立地適正化計画とは

「立地適正化計画」という言葉。初めて目にする方が多いのではないのだろうか。

この「立地適正化計画」は、分かりやすく言ってしまえば「コンパクトシティ」の形成を推進する行政計画である。2016年8月の改正都市再生特別措置法により誕生した制度で、国が積極的に推進している比較的新しい取り組みだ。この立地適正化計画は、人口減少が進む地方都市を中心に策定が進められており、国によると2024年3月末現在、全国の568市町村で策定されている。

立地適正化計画の作成市町村数の推移 ※出典:国土交通省資料より作成立地適正化計画の作成市町村数の推移 ※出典:国土交通省資料より作成

「立地適正化計画」は何の立地を適正化するのか?

それは、「住宅」と「都市機能増進施設」である。都市機能増進施設とは、医療や福祉、商業施設などの住民の生活にとって必要な施設のことである。

そのため、立地適正化計画は、行政として、都市機能増進施設や住宅を、どのようなエリアに誘導していくのかを示している計画となっている。 繰り返しになるが、策定が行われている自治体の特徴として、将来的に人口減少が進むエリアを有していることが挙げられる。

人口減少が進むと都市計画として何が問題になるかというと、最も深刻なのは、都市に生活する住民の日常生活に必要不可欠な医療や福祉、商業施設の立地を維持することができなくなることである。
コロナ禍でも話題となった「エッセンシャル」という最低限必要な機能が徐々に消失していく。エッセンシャル施設の用途やその個々の商圏にもよるが、一般的には施設周辺に数千人から数万人規模が必要となる。例えば、必須の施設であるコンビニでは、街中(幹線道路を除く)での立地には半径500mの範囲に約3000人以上が必要とされる。

このようなエッセンシャル施設を維持できなくなれば、都市の魅力や利便性が低下し、更に人口減少に拍車がかかる。そうすれば市町村の税収は減少し、結果的に都市全体の公共サービスの質低下が生じる(最悪の場合、サービスの停止)。このため、地方都市では、広がり過ぎた市街地を徐々にコンパクトにし、最低限の公共サービスを維持していく取り組みに移行している。

立地適正化計画の作成市町村数の推移 ※出典:国土交通省資料より作成都市機能の維持に必要な人口規模の例 ※出典:国土交通省資料より抜粋

以前のコンパクトシティとは異なる概念

実は、立地適正化計画の制度が創設される前から、コンパクトシティを目指したまちづくりは進められてきた。それが中心市街地の再生・活性化である。

2006年にまちづくりに関する3つの法律(都市計画法、中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法)の改正を受け、特に注目されたのは、人口減少に転換しはじめた地方都市での行政主導による大規模な中心市街地への投資(公共施設整備や市街地再開発事業など)だったといえる。

2006年の法改正により一定の郊外開発を抑制する効果があったといえるが、当時の制度上、中心市街地活性化法に基づく「中心市街地活性化基本計画」の策定が可能だったのは1市町村につき1エリアとされていた。これは、市町村合併をはじめとするそれぞれの都市によって異なる都市構造が考慮されていなかったことを意味する。また、皮肉にも一部の市場規模に見合わない中心市街地での箱モノ整備がメディアによって取り上げられ世間の注目を浴びた。

これにより、コンパクトシティ=中心市街地への都市機能・人口の一極集中と、
コンパクトシティ=失敗 という誤解を生んでしまった。

しかし、2016年に制度化された立地適正化計画が目指すコンパクトシティは「多極ネットワーク型コンパクトシティ」となっている。

これまでと違う点の1つ目は「多極」。市町村合併の経緯や市街地形成の歴史的背景などを踏まえ、複数の拠点を設定し、その拠点に都市機能と人口を誘導することである。
そして2つ目は、「ネットワーク」。複数の拠点を利便性の高い公共交通機関などによって結ぶことである。特に、ネットワークという言葉で表現した「都市計画と公共交通の一体化」という点は、この計画の特徴の一つである。

人口減少のみならず高齢化がより一層進展し、利便性や環境負荷、将来のインフラコストを踏まえれば、現在のところの最適(持続可能性という視点)な交通手段は公共交通機関となる。

多極ネットワーク型コンパクトシティが目指す姿 ※出典:国土交通省資料より抜粋多極ネットワーク型コンパクトシティが目指す姿 ※出典:国土交通省資料より抜粋

不動産情報ライブラリで閲覧できる「立地適正化計画」とは

国が2024年4月から運用を開始している「不動産情報ライブラリ」では、「立地適正化計画」の区域、「都市機能誘導区域」および「居住誘導区域」を閲覧することができる。また、両者の誘導区域は、不動産売買の取引時における重要事項説明の対象となっており、住まいを探す際に必ず知っておくべき重要な情報となっている。

