駅前再開発が進む「千里丘」とは

JR新大阪駅へ約10分、大阪駅まで約14分と利便性の高いJR千里丘駅JR新大阪駅へ約10分、大阪駅まで約14分と利便性の高いJR千里丘駅

千里丘は、JR千里丘駅を中心にして摂津市北部と吹田市東部に広がる地域だ。千里丘陵は1970年に吹田市で開催された国際博覧会を機に開発され、優良な住宅地として今なお子育て世代に人気がある。

JR千里丘駅はこの地域の主要駅。普通しか停車しないが、乗り換えなしでJR新大阪駅へ約10分、大阪駅まで約14分と、通勤通学にアクセスは良好だ。吹田市・摂津市に加えて、隣接する茨木市民も利用する駅とあって、1日平均の乗降客数はJR西日本管内で49位(※)と、上位にある。

一方でJR千里丘駅周辺の道路事情には課題があった。駅北西に通る府道「大阪高槻京都線」の渋滞に悩まされてきたのだ。だがこの流れにもようやく変化が起きるときが来た。都市計画道路「十三高槻線」(大阪市淀川区十三~高槻市井尻)の一部、正雀工区(吹田市吹東町〜南正雀)が2025年6月に供用を開始した。線路や川で分断が生じ、迂回するしかなかった部分に跨線橋ができ、計画では中央環状線まで通じることに。これによって高槻京都線の渋滞緩和も期待され、千里丘地区の道路交通状況も大きく改善される見込みだ。

参考:大阪府 都市計画道路十三高槻線(正雀工区)

2016年、大阪寄りに1駅隣のJR岸辺駅では、JR旧吹田操車場跡地に「健都(北大阪健康医療都市)」がまちびらきをした。千里丘地区と隣接しているここには、国立循環器病センターをはじめとした医療機関や研究機関、企業や団体が集まり、大規模な複合医療産業拠点として注目を集めている。また、これら医療機関の近隣には大規模なマンションも建設され、健康と医療をコンセプトにしたまちづくりが進む。

※引用:データで見るJR西日本2024、上位50駅の乗車人員(2023年度1日平均)より

駅前再開発で生まれ変わるJR「千里丘」駅西地区

摂津市千里丘1丁目1番に所在するJR千里丘駅。このJR千里丘駅の西側は、府道大阪高槻京都線が平行して通り、交通網には恵まれるものの、道幅の狭い道路や築年数が経過した木造住宅も多く、交通混雑や環境面での課題を抱えてきた。また歩道整備も不十分で、交通安全の早期改善も求められていた。

摂津市はこうした課題解消に向け、2019(平成31)年3月「再開発基本方針」を策定。2020(令和2)年2月に市街地再開発事業の都市計画を、2021(令和3)年6月に大阪府知事の認可を受け事業計画を決定した。そして現在、「北部大阪都市計画事業千里丘駅西地区第一種市街地再開発事業」として進められている。

まちづくりのコンセプトは「つなぐ わ、広げる わ、育む わ ~人をつなぎ賑わいを広げまちを育てる~」。
「ひととまちをつなぐ交通・交流拠点」「周辺に広がる賑わいの創出拠点」「快適なまちを持続的に育むまち育て拠点」として、駅前にふさわしい拠点形成を図る。(事業計画書より)

JR千里丘駅西側の再発事業における建設予定は次のとおりだ。
・1街区:住宅施設(36階建てタワーマンション)、商業業務施設(3階建て)、商業業務用 駐車場棟、駅前広場やまちかど広場など
・2街区:商業業務施設(6階建て)
・自由通路、駅前広場
・1街区と2街区の間に区画道路1号線(シンボルロード)
・駅前に通じる区画道路2号線
また「千里の丘 森の記憶」を事業全体のランドスケープコンセプトとし、かつての千里丘陵を想起させる豊かな植栽プランも発表されている。駅直結のタワーマンションは人気が出ることが予想され、地元以外からも多くの人が訪れ街ににぎわいが生まれることが期待できる。

事業の竣工は2027(令和9)年度の予定。

参考:摂津市 千里丘駅西地区再開発事業

JR千里丘駅上空から見た地区のイメージ(摂津市公式サイト 事業概要より)JR千里丘駅上空から見た地区のイメージ(摂津市公式サイト 事業概要より)
JR千里丘駅上空から見た地区のイメージ(摂津市公式サイト 事業概要より)計画図(摂津市公式サイト 事業概要より)
JR千里丘駅上空から見た地区のイメージ(摂津市公式サイト 事業概要より)建設工事が進む千里丘駅前再開発プロジェクト

