で過去最大規模となる従前576戸数の「若松二丁目住宅」建て替え事業は、2007年の検討開始から約18年の時を経て、2025年10月にいよいよ本体着工を迎えた。検討開始から権利変換計画の認可までに約18年、建築から56年を経過しており、意見をとりまとめるのに相当苦慮したことが想像できる。
おそらく、本プロジェクトの実現を支えたのは、「マンション建替円滑化法」による法的な支援や仕組み、大手デベロッパー4社が結集した複雑な権利調整のノウハウ、そして近年の周辺の再開発により魅力が増しているJR南船橋駅に近接しているというエリアのポテンシャルにあると考えられる。これら3つの要素がかみ合ったことで、巨大団地が、現代のライフスタイルに合わせて、新しい居住者を呼び込みながら生まれ変わろうとしている。
特に、隣接するUR団地(賃貸)とのインフラ分離や「一団地認定」の再設定といった難題をクリアし、国のモデル事業にも採択されたプロセスは、業界内でも画期的な事例として注目されている。全国に数多く残る「分譲・賃貸混在団地」の再生において、モデルケースの一つになる可能性がある。
先行工区の竣工は2028年度を予定している。単なる老朽化対策にとどまらず、プロバスケットボールチームのアリーナ開業(2024年5月)などで活気づくJR南船橋駅周辺のまちづくりとも連動しているともいえる本プロジェクト。その完成が、このエリアにどのような新しい価値をもたらすのか、今後の進捗に注視していきたい。
