閲覧方法としては、国土交通省が公開している「不動産情報ライブラリ」のサイトから「地図表示」または「地域検索」を選択し、右上の「都市計画情報」から「立地適正化計画」を選択すると、緑色の区域が表示される。 緑色で示された区域のうち、赤枠で囲まれた区域が「都市機能誘導区域」、青枠で囲まれた区域が「居住誘導区域」を示している。

2つの区域については後ほど解説する。補足情報として、2つの誘導区域を表示させたまま、右上の「人口情報等」から「将来推計人口」を選択すれば、誘導区域と将来推計人口を色分けしたメッシュデータを重ね合わせることも可能である。同様に、「周辺施設情報」で特定の施設を選択すれば、誘導区域内に施設がどのような場所に立地しているのか、「防災情報」から各種災害ハザードエリアを選択すると、誘導区域内に存するハザードエリアを把握することができる。

不動産情報ライブラリの活用例不動産情報ライブラリの活用例

ライブラリ情報の「都市機能誘導区域」とは

都市機能誘導区域は、日常生活に必要な医療・福祉・商業等の都市機能が効率的に提供されるように決められた区域のことである。

「効率的に」とは、都市機能誘導区域は、鉄道駅や基幹的なバス停に近い業務、商業などが集積する地域や周辺からの公共交通によるアクセスの利便性が高い区域などで設定される。 立地適正化計画では、都市機能誘導区域内にて具体的にどのような都市機能(増進施設)を誘導するか、そして、そのような都市機能を誘導するためにどのような施策(補助事業など)を実施するのかを明記することとなっている。

少し難しく聞こえるかもしれないが、簡単に言えば日常生活を送る上で最低限の施設の立地を誘導・維持していくエリアだと思ってもらえばよい。

誘導区域のイメージ ※出典:国土交通省資料より抜粋誘導区域のイメージ ※出典:国土交通省資料より抜粋

ライブラリ情報の「居住誘導区域」とは

居住誘導区域は、人口減少の中にあっても一定のエリアにおいて人口密度を維持することにより、生活サービスやコミュニティが持続的に確保されるよう、居住を誘導すべき区域として定める区域のことである。居住誘導区域は、一部の災害ハザードエリアを除き、都市機能誘導区域を囲むように区域が設定される。

こちらも少し難しい表現となっているが、簡単に言えば行政が最低限の公共サービスを維持していく居住に適したエリアとなる。また、誘導区域の目的として、徒歩や自転車、公共交通機関によって都市機能誘導区域へのアクセスを確保していくことが定められる特徴がある。

補足:立地適正化計画が表示されないエリアとは?

立地適正化計画区域が表示されないエリアがある。

立地適正化計画は都市計画法による都市計画区域を対象エリアとしている。このため、立地適正化計画を策定している市町村であっても、郊外である都市計画区域外では表示されない。また、人口減少が見込まれない東京都特別区などでは計画を策定していないため表示されない。

ライブラリで得られる立地適正化計画情報を住まい探しに活かす方法

立地適正化計画の情報を住まい探しなどにどのように活かせるのか要点をまとめると次のとおりとなる。

①誘導区域内では、徒歩や自転車、公共交通機関を使って日常生活施設へアクセスが容易である(または将来的に容易となる可能性が高い)。
 自家用車を利用しないライフスタイルを望む方は参考になる。

②誘導区域内では、市町村が独自で補助金・支援制度を用意している場合がある。
 ※国土交通省HPで確認することも可能(下図参照)

③誘導区域では、生命に危険が及ぶ一部の災害ハザードエリアが除外されるため、自身で数多くの災害ハザードエリアを検索する必要がない。

上記の他にも土地の将来性(資産価値)といった視点や、日常生活上の利便性などが挙げられる。

市町村独自の支援制度の例 ※出典:国土交通省公表資料市町村独自の支援制度の例 ※出典:国土交通省公表資料

今後、多くの都市では、人口減少や市街地の人口密度低下、超高齢化は避けては通れない行政運営上の大きな課題となっている。

そのような中、都市(特に市街地)での日常生活に焦点をあて、居住、都市機能、公共交通に積極的にアプローチしている立地適正化計画が果たす役割は今後大きくなる。あなたが住む地域や将来的に住みたいと考える地域では、どのように誘導区域が設定されているのか。ぜひ一度、不動産情報ライブラリの立地適正化計画情報に目を通してみてはどうだろうか。

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