駅前不動産会社が旗を振る、高齢者に向けた"集い事業"「センイチプロジェクト」

都土地株式会社の西本佐幸さん都土地株式会社の西本佐幸さん

上記の千里丘駅前の再開発によって、新しいビルに移転することになる不動産会社 都土地株式会社。ここで事務を担う西本佐幸さんが、高齢者が増え、交流の少なくなった街に元気を取り戻す「センイチプロジェクト」を手がけている。千里丘駅を中心とする千里丘1丁目の高齢者が"集う"ことで、街に活力と元気を取り戻すプロジェクトだ。

「もともとボランティアで自治会活動に関心がありました。家業の不動産会社を手伝うにあたって、孤独死などの問題に直面し、昔に比べて元気がなくなってきている街を何とかしたいと思ったのが始まりです」(西本さん)

西本さんが管理するアパート・マンションなどの物件では、ひとり暮らしの高齢者も多い。
「家賃は振り込みではなく、皆さんに現金を持参していただいています。月に一度でもお会いして様子を聞くことが、とても大事と考えています」(西本さん)

人と会って世間話をすることが、高齢者の生活の中で大事だと考える西本さんは、「『今日行くところ』『今日の用事』がいちばん大事です。これを私は『キョウイク』と『キョウヨウ』と呼んで、大事にしてねと皆さんに伝えています」と話す。

若い人だけでなく、高齢者も元気で生き生き暮らせる街になってほしい。そんな西本さんの"千里丘愛"が、高齢者を中心としたプロジェクトを支える。

集まり、楽しみ、まちのためにも。「集い事業」の中身

「センイチプロジェクト」(千里丘1丁目プロジェクト)で進められている事業と、計画中の事業を紹介する。

●コミュニティサロン「sen1cafe」 
喫茶スペースとしてだけではなく、健康生活のためのいろいろな活動に利用できるサロンだ。
「簡単な運動や講師の方によるお話で、脳トレに活用いただき、健康寿命を延ばしていただけるようにと考えています」(西本さん)
場所はこれまでの自治会館に代わり、8月にマンションの一室のリフォームが完成し、専用スペースとして活用される。

センイチプロジェクトの一環として、マンションの1階に開かれた新しい拠点「sen1cafe」センイチプロジェクトの一環として、マンションの1階に開かれた新しい拠点「sen1cafe」

●千里丘駅前クリーンプロジェクト「清掃事業」 
毎月第4土曜日に千里丘駅周辺で行われる、ゴミ拾いの清掃活動。高齢者だけでなく、世代を超えたチームが、ルートを決めて活動する。

●計画中プロジェクト
「まちライブラリー」は、拠点のカフェスペースを小さな図書室としても活用。司書さんによる図書の紹介も。「地域食堂」は、料理好きの方の手による月1食堂として、スペースを活用する。そのほか、体操や絵画、お花のワークショップも。
「ゆくゆくは高齢者向けだけではなく、子育て世代の方、子どもたちなど、どなたでもちょこっと寄れて、話ができる場所にしていきたいですね」(西本さん)

センイチプロジェクトの一環として、マンションの1階に開かれた新しい拠点「sen1cafe」毎月第4土曜日に活動するクリーンプロジェクトのメンバー
センイチプロジェクトの一環として、マンションの1階に開かれた新しい拠点「sen1cafe」まちライブラリーとしても活用されるsen1cafeの室内

行政支援をきっかけに、長く続く活動を模索

「sen1cafe」 は、2024年度の摂津市公益市民活動の助成金対象事業にも選ばれた。摂津市自治振興課の手島さんは「まちがどんどん新しくなっていく中で、コミュニティの形が変わってきています。そうしたなかで、これからのまちづくりにとって、市民による公益活動はますます重要になってくるでしょう」と語る。

行政だけの支援では、きめ細かい公益活動に手が届かなくなってきており、孤立しがちな高齢者が取り残されてしまうかもしれない。そこで、新しい公共の担い手として「市民活動団体」が重要視されている。新しい公共としての「市民活動団体」が担うコミュニティが、地域社会の課題解決に取り組むことが期待される。

しかし、西本さんは「ボランティアの市民だけで新しいコミュニティを継続していくことは難しいと思う」と語る。行政と市民活動団体の連携がますます重要になっていく。

ハード&ソフトの取り組みで、みんなが生き生きと住みやすい千里丘へ

千里丘駅前で進む再開発事業。2027年には、高層マンションに新しい市民が暮らしを育み、商業施設に市外からも多くの人がやってくるだろう。

同時に、都土地株式会社がボランティアで取り組む千里丘の地域公益活動。お年寄りに「集い」を提供することで、健康的な暮らしの維持と街のにぎわいを生み、地域の活性化を図っている。

「大きな事業と並行してすすめる、小さな活動から始める小さなまちづくり」(西本さん)

それが、再開発とともに進む「センイチプロジェクト」だ。市民公益団体によるコミュニティづくりとともに、地元愛に支えられたまちづくりが始まっている。

ハードとソフトの街づくりが進む千里丘地区ハードとソフトの街づくりが進む千里丘地区